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- 城西大学コミュニティーファーマシーインターンシップ
ドラッグストアの仕事から地域医療を学ぶ 城西大学薬学部は毎年8月に「コミュニティーファーマシーインターンシップ」(選択科目)を実施している。日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の協力を得て、4年次にドラッグストアでの店舗体験研修を通じて、ドラッグストアの役割や薬剤師の働き方を学ぶ。「地域医療を学びたい」という意欲の高い13人の学生が研修先として希望した店舗で薬剤師の指導の下、ドラッグストアで行う業務を体験した。 OTC医薬品について指導する薬剤師の柏葉氏(奥)と指導を受ける学生 インターンシップは7月30日から9月19日の期間のうち4日間、JACDSの会員企業の店舗で実施された。調剤業務は見学のみで、店舗内外の日常業務の補助や商品販売などについて学んだ。 研修に先立ち6月26日に同大学坂戸キャンパスにおいて行われた事前講義では、JACDS勤務薬剤師委員会の関 颯伎氏((株)セキ薬品取締役・調剤本部本部長)がJACDSの活動、そしてドラッグストアの社会を取り巻く環境や役割について説明した。また、学生を受け入れる企業もオンラインでオブザーバーとして参加し、学生がどのような課題をもってインターシップに臨むのかといったことを共有した。 8月23日には、関氏が研修先の一つである「ドラッグストアセキ 新河岸店」(埼玉県川越市)を訪問し、インターンシップの進捗状況などを確認した。 実務実習では病院と薬局について知ることはできるが、ドラッグストアは実務実習の受け入れ先ではない。この機会にドラッグストアの役割について理解し、進路の一助にしたいという考えを持った学生も少なくないようだ。参加した学生は「自宅近くのドラッグストアが調剤併設型ドラッグストアなのですが、処方箋を持ってきているところを見る機会が少なく、ドラッグストアの薬剤師はOTC医薬品を販売しているイメージがありました。実際に薬剤師の働く姿を見てみると、服薬指導することはもちろんのこと、服薬指導時にガーゼや介護用品などの相談があれば、売り場に行って患者さんに合った商品を提案することもありました。ドラッグストアの薬剤師は幅広い知識が必要だと感じました」とインターンシップで気づいた点を話した。 一方、指導薬剤師の柏葉希奈美氏は「ドラッグストアでは衛生材料や介護用品だけでなく、介護保険の相談もあります。学生にはドラッグストアの特徴を理解し、地域住民の健康や暮らしをサポートしてほしいですね」と学生にメッセージを送る。 ドラッグストアには、医薬品や衛生材料、介護用品、ベビー用品、化粧品といったように病院や薬局にない商品が販売されている。「あらためて地域の人が安心して暮らすには欠かせない場所だと痛感しました」と学生は話してくれた。 9月には事後講義が行われ、それぞれの学生が研修した内容を報告し合い、自身の課題やドラッグストアの可能性、薬剤師の将来像についてディスカッションした。 ●インターンシップ受け入れ企業 ウエルシア薬局(株) (株)スギ薬局 (株)セキ薬品 (株)富士薬品 (株)マツモトキヨシ (株)龍生堂本店
- スギ薬局参画の「みんなで減 CO2(ゲンコツ)プロジェクト 2025」が始動、脱炭素行動を促進
株式会社スギ薬局を含む 15 社で構成される「チャレンジ・カーボンニュートラル・コンソーシアム(CCNC)」は、生活者の脱炭素意識と行動変容を促すことを目的とした「みんなで減 CO2(ゲンコツ)プロジェクト 2025」を開始した。同プロジェクトは、「教育啓発」と「販促購買」を連動させることで、持続可能な脱炭素社会の構築を目指すものである。 プロジェクト概要及び「エコラベルハンター2025」の実施 同プロジェクトは、株式会社日本総合研究所が主催し、大阪府、兵庫県、奈良県、京都府、横浜市の 2 府 2 県 1 政令市と協力し実施されている。対象は、同自治体内の小学校 4~6 年生約 53 万人及びその保護者である。 プロジェクトの注力施策の一つとして、学習キット及び自由研究コンテスト「エコラベルハンター2025」が実施される。これは、児童が家庭や店舗でエコラベルやCFP(カーボンフットプリント)を探索することで、環境配慮商品について学ぶ機会を提供するものである。 特設ウェブサイト は 7 月 2 日に公開されており、児童は探索成果を記録し可視化することが可能である。夏休み期間中には、発見したエコラベル・CFPの数を競う応募コンテストも開催され、脱炭素学習が促進される。 プロジェクトの全体像 販促キャンペーンとの連動による購買行動の促進 「エコラベルハンター2025」の取り組みと連動し、CCNC 参画企業によるキャンペーンも展開される。これは、学習内容を日常の購買行動に結びつけることを目的としている。 具体的には、株式会社万代の全 169 店舗でのマストバイキャンペーンに加え、スギ薬局が運営する「スギ薬局アプリ」を用いたクイズキャンペーンが実施される。これにより、生活者は脱炭素対応商品を「目利き」できる力を養い、購買行動の定着が図られる。 スギ薬局グループは、サステナビリティ経営の重要課題として「脱炭素社会の実現」を掲げている。同プロジェクトでは、「スギ薬局アプリ」を活用した環境教育クイズキャンペーンやアンケートの実証実験、さらに店舗と連携したワークショップの開催が予定されている。 スギ薬局は、これらの活動を通じて「脱炭素対応の目利き」ができる生活者を増加させ、自律的な脱炭素対応商品の市場構築を目指す。
- クオール薬局が「健康ハートの日2025 #血圧測ろうぜ!」キャンペーンに参画、地域住民の血圧測定を推進
「健康ハートの日2025」啓発ポスター 全国に保険薬局を展開するクオール株式会社は、日本心臓財団、日本循環器学会、日本循環器協会、日本AED財団の4団体が共催する「健康ハートの日2025 #血圧測ろうぜ!」キャンペーンへの参画を発表した。この取り組みを通じて、地域住民の循環器疾患予防に貢献することを目指す。 キャンペーンの背景とクオールの役割 「健康ハートの日」は、8月10日を「ハート(810)」と読む語呂合わせから、1985年に日本心臓財団が提唱したものである。毎年、この日を中心に心臓病や脳卒中などの循環器疾患の予防啓発活動が行われている。 クオールは本キャンペーンに参画し、血圧測定の重要性を広く周知することで、地域の健康増進に寄与する。全国に広がる薬局網を活用し、住民の健康をサポートする役割を担う。 クオール薬局での取り組み詳細 キャンペーン期間は2025年7月1日から8月31日まで。全国577店舗のクオール薬局で、以下の活動を実施する。 ・薬剤師による血圧に関する情報提供、血圧手帳の配布、健康相談、必要に応じて受診勧奨 ・啓発ポスターを掲示し、本キャンペーンを推進
- 【薬局四方山話】投票に行くべきか?
