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- 教育現場と生成AIの現在地――「無免許運転」状態の子供たちと戸惑う教員
国内最大級のICT・ネットワークイベントである「Interop Tokyo 2026」(2026年6月10日〜12日、幕張メッセ)の講演において、「教育現場から見た生成AI活用のリアル― AIリテラシーと認知オフロードのはざまで揺れる学び ―」と題した講演が行われた。現在、教育現場における生成AIの活用は急速に広がる一方で、「子供たちの思考を支えるものなのか、それとも委ねてしまうのか」という強い葛藤が多くの現場で生まれている。 全国の学校を巡る文部科学省学校DX戦略アドバイザーで、札幌国際大学准教授の安井政樹氏の視点からは、世におけるAIの進化のスピードと、学校現場の認識との間に大きな乖離があるリアルな実態が見えてくる。 年齢制限を知らない現場 特に深刻なのは、小学生や高校生といった子供たちが、大人の想像以上に生成AIを使いこなしているという事実である。小学生の間では、親のスマートフォンなどを介して日常的に生成AIを利用している割合がすでに8割近くにのぼる。高学年になれば、ほとんどの児童が手を挙げるのが現状である。 しかし、ここに大きな問題が潜んでいる。多くの生成AIには年齢制限が設けられており、例えば13歳未満の利用は禁止、あるいは制限されているが、学校の教員も保護者もその事実をほとんど認知していない。安井氏は、この状況を「言わば『無免許運転』の状態で子供たちが規則を無視して利用している状況であり、アクセス規制の存在すら教員側が分かっていないケースも少なくない」と危惧する。 教員と子供たちの「温度差」 子供たちは日々、YouTubeをはじめとする多様なデジタルコンテンツに触れており、例えば画像の中に不自然な「空」の描写があれば、それがフェイク画像であると直感的に気づくほどの感覚を身につけている。これに対して、多忙を極める学校の教員はそれらのメディアを十分にチェックする余裕がないため、フェイク画像であることすら見抜けない場合がある。これは教員がサボっているわけではなく、純粋に「見る暇がない」ほどの過密な業務環境に起因している。 こうした大人の目の届かないところで子供たちの利用が先行している結果、重大なセキュリティー上のリスクも生じている。特に高校生などでは、学校が関知しない私物のアカウントを使い、個人的な恋愛相談や日常の機微なプライベート情報をAIに入力するケースが常態化している。その際、入力したデータがAIの学習に利用されるのを防ぐ「オプトアウト設定」の存在を知り、自ら設定変更を行っている生徒はほとんどいない。 本来、各自治体の教育委員会などは、データが学習に利用されない安全な「教育用アカウント」を整備している。しかし、学校現場や教員側が私物アカウントと教育用アカウントの安全性の違いを正しく認識できていないため、適切なアカウントでの利用を指導できていないのが実態である。 さらに深刻なのは、子供たちが性的な悩みやいじめといった極めてセンシティブな相談、あるいは友人同士の喧嘩の解決法までもAIに委ねており、AIが一種の「駆け込み寺」やセーフティーネットとして機能している側面がある点だ。安井氏は「だからこそ、大人がセキュリティーやリテラシーの指導を放棄したまま、子供たちだけの空間に放置することは極めて危険である」と警鐘を鳴らす。 認知オフロードと「思考放棄」の境界線 教育現場でAI活用を阻む最大の懸念として挙げられるのが、思考をAIに丸投げしてしまう「認知オフロード」の問題である。しかし、安易に子供たちの学力低下やリテラシー不足を責めるのは筋違いである。 従来の教育活動は、教員が質問して子供が答えるというサイクルで成り立っていた。しかし現在、子供たちは「AIに質問して答えを教えてもらう」という逆のサイクルに身を置いている。安井氏は「何でもすぐに教えてくれるAIに依存することで、自分で考えるプロセスそのものを手放してしまうリスクが生じている。この思考の外部化こそが、教育現場で懸念されている認知オフロードの本質である」と指摘する。 求められる「リミッター」と教育用AI 一般的に「AIリテラシーの育成にはファクトチェックが不可欠である」と説かれることが多い。だが、大人の日常生活を振り返ってみても、グルメサイトの口コミを毎回ファクトチェックしている者はほとんどいない。大人にすら定着していない行動を子供に強いることには無理がある。 子供たちは「自分のためにならない」と頭では理解していても、目の前に答えがあればどうしてもそれを求めてしまう。安井氏は「トラックに速度超過を防ぐ『リミッター』が装着されているように、子供向けの教育用AIにも、そもそも『答えを直接出さない』という制限をシステム側でかけておく必要がある」と提言する。 さらに、AIが単に事実を正しく出力するだけでなく、子供の年齢や発達段階に応じて、人生の先輩たちがしてきたようにオブラートに包んだ回答や適切な表現の出し分けができる機能(例:サンタクロースや命の誕生に関する質問への対応)が、これからの教育用AIの方向性として求められている。 宿題のあり方という本質的な課題 教員がAIの活用に反対する背景には、子供に宿題や探究を「やりたい」と思わせていないという本質的な授業デザインの課題が隠されている。 子供たちが「ヒントを出すAI」ではなく「答えを出すAI」を使って一瞬で宿題を終わらせようとするのは、子供やAIが悪いからではない。安井氏は「諸悪の根源は、大人の側が『宿題はとにかく早く終わらせるもの』『レポートやスライドは期日までに形にするもの』という、やらされるだけの学習を強いてきたことにある」と断言する。 「『宿題は自分の苦手を見つけたり、できないところをできるようにするためのものだ』という学習観へこの国全体がシフトしない限り、子供たちが本質的な意味でAIを壁打ち相手として使うことはない。AIを活用して子供たちが難易度を選べるような宿題の出し方へと、教員側の意識を変革していく必要がある」というのが安井氏の強いメッセージだ。 日本特有の「一律・正確」の壁と向き合う 学校への生成AI導入をさらに難しくしているのが、日本人の国民性と教員の「間違えたくない」というマインドセットである。 教育現場では「失敗や漏洩を極端に恐れて公式な利用を禁止する一方、教員が個人の私物アカウントでこっそりAIを使う『シャドウAI』が横行する」という矛盾した状況が起きている。間違えることを悪とする文化が、AIという新しいテクノロジーの柔軟な受容を妨げている。 電車の時刻表と目玉焼きの理論 日本人は「電車の時刻表は正確に守られるもの」「機械は毎回同じ正しい答えを出すもの」という、世界的に見ても極めて厳しい信頼度を機械に対して持っている。そのため、生成AIのように確率論で動き、毎回出力が変わるような「ファジーなもの」を受け入れることが心理的に難しい。 学校の研修現場では、教員から「講師の先生とまったく同じアプリをAIで作るにはどうしたらいいか」と問われることが多いという。AIは同じプロンプトであっても二度と同じ回答を出さないが、その感覚が腑に落ちない教員は多い。安井氏はこれに対し、次のような身近な比喩を用いてレクチャーしていく必要性を説く。 「人生で目玉焼きを作るとき、卵も焼き加減も形も毎回異なり、完全に同じ目玉焼きには二度と会えない。人間の創作と同じように、AIの出力も毎回異なるものである」 「プロポーズの言葉」にみる解像度の低い議論 また、学校現場での議論は「AIを使うのはありか、なしか」という雑で極端な二択に陥りがちである。例えば、通知表の「所見」作成にAIを使うことの是非は大激論になりやすい。 安井氏は、これを「プロポーズの言葉を考えるときにAIを使うか」という問いに置き換えてみると分かりやすいと語る。AIが出した文章をそのままコピペして伝えるのは全員が「なし」と答えるが、「『どのような表現があるのかを参考にし、それを踏まえて自分の言葉で考える』のであれば、多くの人が『あり』と答えるはずである」。 学校におけるAI活用においても同様に、0か100かの議論ではなく、「どのような使い方が良くて、どのような使い方が不適切なのか」という解像度を上げた丁寧なルールづくりと分析を行うことが、現場の安心感につながる。 覚える力から、解決する力へ 社会の変化に伴い、私たちが依拠すべき「学力」の定義そのものをアップデートしなければならない。 スマートフォンやIT機器の普及により、現代人は他人の電話番号を暗記する必要がなくなった。同様に、大人になれば自分の住所と名前以外の漢字を日常的に手書きする機会は激減している。 「習った漢字を記憶して再生するテスト」の成績は落ちているかもしれないが、「知らない漢字をタブレットなどで自ら調べて解決するテスト」を行えば、現代の子供たちのほうが高い能力を発揮する。安井氏は、これからの学力観について次のように提言した。 「これまで教育は、何でも素手で、自分の力だけでこなさせようとする傾向があった。しかし、電話番号や漢字の暗記といった『かつて必要だった力』はあえてAIやデジタルにオフロードし、その分『集まった情報をどう活用するか』『どう思考を深めるか』という『これから必要な力』の育成へリソースを割くべきである」 今後の教育現場においては、単なるツールの「使い方」を覚えさせることにとどまらず、まずは「『使っていくことは問題ない、良いことなのだ』というマインドセットの刷新から始める必要がある」。そして、個別最適な学びや高校入試対策といった具体的な課題に対し、「学力を高めるためにいかにAIを協働パートナーとして使いこなすか」という、本質的な教育観の変革が今、まさに求められている。
