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- 第8回 薬局団体連絡協議会シンポジウム開催のお知らせ
薬局団体連絡協議会は、薬局が薬物治療や地域のヘルスケアを担うインフラとして貢献することを目指し、今年もシンポジウムを開催する。今年のメインテーマは「OTC 類似薬は、薬局を変える!」〜国民「負担」「不安」に向き合う〜である。 開催概要 日時: 2026年11月1日(日) 13:00〜17:00 (開場12:30) 会場: 帝京平成大学 中野キャンパス(東京都中野区中野4-21-2) 大会長: 山村 真一氏(一般社団法人保険薬局経営者連合会 会長) 参加費: 会員 4,000円 / 一般 7,000円 / 学生 無料 申込方法: Peatix申込フォームより申し込む(定員になり次第締め切りとなる)。 申込URL: https://2026110lydrk.peatix.com/ プログラムの見どころ 特別講演 「OTC 類似薬の保険給付見直しを、保険者はどう見るか」〜地域の薬局に期待すること〜 講師:幸野庄司氏(健康保険組合連合会 参与) 各団体活動報告 ・「いわゆる OTC 類似薬問題への提言」 (次世代薬局研究会) ・「ドイツの医療制度改革の経緯から、OTC 類似薬を考える」 (日本コミュニティファーマシー協会) ・「OTC 類似薬の見直しから始まる薬局の機能転換」 (保険薬局経営者連合会) 基調講演・問題提起 「OTC 類似薬の改革の肝は、薬局薬剤師の活躍推進」 講師:成瀬道紀氏(日本総合研究所調査部 上席主任研究員) パネルディスカッション 「OTC 類似薬は、薬局を変える! 〜国民の『負担』『不安』に向き合う〜」 登壇者:幸野庄司氏、成瀬道紀氏、田中俊幸氏(日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会)ほか各団体代表 【お問合せ先】 薬局団体連絡協議会 事務局(一般社団法人保険薬局経営者連合会内) TEL: 044-712-5881 mail: info@yakukeiren.com
- 薬剤師100人カイギついに完結 薬剤師の未来に繋がるメッセージが込められた最終回
8月22日、薬剤師がそれぞれ自身のキャリアを語るトークイベント「薬剤師100人カイギ」が最終回を迎えた。「100人カイギ」とは様々な地域、業種などコミュニティごとに生き方や仕事ぶりを語る場で、演者が100名に達したら解散するというルールとなっている。薬剤師100人カイギも1回につき5人が登壇する形式で2023年の5月にスタートしてからほぼ隔月ペースで開催され、20回目でちょうど100人目に到達。ハイブリッドで開催された今回は、配信会場となった川崎市のUvance Innovation Studioに有終の美を見届けようと参集したオーディエンスが見守る中、薬学生から国会議員まで多彩な5名によるプレゼンテーションが行われた。イベントを当初からスポンサーとして支えてきたファルメディコ株式会社、株式会社スパーテルの代表も駆け付けた。 小林碧悧さん 新しい治療を患者さんに届く形に設計する人/臨床開発支援コーディネーター ~新しい治療を患者さんに届く形に設計する人~ 医薬品開発のプロセスとそこに横たわる課題についても分かりやすく解説してくれた。 立場の違いとジレンマ:フリーランスという働き方の選択 小林碧悧さんは、製薬企業やCRO、再生医療ベンチャーなどでの20年以上にわたる臨床開発の経験を通し、薬の開発について目指すゴールは同じでも、立場や組織によって重要視する点や優先順位にズレが生じることに課題を感じていました。例えば、スピードやコストを重視するアカデミア・ベンチャー側と、法規制の中で慎重かつ確実に業務を進めたいCRO(開発業務受託機関)側との間には温度差やコミュニケーションの壁が存在していました。そうした組織の枠を超えて専門家同士を繋ぎ、優先順位や進め方を調整するコーディネーターの必要性を痛感したことから、組織に縛られずに必要な場面でプロジェクトに参加できるフリーランスという働き方を選びました。 薬が患者さんに届くまで:臨床開発の全体像とプロセス 新薬が医療現場で使われるようになるまでには、基礎研究、非臨床試験、臨床試験、そして承認申請・審査という長いプロセスを経ており、一般的に9年から17年ほどの歳月がかかります。その中で臨床試験は、患者さんの協力のもと、厚生労働省やPMDA、製薬企業、医療機関、治験審査委員会など、多様な組織や専門家が関わって進められます。また、CROやSMO(治験施設支援機関)といった専門組織も運営を支えています。このように、医薬品は多くの人々の専門的な役割やバトンリレーによって初めて患者さんのもとに届けられる仕組みとなっています。 チームを動かすコミュニケーションと今後の展望 複数の組織やプロジェクトに関わる中では、それぞれの専門家が大切にしている思いを最初に丁寧にヒアリングし、プロジェクトの優先順位を共有することが重視されています。また、専門用語をそのまま使わずに分かりやすい言葉に置き換えるといった基本的なコミュニケーションの積み重ねが、チームの雰囲気や協力体制を大きく変えるポイントとなります。小林さんは、開発のド真ん中を単独で進めるのとは異なるアプローチとして、組織の垣根を越えて人と人を繋ぐコーディネーター役を務めることで、新しい治療を患者さんに届けるための新たなバトンパスの形を体現しています。 鈴木憲子さん ユースワーカー×薬学生/任意団体クレヨン 代表/一般社団法人日本薬学生連盟 副会長外務理事 鈴木憲子さんはこれまでの薬剤師100人カイギの運営も務め司会としても活躍した。 薬学部進学の動機と「日本薬学生連盟」での活動 母親が薬剤師だったこともあり、高校生の頃は「特にやりたいこともないから薬学部でいいか」という動機でなんとなく薬学部に進学した、と鈴木憲子さんは語りますが、現在は様々な課外活動に積極的に挑戦しています。その一つが「薬学生に新しい価値を」をモットーとする日本薬学生連盟での活動です。ここでは副会長兼外務理事を務め、アロマを使ったワークショップや献血啓発、海外からの交換留学制度を通じた交流プログラムなどを企画・運営しています。同じ薬学生同士が出会うことで「1人ではできなかったことに友達となら一緒に挑戦できる」という場を知ってもらうことに力を入れています。 「クレヨン」の立ち上げと薬育・居場所づくり 2025年3月には任意団体「クレヨン」を立ち上げ、「きっかけや安心相談により自分らしさを発見できる社会」を目指して2つの取組みを展開しています。1つ目は、茶葉からのカフェイン抽出やクラフトコーラ作りなどを通じて楽しみながら薬学に触れられる「薬育の出張授業」であり、2つ目は中高生が「タコパをしたい」といった声を大人たちが本気で実現する「居場所づくり」です。