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  • 東京薬科大学と江戸川学園取手中・高等学校が高大連携協定を締結 ―― 次世代の医療・科学人材育成へ

    左から、山本宏之氏、東京薬科大学 三巻祥浩氏 東京薬科大学と学校法人江戸川学園が設置する江戸川学園取手中・高等学校は、2026年2月20日、高大接続連携教育の推進を目的とした連携協定を締結した。本協定は、双方の教育内容の充実と、生徒および学生の資質向上を図ることを目指している。 協定締結の背景と目的 東京薬科大学には、例年、江戸川学園取手中・高等学校から多くの生徒が入学しているという実績がある。グローバル化の進展や科学技術の革新、国内における生産年齢人口の急減といった激しい社会変化の中、両者は新たな価値を創造できる人材の育成が必要であるとの認識で一致した。 本協定により、東京薬科大学の教員が中・高の教育プログラムに積極的に関与することで、生徒一人ひとりの才能や個性を最大限に引き出す。さらに、薬学・生命科学分野において社会に貢献できる優れた理系人材を輩出するための、強固な協力体制を構築していく方針である。 具体的な事業展開 本協定に基づき、両校は多角的な事業を展開していく。大学と中・高等学校の間で互いに講師を派遣し合うほか、高大接続教育への支援や、双方で実施する課外授業・FD活動を通じた交流活動を推進する。 また、中・高等学校の生徒に対して大学の授業や各種講座への受け入れを行い、大学院生との交流や図書館をはじめとする大学施設の利用機会も提供する。さらに、大学側の教育・研究・社会貢献活動や学生の教育実習などに対し、中・高等学校が支援を行うなど、相互の教育的成長を促すための協議を継続していく。 東京薬科大学・学長の三巻祥浩氏は、「本学は創立146年、八王子キャンパス移転50年という節目を迎え、これまで時代に先駆けて薬学・生命科学の専門人材を育成してきた。2022年度から高等学校で本格導入された探究学習において、本学との連携が生徒諸君の関心をより専門的・体系的に深める機会となることを期待しており、優秀な人材の育成につなげたい」と語った。 一方、江戸川学園取手中・高等学校・学校長の山本宏之氏は、「本校は『心豊かなリーダーの育成』を理念に掲げ、近年は理数教育や探究活動に注力している。今回の連携により、生徒が最先端の学びや研究に触れることで、科学と社会のつながりを実感できると確信している。これは単なる進路選択にとどまらず、生涯学び続ける姿勢を培う契機となり、未来を担う若者の育成に結実することを願っている」と期待を寄せた。 今回の協定締結により、茨城と東京の教育機関が手を取り合い、理系教育のさらなる高度化が進むことが期待される。

  • 神戸学院大学の学びが街へ!「まなびーフェスタ」が神戸ハーバーランドumieで開催

    2026年3月28日・29日の2日間、神戸ハーバーランドumieを舞台に、神戸学院大学による体験型イベント「まなびーフェスタ」が開催される。全10学部が集結し、ショッピングモールという日常の空間が、知的好奇心を刺激する「キャンパス」へと姿を変える。 同イベントは、大学が持つ専門的な知見を、小・中・高校生やその保護者に分かりやすく伝えることを目的としている。参加費は無料で、大学オリジナルのノベルティ配布や、豪華グッズが当たるスタンプラリーも実施される予定だ。 イベント概要 日時:  2026年3月28日(土)〜3月29日(日) 10:00〜17:00 場所:  神戸ハーバーランドumie センターストリート1F 中央特設会場 サウスモール1F 中央特設会場 対象:  小学生・中学生・高校生、および保護者 参加費:  無料(※一部プログラムは事前予約・先着順) 学びを遊びに変える、多彩なワークショップ 会場では、各学部の特色を生かした個性豊かなプログラムが展開される。 【両日開催】 歴史を肌で感じる人文学部の「木簡と封泥体験」や、経営学部によるデータの法則探し、栄養学部でのエコー・顕微鏡を用いた臨床検査体験など、知的好奇心を揺さぶるブースが並ぶ。また、心理学部やグローバル・コミュニケーション学部では、ゲームやクラフトを通じて専門領域に触れることができる(要事前予約)。 【3月28日(土)限定】 法学部による法律クイズ、経済学部のプログラミング体験、薬学部のVR調剤体験など、最新技術や寸劇を交えた学びが提供される。現代社会学部では寄せ植え体験、総合リハビリテーション学部では作業療法の仕事紹介が実施される。 【3月29日(日)限定】 経済学部による地域連携の発表や、薬学部での錠剤づくりの科学体験、現代社会学部の防災神経衰弱など、実践的かつユニークな試みが続く。総合リハビリテーション学部では、ユニバーサルデザインの体験ブースも設置される。