- 【摂南大学】いつでもどこでも資格に挑戦できる環境へ――学生の就活を支えるeラーニングサービスを導入
摂南大学は、学生の資格取得を強力に支援するため、時間や場所を選ばずに学習できるeラーニングサービスを新たに導入した。近年の資格志向の高まりを受け、従来の対面型支援に加え、より気軽に挑戦できる環境を整えるのが狙いである。 今回の取り組みには、主に3つのポイントがある。1点目は、就職活動の強力な支援となる資格取得に向けて、eラーニングサービスを新規に導入したことである。2点目は、挑戦に踏み出せない学生向けに「いつでもどこでも」学ぶことができる環境を整え、学習へのハードルを下げたことである。そして3点目は、学生がアカウントを登録するだけで、全てのコンテンツを無料で受講できる仕組みを構築したことである。 高まる資格への関心と、学生が抱える「壁」 近年、就職環境の高度化や多様化が進むなか、大学にはより実践的なキャリア支援が求められている。その中で資格取得は、学生の専門性や学習意欲を客観的に証明する手段として、企業からも高く評価されている。 同大では2012年に「資格サポートセンター」を設置し、資格取得や公務員試験対策を支援してきた。また、「資格・能力取得奨励金制度」を設けて経済面からも後押しを行っている。同センターが実施する各種講座には年間約250〜350人の学生が参加しており、主な講座としてMicrosoft Office Specialist(Excel 365・Word 365)や簿記検定、宅地建物取引士、ITパスポート、公務員試験対策など、幅広い対策を展開してきた。 しかし、高い関心を持つ学生がいる一方で、「何から学べばよいか分からない」という悩みや、「いきなり通学型の講座を受けるのはハードルが高い」といった理由から、挑戦を躊躇している学生も一定数存在していた。 学校法人初、ベネフィット・ワンのサービスを活用 こうした学生の「きっかけづくり」として、同大はスマートフォンやタブレットで手軽に学べるeラーニングサービスの導入を決定した。 今回、ベネフィット・ワンが提供する福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を採用した。同サービスの導入は、学校法人としては初の試みとなる。これにより、学生はアカウントを登録するだけで、語学やPCスキル、会計、ビジネスマナーなどの豊富なeラーニングコンテンツを無料で受講することが可能となった。 同大は、このeラーニングサービスを通じて資格取得への意欲を持つ学生の裾野を広げたい考えである。これを機に、従来からある資格サポートセンターでの専門的な学習支援や奨励金制度の利用者を増やし、大学全体のキャリア形成支援をさらに強固なものにしていく方針である。
- 深刻化する市販薬の乱用(オーバードーズ)問題、法改正による規制と「社会全体での支援」の重要性を議論
一般社団法人くすりの適正使用協議会が2026年6月9日に開催した「2026年協議会講演会」において、厚生労働省医薬安全対策課長の安川孝志氏が登壇した。同氏は「くすりの適正使用のための最近の医薬品安全対策の動きについて」と題した講演の中で、近年若者を中心に深刻な社会問題となっている市販薬(OTC医薬品)の乱用(オーバードーズ)問題を取り上げ、行政の最新の取り組みと、薬剤師をはじめとした医療関係者が果たすべき役割について言及した。 法改正による「指定濫用防止医薬品」の厳格化と柔軟な運用 制度的な対策として、薬機法改正に伴い「指定濫用防止医薬品」が法的に位置づけられ、2026年5月より施行された。 厚生科学研究(令和6年度実態調査)に基づき、乱用のリスクが明確に確認された2つの成分が新たに指定されている。 せき止め薬等に主に使用される「デキストロメトルファン」 抗ヒスタミン薬である「ジフェンヒドラミン(※内服剤に限る)」 これにより、店頭では18歳未満への販売数量制限(原則1個のみ、あるいは大人用量への制限など)や大容量製品の販売制限といった、厳格な販売ルールが適用され、徹底が図られている。 一方で、トローチ剤のように乱用の実態がないと判断された外用剤(区分上、内服ではないもの)については、今回の規制対象外とされた。安川氏は、一律に予防原則だけで広く網をかけるのではなく、今後の乱用動向の変化に応じて随時指定の範囲を検討していくという、実態に即した柔軟かつエビデンス(科学的根拠)に基づいた運用の姿勢を示した。 販売規制にとどまらない、薬剤師・登録販売者への「ゲートキーパー」としての期待 しかし、安川氏は「単に販売規制を強化するだけでは、オーバードーズ問題の根本的な解決にはならない」と指摘した。若者が乱用に至る背景には、家族関係や友人関係、学校生活の悩みといった、日常生活における不安や孤立などの根本原因が存在するためである。 そのため、薬局やドラッグストアの店頭に立つ薬剤師や登録販売者は、単なる売り手にとどまってはならない。乱用の兆候や不審な購入行動に気づく「ゲートキーパー(門番)」としての役割を果たし、専門の相談窓口へと適切につなぐなど、地域全体で孤立した若者らを支える環境づくりが必要不可欠であるとした。 厚生労働省としても、この取り組みを現場の意識だけに委ねず、2026年度の予算事業として「乱用防止対策事業」を組み、現場のサポート体制を強化している。 実態調査と周知:現場で活用してもらうための「ゲートキーパー対応マニュアル」の実効性を高めるため、各地域での実際の活用状況を調査・確認し、より現場に即した形での周知を進める。 研修会の実施:現場の対応力を向上させるため、薬剤師や登録販売者を中心とした研修会を各ブロック単位で精力的に実施する。 また、この問題は医療や薬事の枠組みだけで解決できるものではない。自殺対策や孤独・孤立対策、こども家庭庁による子供政策などを担当する関係省庁とも緊密に連携し、政府・社会全体で包括的に若者を支える仕組みづくりを進めていく方針が示された。 医療従事者に求められる「適正使用への能動的な姿勢」と情報資材の活用 さらに安川氏は、適正使用を推進するうえで、薬剤師をはじめとした医療従事者が「医薬品情報をどのように扱うべきか」という点についても言及した。 現在、くすりの適正使用協議会などが作成するさまざまな情報提供資材や、患者向け医薬品ガイドなどの活用・見直しが進められているが、医療のプロフェッショナルとして最も重要なのは、公的データである「添付文書」の記述の背景にある真意をくみ取ることであるとした。 単に記載内容を表面通りになぞるだけでなく、「なぜこの注意喚起が書かれているのか」「どういう議論や背景があってこの記載に落ち着いたのか」を知るために、「承認時の審査報告書」などを能動的に読み込み、より深い知識を持って医薬品のリスクの程度を理解したうえで患者に接する姿勢が、これからの薬剤師には強く求められている。 最後に安川氏は、製薬企業、医療従事者、行政、関係団体といった各ステークホルダーがそれぞれの役割を認識し、一丸となって適正使用の推進と再発防止(薬害の歴史の教訓)に取り組むことの重要性を強く訴え、講演を締めくくった。
- 【くすりの適正使用協議会】患者向け情報の一元化と信頼の基盤強化に向けた新中期計画を報告