薬事政策研究所 田代健 1. 選挙の面倒臭さ 7月3日に参議院選挙が公示され、20日に投開票が行われる予定だ。 自分の一票で結果が変わるとは思えないという無力感の一方で、当選した候補は任期中の国会での全ての判断について有権者から白紙委任されたことになり全能と化すという選挙の仕組みは不条理だが、筆者自身は今のところ投票には必ず行くようにしている。その理由は主に2つある。 理由1:万が一、選挙の結果とんでもない政治が実現してしまった場合に、後になってから「あの時自分は何をしていたか」について後悔したくない(自分の経験上、後悔するはめになるのは「ちゃんと考えなかったから」という原因が多いので)。 理由2: 「一票を入れたところで何も変わらないから棄権してもいい」という判断の倫理的な妥当性をテストする古典的な方法が1つある。もしも全ての有権者が同じように判断をして棄権したら、社会は崩壊するだろう。したがって、この判断は妥当ではない。(このように「自分の判断や行為は普遍化できるかどうか?」を吟味して倫理的な妥当性をテストする方法を「定言命法」という。) 最近の欧米の選挙で起きている変化が日本でも起こると仮定すると、これからの10年間の選挙については、理由1が特に重要になってくるような予感がしている。 2. 今、欧米の選挙で起こっていること 読者の皆さんが生まれた頃、小泉政権は新自由主義的な立場から各方面で規制緩和と民営化を進めた。この方向性は今日まで一貫している、というよりもこれによって拡大した格差やグローバル化といった副作用への次の一手を与野党問わず誰も見つけられていない。これは日本に特有の現象ではなく、数十年前から、先進国の経済政策は新自由主義に収斂し始め、「政策による政権の選択」という仕組みが機能しなくなってきた。 新自由主義の下では、大半の有権者は「中産階級の没落」という不利益を被るのだが、政治家はその有権者たちに「あなたたちは被害者だ」と呼びかけ、少数派や特権階級(エスタブリッシュメント)といった「他者」を感情的に指弾すれば(これを「モラル・パニック」と呼ぶ)支持を集められるという手法がすでに常套手段となっている。その結果、従来の「リベラル-保守」「左-右」といった対立軸は意味を失い、例えば「世界のどこかで虐殺が行われていること」と「来月の米の値段」のどちらが大事かというような認識にもとづいて「誰を憎悪するか」が対立軸となってきているように見える。 3. 選挙以外の政治参加 ところで、政治に参加する方法は選挙だけではない。薬剤師としてということであれば、自治体の医療・福祉や公衆衛生に関する委員会に薬剤師会を通じて参加を求められることがあり、積極的に参加する扉は開かれている。特に、災害時の医療提供という点で薬剤師と行政との連携は年々強くなっている。もちろん、薬剤師という資格にかかわらず個人として行政に参加することも可能で、例えば筆者は厚生労働省が「厚生労働行政モニター」を募集しているのをたまたま見かけて応募し、1年間の期間中に何回か、課題となる政策について一市民として意見を寄せたことがある。薬剤師会もその1つだが、さまざまな組織や団体が政策を立案する官僚との直接の連携に力を入れており、場合によっては内閣が設置する諮問会議などに有識者としてのポジションを得ることで、選挙というプロセスを経ずに政治に参加している。 4. 最後に 皆さんは実務実習で薬局に行くと、「保険調剤を主な収入源としている以上は政治とは縁を切ることができない」などといわれるかもしれないが、聞き流してよい。まず、保険調剤制度を設計するために必要なのは明確なエビデンスであって、選挙での集票力によって患者が負担する薬代をコントロールしようという発想は不健全だ(患者から薬代について質問されて「選挙で頑張ったからです」と胸を張って答えられるだろうか)。次に、先述のように政治への参加の仕方は選挙以外にもいろいろある。3つめに、だからこそ保険調剤以外の収入を自分自身で開拓するための自由が大事なのだ。 三連休の中日という悪趣味なスケジュールにはなっているが、一票を大事にしてもらいたい。 参考図書 ・若松邦弘『わかりあえないイギリス 反エリートの現代政治』(岩波新書) ・渡邊啓貴『ルペンと極右ポピュリズムの時代:〈ヤヌス〉の二つの顔』(白水社) ・トマ・ピケティ, マイケル・サンデル, 岡本麻左子(訳)『平等について、いま話したいこと』(早川書房) ・デヴィッド・ハーヴェイ, 渡辺治 (監訳), 森田成也 (訳), 木下ちがや (訳), 大屋定晴 (訳), 中村好孝 (訳)『新自由主義—その歴史的展開と現在』(作品社)
- クオール薬局、全国117自治体で「クーリングシェルター」として開放へ
クーリングシェルターマーク クオールホールディングス株式会社の中核子会社であるクオール株式会社は、全国117の自治体と協定を締結し、全国310店舗のクオール薬局を「クーリングシェルター」として開放する。これは、深刻化する夏の気温上昇による熱中症リスクの軽減を目指す取り組みの一環である。 近年、夏の猛暑は深刻な社会問題となっており、特に高齢者や子どもにとって熱中症は命に関わるリスクが高い。総務省消防庁のデータによると、2024年の熱中症による救急搬送者は過去最多の97,578人に上っており、涼をとれる場所の確保が喫緊の課題となっている。 クオール薬局がクーリングシェルターとして指定されたことで、熱中症特別警戒アラートが発表された際には、地域住民は薬局を緊急避難場所として活用できる。クーリングシェルターとは、環境省が推奨する取り組みであり、熱中症特別警戒アラート発表時に誰でも無料で涼しく過ごせるよう自治体が指定した避難・休憩場所のことである。 この取り組みでは、以下のサービスが提供される。 冷房の効いた薬局の待合室の提供 ウォーターサーバーによる飲料水の無償提供(一部店舗で実施) 経口補水液や塩飴など、熱中症対策商品の取り揃え クオールは今後も対象店舗を拡大し、地域に密着したヘルスケアの実現に貢献していく。 クオール薬局のクーリングシェルター設置市町村については、 こちら
- 最先端研究施設でサイエンスを体験!3,700人が来場した「湘南アイパークフェスタ2025」