中高生が自分の興味関心を見つけるきっかけ作りや、自分の声や1票が周囲を動かすことができる政治への関心を持つことなどを広めています。 「薬学×自分のやりたいこと」で可能性を広げる生き方 将来の進路について当初は「病院や薬局のしかない」と思い込んでいた鈴木さんですが、周囲の人から「(薬剤師であっても)なんでもやっちゃえばいい、すごいアイデンティティだよ」と言われたことをきっかけに、卒業後の進路にとらわれず薬学の専門性をどう使うかを主体的に考えるようになりました。中学生の頃に合唱コンクールの指揮者をためらって後悔した経験が行動力の源になっており、「後悔したくない」という思いから課外活動に飛び込んでいます。今後は就職活動を控える中でも、薬学という専門性を武器に、自分や誰かの可能性を広げる挑戦を続けていく強い意志を見せてくれました。 狭間研至さん 薬局3.0を実践する医師/ファルメディコ株式会社 代表取締役社長 「ぼく薬剤師じゃないんですけど良かったのかな」と前置きしてから講演スタート。 「薬局が変わると地域医療が変わる」という信念と挑戦 医師として31年の外科経験を持ち、大阪で薬局を11店舗経営する狭間研至さんは、「薬局が変わると地域医療が変わる」という一貫した信念のもと活動してきました。薬局を単なる「薬の払い出し窓口」の場から変革するため、これまでに数々のタブーに挑戦してきました。2006年頃から薬剤師によるバイタルサインの活用や服薬後のアセスメント・医師へのフィードバックの重要性を提唱し、法改正や制度改革を動かしてきました。また、調剤業務の一部外部委託など効率化を進め、薬剤師が本来やるべき「対人業務」の充実を目指しています。 不満や不具合をチャンスに変える行動力とフォロワーの存在 新しい取り組みを進める中では「薬剤師が人の体に触れてはいけない」「調剤は薬剤師のみが行う」といった既成概念や周囲からの反対、さらには新規店舗の撤退といった数々の失敗や壁にも直面してきました。しかし、日常の不具合や不平不満を言うのではなく、“暗いくらいというよりも進んで明かりをつけましょう”と、ビジネスチャンスや改善への原動力に変えてきました。また、こうした挑戦を続ける中で「いかがわしくあれ」(©孫正義)の精神で、タブーを恐れず標準化していくことが大切であり、自分をリーダーにしてくれたのは、面白がってついてきてくれた多くのフォロワーの存在であったと振り返っています。 医療の原点を思い出し、薬剤師の専門性を活かす 終わりに狭間氏は、仕事や教育の場において「何のために医療の道を志したのか」という原点に立ち返ることの大切さを語りました。「薬剤師だから○○できない」、と決めつけず、目の前の困っている患者を助けたいという思いを胸に、やりたいことややるべきことに積極的に取り組む姿勢が求められると言いました。薬剤師が自身の専門性を最大限に活かし、医療の真ん中に入って社会を変えていくことへの強い期待を込めました。 とかしきなおみさん 「薬剤師こそ医療の中心に!」薬剤師出身の衆議院議員/薬剤師/衆議院議員 とかしきなおみさんはリモートでプレゼン。かりゆしウェアで登場した。 資生堂から政治家への転身と街づくりへの想い 昭和大学を卒業後、資生堂に勤務したとかしきなおみさんは、「より多くの人を効率よく幸せにする仕事は何か」を考え抜いた末に政治家を目指すことを決意しました。東京の杉並区議会議員を経て衆議院議員となり、厚生労働副大臣や政務官などを歴任してきました。杉並区の商店街活性化に取り組んだ経験から、行政の補助を待つのではなく住民自身の「やる気を引き出すこと」が街づくりにおいて最も重要であると学びました。その後、大阪の吹田・摂津市にまたがるエリアで、国立循環器病研究センターや国立健康・栄養研究所を中心とした「健康をテーマにした街づくり=健都」を手掛け、健康産業の集積地づくりを推進しています。 国会議員として取り組む社会保障制度の刷新と国際連携 超高齢社会における医療費高騰や、1回数千万円にのぼる高額な先端医療(再生医療など)の普及に対応するため、現在の社会保障制度の刷新が不可欠であると訴えています。日本が超高齢社会の最先端を走る国として、先進国各国と医療・社会保障制度を連携・共有しながら、経済安全保障上の強固な枠組みを作っていくことの重要性を指摘しています。また、薬が持つ役割は世界的にますます大きくなっており、グローバルな視点で創薬や医療の仕組みを構築していく必要があると語りました。 薬剤師の専門性を活かした「攻めの予防医療」と今後の展望 これからの薬剤師は、薬を渡すだけでなく、患者のライフスタイルや価値観に合わせた健康指導やカウンセリングを行い、健康管理を地域の医療として定着させていく役割が求められています。今年度の骨太方針にも盛り込まれた象徴的な「肥満対策」を切り口として、薬剤師が専門知識を発揮できる環境づくりや新しいツールの開発に取り組んでいます。現場の薬剤師や多様なプレイヤーが連携し、未来は自らの手で勝ち取っていくものだという、強い挑戦の姿勢を持ち続けることの大切さを訴えました。 橋本昌子さん 医療と介護で人・地域・未来を育てる女性経営者/てまりグループ代表 栄えある100人目を飾った橋本昌子さんはスポンサーとしてもイベントを支えてきた。 起業の背景と「薬局×介護」による地域貢献 石川県珠洲市出身の橋本昌子さんは、病院や薬局で20年間薬剤師として勤務したのち、40代で乳がんを経験したことなどを契機に「命には限りがある、やりたいことはやろう」と決意し、2008年に薬局を起業しました。その後、高齢社会における「高齢者が安心して過ごせる場所や看取りの場」の必要性を痛感し、有料老人ホームなどの福祉事業を立ち上げました。薬局と介護事業を掛け合わせることで、認知症ケアや緩和ケア、ターミナルケアに対応し、その人らしさを尊重しながら最期まで自分らしい暮らしを継続できる地域ぐるみの支援を実現しています。 組織急拡大の壁と「ベクトル合わせ」のチームづくり 老人ホームの開設等で社員数が一気に増加した際、マニュアルの徹底不足や伝達系統の不全といった組織の壁に直面しました。これを乗り越えるため、会社の判断基準となる「てまりバリュープロジェクト」を立ち上げ、「誠実さ・思いやり・人への敬意」などの価値観を従業員全員で共有する取り組みを進めました。また、中期経営計画を策定して会社の将来像や数値目標(社員数や売上)を「見える化」し、社員の不安を解消するとともに、同じ方向に向かって進む「ベクトル合わせ」の重要性を実践し続けています。 社長の器の成長と世界を見据えた挑戦 会社は社長の器以上に大きくならないという思いから、自身の人間力を高めるため、あらゆる「頼まれ事は試され事」と捉えて積極的に引き受けてきました。現在では従業員数360名を超える規模に成長し、国内だけでなく台湾の薬局グループとの資本提携やモンゴルでの合弁会社設立、インドでの介護事業プロジェクトなど、グローバルな展開にも挑戦しています。医療・介護の本質は「その人が幸せに生きるために提供するもの」であると語り、ピンチをチャンスに変えて思い描く未来を実現し続ける大切さを訴えました。 橋本昌子さんのプレゼンをもって「薬剤師100人カイギ」は完了し、規定に基づき解散した。 >薬剤師100人カイギ