  • 第27回年会・薬学生の集い 特別講演「生きること、働くこと、伝えること 〜がんと闘う薬剤師」

    2026年3月14日から15日にかけて、日本薬学生連盟主催の「第27回年会・薬学生の集い」が開催された。本大会では、スギホールディングス株式会社に在職し、現在はステージ4の小腸がんと向き合いながら活動を続ける薬剤師・野村洋介氏が登壇した。野村氏は「生きること、働くこと、伝えること 〜がんと闘う薬剤師の話」というテーマで、自身の歩みと闘病中の生々しい対話を交え、次世代の薬剤師へ向けた熱いメッセージを伝えた。 薬剤師としての歩みと、予期せぬ「がん」との遭遇 野村氏は昭和薬科大学を卒業後、2006年にチェーン薬局に入社した。現場での経験を積んだ後、管理薬剤師やブロック長を歴任。臨床業務の傍ら、糖尿病療養支援の講師活動にも尽力した。さらに、2021年には帝京大学大学院にて公衆衛生学修士(MPH)を取得するなど、薬剤師としての専門性を常に磨き続けてきた。 現在はスギホールディングスに在職しながら日本保険薬局協会へ出向し、業界全体の発展に寄与している。しかし、充実したキャリアの途上にあった2023年8月、42歳のときにお盆休みの韓国旅行中に突如として激しいみぞおちの痛みに襲われた。帰国後の精密検査の結果、10万人に0.25人という極めて稀な「ステージ4の小腸がん」であるとの宣告を受けた。すでに直腸や11カ所のリンパ節への転移も認められ、2度の手術と過酷な化学療法を余儀なくされることとなった。 野村氏 患者となって気づかされた「言葉の持つ力」 35日間に及ぶ入院生活は、医療者としての野村氏の価値観を根本から覆すものだった。手術後の合併症による再手術の不安にさいなまれていた際、レントゲン待ちの廊下で出会った80代の胃がん患者の男性との間に、忘れられない対話があった。 「どうしたんだ。元気ないな」と声をかけてきたその男性に対し、野村氏が「明日また手術なんです」と沈んだ声で返すと、男性は力強くこう語ったという。 「がんは治療や薬が治すのではない。治すのは自分なんだ」 この言葉に触れたとき、野村氏は薬剤師という専門職でありながら、「誰かに治してもらいたい」という依存心に支配されていた自分に気づかされた。さらに男性は「あなたは凛々しい顔をしてるから大丈夫だ」と、根拠のない、しかし揺るぎない励ましをくれた。野村氏は「その言葉を聞いて、涙が出るほど勇気をもらった。エビデンスも何もない言葉が、これほどまでに人を救うのか」と、言葉の持つ力を痛感した経験を振り返った。 また、入院手続きの際に一人になった瞬間、理由もなく蛇口をひねったかのように涙があふれ止まらなくなった。その際、「患者の気持ちはこれほどまでにもろいものか」と身をもって知り、これまで自分は医療者として本当に患者の心に寄り添えていただろうかと深く反省したという。 未来の薬剤師へおくる三つのメッセージ 野村氏は、自身の経験から導き出した三つのメッセージを薬学生たちにおくった。 第一に「何年生きたかよりも、どう生きたか」という視点である。野村氏が2024年に出会った22歳の若きがんサバイバーは、再発を繰り返し「あと数カ月の命」と言われる過酷な状況下にあっても、最期までハローワークへ通い、社会とのつながりを求め続けた。野村氏は「彼は最期まで自分らしく生きようとした。その姿に、命の長さではなく、どう意志を持って生きるかの尊さを教わった」と語った。 第二に「ほとんどの失敗と挫折はかすり傷」という考えである。死を目前に意識することで、それまで縛られていたプライドや職位といった価値観が一変した。「死ぬことに比べれば、今の悩みや失敗など大したことではない。自分に何ができるかを純粋に追求してほしい」と述べ、学生たちに対し、失敗を恐れて挑戦を止めるのではなく、勇気を持って一歩を踏み出してほしいとエールを送った。 第三に「病気をした人にしか見えない景色がある」という伝えることの使命である。がん告知直後、絶望の中で恩師である京都大学大学院特任教授の岡田浩氏に電話をした際、岡田氏は「野村君、謝る必要はない。あなたにしか見えない世界があり、それを次世代に伝えることが役目ではないか」と背中を押した。この言葉を契機に、野村氏は自身の体験を発信し続ける決意をした。 社会全体で創るがん医療の未来に向けて 野村氏は、がんが慢性疾患に近い特徴を持ちつつある現代において、生物学的な治療(バイオ)だけでなく、心理的(サイコ)側面や社会的(ソーシャル)側面を支える「バイオサイコソーシャルモデル」の重要性を指摘した。 「抗がん薬治療の奏効率が10〜20%という厳しい現実の中で、薬では成し得ないケアを医療者が担う必要がある。患者の心の脆さを理解し、寄り添うことができる薬剤師になってほしい」という野村氏の願いは、これから臨床の海へ漕ぎ出す学生たちの心に深く刻まれた。野村氏は現在、和歌山県立医科大学大学院(博士課程)に進学し、がん患者に対する薬剤師のコミュニケーションに関する研究に取り組んでいる。自らの経験を学術的に昇華させ、患者中心の医療を実現するために、今もなお歩みを止めていない。

  • はじめようWEB読書マラソン!大学4年間で100冊の知的冒険へ

    大学生協オリジナルキャラクターほんのむし 大学生の「本離れ」が加速する中、大学生協が展開する「読書マラソン」が2026年度より大幅にパワーアップする。合言葉は「大学4年間で本を100冊読もう!」だ。新たに「リニューアル!全国読書マラソン・コメント大賞」を掲げ、学生たちの読書習慣を強力にバックアップする。 深刻化する大学生の「読書ゼロ」実態 全国大学生活協同組合連合会が実施した「第61回学生生活実態調査」により、現代の大学生を取り巻く厳しい現状が浮き彫りとなった。 読書時間「0分」の学生: 全体の51.5%(大学生の約半数が日常的に本を読んでいない) 平均読書時間(有額分): 56分(ついに1時間を切る結果に) 背景には、近年の物価高による家計への圧迫がある。生活費を補うためのアルバイト時間の増加が、書籍を購入する「可処分所得」だけでなく、本を開く「可処分時間」をも奪っているのが実情だ。しかし、学生時代における一冊の本との出会いは、将来にわたってかけがえのない財産となる。大学生協はこの危機感を受け、長年続く「読書マラソン」をさらに魅力的な形へと進化させた。 参加は簡単!3ステップでスタート ウェブでエントリー: 専用サイトから登録を行う。 本を読む: 自分の興味のあるジャンルから自由に選択する。 コメントを投稿: 感想をウェブ上にアウトプットする。 自身の書いたコメントが誰かの目に留まり、その一冊がまた別の誰かに手に取られる。この「知の循環」こそが、読書マラソンの醍醐味といえる。 モチベーションを高める豪華特典と「コメント大賞」 継続を支援するため、達成度に応じたプレゼントや表彰制度が充実している。 【達成記念品】 達成冊数 特典内容 50冊達成 ほんのむしオリジナルグッズ(マルチメモ・付箋セット) 100冊達成 図書カード 1,000円分 【ナイスコメント賞】 毎月投稿されるコメントの中から「ナイスコメント」を選出。 公開: 翌月に「今月のコメント速報」、翌々月に「今月のナイスコメント」として公開される。 50冊プレゼントオリジナルグッズマルチメモ(付箋セット) 副賞: ナイスコメント選出者には図書カード 1,000円分を贈呈。 【年間表彰:全国読書マラソン・コメント大賞】 2026年度から「第21回」としてリニューアル開催。毎月のナイスコメントおよび次点コメントの中から、年間の「金・銀・銅賞」が決定される。年間大賞を狙うチャンスは年に2回用意されており、文章力を磨く絶好の機会となるだろう。 タイパ(タイムパフォーマンス)が重視される現代だからこそ、あえて時間をかけて一冊の本と向き合う経験は、思考の深みを作り出す。大学生協のオリジナルキャラクター「ほんのむし」と共に、4年間で100冊という高い壁に挑戦してみてはいかがだろうか。 このWEB読書マラソンへのエントリーから、君の新しい世界が動き出す。