一般社団法人くすりの適正使用協議会は2026年6月9日、都内で「2026年協議会講演会」を開催した。講演会では、同協議会理事長の俵木登美子氏より、この1年の主な活動や「くすりのしおり」、ならびに「ミルシル」を核とした患者向け資材の連携状況、今後の展望についての報告が行われた。 2026~2028年度の新中期活動計画が始動 同協議会は3年ごとに中期活動計画を策定しており、2020年から2022年は「信頼できる情報を届ける基盤づくり」、2023年から2025年は「基盤強化と情報の充実」をテーマに据え、患者向け資材を集約するプラットフォームの構築と拡充を進めてきた。そして今年度からは、2026年から2028年を対象とする新たな中期活動計画が始動している。新計画では「信頼できる情報」のさらなる充実を図り、必要とする人々へ効果的な発信ルートを通じて届けることを目指している。 専門委員会による多角的な取り組み 各委員会における活動成果も多岐にわたる。くすりのしおりコンコーダンス委員会では、患者により分かりやすい情報を提供するため、優しい日本語化の推進やピクトグラムの活用検討を行っている。また、製薬企業で初めて「くすりのしおり」の制作に携わる担当者に向けた、作成実務の手引き(マニュアル)を新たに策定したほか、ケアマネジャーなどの介護関係者や薬剤師を対象としたアンケート調査の結果を学会で発表している。 くすり教育と啓発については、協議会の極めて重要な継続活動として位置づけられており、さまざまな学会へのブース出展を通じて現場の教師や医師との意見交換を行っている。さらに、薬物乱用防止教室と融合したショート動画の掲載、大学での出前研修、養護教諭らを対象としたオンライン講座の開催、社会問題となっているオーバードーズ(OD)問題に関するシンポジウムの開催など、多角的な啓発を実施した。一般向けにも、市販後の副作用収集への協力を呼びかける動画や、薬の基本的なルールを伝える動画を公開している。 また、高齢者の日常生活を支える介護職へ向けた啓発として、4コママンガを作成しているほか、介護現場での困り事に関するアンケート結果を日本薬剤師学術大会で発表した。先進医療製品適正使用推進委員会の取り組みでは、バイオ医薬品に関する動画の作成や普及、薬剤師向けのeラーニング資材の提供を行っている。さらに、薬学部での活用を目的として、数年前から47学部81教員に薬学生向けコンテンツを提供するなどのアカデミア支援も進められている。 最新モダリティへの対応と薬剤疫学の新たな共同研究 新中期活動計画における新たな挑戦として、これまでのバイオ医薬品に留まらず、核酸医薬品、放射性医薬品、再生医療等製品といった新しいモダリティの認知向上と基礎知識の啓発活動が開始された。俵木氏は、始まったばかりのこの活動への会員会社(製薬企業)の積極的な参加を呼びかけた。 薬剤疫学委員会においては、毎年実施している各種セミナーに加え、今年3月の薬剤疫学セミナーからは日本薬剤疫学会による後援を取り入れ、受講生に「認定薬剤疫学家」の更新ポイントが付与される仕組みを構築した。 データベースを用いた共同研究では、妊娠と薬情報センターのデータを活用した研究成果が、昨年5月に英文誌『Drug Safety』へ掲載されるという高い評価を得た。現在は別のデータベースを用いた論文の投稿準備を進めるとともに、リアルワールドデータの利活用推進を目的とした新しいデータベース研究の立ち上げというスタート地点に立っている。 デジタル化が進む医療現場と「ミルシル・プラットフォーム」の展望 同協議会は、今年度もお薬手帳を25万5000部配布したほか、健康・医療情報を見極めるための資材「情報の鵜呑み禁止!」や、オーバードーズ、ポリファーマシーに関する資材の活用を進めている。 2022年4月に開始され4年が経過した「ミルシル」サイトは、2026年5月時点で月間PV数が408万を数える規模へと成長している。一般生活者を対象としたインターネット調査によると、医療用医薬品について調べる際に「インターネットで調べる」と答えた割合が、医師や薬剤師に聞く割合を優位に上回っており、スマホの急速な普及に伴う情報収集行動の変化が顕著に現れている。 現在、ミルシルサイトへの患者向け資材の掲載には80社が協力しており、製薬企業が作成する公式な医薬品情報をもとに、薬の効能や副作用、服用時の注意点などを簡潔にまとめた「くすりのしおり」3500件に対して、2000弱の資材が紐付いている。また、医薬品リスク管理計画(RMP)に基づき、患者向けに副作用の初期症状や特に注意すべき点などを分かりやすく解説した「患者向けRMP資材」の掲載も進んでおり、現場の医療関係者からも高い評価を得ている。特に医療現場では、吸入器や注入器といった「デバイスの使い方を解説した動画や資材」の利用が多く、服薬指導の実務において高く重宝されている。 サイトの利用者調査では、一般の約3割、医療関係者の約7割がリピーターであり、資材を見た一般の80.3%、医療関係者の86.4%が「参考になった」と回答した。さらに、一般ユーザーの約半数が「この情報を見て医療関係者に相談しようと思った」と答えており、情報提供がコミュニケーションのきっかけとして機能している状況が伺える。 将来的には、チャットやオンラインによる電子的・デジタルな服薬指導や服薬フォローアップが急速に増加することが予想される。同協議会は、この変化に対応して「ミルシル・プラットフォーム」への情報一元化をさらに推し進め、医療関係者が店頭やデジタルツールを介してすぐに最適な服薬指導を行える環境を整備する方針である 。 俵木氏は最後に、厚生労働省で検討が進められている「患者向け医薬品ガイド」の全面見直しと新しいガイドの誕生に触れ、これらを皆様が作成する資材とともに確実に患者へ届けるため、このプラットフォームを大事に育てていきたいとし、参加者への継続的な支援と協力を求めて報告を締めくくった。
- JAPANドラッグストアショー開催―過去最大規模で描くドラッグストアの未来像
尾池氏 人々の生活インフラとして定着し、いまや10兆円産業を超えて13兆円産業への成長を目指すドラッグストア業界。2026年7月31日(金)から8月2日(日)までの3日間、東京ビッグサイトにて過去最大規模となる「第26回 JAPANドラッグストアショー」(一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会主催)が開催される。今回は「セルフメディケーションによるドラッグストアの未来像 next25」をテーマに掲げ、実行委員長を務める尾池勇紀氏(光株式会社代表取締役社長)に、本イベントの見どころや薬学生に注目してほしい新たな試み、そして業界が果たすべき未来の役割について聞いた。 Q. 今回で26回目を迎える「JAPANドラッグストアショー」の概要や特徴について教えてください。 今回は、2026年7月31日(金)から8月2日(日)までの3日間、東京ビッグサイトの東展示場(1・2・3・7・8ホール)で開催します。前回は4つのホールを使用しましたが、今回は5つのホールを使用し、実質的に過去最大のスペース・最大規模での開催となります。出店コマ数も昨年より順調に増加しており、ヘルスケアやビューティーケアといった主要カテゴリーが大きく伸びています。 イベントの魅力は、BtoB(ビジネス)とBtoC(一般生活者)の両方にとって価値がある点です。金曜日はビジネス来場者のみ、土日は一般の生活者の方もご来場いただけます。昨年は約9万9,500人の方にご来場いただきましたが、内訳としてはビジネス来場者が約3割、一般来場者が約7割という形になっています。 Q. 今回のテーマ「セルフメディケーションによるドラッグストアの未来像 next25」には、どのような思いが込められているのでしょうか。 この「next25」というテーマは前回の内容を踏襲したものです。過去25年の歩みを経て、「次の25年(next25)に向けて業界をどのようにしていくか」という強い思いが込められています。 現在、世の中の環境は激しく変化しており、常に有事に対応するようなスピード感が求められています。その中で、私たちが13兆円産業を目指してどのような未来を描いていくのかを、業界全体で真剣に考えられる場にしたいと考え、このテーマを設定しました。 特に生活者に対しては、「セルフメディケーション」の大切さを一番のメッセージとして伝えたいと考えています。国の医療費問題が深刻化する中、軽度な不調は自分たちで対応していく意識がとても重要になります。ドラッグストアショーを通じて「こんな商品があるんだ」という新たな発見をしていただき、健康維持につなげていただきたいですね。 Q. 今大会ならではの見どころや、注力されている特別企画について教えてください。 私が京都で事業を展開している縁もあり、今回は地域性を盛り込んだ「京都物産展」を展開します。京都の水や米を使い、現地で瓶詰めされた日本酒のブランド「GI京都」や 、漬物、香などを実際にブースで販売する予定です。 また、人気の特別企画ゾーンはさらにパワーアップしています。