- 【神戸学院大学】薬学生が育てるハーブの魅力と社会貢献の輪——10月3日、御影クラッセでポプリ作り体験とブレンドティー販売を実施
神戸学院大学薬学部の学生が休耕田を活用して栽培したハーブを用い、ハーブの魅力や有用性を伝えるイベントを2026年10月3日に御影クラッセにて開催する。 同イベントでは、学生が考案したブレンドティーの販売や試飲に加え、自分だけの香りを持ち帰ることができるポプリ作りのワークショップが実施される。 ポプリワークショップ 開催概要 エコノバワークショップ「神戸学院大学薬学部 × Carbon herb farm 薬学生と楽しむ 自家栽培ハーブのポプリ作り」 日時:2026年10月3日(土) 会場:御影クラッセ(兵庫県神戸市東灘区御影中町3-2-1) 主催・協力:神戸学院大学薬学部 × Carbon herb farm プログラム詳細 自家栽培ハーブのオリジナルポプリ作り(事前予約制) 数種類のハーブを自由にブレンドし、自分好みのポプリを作成する体験型ワークショップである。ハーブの有用性や休耕田を活用した農業支援の取り組みについても詳しく紹介される。 時間:全4回(各回約30分) ①10:30~ / ②11:30~ / ③13:00~ / ④14:00~ 参加費:無料 対象:高校生以上 定員:各回6人 申込方法:専用申込フォームより応募(抽選制)。事前予約で枠に空きがある場合のみ、当日に整理券が配布される。 当選発表:9月29日(火)までにメールにて通知 ハーブティーの販売・試飲(予約不要) 薬学部4年生の大西花歩さんが栽培・開発に携わったオリジナルブレンドティー等の販売および試飲を実施する。事前予約不要で誰でも気軽に立ち寄ることが可能である。 過去のイベントの様子 問い合わせ先 担当:神戸学院大学 社会連携グループ(担当:瀧口) 電話番号:078-974-6105(受付時間:平日 9:30~11:30 / 13:00~17:00) メール:renkei_info@j.kobegakuin.ac.jp
- 薬剤師の自己注射薬指導を支援する資料の開発と評価:北里大学の江渡恵里奈グレースさんが日本社会薬学会で発表
江渡さん 近年、バイオ医薬品や自己注射薬の対象となる薬剤が急増している。しかし、薬局における処方箋の取り扱い経験や関連資材の整備状況にはバラつきがあり、薬剤師が基本的な手技指導を行う一方で、患者からは手技・保管・廃棄といった具体的な質問が多く寄せられているのが現状である。こうした背景から、北里大学薬学部地域医療薬学らの研究グループは、日本社会薬学会第44年会において、薬剤師の調剤・処方監査・服薬指導を支援する資料の作成とその有用性についての研究を発表した。この日本社会薬学会第44年会の場において、実際にポスター発表を務めたのは、北里大学薬学部6年の江渡恵里奈グレースさんである。 研究のモデル薬剤として選定された「テリボン®皮下注28.2μgオートインジェクター」は、骨粗鬆症治療などに用いられるテリパラチド製剤の自己注射薬であり、ヒヤリハット事例収集事業において処方本数ミスに関する報告が多い薬剤である。テリパラチドを含む製剤は数種類あり、箱に入っている本数や投与する回数、頻度が製剤によって異なるという特徴があり、誤投与を防ぐための慎重な管理が求められる。現場での適正使用と業務支援を目指し、調剤時の処方監査に活用する資料や、患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料といった3種類の補助資料が開発された。特に患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料には、皮膚をつまむ、ボタンを押すといった具体的な手技や、コンプライアンス、飲み忘れ時の対応、保管・廃棄・持ち運び方法、副作用など、患者から質問されやすい内容が反映されている。 アンケート調査では、薬局薬剤師を対象に窓口での対応を想定したシナリオ形式の問題が用いられた。分析にあたっては、インスリン製剤などのように日常的に取り扱われることが多い糖尿病治療薬に対し、薬局での取り扱い経験にバラつきがあるとされる「非DM処方箋(糖尿病治療薬以外の自己注射薬の処方箋)」の受付経験の有無などが着目された。資料の閲覧前後における正答率の変化および回答への自信が統計学的に分析された。 その結果、資料閲覧後にはシナリオ問題の正答率と回答者の自信スコアが有意に上昇した。非DM処方箋の受付経験がある群ではもともとの正答率が高めであったが、経験の有無にかかわらず資料閲覧によって新たな知識の補足や既存知識の整理が進んだ。今後は他の自己注射薬についても同様の資料を拡充していきたいという。 5年生の秋から冬にかけての実習と研究の両立に苦労しつつも、「自分で考えて形にする過程が好き」という理由から今回の学会発表に挑戦した江渡さん。アンケートの作成にあたっては、指導教員と綿密に話し合いながらさまざまな論文を読み込んで学びを深めるなど、これまでに経験のないプロセスに苦労しながらも真摯に向き合った。 卒業後は病院薬剤師として就業予定であり、現場での臨床経験を積んだうえで、「いずれ自分の極めたい分野を見つけたら研究することも選択肢として考えています」と、将来的な研究への挑戦も視野に入れている。学生のうちから臨床現場の課題や患者背景に目を向け、主体的に研究を形にして学会発表を成し遂げた今回の挑戦は、これからの臨床現場に立つ若手薬剤師にとって大きな一歩となりそうだ。
- 社会薬学研究の「なぜ」と「気になる」を形に:日本社会薬学会第44年会 若手企画「社会を見る目 薬学に活かす〜若手が語る研究のおもしろさ〜」