2025年5月24日、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)が一般公開され、「湘南アイパークフェスタ2025 -最先端研究施設で学ぶ・楽しむ・やってみる-」が盛況のうちに開催された。アイパークインスティチュート株式会社が主催する本イベントは今年で3回目を迎え、日本最大級のライフサイエンス研究拠点である湘南アイパークの魅力を広く一般に伝えることを目的としている。今年は過去最多となる3,700人が来場し、最先端のサイエンスに触れる貴重な一日となった。 新企画「学生研究発表会」に未来の研究者たちが集結 今回初めて開催された「湘南アイパーク学生研究発表会~集まれ未来の研究者!」では、高校生・大学生・大学院生から公募されたライフサイエンス分野の研究発表17組が登壇した。湘南アイパークに入居する14社・団体から22名の研究者がアドバイザーとして参加し、学生たちの研究内容や具体的な進め方について活発な質疑応答が行われた。参加した研究者からは「学会のような雰囲気で発表者のレベルが高く、刺激を受けた」という声が聞かれた。来場者からも「高校生の発表に驚きがあった」「学生たちのレベルの高い研究発表が聞けて、とても有意義だった」と好評を博した。 現役研究者が明かす「薬のトリビア」と21の体験ブース 「研究者トークショー」では、湘南アイパークの現役研究者が新薬の開発費用や期間などをクイズ形式で紹介・解説し、来場者からは「薬はいつからあるの?」「薬を飲みすぎるとどうなるの?」といった質問が次々と寄せられた。「薬を作るのがこんなに大変だと知らなかったので、勉強になった」といった感想も寄せられ、薬学研究への理解を深める機会となった。 また、毎年人気の入居企業・団体による「サイエンス体験ブース」は、約400メートルにわたる「ブロードウェイ」に21ものブースが所狭しと並んだ。白衣をまとってスポイトを握る小学生や、真剣な表情で研究者に質問する大人の姿が多く見られた。来場者からは「薬の研究職を目指している小学生の息子が、実際の研究員の方のお話が聞けて、とても満足していた」「各企業が魅力的なアイデアを出し合って準備してくれたことに感動した」といった声が寄せられ、出展企業からも「子供たちのきらきらした眼差しが印象的だった」といった感想が聞かれた。 イベント全体を通して、来場者からは「子供も研究に興味を持ったようで、将来につながる貴重な学びになった」「子供に体験学習させられるだけでなく親も専門家に直接質問することができ、有意義だった」といった声が多数寄せられた。アイパークインスティチュートは今後も、地域住民をはじめ幅広い層の人々が最先端のサイエンスに触れ、その魅力を身近に感じられる機会を創出していくとしている。 「湘南アイパークフェスタ2025」の動画はこちら: https://youtu.be/uzD-nMDiZ1o?si=3jfCuxzoDe84ZfQF
- 後悔しない就職活動をしよう
将来、どんな薬剤師になりたいですか?病院で患者さんのために働きたい、新薬開発に貢献したい、それとも新しい医療サービスを創り出したい。薬剤師の活躍の場は大きく広がっています。新卒として就職できるのは人生で一度きりです。新卒という大切な時期を有効に使い、自分にぴったりのキャリアを見つけよう。 答えてくれた人 株式会社NSS 取締役社長 寺本卓矢さん ―ここ数年の就職動向の傾向についてお教えください。 6年制薬学教育が臨床を意識したカリキュラムが中心になったことで、病院、薬局、ドラッグストアを選ぶ人が大半を占めています。特にここ10年で伸びているのがドラッグストアです。ドラッグストアの人気が高まった背景には、店舗数の増加に加え、OTC医薬品だけでなく保険調剤も行うという認知の変化、キャリアパスの多様化、大手ドラッグストアの規模や福利厚生の充実などが挙げられます。学生の中には大手企業は安定しているというイメージも持っている人もいます。大手企業が多いドラッグストアが選ばれるのもそういったことが関係しているかもしれせん。 一方、病院は減少傾向にあります。専門性を高めたいと思っている方にとっては最適な職場なのですが、奨学金の返済を意識している人は、給与面のところで選択肢から外す傾向が多いようです。最近では病院が病院薬剤師の不足を問題視し、資金貸与制度を導入している病院もあります。大学で勉強している間は病院がお金を貸与し、借りた学生は薬剤師の免許を取った後、一定期間その病院で働けば貸付金の返済が免除されるという制度です。また、大学も病院薬剤師を確保するために、地域の病院で勤務することを条件に入学する「地域枠」を設けています。これは修学期間一定の金額を貸与し、不足する地域の病院に行って一定期間勤務することに返還が免除されるというものです。今後の動向に注目したいところです。 そのほか目立ったところでは製薬企業やCROがあります。新薬メーカーなら、医薬品開発あるいは、医療者と医薬品についてディスカッションして医薬品の適正使用を推進する、ヘルスケア企業なら市場調査を通じて消費者のニーズを把握して新しい商品を開発する、CROなら治験を通じて医薬品の開発を支援するといった仕事に魅力を感じているようです。そのほか、狭き門ですが、厚生労働省や地方の公務員などもあります。ドラマや映画の影響で麻薬取締官や科学捜査研究所を目指す人もいます。 ごく少数ではありますが、従来の病院、薬局、ドラッグストア以外の職種を選択する学生も出てきています。SNSの発達により情報収集が容易になったことで、従来の王道ルート以外の選択肢を知る機会が増えたことが要因として考えられます。具体的には、電子カルテや医療系アプリの開発、化粧品開発、医療系コンサルタント、メディア関係、一般企業のコンサルタントなど、薬剤師免許を使わない就職を選ぶケースも見られます。薬学部が多く存在する都市部は薬剤師が充足傾向にありますので、今後このような傾向は増加する可能性があります。 ―就職活動はいつから始めたらいいでしょうか。 5年生の10から11月にかけて面接が始まり、薬局やドラッグストアではこの時期に内々定を出しています。そして内定受諾書を提出するのが6年の夏。早い人は5年生の1月頃には内々定をもらっているケースもあります。そう考えると、遅くとも4年生のうちからやった方がいいと思いますね。4年生の冬に薬学共用試験、4年生の終わりから5年生にかけて実務実習がありますから、余裕をもって取り組むのがいいでしょう。SNSで企業情報などを発信しているところもありますので、まずはそこからはじめるとよいでしょう。 インターンシップにはできる限り参加することをお勧めします。インターンシップは企業の人と多く話せるチャンスだからです。5年生は病院実習と薬局実習がありますが、薬局実習は配属先が偶然に左右されるため、大手、中小、地場チェーンなど、複数のインターンシップに参加することで、それぞれの特徴を理解し、自分に合った職場を見つけることが重要です。