今回で4回目を迎える「フェムケアゾーン」は、ミニセミナーで立ち見が出るほど注目度が高く 、今回も測定体験コーナーなどを用意しています。 さらに、今年からの新しい取り組みとして「マタニティ&ベビーケアゾーン」を新設しました。「家族みんなで支える出産と育児のケアをドラッグストアから」をテーマに 、妊活サポートからプレマタニティ、産後ケア、ベビーグッズまで幅広くカバーします。現代の共働き世代や男性の育児参加に寄り添い、家族全員での育児を支える商品やサービスを提案します。 このマタニティ&ベビーケアゾーンは、先ほどのフェムケアゾーンと親和性が高いため会場内で隣接させており、出展企業にとっても来場者にとっても相乗効果が生まれるように配慮しています。また、会場内には授乳室やオムツ替えコーナー、ベビーカー優先入場ゲートを設置し、赤ちゃん連れのご家族が快適に過ごせる環境を整えています。 フェムケアゾーン Q. 「食と健康ゾーン」でも、アワードの選考基準が変わるなどの新しい動きがあるそうですね。 今年から「食と健康アワード」において、従来の「食品カテゴリー」と「サプリメントカテゴリー」を別々に分けて表彰することにしました。 これまでは一括で審査していたため、どうしても試食して「おいしいもの」が受賞しやすい傾向にありました。しかし、サプリメントの本来の価値は効能効果や栄養補給にあります。サプリメントを開発するメーカーにも公平にスポットが当たるよう、市場の伸長率や販促への取り組みなども含めた新しい明確な表彰基準を構築し、それぞれの部門でグランプリやダイヤモンド賞などを授与する形へと進化させます。 Q. 薬学生や大学に向けて、今回新しく用意された企画はありますか? 今回、最も注目していただきたいのが、新設する「ドラッグストアアカデミックフォーラム」です。このフォーラムに参加する前に、まずは展示ホールの「主催者展示コーナー」を見てから参加していただくと、業界への理解がより一層深まります。主催者展示コーナーでは、売上・店舗数の推移、災害時の役割、DXやSDGsへの取り組みなどがパネルで展示されており、まずはここで業界の「全体像」をつかむことができます。ドラッグストアが確固たる社会インフラであることを頭に入れてからアカデミックフォーラムに進むことで、発表される研究の価値や、薬剤師が果たすべき未来の役割がより深く見えてきます。アカデミックフォーラムは、ドラッグストアにおける薬剤師の高度な実践研究や地域医療への貢献を体系的に発信することを目的としています。具体的には、2024年から2025年にかけて各学会で発表された実績のある演題を一堂に集め、ポスターセッション形式で展示します。一般のお客様の混雑を気にせず、学生の皆さんや大学の先生方がアカデミックな視点でじっくりと交流できるよう、今回は会議棟で開催します。会場では各企業の特色が分かる動画などを放映する予定ですので、それぞれの企業のカラーや最先端の取り組みを肌で感じていただけるはずです。 主催者展示コーナー また、例年大盛り上がりの「薬科大学対抗クイズ大会」も開催します。昨年は関東の大学の6チームが競い合いましたが 、今年は全国規模に広げようと、関西の大学にも積極的にお声がけをしています。大学の枠を超え、現役の勤務薬剤師も交えたチーム戦となるので 、こちらもぜひ楽しみにしてください。 薬科大学対抗クイズ大会 Q. これからの未来において、ドラッグストアが果たすべき「役割」についてどのようにお考えですか。 病院は「病気になってから」行く場所ですが、ドラッグストアの役割は「病気になる前」の日常生活の中でお客様と出会えることにあります。日々の生活習慣や、ちょっとした体の不調のタイミングで出会ったときに、「受診を勧めるべきか」、それとも「食生活や運動、サプリメントで対応できるか」を判断し、重篤な病気になる前の段階でサポートができます。生活者の身近に寄り添い、より長く元気に過ごしていただくための社会インフラとして 、ドラッグストアは国全体にとっても非常に重要な役割を担っていくと考えています。 Q. 最後に、未来の薬剤師を目指して勉強に励む薬学生へのメッセージをお願いします。 ドラッグストアの店舗伸長率(107%)においては、直近3年間でコンビニエンスの伸長率より高く、売上において10兆円を超えてなお、13兆円規模へと右肩上がりに成長を続けている極めてダイナミックな業界です。確固たる社会インフラとしての位置付けを確立した今でも 、私たちが薬剤師として社会に「やれること」はまだまだたくさんあります。 今回新設するアカデミックフォーラムを見ていただければ、ドラッグストアがいかに専門的な実践研究を行い、未来への可能性を秘めているかがお分かりいただけると思います。皆さんが将来どこで働くかを考える就職活動の選択肢として、これほど未来のある業種・業態はほかにありません。ぜひドラッグストアショーに足を運び、その熱気と未来の一部に直接触れてみてください。 第26回 JAPANドラッグストアショー https://www.drugstoreshow.jp/
- 失敗を恐れず、学校の外へ一歩を――学生主体のプラットフォームで届ける「新たな価値」とは【日本薬学生連盟 2026年度会長・田代莉咲子さんインタビュー】
田代さん 日本薬学生連盟(APS-Japan)の2026年度会長に、昭和医科大学薬学部4年の田代莉咲子さんが就任した。これまでに2年間、同連盟の本部役員(副会長など)を経験してきた田代さんに、新体制への思いや今後の展望、そして全国の薬学生へのメッセージを聞いた。 現在、日本薬学生連盟には52大学、223人(2026年5月時点)の会員が所属しており、4年生や5年生を中心に日々活発な活動が展開されている。 変化と失敗を恐れずに挑戦する組織へ これまで生徒会や実行委員会などで「サポートする立場」を多く経験してきた田代さんにとって、組織の先頭に立って引っ張る会長職への就任は大きな挑戦であり、今も不安はあるという。しかし、それ以上に「自身の成長の機会にしたい」という強い思いが原動力となっている。同連盟が掲げる「薬学生にプラットフォームとして新たな価値を提供する」というビジョンに対し、田代さんは「学校では経験できないこと」を新たな価値として定義する。 「弊団体は、学生のみで運営を行っている点が大きな特徴です。OB・OGからの助言はあるものの、方針決定からイベント運営まで、すべて自分たちで調べて動かなければいけません。この主体的な経験こそが、学校や他の組織では得られない独自の価値です」 田代さんが1年間の任期中に掲げる目標は、「変化や失敗を恐れずに挑戦する団体になること」だ。今年度の本部メンバー(副会長、財務統括、広報統括、プロモーション統括、国際渉外統括など)は連盟での活動歴が浅いからこそ、従来の枠にとらわれない新鮮なアイデアや高い推進力を持っている。 「今までのやり方に固執して変化をためらうのではなく、リスクを検討したうえでまずはやってみる。失敗してもそこからのリカバリーを全員で考える、そのような姿勢を大切にしたいです」と語り、自身の殻を破るとともに、過去2年間見てきたものとは異なる新しい連盟の形を目指している。 低学年のうちに「興味のある分野」を見つける 試験や実習を控える薬学生に対し、田代さんは低学年のうちに「自分の得意分野や興味のある分野を見つけ、可能であれば極めること」を勧める。自身に目標や理想の薬剤師像というモチベーションがあれば、大きな物事も乗り越える原動力になるからだ。自身は小児医療への興味をきっかけに、2年生の時に先輩との縁で同連盟に入会した。学外のコミュニティーに早い段階から触れる意義について、田代さんは自身の視界が大きく広がった経験を挙げる。 同じ大学の仲間だけでは進路や思考が似通いがちになるが、同学年であっても、研究に注力している学校、漢方に強みを持つ学校、あるいは薬局や地域医療に力を入れている学校など、大学ごとに異なる特色や強みを持つ薬学生、そして多様な進路を見据える仲間と出会うことができる。田代さんも多様な視点に触れたことで、「病院一択だった視野から、他の世界も知りたいと思えるようになった」と振り返る。 独自のメリットと学業との両立 学生主体で運営される同連盟では、企画、プレゼンテーション資料の作成、広報のデザインといったパソコンスキルや社会人マナーが、活動を通じて自然と身につくというメリットがある。これらは大学の講義だけでは得がたいスキルであり、学内のグループワークやレポート作成の際にも大いに生きている。 また、「勉強が忙しくて両立できるか不安」という声に対しては、連盟内で徹底した配慮がなされている。定期試験期間にあたる7月と1月は、団体としてのイベント開催を行わず、試験勉強に集中できる体制を整えている。