  • ロキソニン®×鷗友学園「生理痛について“学び・考える授業”」開催〜高校生469人が参加、痛みを我慢しない選択と周囲への思いやりを学ぶ〜

    第一三共ヘルスケアの解熱鎮痛薬ブランド「ロキソニン®」は2026年3月9日、東京都世田谷区の鷗友学園女子中学高等学校にて、高校1・2年生469人を対象とした「生理痛について“学び・考える授業”」を実施した。この取り組みは、ティーン世代が早い段階で生理に関する正しい情報に触れることを目的とした「 みんなの生理痛プロジェクト for TEEN」の一環として行われたものである。 今回の授業では、同校の生徒がファシリテーターとして参画し、事前に実施された校内アンケートの結果を基に授業構成を検討した。アンケートでは約半数の生徒が生理にまつわる不快な経験をしており、具体的な悩みとして生理用品の代用や衣類の汚れなどが挙げられた。また、同校における婦人科受診経験者が約3人に1人にのぼるという意外な多さが示され、生徒たちにとって婦人科が身近で心強い存在であることを再認識する機会となった。 産婦人科医の高尾美穂氏による講義では、生理・生理痛のメカニズムや月経困難症、鎮痛薬の適切な服用タイミングについて詳細な解説がなされた。高尾氏は、生理痛が重い人は将来的に子宮内膜症を発症するリスクが2.6倍になるというデータを示し、今の痛みを放置しないことが将来の健康を守ることに直結すると強調した。また、市販薬が効きにくいと感じる原因の多くは服用タイミングの遅さにあり、痛みが強くなる前に服用する先回りの対処が重要であると語った。 講義の後半では、「仲の良い友人がつらそうにしながら教室にいたら、あなたならどうしますか?」というテーマで、グループディスカッションが行われた。生徒からは、カイロを貸すといった物理的サポートだけでなく、楽しい話をして気分を紛らわせる、あるいは一緒にストレッチをするといった友人ならではの細やかな配慮案が活発に交わされた。高尾氏は、相手が何を望んでいるかを想像し、多様なケースがあることを前提としたコミュニケーションを心がけるよう生徒たちへ助言を送った。 本授業を終えて、高校2年生で保健委員会副委員長の伊藤可奈子さんは、生理に対してどこかあきらめていたが上手な付き合い方を見つけられるのだと前向きな気持ちになれたと述べ、個人差を理解し互いへの配慮を持って生活していきたいと語った。また、ロキソニン解熱鎮痛薬シリーズ ブランドマネジャーの鈴木ひかる氏は、生徒たちが自分自身だけでなく周囲の体調にも目を向ける姿勢に感銘を受けたとし、今後も性別にかかわらず早い段階で正しい情報に触れるための取り組みを続けていく意向を示した。

  • 現場のリアルを物語に。医療原案・富野浩充氏が語る「アンサング」な薬剤師の矜持

    2026年3月14日から15日にかけ、日本薬学生連盟の第27回年会・薬学生の集いが開催された 。今回のメイン企画として登壇したのは、人気漫画『アンサングシンデレラ 病院薬剤師 葵みどり』の医療原案を担当した富野浩充氏だ 。現役の病院薬剤師でありながらライターとしても活動する同氏の言葉に、全国から集まった薬学生たちが熱心に耳を傾けた。 「一丸となった運営」 馬越氏 本年度の年会は、運営体制において大きな転換点となった。2025年度会長を務める馬越春莉氏は、連盟史上初となる「会長と年会部会長の兼任」という重責を担い、組織の先頭に立った。 開会の挨拶に立った馬越氏は、まず無事に当日を迎えられたことへの安堵と喜びを表明した。これまでの準備期間を振り返り、「今年度は本部メンバーが強力にプロジェクトを牽引し、さらにスタッフ全員が献身的に協力してくれたことで、今日という日をつくることができた」と、組織の結束力がこの年会の基盤であることを強調。多忙な中、全国から集結した参加者に対し、「この2日間、全力で楽しんでほしい」と満面の笑みで呼びかけた。 また、本年会のテーマに掲げられた「共鳴」についても、その背景にある深い意図を語った。馬越氏によれば、この言葉には「他者と関わり心を通わせることで、人と人が共鳴し、互いの心を響き合ってほしい」という願いが込められている。 多様なバックグラウンドを持つ次世代の結集 今回の年会には合計75人が参加した。居住地別では関東圏の学生が中心となったものの、例年に比べて和歌山を含む関西圏や九州といった遠方から足を運ぶ学生や社会人の姿も目立ち、広域な交流が実現した。学年構成は4年生が最多となり、次いで3年生、そして5年生と2年生が同程度の割合で続くなど、幅広い層が顔を揃えた。さらに特筆すべきは、国際色豊かな顔ぶれだ。今回は韓国と台湾から計7人の留学生を招待しており、アジア圏における薬学教育の現状や将来のキャリア観について、国境を越えた活発な情報交換が行われた。 「書く薬剤師」という独自の歩みと、専門性を維持する「覚悟」 富野氏 会長の挨拶に続き、特別講演の壇上に立った富野氏は、既存の枠にとらわれない薬剤師としての生き方を語り始めた。富野氏は東京理科大学を卒業後、一度はドラッグストアに勤務したが、「物書きになりたい」という夢を追いジャーナリスト専門学校へ進学。そこで培った「言葉で伝える」スキルと臨床経験を掛け合わせ、現在のキャリアを築いた。 日々の業務では「小児薬物療法認定薬剤師」などの高度な専門資格を保持しているが、講演ではその維持に伴う過酷な現実にも踏み込んだ。数万円単位の更新費用や、学会参加のために休日と自費を投じる現状を「自腹を切って研鑽を積むのが当たり前になっている」と率直に吐露。これから社会に出る学生たちへ、専門職として歩み続けることの厳しさと、それを支える「覚悟」をリアルな実情とともに伝えた。 漫画家のこだわりを支える、徹底した「リアリティ」の監修 2018年から2025年まで連載された『アンサングシンデレラ』の圧倒的なリアリティは、富野氏の徹底した監修によって支えられている。作中の調剤室や薬品棚の配置は、富野氏が勤務する焼津市立総合病院の現場がそのままトレースされており、作者・荒井ママレ氏の「本物を描きたい」という執念に応えたものだ 。 富野氏は物語の核となるプロットにも深く介入している。第1話では、薬剤師の専門性を際立たせるため、テーマを「喫煙(ニコチン)がテオフィリンの代謝に及ぼす影響」へと変更することを提案した。また、医療現場で避けられる「4番病室」の回避や、内服処方箋に紛れ込んだ注射薬の削除など、細部にわたる精査を重ねた。 特に緊迫したのが、がん治療薬の副作用に関するエピソードだ 。最新の適正使用情報に基づき、腎機能の低い患者への投与制限が強化されたことを受け、印刷直前のタイミングでセリフの修正を指示。情報の正確性を担保するため、土壇場まで「現場の正解」を死守し続けた。 薬剤師の価値――正解のない現場で「納得」を紡ぐ 富野氏は講演の中で、「薬剤師はいらなくないか」という、自身の職業に対する根源的な問いを投げかけた。AIによる効率化が進む中で、単に「ミスなく薬を揃える」だけでは薬剤師の必要性は低下してしまう。 そこで提示された真価が、コミュニケーションにおける「説得」から「納得」への転換である。富野氏は、インフルエンザ治療薬の服用を拒否する患者家族に対し、薬剤師の視点から点滴薬への変更を提案し、家族が治療を受け入れる(納得する)に至った事例を紹介した。 臨床現場には、医学的な正論だけでは解決できない「正解のない問い」があふれている。喘息の子供がいる前で煙草を吸い続ける保護者や、治らない病に絶望する患者に対し、単に正しいことを押し付けるのではなく、相手の背景に寄り添い、共に着地点を見いだすこと 。 「この地道な対話と思考の積み重ねこそが、漫画のタイトルでもある『アンサング(讃えられない)』な活動の本質である」と富野氏は強調した。誰に賞賛されずとも、現場で患者の人生を支えるために言葉を尽くす。その姿勢こそが薬剤師の誇りであるという力強いメッセージで、講演を締めくくった。