インターンシップは4年生から実施している企業もあり、5年生ではほぼ全ての企業が実施しています。募集情報はインターネットやSNS、大学のキャリア支援センターなどで公開されています。 OB・OG訪問は一般職種ではよく行われますが、薬学部では病院、ドラッグストア、薬局への就職ではあまり一般的ではありません。そのため、自主的に情報収集やインターンシップへの参加を行うことが重要になります。企業(製薬会社など)ではOB・OG訪問が盛んに行われています。 企業説明会は年間を通して開催されており、極端に言えば1年生からでも参加できますが、実際には3年生から参加する人が多く、メーンは5年生、一部4年生、ごく少数の3年生という構成です。合同企業説明会は1日で複数の企業の話を聞けることが大きなメリットです。 就職活動スケジュール一例 ―就職活動における自己分析の位置づけは。 自己分析は就職活動において非常に重要です。例えば、好きなこと、得意なこと、やりたいこと、この違いを整理すると、やりたいことが明確になります。自己分析を行うことで、自分に合った職場を選び、入社後のミスマッチを防ぐことができます。自己分析では、自分が将来どうなりたいのか、好きなことと得意なことのバランス、自分の価値観などを明確にします。自己分析を手伝ってくれる企業や大学のキャリア支援センターなども活用するといいでしょう。 自己分析とキャリアプランは密接につながっています。キャリアプランを立てる際は、将来のことばかりを見据えるのではなく、自分が何を大切にしたいのかという軸を明確にすることが重要です。自己分析と並行して業界研究を進めることで、自分が目指すべき方向性が見えてくるかもしれません。自己分析せずに就職すると、入社後の離職につながる可能性が高くなります。新卒薬剤師と他学部の大卒の3年以内の離職率はほぼ同じですが、薬剤師の場合は就職が容易な分、ミスマッチによる離職が多いと考えられます。私のところにも毎年、入社してから半年くらいで相談に来る人がいます。自分で選べる立場だからこそ自己分析は、真剣に取り組んでほしいと思います。 ―転職を視野に入れた就職活動はありでしょうか。 結論あまりおススメはできないです。さまざまな事情で転職してしまうのは仕方ないと思いますし、キャリアアップとしての転職は良いケースもあります。 しかし転職は以前に比べて難易度が上がっており、特に異業種への転職は非常に困難になっています。新卒で入社する企業でどれだけの経験とスキルを積めるかが、その後のキャリアに大きく影響します。例えばドラッグストアでOTC医薬品の販売のみを行ってきた場合、保険調剤の経験がないとみなされるため、転職が難しくなるケースがあります。そのため、目先の給与や福利厚生だけでなく、将来のキャリアを見据えた就職先選びが重要です。 長く勤められる、自身を成長させてくれる企業選びが就職活動の本質かもしれません。 ―就職活動がうまくいかない時の対処法は? 就職活動がうまくいかない時は、一人で抱え込まずに誰かに相談することが重要です。大学の研究室の先生、先輩、キャリア支援センター、就職情報サイト、就職支援サービスなど、相談できる窓口はたくさんあります。特に大学のキャリア支援センターは身近な相談先として積極的に活用するといいでしょう。 また、身近にさまざまな企業の採用担当もいるので、相談してみるのも良いかもしれません。身近な人にほど相談しにくいというケースもありますので、うまく周りを活用できるとよりスムーズに就職活動を進めることができると思います。直接弊社HPに問い合わせて相談してもらっても構いません(笑)。 ―薬学生にメッセージをお願いします。 新卒カードは一生に一度しか使えない貴重な機会です。就職活動には十分な時間をかけ、慎重に企業を選ぶことが重要です。安易に就職先を選んでしまうと、後悔する可能性があります。 実務実習や国家試験の勉強で忙しい時期ではありますが、低学年のうちからさまざまな業界を知るために積極的に行動することをお勧めします。情報収集だけでなく、実際に企業や施設を訪問し、職場環境を見学することも非常に重要です。社会人になってから他の企業や施設を見学する機会はほとんどないからです。 自己分析をしっかりと行い、自分に合った就職先を見つけてください。 寺本卓矢(てらもと・たくや)株式会社NSS 取締役社長 2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う 株式会社NSS 取締役社長 2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う。
- 【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】薬局・ドラッグストアで働く管理栄養士の教育の必要性と教育効果について
札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子 薬局やドラッグストア(DRGs)で働く管理栄養士のリカレント教育の必要性 薬局やDRGsで働く管理栄養士が、地域の健康ニーズを把握し、健康意識向上や生活習慣病予防、高齢者の健康サポート、栄養管理のデジタル化支援の展開に積極的に進むと医療サービスの需要が減少し、医療費削減に大きく貢献できる可能性がある。急速な高齢化と人口減少により、社会保障費の増加や労働力不足、医療・介護の負担増大といった顕在化している課題解決に尽くす使命があると考える。しかし、薬局やDRGsの管理栄養士の活動がその効果を発揮するには、現在なお多くの企業や店舗が課題解決のために模索している。その内容は、1.専門性の役割の認知度が低く、本来の栄養業務の役割が果たせていない。2.専門知識を更新する教育、研修が提供されていない。3.専門職としての待遇が報酬を含めて不十分で離職率が高い。4.栄養指導が健康保険適用範囲の制度外である。5.地域社会の健康増進への積極的な関与が不足している。などが考えられる。 薬局やDRGsの管理栄養士の専門性を有効にすることを困難にしている原因追究の研究調査を進め、栄養管理の専門家として医療現場や予防医療について地域に密着し、高齢者の健康予防と在宅療養の栄養サポートを提供する存在として活動することを推し進めなければならない。これまで本誌の誌面で、地域での貢献、薬剤師との連携、がんの栄養支援に活躍している薬局管理栄養士の好事例を紹介してきた。 