日本社会薬学会第44年会において開催された若手企画「社会を見る目 薬学に活かす〜若手が語る研究のおもしろさ〜」は、若手研究者が自らの実践や体験を通じ、社会薬学研究の魅力と可能性、そして「研究するおもしろさ」を語り合う貴重な機会となった。 オープニングでは、熊本大学の近藤悠希氏から説明があった。自身の研究経歴や社会薬学会との出会いを振り返りつつ、本学会は若手の活動に対して非常に好意的であり、自由にチャレンジできる環境が整っていることが強調された。また、歴史ある若手の会の歩みや、懇親会を含めたネットワークづくりの重要性についても触れられた。 各演者の講演では、まず昭和医科大学の熊木良太氏が「理想と現実の間 薬局の『なぜ』を可視化する」と題し、病院薬剤師としての実務経験から生まれた日常のギャップや「なぜ」を起点とした5つの研究を紹介した。減薬提案を躊躇する背景の概念化や、患者・薬剤師間の情報共有に対する認識のズレ、常用薬の災害用備蓄の実態、PAC(個人別態度構造)分析を用いた栄養介入の課題整理、がん患者の栄養相談ニーズなど、質的・量的手法を用いて可視化するプロセスを説いた。現場の身近な疑問を学術的な問いに落とし込み、仲間と手探りで形にしていくプロセスの醍醐味と大切さが語られた。 続いて、昭和医科大学の宮﨑ひとみ氏が「社会の『気になる』を研究する『患者心理から教育へつないだ抗菌薬適正使用研究』」と題し、病院でのAST(抗菌薬適正使用支援チーム)活動から抱いた市中における抗菌薬適正使用への疑問を契機とする一連の研究を発表した。混合研究法を用いて処方に納得できない保護者の心理探索を行い、防衛動機理論に基づき適正使用意志の規定要因を分析。さらに行動経済学のフレーミング効果を応用した啓発動画を作成・実地検証するという、基礎から応用・社会実装へと研究がどんどん発展・展開していく楽しさと意義を力説した。 次に、大阪医科薬科大学の庄司雅紀氏が「誰一人取り残さない薬物療法を目指して:これまでとこれからの私の社会薬学研究」と題して講演を行った。障害の社会モデルの視点に基づき、うつ病患者に対する認知行動療法を応用した服薬支援や、知的障害を有する人への医療情報提供におけるミスコミュニケーションに関するインタビュー調査を紹介した。当事者とのワークショップを通じた共同創造により、相互理解を深める「患者理解のサイクル」を回しながら新たな教育プログラムを開発していく、やりがいと面白さが示された。 兵庫医科大学の矢原恵美氏は「臨床の疑問からエビデンスへ 回復期リハビリテーションにおける量的・質的研究の融合」と題し、オンラインで登壇した。回復期リハビリテーション病棟の患者を対象に、FIM(日常生活動作指標)とMRCI-J(処方複雑性指標)を用いた量的解析を行い、処方の複雑性解消が特定の患者群のADL改善に寄与する可能性を提示。さらに多職種連携意識の概念化を目指すインタビュー調査(質的研究)へとつなげるアプローチを通じて、現場の「声」からエビデンスを紡ぎ出すおもしろさを共有した。 さらに、奈良県立医科大学附属病院の鈴木渉太氏が「多様化社会における薬剤師の役割:患者中心の医療を目指したエビデンス構築」と題して講演を行った。薬局勤務時の困りごと(臨床疑問)を出発点に、ピクトグラムや多言語を活用した服薬指導ツールの検証、やさしい日本語や市販薬に関する啓発動画の作成(外国人患者支援)などの実効的な取り組みが紹介された。加えて、オーストラリアで開発された患者中心性を測る尺度を日本語版に翻訳・検証し、患者経験価値を正しく評価するプロジェクトなど、社会のニーズに合わせて研究の幅を広げ、薬剤師の新たな役割を切り拓く探求の楽しさが語られた。 最後にクロージングリマークスが行われ、若手研究者が自らの疑問やアイデアを持ち寄り、研究を楽しむ輪をさらに広げていくことへの強い期待とともに、フロアとの活発な総合討論へと引き継がれ、盛況のうちに企画は終了した。
- 社会を捉え、薬学に活かす:日本社会薬学会第44年会が東京理科大学で開催
佐藤氏 日本社会薬学会第44年会が、2026年9月12日から13日までの2日間にわたり、東京理科大学葛飾キャンパスで開催された。本年会のテーマには「社会を捉え、薬学に活かす」が掲げられ、医薬品の供給不足や若年層による一般用医薬品(OTC医薬品)のオーバードーズ、2040年問題といった現場が直面する現代の社会的事象に、社会科学の方法論を用いてどうアプローチするか議論が交わされた。 社会薬学と社会科学の融合 年会長を務める東京理科大学薬学部教授の佐藤嗣道氏は、大会長講演の中で、社会薬学の発展には社会科学の方法論を取り入れた学際的なアプローチが不可欠であると強調した。薬剤師が日頃向き合う医薬品をめぐる諸問題は、単なる薬理作用の範囲にとどまらず、歴史的経緯や組織、人々の関係性といった社会的な文脈の中で捉える必要がある。社会学の視点を取り入れて社会的事象を多角的に観察することが、将来の薬学や薬剤師業務のあり方を考える大きなヒントになると提起された。 「社会学に学び、薬学に活かす」教育セッション 年会では、医療社会学および医薬品の社会学的視点から薬学の実践を見つめ直す、充実した教育セッションが実施された。 熊本大学大学院人文社会科学研究部の中川輝彦氏による医療社会学のセッションでは、医療のあり方を分かりやすく紐解くため、私たちが日常で直面する「病気」という問題に対して社会全体がどのように向き合ってきたのかが解説された。中川氏は、病気を解剖学的・生化学的な人体の内部に位置づけて捉える「生物医学」と、社会的な要因や集合的な営みに関連づけて捉える「社会学」のアプローチを対比させた。 その中で、中川氏は「医療」を特定の個人だけの体験としてではなく、人々が協力して病気に対処し健康を維持しようとする「集合的な営み」として捉える視点を提示している。集合的な営みが成立する仕組みについて、参加者の多くが自身の役割をわきまえ、そこから大きく外れることなく振る舞うことによって、ある程度安定して成立すると解説された。 さらに、患者が直面する現実と現代の医療制度の間にあるギャップや、病気が人の人生に与える影響について、次のような深い洞察が示された。 患者は自身の身体の苦痛だけでなく、生活や人間関係の困難など、切実で複雑な問題を抱えている。 一方で、医師や薬剤師を中心とした制度的医療が提供できる解決策は技術的・生物医学的なアプローチに偏りがちになるため、両者の間には構造的なズレが生じてしまう。 私たちは通常、自分の人生を一つの物語として認識し納得しながら生きているが、完全な回復が見込めない病気によってこれまで通りに働けなくなると、人生の筋書きが崩れてしまう「物語の破綻」を経験し深い苦悩に直面する。 その破綻した状態から抜け出すためには、過去の自分への期待や執着を手放し、変化した現実の中でも実現可能な新たな期待へと書き換えていく「物語の再構築」が不可欠であると解説された。 関西学院大学の佐藤哲彦氏による「医薬品の社会学」をテーマにしたセッションでは、合法的な医薬品をめぐる「薬害」と、いわゆる違法な「薬物」という一見異なる二つの事例を取り上げ、医薬品が単なる物質ではなく、人々の経験や社会の仕組みと切り離せない「社会的存在」であるという視点を提示した。薬害に関する議論では、医薬品の被害は単なる身体の健康被害にとどまらず、社会的な差別や人間関係の困難といった社会的困難を伴うことが指摘され、被害者にとって健康被害と社会的困難は切り離して別々に経験されるものではなく一体の苦しみとして経験されるものであると説明された。 また、薬物使用の問題についても、国連の公式統計データを引きながら、薬物使用者の85%以上は依存や問題行動を起こすことなく、ただ使用しているにとどまるという実態が示された。