同連盟には、学生の状況に合わせて活動できるよう、以下の2種類の会員制度が用意されている。 レギュラー会員:団体のイベント活動に積極的に参加することができるほか、複数の会員特典や限定イベントへの参加が可能。※新しく会員登録された人は、まずはレギュラー会員として登録される。 スタッフ会員:スタッフ登録をしたレギュラー会員。レギュラー会員の特典に加え、部門・委員会の各部署に所属しながら、「日本薬学生連盟を運営する側」として活動することができる。 スタッフ会員は、自身の忙しさや興味に合わせてプロジェクトごとに活動量を調整できるため、それぞれのライフスタイルに合わせた無理のない両立が可能である。 地域展開と「イチオシ」の交換留学プログラム 今年度は、対面とオンラインを合わせて年間約20のイベント開催を目標に掲げている。これまでは関東中心、あるいは東京・名古屋・大阪での開催が主であったが、今年度は春の新入生歓迎会を北陸でも開催するなど、地方支部の復活を見据えた地域的な広がりを見せている。今後は、病院や薬局、製薬企業に留まらない「薬剤師の資格を生かせる多様なキャリア」を伝えるイベントの構想や、英語のハードルを下げて海外へ飛び出すアウトバウンド(海外派遣)企画の拡充を目指している。 その中でも、田代さんが最も一押しする企画が「交換留学プログラム(SEP)」である。今年の夏に開催される交換留学プログラムは、東京と名古屋の2地域で実施が予定されている。 交換留学プログラム(昨年度) 「長期休暇中に、海外からの学生を日本に招き、共に対面で過ごすプログラムです。最初の1週間は東京で病院・薬局見学やワークショップ、観光を行い、その後の1週間は名古屋へ移動してプログラムを展開します。海外の薬学・医療事情についての意見交換はもちろん、プログラム後も密に連絡を取り合うような、密度の濃い国際的な友情が生まれます」 実は田代さん自身、2年生の時にこのプログラムに参加した際、ある海外の学生から「一緒に遊びに行こう」と声をかけられたことがきっかけで、非常に親しくなった経験を持つ。プログラムが終了した現在もその学生とは密に連絡を取り合っており、国境を越えた深い絆が続いているという。「英語に苦手意識があっても、互いに歩み寄る姿勢があれば深く打ち解けることができる、非常に魅力的な企画です」と、実体験を交えてその魅力を語る。 最初の一歩を踏み出す薬学生へのメッセージ 「いきなり大規模なプログラムに参加するのはハードルが高い」と感じる学生に対しては、交流がメインのイベントへの参加を推奨している。9〜10月頃には、同連盟の主要イベントである「秋の新入生歓迎会(薬学生ジャンボリー)」の開催が予定されている。これらは堅苦しいワークショップではなく、他大学の初対面の学生同士が気軽に話せる交流中心の企画である。最初にしっかりとアイスブレイクの時間が用意されているため、一人での参加や初参加の学生でもなじみやすい工夫が施されている。 最後に、田代さんは全国の薬学生へ向けてエールを送った。 「日本薬学生連盟には、それぞれ異なる目標や理由を持って集まった仲間がいます。だからこそ、団体に所属して感じる魅力も、人の数だけ存在します。私自身、外の世界へ一歩踏み出したことで、それまで知らなかった世界を知ることができ、最高の仲間に出会うことができました。最初の一歩には勇気がいるかもしれませんが、ぜひ恐れずに挑戦してください」 プロフィール 田代 莉咲子(たしろ・りさこ) 昭和医科大学薬学部4年。日本薬学生連盟(APS-Japan)2026年度会長。同連盟にて副会長を含む本部役員を2年間経験後、現職に就任。高校時代まで習い事としてクラシックバレエに打ち込み、現在は趣味の舞台鑑賞や音楽、ドライブを楽しむアクティブな薬学生。普段はアルバイトや友人との食事など、等身大のキャンパスライフも大切にしている。 ■ 日本薬学生連盟案内・入会について 日本薬学生連盟では、共に活動する仲間を随時募集しています。入会費以外の会費(年会費・更新費など)は一切必要なく、一度の登録で卒業予定年度まで継続して在籍可能です。 入会費 一般:2,000円 協力団体よりお申し込みの方:1,500円 諸会費:年会費・更新費等は一切不要(卒業予定年度まで自動継続) ▼詳細・お問い合わせは公式ウェブサイト等をご覧ください。 日本薬学生連盟(APS-Japan) 公式ホームページ:https://apsjapan.org/ X:https://x.com/aps_japan Instagram:https://www.instagram.com/apsjapan
- 【福岡大学】薬学部生が若者へ届くメッセージを模索、薬物乱用防止「NO DRUG, KNOW DRUG キャンペーン」に参加
効果的な啓発方法について考える 福岡大学の薬学部生が、薬物乱用防止を目的とした「NO DRUG, KNOW DRUG キャンペーン」に参加している。 近年、SNS上での不適切な薬物情報や、医薬品の過剰摂取(オーバードーズ)を助長する情報の拡散が、若年層を取り巻く大きな課題となっている。こうした深刻な状況を受け、福岡市薬剤師会、FM FUKUOKA、福岡市が連携し、2010年度から社会貢献事業として同キャンペーンを展開してきた。 専門家も交えた意見交換 2026年は7月1日から9月6日までを啓発期間とし、各団体が多様な啓発活動を行う。福岡大学薬学部においても、課題解決型学習プロジェクト「ふくやくプロジェクト」を中心に、学生が主体となった広報活動やイベントの実施を予定している。 キャンペーンの開催に先立ち、5月13日には「第17回 NO DRUG, KNOW DRUG キャンペーン」に向けた意見交換会が開催された。福岡大学からは2人の代表者が参加し、九州大学、第一薬科大学、九州産業大学の学生とともに、若年層の心に届く効果的な啓発方法について活発な議論を交わした。 意見交換会に出席した薬学部2年次生の久保山瑠さんは、「SNSには誤った情報も多いため、正しい知識を分かりやすく伝えることが大切だと感じた。同世代だからこそ届けられるメッセージを発信していきたい」と力強く意気込みを語った。 また、薬学部の牛尾聡一郎助教は「学生が主体となることで、薬物使用の防止を呼びかけるだけでなく、不安や悩みを抱える人が相談に踏み出せるきっかけとなることを期待している」と述べ、学生たちの主体的な取り組みに大きな期待を寄せている。
- エーザイ、ローソン、ウェルネスダイニングが連携を開始――愛媛県今治市で認知症リスク低減に向けた3つの取り組みを始動
「のうKNOW」の画面イメージ エーザイ株式会社、株式会社ローソン、およびウェルネスダイニング株式会社の3社は、認知機能低下および認知症のリスク低減をめざした連携を開始した。2026年6月11日(木)より、愛媛県今治市内の一部ローソン店舗を舞台に、疾患啓発やツール・宅配食の販売など3つの具体的な取り組みを展開する。 他産業との連携による「認知症エコシステム」の構築を進めるエーザイが、身近な生活拠点であるコンビニエンスストア、そして食事制限食に強みを持つウェルネスダイニングと組むことで、誰もが認知症に備えられる環境整備を目指す。 3つの具体的な取り組み 今回の連携に基づき、愛媛県今治市内の一部ローソン店舗において、以下の取り組みが実施される。 1. 「あたまの健康セミナー」の開催 生活者がMCI(軽度認知障害)および認知症を正しく理解し、早期発見と対策の重要性を学ぶための疾患啓発活動である。ローソン店舗内のコミュニティースペースを活用し、エーザイがセミナーを行う。 開催日時:6月11日(木) 10~11時、13~14時(1日2回) 開催店舗:今治馬越町三丁目店 その他:今治別名店、伯方島インター店のモニターでもセミナーの様子が放映される。 2. 「のうKNOW®」短縮版(非医療機器)の販売 のうKNOW短縮版パッケージイメージ パソコンやスマートフォンなどを使い、簡便なトランプテストによって脳の反応速度や記憶力をチェックできるツール「のうKNOW」の短縮版を販売する。利用者が単独かつ約10分で定期的なセルフチェックを行えるのが特徴である。 販売期間:6月11日(木)より半年間(予定) 価格:1回あたり 税込550円(税抜500円) 販売店舗:今治馬越町三丁目店、今治別名店、伯方島インター店 3. 「おもいで彩り宅配食」の販売 認知機能に配慮した宅配食「おもいで彩り宅配食」を店舗で販売する。本商品は、国立長寿医療研究センターが監修し、エーザイが作成したガイダンスや手引きを基に、ウェルネスダイニングが栄養バランスと食べやすさを両立させて開発したメニューである(開発・製造・販売の責任はウェルネスダイニングに帰属)。 販売開始日:6月11日(木) 販売店舗:今治馬越町三丁目店、今治別名店、伯方島インター店、今治北日吉町店、大島吉海店 『おもいで彩り宅配食』メニュー一例 連携の背景と各社の狙い エーザイは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」において、貢献対象を医療領域だけでなく日常領域の生活者にまで拡大している。今回の連携を通じて、生活者の身近な場面でMCIや認知症について知る機会をつくり、誰一人取り残さない「認知症と共生する社会」の実現に貢献したい考えである。 また、地域密着の店舗運営を通じて健康や暮らしを支える価値提供を目指すローソン、および「健康になってもらうこと」を目的として管理栄養士による食生活のサポートを行うウェルネスダイニングの強みが融合することで、地域課題への新たなアプローチとして期待される。