今後はさらに、日本では確立されていない薬局・DRGsの管理栄養士独自の具体的な教育支援体制と活動施策の推進について構造化する必要があると考える。 薬局やDRGsの管理栄養士のリカレント教育の実施報告 管理栄養士リカレント教育として、大妻女子大学において第8回夏期研修会を2024年8月15(木)~8月18日(月)の連続5日間、ハイブリッド形式で開催した。Aコース:生活環 境を巡る予防・重症化予防の支援を考える、Bコース:地域資源・多職種協働・住宅訪問栄養食事指導を考える―の2コースを準備し、Aコースは、薬局やDRGsの管理栄養士、歯科の管理栄養士教育として構成した。講義内容は、DRGsの管理栄養士が顧客から受ける相談内容を収集、分析して構成した。フレイル予防、低栄養対策、摂食嚥下障害、認知症、生活習慣病、アレルギー疾患、がん栄養、妊産婦と乳幼児に加え、制度の理解、地域の診断と行政との連携について講義を行った。ICTツールを活用した栄養アセスメントも実施した。 本研修は、栄養ケアプロセスの理解の実習と実践的な調理実習によって、知識や技術を習得するための研修ではなく、これからさらにどう学ぶか、そして研究後に即戦力として地域に活躍、貢献できることを目的としている。 薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、コミュニケーション能力にある 地域住民の生活習慣の問題を解決するために、生活習慣を変えることができる。そして、予防医療に取り組むことで、少ない薬で病気を治すという医療経費削減に貢献する。予防は支える医療であり、そのためにはコミュニケーションによる、人々の安心感、分かり合えるということが重要である。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、笑顔で顧客に対応ができるという、非言語で「語る」という最も支持的なコミュニケーションを体得していることだと思う。 研修会の事例検討(実際の薬局での対応) 事例:70歳代 女性、相談内容「暑さによる食欲低下、外出する機会が減り、運動量が少なくなったことでさらに食欲が湧かないことが増えた。さっぱりとしためん類など簡単に済ませることが多い」 応対した管理栄養士の情報提供「めん類に加えてたんぱく質を補うような納豆や卵、豆腐などプラス1品を提案。外出の機会つくることで食欲を取り戻すことがあるので、暑い時間を避けて短時間の散歩だけでも気分転換に試すことを勧めた。体重計測の習慣がないため来店の際に測定して、様子を見ることを伝えた」 この事例から、低栄養の予防も重要であるが、まず食欲があり、おいしい食事をしてもらうための栄養アセスメントとそれに基づく、具体的な栄養支援を受講者が話し合った。 1.今回の栄養相談の対応について考えてみよう。 2.この顧客の時間軸を先に進めて、女性に起こりうることを想定してみよう。 生活の場(環境)、栄養状態、機能面、生活面、精神面 など 3.女性が望む暮らしを継続するために同職種で連携協働できること、すべきことを考えてみよう。 事例を通し、栄養相談の対応には、知識や技術そして経験が不足していること、さらにレベルアップできることを確認できた。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、生活習慣病予防及び介護予防の「予防」の段階から非言語で「語る」支持的なコミュニケーションによって良い援助者となれることを感じた。 薬局やDRGsで働く管理栄養士の教育効果について 日本においても薬局が医療提供の一環としての役割を強化していく中で、事例のように日常的な相談において、アセスメントによって地域で管理栄養士の貢献度を高め、地域の健康管理・予防医療において重要な役割を果たすと考える。 そのため、薬局やDRGsの管理栄養士の課題と貢献できるための要素や要因の関係性を捉える研究調査を実施し、問題の解決策のために本質的な管理栄養士の教育体制の構築が必要になると考える。
- 【薬局四方山話】薬局と市場原理
薬事政策研究所 田代健 I 市場原理による経営統合 この数年間、医療界で続いている医薬品の安定供給の問題については読者の皆さんもよくご存じだろう。 武見敬三厚生労働大臣は、7月4日に後発品メーカー13社の代表を集めた「後発医薬品の産業構造改革に向けた大臣要請」という場で、各品目につき5社程度に限定することが望ましい、という考えを述べた際に、「数量シェアや品目ともに多い企業は、再編、統合、適切な品目削除によるシェアの拡大や生産収益性の向上により、総合商社型の企業へ成長していくこと」を求めた。 製造業である製薬会社が物流に特化した総合商社のような企業に成長してしまってよいのか?など、意味のわからないポイントがいくつか散りばめることで主張をぼやかしてはいるが、大臣は製薬会社を統合して整理することを求めている。これに先んじて厚生労働省が5月22日付で公表した「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書では、具体的に「5社」といった数字は挙げていないが業界再編のモデルとして ・大きい企業が小さい企業を買収し、事業を統合する ・同じ大きさの企業が集まって新しいブランドにまとまる ・ファンドが複数の企業を買収し、事業をまとめる ・企業が事業を他の企業に譲渡する というパターンを列挙し、その前段階として ・複数の企業が集まって、それぞれのブランドを残したまま事業をまとめる ・事業丸ごとの譲渡の前に他社に製造委託し、事業をまとめる ・卸や薬局に働きかけて事業をまとめる といったパターンを挙げている。 このリストの特に前半は、さまざまな分野で市場が成熟してくるにつれて企業の統合が進んでいくケースを整理したもので、後発医薬品メーカーに限らず一般的に通用すると思われる。その一方で、企業と市場との関係にこれまでとは違った形も現れつつある。 例1) 香港のオアシス・マネジメントという投資ファンドがドラッグストア業界2位のツルハホールディングスの株式を取得したことが明らかになったのは、2022年の12月だった。翌23年6月に同ファンドは創業家の会長職の廃止などの要望を提出し、8月の株主総会で否決された。ここまで買収を通じて成長してきたツルハは自分が統合される側に回ることを模索し始め、ツルハに出資するイオンがオアシスのツルハ株を買い取る形で、同じイオン系列でドラッグストア業界1位のウェルシアホールディングスと2027年までに統合することになった。