  • 【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】地域の健康生活支援ステーションとしての管理栄養士の取り組み

    札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子 薬局やドラッグストアに勤務する管理栄養士は、地域社会において重要な役割を果たしています。地域の生活状況を把握し、個々の顧客に対して食を通じた健康支援を提供することで、地域の健康維持と向上に寄与しています。食に関する支援は、その人のライフステージ全体に影響を与え、最期までの生活の質を高めるための身近なサポートとなります。管理栄養士は、健康や栄養、食事に関する疑問や不安、期待に応える最も身近な存在として、地域の方々や多職種と連携しながら活動します。これにより、地域住民の健康リテラシーを高め、より良い食習慣の定着を促進します。地域の健康づくりにおいて、管理栄養士の役割はますます重要になっており、その活動の継続と拡大が求められます。管理栄養士が地域での活動を継続し、効果的に役割を果たすためには、専門的なスキルの向上だけでなく、地域に根ざした活動の継続性も不可欠です。地域のニーズに応えながら、信頼される存在となることが、地域の健康支援の基盤となります。 今回は、株式会社サノ・ファーマシー所属の管理栄養士の活動について土方茉璃(まり)さんにご紹介いただきます。土方さんは、地域の健康支援の中心的な役割を担い、地域の方々の健康維持と生活の質向上に貢献し、今後の地域活動の模範になると考えます。同社は、全国に63店舗(2026年1月時点)を展開し、「地域の健康生活支援ステーション」を経営ビジョンに掲げ、地域住民の健康を総合的にサポートしています。秋田県では初めて「認定栄養ケア・ステーション」を取得(2019年)しています。   事例紹介 株式会社サノ・ファーマシー 佐野薬局保戸野千代田町店 土方茉璃 全国に63店舗(2026年1月時点)を展開する弊社は、「地域の健康生活支援ステーション」を経営ビジョンに掲げ、地域住民の健康を総合的にサポートしています。   多職種と取り組むフレイル健診 2020年度より市区町村の介護予防事業「フレイル健診」へ自治体・企業から、派遣依頼を受けています。 株式会社アルファシステムのαFROWの導入とベジチェック®で推定野菜摂取量を計測します。InBody分析、運動測定によるロコモ度測定、オーラルフレイルチェックを多職種で実施します。フレイルやロコモティブシンドロームに関連する身体機能や生活状況を複数の視点から把握し、保健師、歯科衛生士、管理栄養士の専門性を生かして生活の改善点のアドバイスを行います。管理栄養士は結果をもとに筋肉量評価、食事内容や生活背景を踏まえた栄養リスクの把握と助言を行い、続参加者では栄養指導を通じて行動が変化し、体組成の改善がみられた例もあります。   乳幼児健診における栄養支援 2024年度から男鹿(おが)市、五城目町(ごじょうめまち)の依頼を受けて乳幼児健診における栄養指導に従事します。「量は足りていますか」「偏食が心配です」といった保護者の声に耳を傾け、発達段階による個人差を丁寧に説明することで、不安が和らぐ様子を感じることができました。健診終了後には多職種でカンファレンスを行い、情報共有と支援の一貫性を図りました。多職種での意見交換を通じて、栄養の視点だけでは気づけない支援の必要性を学びました。   医療機関と薬局をつなぐ集団栄養指導 近隣医療機関の医師の依頼を受けて2018年12月より医療機関と個別に契約を結び、非常勤管理栄養士として集団栄養指導を実施。現在は毎月糖尿病指導を行い、指導後は個別にフォローし、管理栄養士、薬剤師、医療機関が連携しながら患者の食生活改善の動機付けに寄与しています。医師・薬剤師・管理栄養士の「医・薬・栄」連携による薬物治療の安全性や治療効果の向上につながると考えます。例えば、インスリンや血糖降下薬の代表的な副作用である低血糖予防のため、適量の補食に関する提案は副作用リスク軽減による服薬アドヒアランス向上を期待できた症例がありました。   秋田で考える薬局管理栄養士の可能性 秋田県は人口減少と高齢化が全国でも最前線にあり、地域包括ケアの重要性が一層高まっています。地域の方々が住み慣れた場所でよりよい暮らしをするための一助となるべく、自治体・企業・医療機関・介護事業所など多職種との連携も重要です。人員や体制など課題を感じる場面もありますが、乳幼児から高齢者まで幅広いライフステージに関わる中で、管理栄養士が果たせる役割はまだ多く残されていると感じています。活動が自己満足なものとならないためにも、薬局管理栄養士の介入による効果の検証や、その学術的な発信をしていくことも重要です。薬剤師と日常的に情報を共有しながら専門性を発揮することで、薬局が地域にとってより身近で相談しやすい存在となれるよう、今後も取り組んでいきたいと考えています。   会員募集 日本ヘルスケア協会に薬局・ドラッグストアの部会を設立 栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会(部会長:川口美喜子 札幌保健医療大学大学院教授) 詳細はこちら  https://jahi.jp/activity/jhi/