- 薬剤師100人カイギ いよいよクライマックスへ!多様な薬剤師キャリアが語りつくされたVol.19の模様をレポート
「100人カイギ」とは、特定の地域やコミュニティに所属する人たち100人が一人ずつプレゼンを行ない、それぞれの生き方や考え方を共有することで緩やかに人と人を繋ぐことをコンセプトにした活動。その医薬関係者バージョンである「薬剤師100人カイギ」が2023年に発足して3年が経過。隔月ペースで5名ずつ登壇するイベントとして継続開催されてきた。先ごろ第19回目が川崎市の「F3rd X Uvance Kawasaki」を会場にハイブリッド開催された。 次回(8月22日開催)でいよいよ100人到達となるクライマックスを迎える中、Vol.19でも様々な思いで薬剤師の道を前進する5名のプレゼンテーションが行われた。その模様を紹介する。 「LINEと馬刺しと薬局探検隊」 吉田大貴さん 株式会社pharb 取締役/株式会社nobleme 代表取締役 吉田大貴さんは新卒で大手のドラッグストアチェーンに入社。4年目に調剤専門の薬局チェーンに転職してからは、転勤続きで目まぐるしい生活を経験します。派遣薬剤師として資金を貯めて独立を考えていた折、大学時代の友人から誘いを受けたことが、後の多彩なキャリアを切り拓く大きな転機になりました。 プログラミングとの出会いとスタートアップへの道 誘われた会社(株式会社pharb)では社員が自主的にプログラミングを学んでいました。吉田さん自身もこの時初めてパソコンを本格的に触り、独学でシステム開発の勉強を開始しました。そこで自ら構築したシステムを、スタートアップ支援プログラムに応募したところ、見事に採択されます。この時から吉田さんは事業構築や資金調達、企業価値の向上といったビジネスの洗礼を受けることになります。試行錯誤の期間が長く続きましたが、成果としてこのオンライン服薬指導システムの立ち上げへと結びつきました 。 コロナ禍での先進的な取り組みと失敗から生まれた馬刺しフランチャイズ事業 まさにその当時はコロナ禍の最中で、オンライン服薬指導は先進的な取り組みとして話題を呼びました。 また、開発過程では「LINE」の仕組みに深く馴染んでいたため、この知見を活かして薬局の集客用LINEツールをリニューアルしたところ、他の企業からも作成依頼が殺到。このニーズも本格的な事業として進めるために新会社「nobleme」を創業しました。SNSやYouTubeチャンネルを開設するなど、多角的な情報発信を続けていきます。 実は吉田さんはコロナ禍の時期に「無人販売のお肉店」ビジネスにも参入したものの、これが大赤字を叩き出して閉店へと追い込まれるという経験もありました。しかし、残された冷凍庫を薬局内に持ち込み、個人的に美味しいと感じていたという理由で「馬刺し」を仕入れて試験的に販売を開始。するとこれが予想以上にSNSでも反響を呼び、周囲の薬局からの「うちでも馬刺しを販売したい」という声にこたえるようにフランチャイズ事業をスタート。いまでは30店以上を数えるほどの成長を遂げます。 すべての挑戦はキャリアの伏線になる 吉田さんはこれまでの歩みを振り返り、SNSなどで外の世界に向けて発信を続けることがいかに大切であるかを力説します。発信を続けることで異業種との繋がりが生まれ、一見関係のない点と点が、後から思わぬ形で結びついていくからです。全力を尽くした経験は、後から必ず自分だけのユニークな『特色』やキャリアの『伏線』となり、未来の自分を形作ることになると語りました。 笑顔を生み出す薬学生 いつきさん 富山大学大学院(薬系)修士2年 長野県出身のいつきさんは、中学生の時に経験した激しい腹痛をきっかけに薬学の道を志しました。市販薬によって症状が改善し、その薬をお守りのように持ち歩くことで得られた安心感から、「薬を作ることで多くの人の日常を守り、誰かの助けになりたい」という強い想いを抱くようになります。 富山大学に進学し、現在は大学院修士2年生として研究に励む傍ら、複数のサークルや学生団体に所属し、精力的に活動しています。 患者さんの声を聞くための学外活動と小児医療への想い 将来の進路としては小児用医薬品を開発し、病気の子どもたちを救うことを目標にしていましたが、一方では保育士を目指すか迷ったほど子どもが大好きだったことから、「子ども」と「患者さんの声」の双方に関わる活動を模索。大学に入り、まず第一歩として取り組んだのが「ぬいぐるみ病院」という活動でした。これは子どもたちにお医者さん体験をしてもらうことで病院への恐怖心を和らげる活動ですそして1年生の冬に全国の薬学生が夢を語る「全国薬学生アワード」に出場し、活動をプレゼンします。これをきっかけに医療学生団体「Links-mil」にも参加し、闘病経験者との対談などの活動をはじめ、全国の仲間との交流を深めていきました。 地域コミュニティでの漢方カフェと手話・国際交流の再開 大学2年生の時には、過疎化が進む富山県砺波市で医学部の友人と共に「漢方カフェ」を立ち上げました。カフェでは地域の住民から薬草の知識を教わるなど、地域ならではの空間を作り上げることを意識しました。また、コロナ禍で活動が停止していた大学内の「手話会」を再開。手話講座を開けるレベルまで上達し、マスク生活で口元が見えず困窮していた聴覚障害者の架け橋となる活動を展開しました。さらに、台湾やタイからの留学生・交換留学生とも積極的に交流し、異文化の視点から医療や生活習慣の違いを学ぶなど、好奇心旺盛に視野を広げ続けています。 出会いと挑戦のサイクル 現在は小児薬物療法研究会学生部会の副代表として小児医療への学びに注力しています。 ここまでの活動を振り返り、いつきさんは「出会いが挑戦を生み、その挑戦がまた新しい出会いを生む」という持論を語りました。一歩を踏み出すことで世界が広がり、そこで得たアドバイスによって次の挑戦へ繋がる好循環が生まれます。そして、これからは「誰かの『やってみたい』という想いを後押しできる存在になりたい」と、後輩を後押ししていくことへの抱負も語りました。 昭和の熱血おじさん薬剤師 田代結城さん 株式会社DoraPharma取締役/一般社団法人日本薬学生支援機構代表理事/株式会社ユニコーン薬局取締役 田代結城さんは現在、3つの会社・組織を統括しています。7店舗を運営する調剤薬局「ユニコーン薬局」、薬局や医療業界向けの採用支援を展開する「DoraPharma」、薬学生に向けて成長のきっかけや出会いを提供する「日本薬学生支援機構」。薬局の実務の現場で得た知見や発見を外部に発信・アドバイスし、さらにその最先端の業界動向を薬学生に認知してもらうという、相互に好循環を生み出す構造になっています。 独立への歩みとコロナ禍の苦難 2007年に社会人となった田代さんは、ドラッグストア企業へ入社し、薬局実務やマネージャー職、新卒等の採用担当など様々な経験を積みました。そこで培った10数年の経験が現在の強固な土台になりました。この経験を元に、代表と2名で独立を果たし、DoraPharmaを創業。しかし創業直後にコロナ禍が直撃し予定していたイベント等が一切開催できず、資金繰りに苦悩した苦い経験もありました。 薬学生支援と「働きがい日本一」の薬局経営へ コロナ禍を経て、田代さんは薬学生が楽しみながら自身のキャリアに関心を持てるよう、ユニークな施策を次々と打ち出します。 薬学生が夢を語るイベント「薬学生アワード」、人生ゲームのように薬剤師の様々な職種を疑似体験できるキャリアゲームの開発、薬局業界で活躍するトップランナーを招いた52週連続オンラインセミナー等々。 一方で薬局運営では、「働きがい日本一の薬局組織」というコンセプトを掲げています。自社独自の「セブンバリュー(7つの価値観)」を定めて仕組み化を図っています。