ここで登場したオアシス・マネジメントのような「アクティビスト」の介入がきっかけとなり、「ファンドが介在して企業を統合する」のではなく、「ファンドを排除するために企業が統合する」という形は珍しいようだ。 例2) アメリカの場合、特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company)というものが認められており、株式公開していない法人を形式上買収し、上場させるだけの目的で24カ月間限定のペーパーカンパニーを設立することができる。これによって幅広く(リスクを分散しつつ)資金を調達することができるということで、医療経営に変化をもたらすという議論があるようだ。 日本でも社会保障費の収入が頭打ちとなっている中でさらに支出を増やすことを考える場合に、同じような発想で市場を通じて国内外の投資家から資金を調達するという試みが始まる可能性は高いと筆者は考える。 経済学には「市場の失敗」という概念がある。市場経済にはバグのようなものがいくつかあり、自由な取引に任せていると問題が生じることが知られている。その一つが「寡占」問題で、先述のようにメーカーや小売が経営統合を進めていくと、いずれごく少数の企業が市場を支配するようになり、適正な価格を維持できなくなるとされている(それを防ぐために独占禁止法が用意されていて、公正取引委員会には強力な権限を与えられている)。機関投資家の自由な投資活動は、このような市場取引を濃縮したエッセンスのようなもので、今回のオアシスの介入は特に「寡占化」を加速しているように見える。 II 新しい「封建主義」の可能性 ところで、ここまで述べてきたような「市場経済」は機能不全を起こしていて、新しい「封建主義」に移行しつつある、という議論も出てきている。代表的な例は、ギリシャ人経済学者で財務大臣を務めた経歴をもつヤニス・バルファキスによる「資本主義からテクノ封建主義("technofeudalism”)へと移行しつつある」という指摘だ(他にも「封建主義」といった同様の概念が何人かの論者から提唱されている。ジョエル・コトキン著『新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告』という本も出ていて、同じ封建主義でもここで紹介しているのとは異なった展開を描いているようだ。「AIの登場により将来必要とされなくなる職業」のようなトピックに興味があれば、面白いかもしれない)。 日本を含む先進各国では (1) 経済の長期的な停滞 (2) 政府による富の富裕層への再分配 (3) 中間層の没落 といった変化から抜け出すことが難しくなっており、市場での自由な競争に基づいて社会が豊かに成長するという資本主義の体制は行き詰まっている((2)と(3)についてはブランコ・ミラノヴィッチという経済学者が指摘した「エレファント・カーブ」という現象がよく知られている。先進国の高所得層と発展途上国の低所得層の所得が急激に伸びた一方で、先進国の中間所得層の所得が伸び悩んでいるというものだ)。資本主義体制では、土地や工場(資本)を持つ資本家が労働者を使って商品を作り、販売して得た利益(資本の増加)をさらに投資に回すことで事業を拡大する。例えばベトナム製のジーンズと岡山県のジーンズとが価格や品質で競合し、技術革新や価格破壊が起こるという感じだ。一方、中世の封建主義体制では、王様(日本では将軍)が臣下に領地を与える代わりに臣下が忠誠を誓うというような特徴があるが、それはおいといて経済的な部分に注目すると、封建領主が土地を囲い込み、その領域内で活動する領民は地代(小作料)を封建領主に支払う。米沢藩の米農家と加賀藩の米農家とが競合することがないようなものだ(ただしそれぞれの米を江戸の市場に持ち込めば、競争が始まる)。GA[M]FAの各プラットフォームではクラウド上の巨大なデータベースが囲い込まれ、実質的な「領地」とみなすことができる。それぞれのサービスが競合することはなく、さまざまな企業はそのプラットフォームの中で「地代」を払いながらサービスを提供する。それぞれの企業は他社のプラットフォームを利用することはできない(アンドロイドOSのスマホユーザーはiPhoneのアプリを使うことができない。逆も同様)。iPhoneアプリの開発者はApp Storeに登録するためにAppleに「地代」を支払う。また、日本医師会がgoogleの口コミの削除をめぐって提訴したように、データベースの当事者自身ですらもその内容を管理することができず、さらには検索エンジンの上位に表示されることを目指すビジネスが存在するというように、データベースがかなり強力な実体としての位置を占めるようになっている。 皆さんが薬局で実務実習を受ける際には、パソコンやタブレットが何台稼働しているかを数えてみてもらいたい。細々した作業の一つ一つに端末が必要とされ、処方箋データだけがかろうじて標準フォーマットで一方通行で送信されるが、残りはバラバラだ。これが薬局における「医療DX」の現状で、さまざまな事業者が群がっているが、これからシステムの統合が進み、同時に薬剤師業務も整理されてくるだろう(そして薬剤師の仕事は患者や医薬品と向かい合っている時間よりも液晶ディスプレイを凝視している時間の長さによって「評価」されることになるかもしれない)。その果てに残るシステムは、おそらくGA[M]FAと、もしかしたらTikTokやLINEのようなプラットフォームの上で稼働することになると思われる。 Amazonファーマシーを例にとってみよう。薬剤師が話題にする際には参加薬局の採算性に注目しがちだが、大きな動きとしてみた場合には、これまでは大学病院などの正門の近くやあるいは敷地内といったリアルな「土地」を巡って大小の資本が競争していたのが、Amazonファーマシーの場合にはAmazonの液晶画面の中での競争となる。その競争のルールを決めるのは他でもないAmazonであるという点が、ポイントとなる。 III 最後に 今から100年前にもロシア革命(1917年)や大恐慌(1929年)などの世界的な混乱が生じたが、そこからジョン・メイナード・ケインズによるマクロ経済学の概念が登場し(1936年)、第二次世界大戦や冷戦を経つつも資本主義は命脈をつなぐことができた。今回も、「自由な市場」というものが後退し、仮に封建主義的な市場の要素が強くなってくるとしても、資本主義が終わるというよりはむしろバージョンアップしていくような気がする。おそらく皆さんが50歳前後になる頃には、今では想像もつかないような財政目標や経済的な指標によって医療やビジネスが動いていくと筆者は期待している。 