それにもかかわらず、社会的な制度や政策によって犯罪者や病気として扱われることで、本来の成分の作用とは別の次元で深刻な社会的困難を経験することになると指摘された。このように、薬害や薬物使用の問題を成分の薬理作用や医学的な性質だけに還元して捉えるのではなく、被害者や使用者が直面している現実の社会的困難や、それを形作る政策・制度との関係性からその意義を深く問い直すことの重要性が強く強調された。 社会理論・動態研究所の松枝亜希子氏のセッションでは、1960年代に日本で市販されていた向精神薬(マイナートランキライザー)の広告や販売動向が事例として検証された。松枝氏は当時について「1960年代のトランキライザーは、2020年代の抗不安薬に該当するといえるだろう」と述べ、「製薬企業によって『精神のビタミン剤』のように宣伝されていた」と当時の広告の傾向を明かした。当時の製薬企業による「精神のビタミン剤」としての宣伝や生活改善への訴求は、現代で欧米を中心に議論されている向精神薬のエンハンスメント利用に該当するものであり、現代の医薬品問題を検討するうえで、歴史的知見を参照する必要性が示された。 今大会では、若手研究者らによるミーティングや企画も新しく開催され、次世代を担う研究者による学際的な取り組みへの期待が寄せられた。また、OTC医薬品等の乱用問題や地域フォーミュラリーに関するシンポジウムなども行われ、参加した学生や薬剤師にとって、臨床や地域医療における実践的な学びと今後の方向性を考える有意義な機会となった。
- マワレフェス、今年も ~個性あふれる薬局の魅力を感じるイベント開催
来る10月3日(土)、日本各地で地域に根差した経営展開を行う薬局企業9社が合同で企画するイベント「マワレフェス2026 in福岡」が、福岡市天神のライブハウスを会場に開催される。 主催する9社は「マワレ」という名称の人材研修プログラムで連携しており、参画している企業間で相互に人材を出向させ、他社の薬局の現場で学ぶ取り組みを行っている。 マワレの立ち上げ時は、さど調剤グループ(新潟・佐渡島)、メタルファーマシー(京都・大阪・滋賀)、会喜地域薬局グループ(福島)の3社が運営コアメンバーとして始まり、現在は9社に拡大して活動は全国規模になってきている。 マワレフェスは薬学生・薬剤師を対象にしており、当日のプログラムとしては、マワレに参画する各企業の経営者や社員によるクイズやトークショー、実際にマワレの仕組みで他社出向した体験談などが予定されている。特長的な薬局のリアルな姿が分かる催しになりそうだ。またフェスと謳っているように当日は薬剤師バンドのライブもあり、こちらも見どころだ。 参加費チケット1枚1000円(1ドリンク付)。薬学生は懇親会無料。 開催概要 名称:マワレフェス2026 in 福岡 日時:2026年10月3日(土) 14:30受付開始/15:00開演/21:00懇親会終了予定 会場:ROOMS(福岡・天神) 福岡県福岡市中央区大名2丁目1−50 3階 参加費:1,000円(1ドリンク付き) ※薬学生は懇親会無料 主催:マワレフェス実行委員会 共催:会喜地域薬局グループ 株式会社アイサ 株式会社メタルファーマシー 株式会社メディカルリンク 株式会社ふぁるめど 株式会社なかいまち薬局 株式会社中央薬局 有限会社郡茂薬局 サンカンパニー株式会社 feat.Fix株式会社 主なプログラム ・経営者エピソードクイズ ・出向経験者によるリアル体験談 ・マワレミライ会議 ・薬剤師バンドライブ 詳細・申込フォーム https://forms.gle/4Zx141ySV6xxNKXN9 参考 前回開催の模様 https://note.com/maware/n/nf05f5d07e9a5?magazine_key=m192c9b33782f
- 失敗を恐れず、自ら道を拓く一薬剤師の挑戦
株式会社メタルファーマシー代表取締役・薬剤師 川野義光 京都府を中心に薬局を展開する川野義光氏。薬局を独立した転機は先行きが不透明な店舗の再建だった。その後、黒字化のタイミングで独立し、現在は7店舗の薬局を運営するほか、在宅で過ごす患者さんの食の課題を解消するため、弁当製造事業を立ち上げている。また、地域の薬局と業務提携を結び、中小薬局でも一定の研修が受けられる体制を整備したり、自身が出資しYouTubeチャンネルを立ち上げ、薬剤師が活躍する姿を発信したりするなど、薬局業界に新風を吹き込んでいる。ここでは川野氏に地域医療や薬剤師に対する思いを聞いた。 ――大学ではどんな生活を送っていましたか。 大学では2つのことに取り組みました。1つがバンド活勃、もう1つがパチンコ。パチスロです。特にパチンコ・パチスロは、私の人生を大きく左右するものとなりました。パチンコ・パチスロは9割くらいのユーザーが負けるといわれています。残りの1割の人は、コンビニや書店で売っているパチンコ情報誌をもとに機種の研究・分析をして勝ち抜いています。ほとんどのユーザーは、情報誌が唯―の情報源であることを知っているにもかかわらず、それを活用しない、だから負けるのです。逆に言えば研究すればするほど、勝つ可能性が高まるのです。パチンコ・パチスロに限らず、やるべきことをしっかりやれば成功できるんだということを学びました。 ――成長する人って行動力がありますよね。逆に成長しない人はできない理由を探すみたいな。 そんな考えを持っていたので、就職先も企業で選ぶのではなく、そこで自分が何をしたいのかということを考えていました。 就職した薬局は、当時(2010年)から在宅医療に積極的に取り組んでいたこともあり、主に介護施設の薬剤管理を担当していました。施設の看護師とコミュニケーションを取るのは面白かったですね。看護師ってクセの強い人が多いんです。例えば処方箋を送ってくるタイミングは、薬局の閉店時間間際に送ってくるとか…、そういう人たちをいかに懐柔するかということを個人的な課題としてもっていました。課題を克服するために、看護師とたくさんコミュニケーションをとって自分の存在を知ってもらい、いい関係を築いていくことに力を注ぎましたね。その結果、働く環境もよくなっていきました。 その後、妻の出産などで何社か転職しましたが、最初に勤務していた会社の方から声がかかり、独立するという条件で、元にいた会社に戻りました。しばらく管理薬剤師として働き、その間、京都の西京極薬剤師会会長を1年間務めました。薬剤師会の会長として地域ケア会議などに参加した時、自分の考えが変わる出来事がありました。どの会議でも一人暮らしの高齢者のコミュニティーづくりが話題になっていたのですが、自宅で困っている高齢者がたくさんいることを知らせられたのです。それをきっかけに、個人の在宅に注力したいと思うようになり、社長にそのことを伝えたのですが、会社としては効率を考えたら、施設を優先させたいという回答でした。企業としては正解だし、それを否定する気はありませんが、私としては自分が思った課題に対して取り組みたいと思っていました。 ――独立の思いが強くなったのですね。 そんな話をしているうちに、たまたまM&Aした店舗を任されることになりました。会社からは1年半で黒字化したら譲渡するという条件を提示されましたが、応需先の病院が移転を機に売り出された薬局だったため、先行きが不透明な状況でした。最初の月は赤字でしたが、たまたま近隣にある眼科に行ったら院外処方にするという話をいただいたり、個人の在宅を積極的に受けたりして1年で黒字にすることができました。 ――独立したのはいつなのですか。 2017年です。黒字化が見えた時に、卸から薬局のM&A案件を紹介されたのですが、完全に独立するよで、その店舗は友人の薬剤師に任せ、独立してからその店舗をM&Aしたので最初は2店舗からのスタートでした。 ――薬局では珍しく弁当製造事業をはじめていますが、なにかきっかけがあったのですか。 週に4回くらい呼ばれる手のかかる患者さんとの出会いがきっかけでした。ごみが散乱した部屋を見渡すと、毎回同じ菓子パンの袋があり、よく見たら患者さんの口の周りにチョコレートが。患者さんは足も悪く、筋力も低下。食生活が悪いからこんな状態になったのだと思いました。初めのうちは、タンパク質をとっていただくため、コンビニ弁当を買っていましたが、できることなら、人が作ったものを食べさせてあげたいという思いが募ったのです。でも私は料理ができなかったので、いろいろ思いを巡らせていました。そうこうしているうちに患者さんの容態が悪くなり、施設に入ることになりました。 その患者さんとの関係はいったん終わったのですが、栄養状態の悪い患者さんはまだまだ地域の中にいるはず。そういった方たちを見つけて、サポートするにはどうしたらいいのか。その答えが弁当屋だったのです。 ――未知の分野に飛び込むのにためらいはありませんでしたか。 ゼロからのスタートでしたが、高齢者の栄養状態をよくしたいという思いが強かったですね。まずは管理栄養士を雇いました。そして私の弟が滋賀県で和食居酒屋を経営していたので、店長候補に研修に行ってもらいました。これでいけると思ったのですが、現実は厳しかったです。管理栄養士のンシピをもとに弁当を作るのですが、1度に50人分の料理を作ると、味が全然安定しないのです。でも試行錯誤をして何とか形にすることができました。これでオープンできるなと思っていたところ、料理人が腰のヘルニアでリタイアしたのです。オープンまであと2週間の時のことでした。 ここで大きな決断を迫られました。私は大きい決断をする際は、進むか、とどまるか、戻るかの三択をします。やめることは考えていませんでしたし、料理人が復帰する可能性もありませんでしたので、自分でやろうと決めました。まずは、営業日を年中無休から週5日とし、メニューも日替わりではなく、例えば月曜日はカレー というように5種類に絞りました。そこから弁当屋に泊まり込んでYouhibeの料理チャンネルを見ながら料理の技術を磨き、何とかオープンにこぎつけることができました。オープンしたのは2021年3月です。 ――心が折れることはありませんでしたか。 新しいことをしたら大なり小なり失敗します。弁当屋は失敗続きだったのですが、目的が明確化されていたので、閉店することは頭の中にはまったくありませんでした。黒字化するのに1年半かかりました。 弁当屋をはじめて、あらためて薬局のビジネスモデルは強いなと痛感しました。弁当屋は薬局と違い、お客さんに選んでもらわないといけません。そして味を気に入ってもらってリーピートしてもらう。広告にもお金をかけましたし、味の改良、接客にも力を入れました。オープン前は独居の高齢者か、そのご家族をターゲットにしていましたが、地域の中には私たちを必要としている層があることが分かりました。それが小学生くらいのお子さんがいるお母さんです。地域のお母さんたちが集まるイベントに呼ばれた際に、「働きながら子供に食事をつくるのは難しい。でも子供には健康なもの食べさせてあげたい」という声を多く聞きました。 最初の半年は、私自身が弁当屋の環境を整備し、その後はスタッフに任せています。2023年10月に2店舗目をオープンする予定です。 ――地域の薬局と業務連携し研修体制(在籍型出向研修「マワレ」)を構築しているそうですが、その内容をお教えください。 さど調剤グループ(新潟県佐渡市)の薬剤師。光谷良太さんと、けやき薬局(福島県会津若松市)の馬場祐樹さんと連携して、それぞれの社員を出向させて、研修するというものです。出向期間は1~ 3週間、対象は薬剤師と医療事務です。相互で研修することでスタッフの視野が広がりますし、互いの企業のノウハウをシェアすることもできます。2023年2月からトライアルを開始し、2024年4月に本格運用します。 このアイデアはいろいろな企業が考えていたと思うのですが、実現しているところはありません。ネックになるのがスタッフの引き抜きなんですね。だから連携できる企業は互いが尊敬していることが条件になります。そういう思いがあれば、仮に出向先にとどまりたいという申し出があっても、「頑張って行って来い」と送り出すことができるのです。 ――YouTubeチャンネルを立ち上げたそうですが、どんな番組ですか? 「あしたの薬局」という名前で2023年に立ち上げました。「マネーの虎」と「情熱大陸」を掛け合わせたような番組です。番組の出資は私がやっています。番組のスタイルとしては、薬局の社長たちの前で、若い薬剤師が自分の夢ややりたいことをプレゼンします。社長たちは出資をしないのですが、プレゼンを聞いて応援するかどうかをジャッジします。マッチングが成立したら、応援する社長が薬剤師に対して、夢をかなえるためのミッションを与えます。そして、そのミッションを乗り越える薬剤師の姿を1カ月間カメラで追い続けます。 このチャンネルを通じて、薬剤師の価値の向上、挑戦することをためらっている薬剤師への後押し、みんなからあこがれられる薬剤師の輩出― に寄与したいと思っています。我こそはと思う方は公式ライン(https:/lin.ee/i0O78js)に応募してください。 ――今後の展望について教えてください。 海外事業をやっていきたいですね。JICA(国際協力機構)のプロジェクトでキルギスに行っていた薬剤師に「キルギスに来ないか」と誘われたのがきっかけで、現地を訪問したときのこと。キルギスの保健省の人や業界最大手の薬局の副社長、国立大学の薬学部長と話をして、キルギスの薬局の現状を聞いたところ、服薬指導やフォローアップという概念がなく、ただ付箋に書いてある処方薬についてジェネリックにするかどうかを聞いて渡すだけというものでした。私が日本の薬局や薬剤師の役割について話すと、ぜひキルギスに持ち込んでほしいと依頼されました。現在JICAに申請中ですが、採択されれば、2024年から現地の薬局とコラボして日本式の薬局をつくり、試験運用する予定です。 ――最後に薬学生に対してメッセージをお願いします。 世の中には学ぶことはたくさんあります。意味がないと思えるような授業、ただこなすだけのバイト、見方を変えれば学びはたくさん転がっています。「○○ガチャ」という言葉をよく聞きますが、与えられた環境に不満を漏らすのではなく、学ぶ姿勢は失わないでください。きっと人生が豊かになるはずです。 川野義光(かわの・よしみつ) 大阪薬科大学卒業後、チェーン薬局等で薬局薬剤師として勤務。2017年に株式会社メタルファーマシーを設立し、現在は京都を中心に薬局7店舗、弁当製造販売店1店舗を経営している。また、地域の薬局と業務提携を結び、在籍型出向研修「マワレ」を立ち上げ、新たに研修体制を整備したり、夢に向かって挑戦する薬剤師の姿を紹介するドキュメンタリー番組「あしたの薬局」をYouTubeチャンネルで立ち上げたりしている。京都府薬剤師会理事。趣味はデスメタル、パチンコ・パチスロ。