会社の経営状態や各店舗の利益状況を薬局長などへ完全にオープンにし、働く上での「納得感」を醸成。その企業風土から自発的な新しいチャレンジへと繋がる信頼関係を築いています 。 将来進む道に悩む若者へ 田代さん自身、若い頃は先のことを明確に考えていたわけではなく、瞬間瞬間のやりたいことに向き合い、積み上げてきた結果として今ようやく未来が見えてきた段階だと言います。独立時の苦い経験も今では前向きにとらえて糧にしています。そのうえで、先のことは誰にも分からないからこそ、今、目の前にあるやるべき仕事や課題に一生懸命取り組んでほしい。その地道な積み重ねの先に、いつか必ず本気で情熱を注げる本当の目標が現れる」と語りました。 人生の使い道を整える薬剤師 鈴木理恵さん 国際コーチ(ACC)、整理収納アドバイザー 鈴木理恵さんは現在、薬局勤務の傍ら、個人事業主として国際コーチ、整理収納アドバイザー、各種企業研修の講師など多彩な活動を展開しています 。 薬学の道を志したきっかけは、高校2年生の時に先生から聞いた「薬剤師はいいぞ、名義貸しで月30万だ!(?)」という昭和の都市伝説のような言葉に心を動かされたからで、出身地である宮崎から出たいという思いもあり、郷里から遠く離れた千葉大学薬学部へ進学しました 。 9年間の講師生活と10年間の専業主婦生活 学生生活を謳歌した結果、国家試験に一度不合格となる挫折を経験したものの、予備校を経て無事に合格。そのままその予備校で国試対策の講師を9年間務めることになります。この9年間が、現在の研修講師としての確かな土台となりました 。 その後、結婚、妊娠、出産を経て、10年間の専業主婦生活に入ります。3人の子どもを育てる中、目の前の育児イベントを必死にこなし続ける日々を送りました。 そして一番上の子の小学校入学を機に、6年制卒の薬剤師が社会に出始めるタイミングと重なった焦りもあり、約20年のブランクを経て実務未経験のまま薬局のパート薬剤師として社会復帰を果たしました。 コーチングとの出会いと服薬指導への応用 子どもたちが思春期を迎えると、親の言うことを聞かないという新たな壁に直面し、解決の糸口を求めて書店で手にした本からコーチングを学び始めます。 このことは仕事の上でも一つの転機になります。対話の手法を一から学んだ鈴木さんは、薬局での服薬指導にも実践的に応用。患者さんに対して適切な問いを投げかけることで、患者自身から自発的な言葉を引き出すことに成功します。コーチングのスキルは、薬剤師としての業務の質を劇的に向上させることになりました。 自分らしく働いていくためには 鈴木さんもまた、最初から強い熱意や明確な計画をもっていたわけではなく、その時々に直面した進学、国試、育児、子供の思春期などの課題に向き合い、試行錯誤して行動を重ねてきた結果が、現在の「薬剤師×国際コーチ×整理収納アドバイザー」という唯一無二のキャリアに繋がっています。「目の前にあることに全力を尽くして学び続けることで、自分らしい生きる道が後から必ず拓けていく」という経験に基づく希望を提示し、プレゼンを締めくくりました。 薬学界のジャンヌダルク 「メディセレのしゃっちょう」こと児島惠美子さん メディセレスクール代表取締役社長 「メディセレのしゃっちょう」の愛称で親しまれている児島惠美子さんは、薬剤師国家試験予備校「メディセレスクール」の代表をはじめ、多方面で事業展開を行っています。精力的に華々しく活躍しているように見られる児島さんですが、人生の大きな転機はすべて「マイナス体験」がきっかけでした。 幼少期に実の兄を医療事故で亡くした経験から「将来は小児科医になって子どもたちを救いたい」という強い夢を抱いていました。しかし、センター試験の受験直後、今度は父親が胃がんを患っていることが発覚。家計への負担などを顧みた児島さんは、医師になる夢を断念。失意の中でも気持ちを切り替え、同じ医療の道である薬学部への進学を決意しました。 予備校講師としての頭角と「メディセレ」の創業 大学卒業後は国試対策予備校の講師としてのキャリアを歩み始めます。持ち前の熱意と指導力で、若くして要職を任されるまでになりました。しかし、経営方針と自身の考えにずれを感じるようになり、児島さんは自分が理想と考える教育を実現するために独立を決意。そして立ち上げたのが、現在の「メディセレスクール」です。創業にあたっては、かつて自分の夢を阻んだ「医療事故」を起こさせないという願いを込め、「倫理観と思いやりの心を持った質の高い医療人を育てる」という理念を掲げました。 災害医療で見えた「あるもので工夫する」重要性 児島さんは災害時における医療支援活動にも情熱を注ぎます。東日本大震災をはじめ、大規模災害の折には被災地へいち早く足を運び、物資や医療体制が整っていない極限状態の現場で、薬剤師として何ができるかを模索し続けました。被災地での過酷な支援経験を通じて、環境や物資が揃っていない状況で、今あるものをいかに代用し、工夫して乗り切るかというマインドを学んだと語ります。これは企業経営や組織運営にも同じことが言えます。「今いるメンバーで、今あるリソースを最大限に活かしてみんなで頑張る」という感覚こそが、これからの時代を生き抜く強さになると説きました 。 すべての経験を前進する力に変えていく 最後に児島氏は、人生における挫折や不条理なマイナス体験があっても、それを単なる不幸で終わらせるのではなく、見方を変えることによって次の挑戦への原動力へと変えていけるはずだと語り、講演を締めくくりました。 以上、5名のプレゼンターによる波乱と冒険に満ちた薬剤師(薬学生)の半生が語られた形だが、どの話からも共通して、計画通りにいかなくても、また計画性が無かったとしても、地道に目の前の課題に熱意をもって向かい合うことで、自身が納得できる場所にたどり着けるというメッセージが込められていた。 学生にとっては「将来何になりたいの?」と聞かれたときに、明確なビジョンが描けていない人も多いはずだが、ここで紹介した先輩方の話からは、それでも大丈夫なのだということを汲み取ってもらえたら良いと思う。 薬剤師100人カイギは次回8月22日(土)開催のVol.20にて累計100名目のプレゼンを以って完結する予定だ。 >薬剤師100人カイギ Vol.20 申込み
- 【塩野義製薬】国内初の小児ADHD対象デジタル治療補助アプリ「ENDEAVORRIDE®(エンデバーライド)」を新発売
塩野義製薬株式会社は、2026年6月5日、小児期における注意欠如多動症(ADHD)の治療補助を目的とした国内初のデジタル治療補助アプリ「ENDEAVORRIDE®(以下、エンデバーライド)」の販売を開始した。本アプリは、同社が米国のAkili, Inc.(以下、Akili社)から日本および台湾における独占的開発権・販売権を取得して開発を進めてきたものである。 背景と製品の特長 ADHDは不注意、多動性、衝動性を特徴とする神経発達症であり、学童期における有病率は約7%ともいわれている。これらの症状は学業や就労などの日常生活に支障を及ぼす可能性がある。 エンデバーライドは、スマートフォンやタブレットを通じて取り組むことで症状の改善を目指す、小児ADHD患者向けのデジタル治療補助アプリ(医療機器プログラム)である。Akili社のコアテクノロジー「SSME™(Selective Stimulus Management Engine)」に基づいて設計されており、患者ごとに最適化された二重課題を行うことで大脳皮質を刺激し、脳の前頭前野を活性化させる。これにより、患者の不注意、多動性、および衝動性を改善するように促す仕組みとなっている。 なお、米国においては同技術を用いたアプリが「EndeavorRx®」の製品名で、8〜17歳の小児ADHD患者を対象に世界初のデジタル治療用アプリとしてすでに承認・販売されている。 国内第3相臨床試験の有効性と安全性 今回の発売は、塩野義製薬が日本国内で実施した第3相臨床試験の良好な結果に基づいている。 試験の概要は以下の通りである。 対象:通常の環境調整や心理社会的治療を受けている6〜17歳の小児ADHD患者164人 主要評価項目:ADHD重症度評価尺度である「ADHD-RS-IV 不注意スコアのベースラインからの変化量」 結果:エンデバーライド群は、通常治療を継続した群に対して、治療開始6週時点で統計的に有意な改善(p<0.05)を認め、有効性と安全性が検証された。 今後の展望と治療選択肢の拡大 ADHD治療においては、患者や保護者のニーズに応じた治療選択の重要性が報告されている。従来の環境調整や心理社会的治療、薬物治療といった選択肢にデジタル治療補助アプリが加わることで、多様なニーズへの対応が可能になると期待されている。 塩野義製薬は、医療用医薬品の提供にとどまらない多様なヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」への変革を進めており、今回の新発売を通じて、患者とその家族のQOL(生活の質)向上に貢献していく構えである。 薬学生が知っておくべきデジタル医療の未来 今回紹介した「エンデバーライド®」の登場は、これからの医療における大きな変革を象徴している。これまでの「薬(化学物質)」を中心とした治療に加え、スマートフォンのアプリなどの「デジタル技術」が正式な医療機器(治療補助アプリ)として処方される時代が、まさに今、日本でも本格的に幕を開けた。 もちろん、治療薬やアプリの選択、処方決定は医師の専権事項である。しかし、将来、医療の現場へ進む薬学生には、医師による処方意図を正しく理解し、患者や保護者が正しくアプリを使いこなせるようサポートする役割が期待される。 薬物治療だけでなく、こうした最先端のデジタルヘルスケアの知識をいち早く吸収することは、今後の大きな強みとなる。医師をはじめとする多職種と連携しながら、患者や保護者の多様なニーズに寄り添い、最適な治療を支える一翼を担う医療人を目指して、日々の学びを大切に突き進んでほしい。