  • 地域の健康を守る「次世代型かかりつけ薬局」の構築へ―東京大学×イオン×ウエルシア薬局、フレイル予防の実証研究を開始―

    左から、田中友規氏、久木邦彦氏、秋山洋一氏 2026年3月16日、イオン株式会社、ウエルシア薬局株式会社、および東京大学は、地域高齢者の「フレイル・オーラルフレイル予防」に関する実証研究の説明会を開催した。同プロジェクトは、日常的に多くの人が訪れる「薬局」を起点に、健康寿命延伸のための新たな社会モデルを構築することを目指している。 薬局を「測定・相談」の身近な拠点へ 説明会の冒頭、イオン株式会社ヘルス&ウエルネス事業担当責任者の久木邦彦氏は「生活産業としてイオンが貢献しうる健康テーマであり、日常的に訪れる場所だからこそ、気づきの機会を提供できる」と、薬局という場が持つポテンシャルを強調した。 現在、自治体などが実施するフレイル測定会は、健康意識の高い層が集まりやすい一方で、本当に支援が必要な層に届きにくいという課題がある。東京大学未来ビジョン研究センター・高齢社会総合研究機構特任講師の田中友規氏は「フレイルとは、加齢に伴い心身の予備能力が低下し、健康と要介護の中間に位置する状態を指すが、適切な介入によって元の元気な状態に戻れる『可逆性』が最大の特徴である」と解説した。 特に高齢者においては、5種類以上の薬を服用するなどの「ポリファーマシー(多剤併用)」が、副作用による転倒や食欲不振を招き、フレイルを加速させる要因となる。田中氏は「薬の専門家である薬剤師が関与し、安心・安全な薬物療法を提供することは、フレイル対策において極めて重要な視点である」と述べた。 オーラルフレイルから始まる負の連鎖を防ぐ 今回の研究で特に焦点が当てられているのが「オーラルフレイル」だ。これは、滑舌の低下、食べこぼし、わずかなむせ込みといった些細な口の機能低下を指す。口の機能が衰えると食の偏りや食欲低下を招き、それが低栄養や筋肉量の減少(サルコペニア)につながり、最終的に全身のフレイルを進行させる。 この早期発見と啓発のため、同事業では以下の「実施内容と評価指標」を導入している。 ふくらはぎ周囲長測定と滑舌測定(パタカ測定)をする畑野氏(左) イレブンチェック: 東京大学高齢社会総合研究機構教授の飯島勝矢氏が開発した11項目の質問票。口腔(むせ、硬いものが噛めない)、栄養、運動、社会性といった多面的な問いにより、フレイルの兆しを短時間で可視化する。 指輪っかテスト・ふくらはぎ周囲長測定: 両手の親指と人差し指で輪を作り、ふくらはぎの最も太い部分を囲む簡易測定。 握力測定: 筋肉量や筋力を数値化し、身体的フレイルの程度を把握する。 オーラルフレイルチェック・滑舌測定(パタカ測定):  「パ」「タ」「カ」の音を一定時間に何回発音できるかを測定し、口の動きの巧緻性や咀嚼・嚥下に関わる筋力を評価する。 実装可能なモデルの追求 今回の取り組みの核心は、単なるイベントに留まらない「継続性」にある。自身も薬剤師として現場経験を持ち、現在は東京大学へ出向しているイオン株式会社ヘルス&ウエルネス戦略チーム医療・産官学連携グループ、および東京大学高齢社会総合研究機構学術専門職員の畑野光賞氏は、以下の2つの研究概要を説明した。 薬局薬剤師への教育の実施: 今後6カ月間でウエルシア薬局の約750店舗の薬剤師に対し、飯島氏監修の専門教育を実施する。フレイル予防の知識を習得させるだけでなく、薬剤師自身の意識・行動変容を評価し、専門職としてのスキルアップを図る。 実証研究の実施: 千葉県内の20店舗において、実際の業務の中でフレイル予防介入を行う。薬剤師が患者の服薬指導と並行して「イレブンチェック」や「測定」を行い、その有効性を検証する。実演では、自然な会話の中から測定へ繋げる様子が公開された。 実証研究のイメージとしては、測定結果を数値として可視化し、それに基づいた「口腔支援・栄養支援」を行う。さらに、必要に応じて「歯科受診勧奨」や診療所との「多職種連携」を促進し、併設ドラッグストアの利点を生かした「健康相談・商品案内」へとつなげる。これにより、来局のたびに小さな変化を確認できる「実装可能な薬局モデル」の構築を目指す。 ウエルシア薬局株式会社調剤運営本部調剤企画部部長の秋山洋一氏は、全国で約7,000名の薬剤師を抱え、在宅訪問も強化している現状に触れ、「2030年に向けた『地域ナンバーワンの健康ステーション』の実現に向け、最も身近な場所で安心して相談できる体制を整える」と意欲を示した。 イオングループ全体での展開を検討 説明会では、将来的な事業展開についても言及された。今回の実証研究を通じて得られる知見は、特定の店舗や地域に限定されるものではない。同研究で構築されるモデルの有効性が確認されれば、将来的にはイオングループ全体において、このフレイル予防の取り組みをどのように広げていけるか、多角的に検討していく方針である。 「地域で薬局がいかに気づきの拠点となるか、これは社会的に極めて重要な挑戦である」という田中友規氏の言葉通り、薬局は今、処方箋を調剤する場所から、健康を維持するための「次世代型かかりつけ拠点」へと進化しようとしている。地域のハブである薬局がこの役割を担うことで、超高齢社会における新たなセーフティネットの構築が期待される。