投資家の基礎用語 【ファンダメンタルズ】投資家は、株式市場に上場している企業の決算情報などを検討し、事業の内容に将来性を感じ「この会社の株に投資したい」と判断すれば株式を買う。このような人が増えればその企業の株価は上昇するが、逆に「この会社の株は売ってしまおう」と判断する人が増えれば株価は低下する。このような企業の実績の判断材料となる指標を「ファンダメンタルズ」という。 【株価純資産倍率(PBR)】会社丸ごとの価値と株価とのバランスを評価する指標で、1以上を保つことが望ましい(会社の資産を全部換金して株主に配当してしまう方が株主にとっては得ということになってしまうため)。『日経新聞』のサイトでは業種別のPBRの上位ランキングと下位ランキングを見ることもできる。 【アクティビスト(モノ言う投資家)】投資ファンドの中には、ファンダメンタルズを見るのではなくPBRの低さなどの割安感に注目して株を買い、株主として経営陣の刷新や事業再編などの要望をし、株価を上げた後で売る、というビジネスモデルがある。 読者の皆さんも、興味のある企業がもし株式を上場しているようなら、ファンダメンタルズやPBRなどの指標を投資家の目線でじっくり吟味してみると面白い発見があるかもしれない。 市場の失敗 市場の失敗には寡占の問題以外にも 【情報の非対称性】 売り手が情報を多く持っていて買い手が情報を持っていない状態。例えば中古車販売市場で売り手が欠陥のある中古車を販売して買い手がその情報を知ることができない場合、買い手は最初から欠陥のある中古車をつかまされると疑ってかかり、安くて低品質な中古車しか買わなくなり、値段もそれなりに高い高品質な中古車が売れ残るようになる。医療においては、医療提供者と患者との間の情報の格差が大きいことに加えて患者側の需要の切迫度が高いため、取り引きが医療側に有利になっている(自動車の需要が供給を大きく上回っていれば、低品質で高価格な中古車の疑いがあっても買わざるを得ない)。 【市場の外部性】 工場で製品を作る過程で大気や河川を汚染したまま放置している場合などのように、本来売り手が負担して価格形成に含まれるべきコストが取りこぼされる状態。市場に参加していない人たちが不利益を被り、売り手は過剰に利益を得ることができてしまう。卑近な例では、感染症にかかった従業員が無理に出勤して職場でウィルスを拡散させてしまった場合、その職場に生じた損失は最初の従業員に負わせることはできない。このような事態を防ぐために、「5日間は自宅療養」のようなルールを公共で作る必要がある。 【フリーライダーの存在】 企業が経済活動を行う際に利用する公共のインフラ(例えば道路)の維持費などを分担する際に、負担した人と負担しなかった人とを区別することが難しい場合、負担しない人ばかりになってしまう可能性がある。例えばワクチンの接種者が70%で集団免疫が成立するという場合、誰もが副反応を恐れて接種しなければ集団免疫が成立しない。などが知られており、政府の介入が必要とされている。 ちなみに、政府に任せるとうまくいかなくなるという「政府の失敗」という概念もある。興味のある人は調べてみよう。
- 【一日一笑】最初から変更してくれれば良かったのに
医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 薬剤師冥利に尽きるうれしい言葉を受け取り、薬剤師としてちょっと鼻が高くなる…。ルンルンである。しかし、毎回初めてのよう。そこはちょっと待て。こういった場合には、認知機能の低下を疑い、クリニックや病院にトレーシングレポート (保険薬局の薬剤師が得た情報を処方医に、即時性・緊急性は低いものの、処方医に伝える必要があると薬局薬剤師が判断した場合に作成し、情報提供するもの) を用いて、認知症のテストを勧めてみるのも薬剤師としての重要な仕事である。 認知症を疑うポイントとしては、よく言われるのが、財布の小銭の量があまりにも多く、常にお札で支払う。あるいは、季節にそぐわない服装などいろいろある。そのため、自身でポイントを確認しておき、患者さんと向き合う際には少しでも疑わしいと感じた際にはなるべく迅速に対応できるよう心掛けている。 薬がなーい!!! 血圧の薬、気管支ぜんそくの薬、咳止めなどなど、もうすでに何が通常通り出荷されていて、何の流通が止まっているのかを認識するのも大変なほど。医療用医薬品の出荷調製品(医薬品の供給が不安定になること)については、メーカーなどから直接伝えられるものや、メーカーHPなどを自身で調べる、SNSなどで他の薬剤師が発信しているものでも確認。しかし、出荷調製品であると発表されていないものでも実際に注文してみると入ってこないという商品もある。 通常、処方箋を患者さんから受け取った際には処方監査を行い、お薬手帳等を確認し調剤を始めていたが、在庫がない薬が書かれている場合、すんなりと調剤を進めることはできず、卸への出荷状況の確認、近隣薬局への小分け依頼による薬の調達。どうしても入手できない場合は、医師に対して処方薬の変更の依頼をする。処方薬の変更依頼に関しては、現在の状況で対応可能な薬剤の提示が必須となるため、代替案の提示を行うことが重要となる。 医師に提案を行うと薬不足があまり騒がれていない頃は、あまり状況を理解してもらえず、「変更はしませんので、持っている薬局に行ってもらってください」と言われてしまうことも珍しいことではなかった。 この場合、処方箋をつらそうな患者さんに返却し、薬の有無の確認を行った薬局名を伝え、それ以外の薬局に行くしかないと伝えることくらいしかできない。 処方箋を返却した患者さんからは、後日「あの後数時間探し回ったけど、どこにもなくて、多くの薬局から変更依頼があったみたいで、何軒か行ったところでしょうがなく先生が処方薬の変更をして薬をもらえましたけど、最初からそうしてくれれば良かったのに」と愚痴をこぼす患者さん。 現在も医薬品の供給はかなり厳しい状況が続いている。卸業者の方々も薬局からの問い合わせが多く非常に仕事量が増えていると思われる。ある卸の方は、若い頃先輩と飲みに行くと「昔は製薬業界の景気も良くて本当にいい時代だったよ」なんて昔話をよく聞かされて、昔話をされてもといつも思っていたようだが、最近では、後輩と飲みに行くと自分でも「昔は薬の流通がしっかりしていてね、今みたいに薬が手に入らないことなんて薬局に連絡しないでよくて、本当にいい時代だったよ」なんて、昔話をするようになってしまったと話されていた。 昔話が始まった時点で右から左へ聞き流しがちな私だが、今回の昔話はいつかきっと…という、若い人へのエールに感じた。この状況しか経験していない入社3年目までの方々は、一体どんな思いで仕事と向き合っていただろう…。いつかまた安定供給される日が来ると信じて。ただし、収束した後の「昔は、薬が手に入らない時代があって苦労したよ、君たちは当たり前に手に入っていいね」のタイプの昔話を口に出すのはNGで。 現在は医師も薬剤の不足を理解している方々が多い。今の薬剤師に求められる専門家としての意見!薬が手に入らないなら薬剤師は何をすればいい?代替案を探し、薬剤変更の場合、用量変更が必要?変更してもらうとしたら飲み合わせは?薬剤間の特性や違いは?さらにコストとベネフィットは? 医師が普段使い慣れている薬から他剤へ変更してもらうためのサポート、薬のプロとしての薬剤師の視点。今の医療を支えるために薬剤師の力を発揮するチャンスだ!!! 公園前薬局