- 【第一三共ヘルスケア】OTC緊急避妊薬「ノルレボ®」のLINE公式アカウントを開設。ブランドサイトの英語対応など多言語展開も強化
第一三共ヘルスケア株式会社は2026年6月5日、日本初のOTC緊急避妊薬「ノルレボ®」(要指導医薬品)のLINE公式アカウントを開設した。緊急避妊薬を必要とする女性が安心して速やかに購入できる環境の整備を目指し、購入前のセルフチェックから服用後の体調管理までを総合的にサポートする。 同アカウントは利用時の個人情報入力が不要で、アカウント名や通知メッセージに「妊娠」や「避妊」の文言が表示されないなど、プライバシーに配慮した設計が特徴である。また同時に、ブランドサイトの英語表示への対応や、店頭資材の多言語展開も開始した。 LINE公式アカウントの主な機能 公式LINEアカウントでは、主に以下の2つの機能を提供する。 服用前セルフチェック ノルレボを店頭で購入できる可能性があるかを事前に確認できる機能である。同製品の購入・服用には一定の条件があるため、来店前の確認を推奨している。チェック結果は画像として保存でき、薬局やドラッグストアの店頭で販売可否チェックを受ける際に提示することも可能である。 ※ただし、実際の服用可否は研修を修了した薬剤師の確認が必要となる。 服用3週間後のお知らせ機能 ノルレボは服用から3週間後に、妊娠検査薬の使用や医療機関の受診による妊娠の有無の確認が必要となる。希望する利用者に対して、適切なタイミングで体調確認や受診判断を促すメッセージを配信する。 ノルレボ公式LINEアカウント内 リッチメニューイメージ セルフチェックに回答すると、3週間後の通知設定ができるアイコンが表示される。 ブランドサイトの英語対応と多言語展開 2026年2月の発売以降、同製品のブランドサイトや取扱店検索システムへのアクセス数は、同社の他製品と比べて多い傾向にあるという。 日本語を母語としない購入希望者が来店前に情報収集しやすくなるよう、ブランドサイトの英語対応を開始した。さらに、店頭で使用する「ノルレボ服用前チェックシート」や「添付文書」「薬の説明文書(使用者向け医薬品ガイド)」についても多言語化を実施。製品情報ページにおいて、英語、簡体字、繁体字、韓国語、ポルトガル語の資料を公開している。 ノルレボ ブランドサイト 英語対応画面イメージ OTC緊急避妊薬「ノルレボ®」の製品特徴と購入条件 「ノルレボ®」は、医療用の「ノルレボ®錠1.5mg」と同一成分を同量配合したスイッチOTC医薬品であり、一定の要件を満たした薬局・ドラッグストアで購入可能である。 効果:妊娠の不安がある性交後、72時間以内の服用で妊娠を防止する効果が期待できる。排卵の抑制や受精の阻止、受精卵の着床阻止により、妊娠そのものを防ぐ。 購入条件:服用する女性本人のみが購入可能(男性による購入は不可)。購入に際してパートナーや親の同意は不要で、年齢制限もない。 販売方法:緊急避妊薬に関する研修を受けた薬剤師による確認の後、薬剤師の面前で服用する必要があり、製品を持ち帰ることはできない。 価格:1錠 メーカー希望小売価格 税抜き 6,800円(税込み 7,480円) 同社の調査によると、1年以内に性行為の経験がある18〜49歳の女性のうち、予期しない妊娠のリスクを経験した割合※は約2割にのぼる。第一三共ヘルスケアは、女性が自らの意思で速やかに購入できる環境を整えるとともに、性別を問わず避妊への正しい理解を広げる取り組みを今後も進めるとしている。 薬局の役割変化とこれからの薬剤師に求められる職能 OTC緊急避妊薬「ノルレボ®」の登場と、今回のデジタル・多言語展開という一連の動きは、これからの薬局や薬剤師のあり方を大きく変える象徴的な事例である。これから医療の現場へと進む薬学生には、この変化を自身の未来の職能と重ね合わせて捉えてほしい。 これまでの医療用医薬品とは異なり、OTC緊急避妊薬の登場によって、薬局は「処方箋を持たない生活者」が不安や焦りを抱えて最初に駆け込む窓口となった。研修を修了した薬剤師による確実な条件確認と、プライバシーへの細やかな配慮を伴う対面指導は、地域住民の健康と権利を守る重要な砦である。 また、今回の多言語展開が示す通り、今後の医療現場においては、日本語を母語としない患者への対応力も不可欠な要素となる。言葉や文化の壁を越え、適切な情報と安心を提供できる視点を持つことは、これからの薬剤師にとって強力な強みとなるはずである。 単に薬学の知識を修めるだけでなく、「目の前の人が何を必要とし、どうすれば安心して薬を受け取れるか」に寄り添える先進的な視点を持ってほしい。皆さんの日々の学びの先には、人々の人生の選択肢を支え、尊厳を守るという極めて重要な使命が待っている。 ノルレボ公式サイト:https://www.daiichisankyo-hc.co.jp/en/site_norlevo/ ※性行為をした後で、「避妊に失敗した可能性がある」「妊娠したくないのに避妊をせずに性行為をした」といった経験
- FAPA2026:日本薬剤師会学生会員を対象とした参加登録費割引の申請受付中
2026年11月3日(火)〜7日(土)にタイ・バンコクで開催される「第31回アジア薬剤師会連合学術大会(FAPA2026)」において、日本薬剤師会の学生会員を対象とした参加登録費の割引が適用されることとなった。 アジア圏の薬剤師や薬学生が一堂に会する貴重な国際学会に、通常よりもお得に参加できる絶好の機会である。 概要 FAPA2026への参加を予定しており、本割引の適用を希望する学生会員は、期日までに指定のフォームから回答を行う必要がある。 対象者:日本薬剤師会 学生会員 回答期限:2026年6月30日(火)まで ※特別会員(学生会員)の年会費は無料。 4つの会員特典 1 日本薬剤師会ホームページ(会員向けページ)の閲覧可 会員になると、事務局よりIDとパスワードを発行しますので、そちらを用い会員向けページにアクセスできます。 2 生涯学習支援システムJPALS(ジェイパルス)の無料利用 学習したことを記録し、整理しながら学習を進めることができるWEBシステムです。 3 日本薬剤師会が開催する研修会の案内 会員になると、日本薬剤師会若しくは都道府県薬剤師会が開催する研修会のご案内を送らせていただきます。 ※申し込みフォームで希望を選択した方に限る。 4 日本薬剤師会雑誌への投稿可 会員になると、日本薬剤師会雑誌への投稿が可能になります。 申し込みはこちら 問い合わせ先 日本薬剤師会 総務部総務課 TEL:03-3353-1170 gakusei-entry@nichiyaku.or.jp 大会概要と重要スケジュール 学生割引の申請以外にも、アブストラクト(演題抄録)の提出期限や、一般向けの早期割引登録期限が迫っているため、合わせて確認されたい。 会期:2026年11月3日(火)〜11月7日(土) 場所:タイ・バンコク 主催:アジア薬剤師会連合(FAPA)、開催地のFAPA加盟団体 期限の迫る重要スケジュール アブストラクト提出期限: 2026年6月30日(火)まで(受付中) 早期割引参加登録期限: 2026年7月31日(金)まで(受付中) ・FAPA2026 大会公式サイト ・FAPA2026 プロモーション動画は(日本薬剤師会YouTubeチャンネル) ・フライヤー(日本語版PDF) ・フライヤー(英語版PDF)