  • 【一日一笑】後悔は愛した証拠。母から受け継いだ「道標」を胸に、今日も笑顔で患者さんの隣に

    医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 後悔は「愛した証」——心の痛みを否定しない寄り添い 薬局で仕事をしているとどうしても、死に直面する場面が必ず訪れる。 そんな中で、患者さんのご家族からの報告。 「〇〇が、亡くなりました…」 医療従事者としては、一番聞きたくない言葉である。そんな時に、話を伺うと多くの方が、後悔していると話されている。 あの時、こうしておけば…。何であんなことをしてしまったのか…。 案外、本人は気にしていないことや他愛無いことも多い。でもね、だけどね…。 もう、直接謝れない…。もう、取り戻せない…。もう、会えない…。 この状況が、どんどん人を追い込み、喪失感に加え後悔を増幅させていく。 後悔先に立たず、覆水盆に返らず、後の祭り、時すでに遅し…などなど、普段であれば、後悔しないために前もってなんていう教訓にすべきこの言葉も、こんな時には苦しさを増強させる言葉に代わってしまう。 では、後悔しないためにはどうしたらよかった?どうしたら後悔を無くせただろうか? 24時間365日そばにいて、その人のことを考え続け、一緒に過ごすことができていたら、後悔はしない? 多分、共に過ごした時間が増える分、それはそれでまた新たな後悔は増えていく。 だから、ここで一つ思うことがある。 後悔をできるということは、それだけその人のことを考えられた人。 後悔をできるということは、それだけその人を愛せた人。 だから、店頭で後悔していることをご家族から聞くといつも伝える。 「後悔できたなら大丈夫。それだけ大切に思えている証拠」 後悔したことで、自分を責めるのではなく、あらためて、それだけ大切に思えているということを認識してほしい。 つらいこと、悲しいことを考えずにはいられないのが人間。つらいことや、悲しいことを考えないようにしようとまた頭に浮かべて考える。 何も考えないようにするなんてことはできない。 だから、楽しいことを考えられるように、どんな良い思い出があるかを話してもらうようにしている。 そして、その中で時に一緒に大泣きしたり、一緒に笑ったり。 そんな時、薬剤師が一緒に泣いたっていいじゃないか。苦しいときに、ふらっと寄って気軽に話せて、心の拠り所になる。薬局がそんな場所の一つであってほしいと願って。   20年紡いだ桜の記憶——母から受け継ぐ「薬剤師の道標」 桜の季節。 今回は、私事を少々。 私は、昨年母を亡くした。薬剤師として偉大で私の道標となる大きな存在である母。 家では、お茶目でおっちょこちょいでいつも家族を笑顔にする母。 この、相反する二つの側面を持つなんとも不思議な存在。 そんな、母と春になると毎年、桜並木を1時間程度かけて二人で歩き、その1年の自分の考えたこと、次の目標などを互いに話すのが恒例行事。 私が高校生の頃、反抗期を迎え、家族や周囲の誰に対しても心を開けなかった時、自分でも何がしたいのか、どうしたらいいのかも分からず、どうしようもなくなり、2人で真剣に話す時間が欲しいと母に声をかけ、行くことになったお花見。 思っていることや将来の話、小さい頃の思い出話などさまざまな話をした。 10代であり、照れくささから、来年はどうしようかな…。なんて考えていたが、帰り際にぼそっと「あなたと桜をあと何回見られるかしら…」なんて寂しそうに言うもんだから、「そんな、寂しい言い方しないでくれよ、来年も行こう!」そう返答して、毎年恒例のものとなり、昨年の春にはついに20回目を迎えていた。 母は私が小さい頃から、仕事で家を空けることが多く、一緒に過ごす時間があまり無かった。そんな、私たちにとってはとても貴重な1時間。 春だよ-!桜の季節だよー!! 今年も桜は咲くのに…。恒例行事のはずなのに…。隣に母はいない…。 そう、感じるたびに胸が締め付けられる。 後悔がたくさんある私は、母のことが大切で、それだけ愛しているんだとあらためて認識した。 きっと笑って「おせぇーよ!!」って言ってくれるかな? 時に一緒に仕事ができている気にさせてくれた母。今振り返ると何周遅れの私と併走してくれていたのだろう。そう思うたび、感謝の気持ちがあふれると同時に、この文章を書く時にも苦しくはなるけれど。悲しんでばかりより、楽しい思い出、幸せをたくさんもらったことを胸に。 母が教えてくれた薬剤師のあるべき姿を大切に。 私自身がいつか、本当に母と並び、そしていつか追い越し、誰かの道標になれるその日まで…。 1人でも多くの患者さんを笑顔にできますように! 「今日も笑顔で元気よく!ファイト!!」