- 【アルフレッサヘルスケア】「ライフサポートフェア2025」で帝京平成大学が健康茶房を開催
アルフレッサヘルスケア株式会社は、2月20~21日かけて東京都立産業貿易センター浜松町館において「ライフサポートフェア2025」を開催した。同フェアは医療・介護・健康に関わる幅広い商品やサービスが集まる展示会で、生活習慣病の予防を促進する提案や、食品売場の進化による差別化戦略を具体的な施策として紹介した。 今回は大学として初めて帝京平成大学が出展。同大学地域連携部となかのヘルスケアコミュニティが協働で健康茶房を開催した。健康茶房は、地域住民の健康増進を目的とした取り組みで、薬学生が中心となり、健康茶を飲みながら健康に関する情報を発信したり、参加者同士の交流を深める場を提供したりしている。そのほか地域連携部では、中野区の福祉施設へのボランティア活動や、子供を対象にした講座も開催している。 今回の出展は、地域連携部の顧問を務める薬学部教授の小原道子氏が同社に健康茶房を紹介したところ、健康サポート薬局の事例として紹介してほしいという打診があり実現したという。参加した学生スタッフからは「普段の健康茶房とは違い、医療関係者や企業の人が多く、緊張した」「さまざまな企業が出展しているブースを見ることができ、勉強になった」という声があった。同社代表取締役社長の西田誠氏は「フェアの参加を通して、新たな気づきを得てほしい。将来的には学生とコラボして商品開発にも挑戦したい」と今後の展望を話してくれた。 健康茶房のドリンクメニュー
- 【日本薬学生連盟】第26回年会を開催 緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割を議論
3月17日、第26回年会「薬学生の集い」が開催された。この年会は、薬学生の団体である一般社団法人日本薬学生連盟が主催する年に一度の大型イベントである。今年のテーマは「YELL」で、「参加者を応援したい、年会を経て前に進んでいってほしい」という思いが込められている。OTC化に向けた緊急避妊薬の現状に関する講演や、お薬カードゲーム、お土産交換会など、参加者一人ひとりが主体的に学び、交流を深めるための多彩な企画が用意された。 オープニングでは、年会部長の坂田実優さん(大阪医科薬科大学4年)がイベントの概要を説明した。続いて、会長の馬越春莉さん(東京薬科大学3年)が団体紹介を行い、「積極的に参加して、明日への一歩を踏み出すための糧にしてください」と参加者に呼びかけた。 メーン企画では、SRHR Pharmacy Project代表の鈴木怜那氏が登壇し、緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割について解説した。鈴木氏は、緊急避妊薬のアクセスが日本において非常に困難であることを指摘し、その背景には、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)という概念の理解不足があることを説明した。 私たちは日々の生活の中で、知らず知らずのうちに他者の尊厳を傷つけていることがある。 鈴木氏 特に、結婚や出産といったプライベートな領域においては、無意識の言葉や行動が相手を深く傷つけていることもある。このような現状に対し、近年注目されているのがSRHRという概念だ。SRHRの考え方では、自分の体は自分のものとして、プライバシーや自己決定が尊重されるべきであるとされている。例えば、子供を持つか持たないか、いつ、何人持つかを自分自身で決められる権利などが含まれる。しかし、日本ではまだこの考え方が十分に浸透しておらず、「いつ結婚するの?」「子供はまだ?」といった質問が、相手の尊厳を傷つける可能性があるという認識が低いのが現状だ。鈴木氏は「特に緊急避妊薬に関しては、女性が自分で決定することへのハードルが高く、SRHRの考え方が十分に反映されているとは言えない」と指摘する。日本では緊急避妊薬の悪用・乱用を懸念する声も根強く、薬剤師の目の前での服用を義務付ける案も出ている。 緊急避妊薬は、①排卵を遅らせることで精子と出会うタイミングをずらす②受精卵が着床しにくいよう子宮内膜を薄くする③精子が子宮内に入りにくくする―という主に3つの仕組みで妊娠を防ぐ薬であり、中絶薬とは異なる。また、性暴力被害者のみが使用する薬ではなく、避妊に失敗したあらゆる人が使用する可能性がある。 薬剤師は、薬局やドラッグストアで妊娠検査薬や低用量ピルなど、SRHRに関連する製品を扱う機会が多くある。鈴木氏は「SRHRの考え方を理解することで、相手の不安を解消して、適切な情報や選択肢を提供し、自己決定をサポートすることができる」と述べた。 さらに、日本で認められている避妊法が少ない現状や、性教育の遅れについても触れ、薬剤師が正しい知識を提供し、相談しやすい環境をつくることが求められると訴えた。そして薬以外のことで相談があった場合は、一人で抱え込むのではなく、地域の専門機関につなげることも重要だと指摘した。最後に鈴木氏は「緊急避妊薬に関する正しい知識を身につけ、偏見を持たずに患者と向き合ってほしい」と呼びかけた。 講演後には、参加者が事例をもとにグループワークを行い、緊急避妊薬に関する理解を深めた。 グループワークの様子 午後に行われたお薬カードゲームの様子。病気(例:関節リウマチ)に対する治療薬(例:メトトレキサート)を探す(あるいは逆)、神経衰弱感覚で遊ぶカードゲーム。楽しみながら医薬品や病気に関する知識を深めた。 参加者に配布された資料