- 薬学から世界へ羽ばたく創薬研究者:城西大学大学院・幸村友菜さんの挑戦
薬学部の学びをいかに自分のキャリアへつなげ、進路のヒントを探している薬学生に向け、城西大学大学院薬学研究科の博士課程4年に在籍する幸村友菜さんの歩みを紹介する。学部生から博士課程への進学、研究とアルバイトを両立する大学院生活、「トビタテ!留学JAPAN」への応募エピソード、ロンドン大学(UCL)への留学、そしてアメリカでのポスドク(博士研究員)挑戦へと続く道のりは、将来の選択肢を広げる大きなインスピレーションとなるはずだ。 卒業研究をきっかけに見いだした博士課程への道 もともと「がん」という疾患に興味があり、専門的な知識と将来につながる資格の両方を取得できるという理由で薬学部へ入学した幸村さん。当初は病院薬剤師を志望していたが、転機となったのは5年次に本格化した卒業研究だった。 自分で仮説を立てて実験を行い、結果が見えてくるプロセスに魅力を感じ、「もう少し研究を続けてみたい」と博士課程への進学を決意する。薬剤師としての専門性と、博士号を持つ研究者としての高度な能力の両方を身につけておけば、将来の選択肢を大きく広げられると考えたからだ。 研究とアルバイトを両立する大学院生活 大学院での生活は、週6日で研究室に通いながら、週3回は薬局で薬剤師としてのアルバイトに励む日々を送っている。研究では、目的とする化合物の合成がうまくいかない時期もあったが「この方法が駄目なら次を試そう」と粘り強く試行錯誤を重ねて乗り越えてきた。こうした日々の積み重ねが、自身の研究者としての強みである「粘り強さ」を育んでいる。 また、学費や生活面のサポートとして、大学院生になってから日本学生支援機構の無利子の奨学金を借りているほか、今年の12月までの業績で学校の基準を満たして推薦されれば、半額または全額の返還が免除される制度を活用している。 副作用を抑える「二段階DDS」の構築 現在取り組んでいる研究のテーマは、抗がん剤をがん細胞に選択的に届ける「DDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)」の開発である。抗がん剤が持つ強い作用が正常な細胞まで攻撃してしまう課題に対し、以下の「二段階」の安全装置を設計している。 がん細胞の表面に多く存在するCD44分子を目印にして薬を届ける。 細胞内に取り込まれた後、がん細胞内に多く存在するグルタチオンに反応して抗がん剤が作用する。 この技術により、抗がん剤の治療効果を維持しつつ正常組織への影響を抑え、副作用の少ないがん治療の実現を目指している。 また、こうした研究成果で日本薬剤学会第41年会の学生主催シンポジウムで「SNPEE奨励賞」を受賞した。正確な審査理由は分からないとしつつも、発表の場では専門分野以外の人にも研究の意義が伝わるよう細心の注意を払った。単に新しい物質の合成結果を並べるのではなく「現在のがん治療にどのような課題があるのか」「それを解決するために、なぜこの分子を設計したのか」「実際にどのような結果が得られたのか」という一つのストーリーとして構成し、分かりやすく伝えることを強く意識したという。 「トビタテ!」への応募とロンドン大学(UCL)での4カ月 イギリスでは現地の薬局も訪問 幸村さんが文部科学省の留学支援制度「トビタテ!留学JAPAN」の存在を知ったのは、指導教員からの紹介だった。さらに、指導教員の同期である城西大学の別研究室の先生が1期生として採択されていたという縁もあり、このプログラムを強く意識するようになる。 もともと学生のうちに海外で学びたいという強い思いがあり、英語が全く話せない状態だったものの、万が一不採用であっても自力で1カ月程度留学できるよう、薬剤師のアルバイトでお金を貯めて準備を進めていた。 もともとはアメリカへの研究留学を予定していたが、ビザの関係でイギリスに変更。自身の薬剤師免許も生かし、イギリスの薬局を訪問して薬剤師にインタビューを行い、日本との違いをまとめる計画を立案した。語学力だけではなく、自ら描き出す留学計画や人物本位のプレゼンが評価されるこの制度のもと、見事に採択を勝ち取る。 こうして臨んだロンドン大学(UCL)での4カ月間は、言語の壁や日本とは異なる手続き・研究の進め方に直面し、日本での3〜4倍ほどのエネルギーを消耗する苦労の連続だった。一方で、多様なバックグラウンドを持つ海外の研究者たちと日常を共にし、日本国内の常識にとどまらない広い視野を獲得する。この経験は、「もっと長期間、海外の環境で研究してみたい」という幸村さんの新たな意欲を強く後押しする大きな契機となった。 ロンドン大学の指導教員と研究メンバー アメリカでのポスドク挑戦へ 博士課程修了後は、アメリカ・ニューヨークの医科大学で、給与を受け取りながら研究に専念するポスドク(博士研究員)として勤務する予定である。海外でポスドクとして働く選択をした背景には、日本と比べて給料が良い点だけでなく、研究の技術だけでなくその国の文化や語学力など「一石三鳥」とも言える得難い経験ができると考えたからだ。 アメリカでの受け入れ先が決まったのは、学会メールで届いたアメリカの大学からの募集・公募がきっかけだった。幸村さんが取り組んでいるDDSの技術や専門性がちょうど相手側の求める即戦力と合致しており、さらに大学院時代に質の高いジャーナルへ筆頭論文が掲載されていたことや、自分の研究成果を評価してもらったことで面談が進んだ。相手の先生から「まさにこういうのがやりたかったんだよね」と声をかけてもらい、「ここしかない」と即座に連絡を取ってアメリカ行きが決定した。 今後はこれまでのDDSや薬学の知見に、がん研究やChemical Biologyを融合させた領域へと専門性をさらに広げていく。将来的には、薬剤師としての臨床的な視点と高度な研究者としての知見を生かし、新しい治療法につながる創薬研究に取り組むことが目標である。自らが関わった技術や医薬品を実際の医療へと届け、患者の治療の選択肢を増やすため、地道な挑戦を続けている。 一歩踏み出すことで、想像していなかった未来が開ける 最初から明確なゴールや海外留学への道筋が決まっていたわけではないという幸村さん。卒業研究が面白そうだからと博士課程に進み、一歩ずつ挑戦を重ねる中で新しい選択肢が見えてきたと振り返る。 「語学力などを理由に最初から可能性を狭めず、少しでも興味を持ったことにはまず飛び込んでみてほしい。『トビタテ!留学JAPAN』についても、まだ制度や募集が続いているうちに、後輩たちにぜひ積極的に挑戦してほしいと思います。最初から明確なゴールが決まっていなくても、興味を持ったことに一つずつ挑戦していくことで、自分が本当にやりたいことや、思ってもいなかった新しい選択肢が見えてくるはずです」