  • 第3回日韓薬局交流会に参加して

    執筆・参加メンバー 串田一樹(昭和薬科大学、薬局イノベーション協議会)、藤田珠理(薬局ホームケアファーマシー田無店)、坂井美知子(株式会社 薬心堂)、木村雅彦・篠崎裕司(あけぼの薬局)、三砂慶太・倉地勇斗(おとどけ薬局)、秋 月鳳(ひまわり薬局) 盆唐ソウル大学病院ヘルスケア革新パークの日韓薬局交流会の記念写真 交流会の歩みと開催背景 発表風景 「日韓薬局交流会」は、2017年9月にソウルで開催された第77回FIP(国際薬剤師・薬学連合)世界会議を機に産声を上げました。その後、開催はコロナ禍の影響で延期になっていましたが、第2回目の日韓薬局交流会は2023年6月に開催されました。2024年10月にはFAPA2024 in SEOUL(第30回アジア薬剤師連合学術大会)がソウルにあるCOEXで開催されたときには私たちも参加しました。第3回の日韓薬局交流会は2025年9月20日に京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市にある盆唐(プンダン)ソウル大学病院ヘルスケア革新パークで開催されました。当日は、京畿道薬剤師会の会員の他、全国市・道薬剤師会員など60人を超える参加者がありました。日本、韓国共に高齢社会を迎えているので、共通の関心テーマである地域包括ケアシステムについて意見交換をしました。また、韓国の薬剤師さんたちは日本の学会やJAPANドラッグストアショーに参加され、その後、互いの交流が続いています。このように、互いの国では高齢社会が到来している共通点があり、共に学ぶことの意義があります。 急速に進む韓国の高齢化と「ケア統合支援法」 韓国の高齢化スピードは凄まじく、2000年に6.8%だった高齢化率は2024年に20%に達し、2040年には39.4%に及ぶと推計されています。日本、韓国共に急速に高齢社会を迎えている状況は同じで、日本の地域包括ケアシステムと同じように、韓国では2026年3月27日から「医療・療養等地域ケアの統合支援に関する法律(ケア統合支援法)」が施行されます。この法律は 「第1条(目的)この法律は、老衰、障害、疾病、事故などにより日常生活の遂行に困難を抱える人が、住み慣れた場所で引き続き健康な生活を営むことができるように、医療・療養などのケア支援を統合・連携して提供するために必要な事項を規定し、国民の健康で人間らしい生活の維持及び増進に寄与することを目的とする」と明記されています。 韓国の薬剤師は「考える専門職」 韓国では日本に先駆けて医薬品のOTC化が進んでいます。さらに印象的だったのは、OTC医薬品だけでなく、ペット用サプリメントや栄養についても、薬剤師が専門的に対応していたことです。これは単なる制度の違いではありません。国として、薬剤師を「考える専門職」として深く信頼している証だと感じました。薬の選択や調整や、そこに関わる生活因子の分析に関しても、責任をもって任せられる存在であると認められているからこそ、こうした制度が成立しているのです。 特に感動したのは、韓国では医師・看護師・薬剤師とともに、薬学生までもがオンラインで減薬の協議に参加しているという点です。学生であっても、現場の医療者と同じテーブルにつき、薬学的視点から意見を述べ、実際に処方が調整されます。その結果、薬剤師への減薬フィーは日本の約8倍、そして薬学生へのフィーでさえ日本の約2.4倍が支払われていました。しかも、減薬を行えるのは、研修を修了し、認定を受けた一部の薬局のみです。これは、「誰でもできる仕事」ではないという、薬剤師の専門性への明確な評価にほかなりません。 薬剤師訪問が先駆けて始まった地域の一つが、韓国の京畿道地区薬剤師会でした。当初、医師や看護師の中には「訪問に薬剤師は来なくてもいいのではないか」という声もあったそうです。 そのとき、一人の女性薬剤師がこう言いました。「たとえ1種類でも薬を飲んでいるなら、それは薬剤師の責任です」と。この言葉をきっかけに薬剤師訪問が始まり、今では医師・看護師と協働して薬物治療を行うことがスタンダードになっています。実際、薬剤師が介入したことで、たとえ1剤のみの服用であっても、副作用に気づけたのは薬剤師だけだった――そうした事例が積み重ねられていました。 韓国では、4〜5種類以上の薬を併用している場合、有害作用が起きている可能性が高いという認識が、医療者の間で共有されています。これは日本の見解よりも厳しく、それだけ薬剤師の薬学的専門性を信頼しているからこそ、より厳しい目を期待されているという、評価でもあるように感じました。 薬局視察を終えて―参加者の声 ●今回の韓国薬局視察で最も印象に残ったのは、保険薬局におけるOTC医薬品の取り扱いの幅広さでした。一般的なOTC医薬品に加え、美容や健康維持など、疾病に直接結びつかない分野の商品が豊富に並び、薬局が日常生活に寄り添う存在であることを強く感じました。 韓国でも高齢化が進み在宅への取り組みが始まっていますが、薬剤師が地域医療に関わるには、自ら一歩踏み出す勇気が欠かせません。京畿道薬剤師会の先駆的な活動に共感し、西東京市での在宅多職種連携の実践を共有する中で、言葉を超えて志を分かち合える貴重な機会となりました。 ●韓国の薬局およびドラッグストアを視察し、制度と実務の違いを実感しました。医薬品の多くがボトル包装で供給され、調剤時に全て分包する運用が徹底されている点は印象的でした。しかも一包化に対する加算は設けられていません。一方で、在宅医療に特化した薬局はほとんど存在せず、薬剤師の活動は外来調剤が中心です。今後、韓国でも急速な高齢化が進むことを見据えると、在宅分野における薬剤師の役割拡大は重要なテーマとなっていくことが確実です。今回の視察は、日本の在宅専門薬局の意義と可能性を再考する契機となりました。 韓国料理を味わう ●韓国での薬局見学を通じ、日本の薬局との構造的・機能的な違いを学ぶことができました。大学病院門前の薬局では、調剤はほぼ一包化で行われ、待合室から調剤室が見えない設計や、医薬品倉庫を別階に設けるなど、日本とは異なる空間構成が採用されていました。日本では制度上難しいものの、これらは業務効率や薬剤師の作業環境に影響する点として印象に残りました。2件目に訪問した薬局は調剤とOTCの売り上げが同程度であり、測定機器を活用した健康評価からサプリメント等の販売につなげる体制が構築されていました。また、OTC売り場に自然に椅子を配置する設計は、待ち時間を「購買・健康体験」へと変えており、日本以上に薬局が「健康支援の場」として機能している姿が印象的でした。 ●今回、現地集合・現地解散の2泊3日のツアーでした。日々の忙しい業務の中で、ちょっと海を渡って隣国に行ってみると、同じ気持ちをもった薬剤師の仲間がいたことに「明日からも頑張ろう」という気持ちになりました。

  • 薬剤疫学の専門家育成を加速へ。くすりの適正使用協議会と日本薬剤疫学会が連携〜セミナー受講で「認定薬剤疫学家」の更新ポイント取得が可能に〜

    一般社団法人くすりの適正使用協議会は、主催する薬剤疫学セミナーにおいて、一般社団法人日本薬剤疫学会からの後援を受けることを決定した。これにより、学会が認定する「認定薬剤疫学家」の資格更新に必要なポイントが、同セミナーの受講によって取得可能となる。 今回の連携は、製薬企業や規制当局における専門人材の育成を強力に推進し、医薬品業界全体での「医薬品適正使用」を科学的側面から底上げすることを目的としている。 薬剤疫学が担う「医薬品のライフサイクル」への貢献 薬剤疫学は、医薬品の開発から承認、そして市販後の使用実態に至るまで、膨大なデータを科学的に分析し、安全性や有効性を客観的に評価する学問だ。 近年、医療情報のデジタル化に伴い、リアルワールドデータ(RWD)の活用が急速に進んでいる。薬剤疫学は、こうしたデータをエビデンスへと昇華させ、実臨床における適正使用を改善するための「判断基盤」として、その重要性がかつてないほど高まっている。 両団体の協力による基盤強化 同協議会は1989年の創立以来、20年以上にわたり人材育成のためのセミナーを開催してきた。一方、同学会は現在126人の「認定薬剤疫学家」を認定している。 両団体が「薬剤疫学の発展」という共通目標のもとで協力体制を構築したことは、業界における専門知の創出と、医薬品のライフサイクルを支える科学的基盤の強化に直結するものといえる。 3月26日開催:中堅向け薬剤疫学セミナー ポイント付与の第1弾となるセミナーが今月開催される。今回から協議会会員以外(官公庁、学生、アカデミア、学会員など)も受講可能となっており、より門戸が広げられた。特に学生は無料であるため、興味のある人はぜひ参加してほしい。 日時: 2026年3月26日(木)10:00〜12:00 テーマ: 「観察研究におけるestimand:target trial emulationによる翻訳と推定」 講師: 東京大学准教授 篠崎 智大 氏 内容: 臨床試験と観察研究における因果効果(estimand)の論点を整理し、データベース解析における「標的試験(target trial)」の枠組みを実務的観点から解説する。 今後の予定 :第2弾として、7月9日には初学者向けの「薬剤疫学入門セミナー」も開催される予定だ。延べ3,300人以上が参加してきた定番のセミナーであり、こちらもポイント付与の対象となる見込みである。 概要・申し込み 項目 詳細 イベント名 2026年3月26日開催 薬剤疫学セミナー 申込締切 2026年3月24日(火) 詳細・申込URL こちらから申し込み可能

  • 漢方のイメージ1位は「体に優しい」:薬学生が知っておくべき生活者のリアルと役割

    株式会社NEXERと漢方みず堂による共同調査(2026年3月12日発表)によると、生活者が抱く漢方のイメージの第1位は「体に優しい」で43.6%にのぼった。自然由来の安心感や副作用の少なさを期待する声が目立つ一方で、西洋薬との違いを正しく理解している層は限定的であり、将来の薬剤師として向き合うべき課題が浮き彫りとなっている。 「体に優しい」イメージの裏側にある期待と課題 調査結果では、漢方に対してポジティブなイメージを持つ人が多く、具体的には「体に優しい」という回答が最多であった。これに次いで「自然由来で安心」が35.4%、「副作用が少なそう」が32.0%と続いている。 自由回答では「体質改善に効きそう」といった期待の声が寄せられる一方で、費用面を懸念する声も目立つ。「実体験から価格が総じて高く、続けにくいイメージがある」という意見に代表されるように、自然由来という安心感がある反面、コストが継続の大きな障壁となっている現実がある。 66%が「西洋薬との違いが分からない」という現実 漢方と西洋薬の違いについて、「まったく分からない」あるいは「あまり分からない」と回答した人は合計で66.0%にのぼった。違いが分かると回答した層においても、その認識は「漢方は自然由来で体質改善を目指すもの」「西洋薬は症状に直接働きかけるもの」といった大まかな認識にとどまっている。 薬学生にとって重要なのは、生活者の多くが漢方に好印象を抱きつつも、具体的な機序や適切な使い分けについては情報の空白地帯にいるという事実である。 生活者が抱く「不安」と「知りたい情報」 漢方に対して不安や疑問を抱く層は21.6%存在し、その中で最も多い悩みは「本当に効果があるのか分からない」というもので、64.8%に達している。さらに、効果が出るまでの具体的な期間や、種類の多さゆえに自分に合うものが不明であるといった情報を求める声が目立っている。 また、「副作用が少なそう」というイメージが先行する一方で、実際には副作用への関心も高い。「長年服用していた漢方に、血行不良の副作用があることを今年になって知った」という実体験も寄せられており、正確な情報提供がいかに求められているかを物語っている。29.6%が「値段が高そう」という不安を抱えている点も、服用をためらわせる大きな要因となっている。 情報の「翻訳者」としての介在価値 この調査結果は、未来の薬剤師であるあなたたちに重要な示唆を与えている。 生活者は漢方に「優しさ」を求めている一方で、同時に「どれくらいで効果が出るのか」「自分に合う種類はどれか」という具体的な根拠に飢えている。また、漢方特有の副作用について後から知るといったケースがあるように、適切な情報提供と管理が不可欠である。 「自然のものだから安心」という患者の思い込みを否定せず、しかし専門家として正しくリスクとベネフィット、そして保険適用の有無を含めた費用負担についても誠実に伝える必要がある。このバランスを保てるのは、西洋薬の薬理学と漢方の考え方の両方を学ぶ薬剤師だけである。 「どれくらいで効くのか」「自分に合うのはどれか」「費用はどれくらいかかるのか」という生活者のリアルな疑問に対し、一人ひとりの状況を見極めて納得感のある説明を行う力。それこそが、将来の医療現場で求められる「専門性」の正体と言えるだろう。 【調査概要】 引用元:株式会社NEXERと漢方みず堂による調査 調査期間:2026年2月26日 ~ 3月6日 対象者:全国の男女500名 出典リンク: 漢方みず堂( https://www.mizdo.com/)

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