- 薬剤師の古謝氏が初当選、沖縄県知事選挙で42万票余を獲得
2026年9月13日に投開票が行われた沖縄県知事選挙は、同日深夜1時10分に開票が確定した。県全体の有効投票数は712,120票、投票者数は717,704人となった。 当選を果たした古謝げんた氏は、東京大学薬学部を卒業した薬剤師であり、元総務官僚や長崎県財政課長、民間企業勤務などを経て、前那覇市副市長および沖縄県薬剤師会副会長を務めた経歴を持つ。 各候補者の得票数および結果は以下の通りである。 古謝げんた: 423,124票 玉城デニー: 276,060票 カネシマシュン: 4,657票 ヒガタカシ: 3,542票 良朝助: 2,467票 すえよしまさひろ: 2,270票 今回の選挙では、那覇市(有効投票数148,830票)や沖縄市(有効投票数67,451票)、うるま市(有効投票数58,076票)などの主要市部をはじめ、県内各地の自治体で開票作業が進められ、深夜帯にすべての開票が完了した。
- 次世代の薬学教育を切り拓くAI対話学習基盤:東京薬科大学とトランスコスモスが共同開発を始動
薬学教育における課題とAI学習基盤のねらい 2040年に向けて薬剤師への対人業務の一層のシフトが求められるなか、実務実習前の臨床能力の養成や、現場での複雑な症例・インシデントへの対応力強化が急務となっている。 こうした背景から、東京薬科大学が持つ教育知見と、トランスコスモス株式会社がコンタクトセンター運営で培ってきた顧客応対品質管理やフィードバック設計の知見を融合させることになった。この基盤によって、患者の年齢や性格、病歴まで柔軟に設定できるロールプレイや、モデル・コア・カリキュラム準拠のシナリオを通じた反復練習が可能になる。 さらに、AIによる即時フィードバックや学修状況の可視化に加え、将来的には法令改正などの最新情報を提供する機能も順次実装され、基礎学修から卒後教育までを総合的にサポートする。 両代表が語る取り組みへの展望と意気込み 今回の取り組みに関して、トランスコスモスの上席執行役員である高山智司氏は「両者の知見を掛け合わせることで薬学教育の現場に即した学習支援のあり方を具体化し、人手ではカバーしきれない学習機会やノウハウを教育現場に落とし込んでその高度化に貢献したい」と述べている。 また、東京薬科大学の学長である三巻祥浩氏は「実務実習や就職後の困難事例への対応から最新法令の継続的修得までを一つの基盤で支えていくことは学修機会の拡張において大きな意義があり、実務家教員監修のシナリオとAIによる自動評価を通じて臨床実践に即した学びを具体化していきたい」と意欲を示している。 確かな導入実績と今後の教育環境づくり トランスコスモス社内のコンタクトセンター業務における「trans-AI Tutor」の導入実績では、研修中のオペレーターあたりのロープレ回数が約7倍に増加し、管理者工数換算で2,945時間相当の研修工数を代替したほか、研修期間の50%短縮や生産性の129%向上といった大きな成果が確認されている。両者はこうした実績ある仕組みを薬学教育に展開することで、学生個々が必要な練習量を確保できるようにし、教員は個別指導や教材設計などの教育効果の高い指導へ注力しやすい環境を整えていく方針である。
- がん治療における「通院間の空白」をデジタルで解消 ― カケハシ、AMED採択の大規模実証「PRO-MISE Trial」を始動
株式会社カケハシは、日本医療研究開発機構(AMED)の令和7年度委託事業※1に採択され、がん患者の外来治療中における体調や副作用をスマートフォン等を通じて継続的に把握する大規模検証プロジェクト「PRO-MISE Trial」を開始した。 従来、外来治療への移行が進む一方で、通院日と通院日の間(通院間の空白)は医療従事者の目が届きにくい期間となっていた。この空白期間における体調変化の把握不足や不安感は、症状の重篤化や予定外入院、自己判断による服薬中断を招くリスクとなっている。 本事業では、病院・薬局・患者をデジタルでつなぐことで、この課題の解決を目指す。主な特徴は以下の通りである。 国内有数の規模:約900症例を対象とし、日本や地域のがん治療を支える約50病院が参画する。 長期的なモニタリング:患者一人ひとりの状況に応じ、24週間(約半年間)にわたって継続的に見守る。 負担の少ない自動送信システム:患者のスマートフォン(LINEアプリ等)に週1回、自動で質問 (ePRO※2 )が送付され、医療従事者の業務負担を増やさずに早期発見・早期介入を実現する。 情報連携は、カケハシの患者フォローシステム「Pocket Musubi」の技術基盤を高度化して採用し、以下の4ステップで実施される。 Step.1(利用同意と回答):患者がスマートフォンに届いた副作用や症状変化に関する質問に回答する。 Step.2(モニタリング):薬剤師がシステム上で患者の状態を確認する。 Step.3(フォローアップ):気になる副作用や症状がある場合、電話やメッセージでフォローを行う。 Step.4(HRQoL※3向上・連携活性化):健康や生活の質の改善および、病院・薬局間の連携強化につなげる。 今後のスケジュールとしては、2026年6月から患者登録が開始され、2027年2月までの期間(約8〜10カ月)で約900症例の登録を目指す。最終的な結果とりまとめは2028年上半期(2028年3月頃)を予定している。 ※1 令和7年度「予防・健康づくりの社会実装に向けた研究開発基盤整備事業(ヘルスケアサービス実用化研究事業)」 ※2 ePRO(electronic Patient Reported Outcome):患者がスマートフォン等を使って、自宅での体調や副作用を直接デジタル入力・報告する仕組みのこと。 ※3 HRQoL(Health-related Quality of Life):健康関連のQOL(生活の質)のこと。病気やその治療が、患者さんの「体」「心」「日々の生活」にどのような影響を与えているかを、患者さん自身の視点から評価する指標。











