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- アリナミン製薬とキッズドアが連携し受験生を強力サポート!「受験生応援パッケージ」で"明日の元気"を届ける
社員作成メッセージカード アリナミン製薬株式会社は、受験期を迎える高校3年生の心身の負担を軽減するため、認定NPO法人キッズドアと連携し、「受験生応援パッケージ」を寄贈した。この取り組みでは、社員ボランティアによる心温まる手書きメッセージカードの作成や梱包作業も実施され、企業と地域社会との共創を深く推進している。 「明日の元気」と社会課題の解決への強い思い 同社は「明日の元気を変えていく」というコーポレートメッセージに基づき、CSR活動の一環として社会課題の解決に取り組んでいる。一方、認定NPO法人キッズドアは、子どもの貧困問題の解決を目指し、困窮家庭の小・中・高校生への無料学習支援や居場所の提供、食料・物資支援などを展開している。 「どんな境遇に生まれても、すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現」というキッズドアの目指す先が、アリナミン製薬のコーポレートメッセージと深く重なることから、両者は昨年度より連携を開始した。 受験期は、多くの学生にとって心身の疲労が重なり、大きな負担となる時期である。同社は、この負担を少しでも軽減し、受験生が安心して試験本番に臨めるよう支援することを目的とし、同企画を実施する運びとなった。 活動内容:心と体の両方を支える充実のパッケージ キッズドアオフィスでの梱包作業の様子 今回、認定NPO法人キッズドアを通じて全国の受験生(高校3年生)500人へ配布された「受験生応援パッケージ」には、文房具、お菓子、アリナミンメディカルバランス(指定医薬部外品)、カイロといった、受験勉強に必要な物資や体調をサポートする品々、そして社員ボランティアが心を込めて作成した手書きメッセージカードなど、心身の両方を支える充実した内容が詰め込まれた。 このパッケージの準備にあたり、2025年12月4日にはキッズドアオフィスにて、同社の社員ボランティアがメッセージカードの作成やパッケージの梱包作業に積極的に参加した。企業一丸となって、直接的な支援だけでなく、"元気"や"励まし"といった温かい想いも社会に届けたのである。 今後の展望:継続的な連携で子どもの課題解決に貢献 今回の取り組みに対し、認定NPO法人キッズドアのファミリーサポート事業担当の渥美氏は、「モノのご提供だけでなく、心のこもった手書きのメッセージまで届くことで、“支えてくれている人たちがいる”ということを、受験生たちも感じることができると思います。受け取る子どもたちの心まで行き届く支援にご協力いただき、深く感謝いたします」とコメントしている。 同社は、今回の寄贈を起点とし、両者間の連携をさらに深める方針だ。受験生に限らず、困難な状況に置かれた子どもたちが直面する課題を深く理解し、OTC医薬品メーカーとして果たすべき役割を継続的に模索していく。小さな一歩から着実に歩みを進め、「明日の元気」を必要とする人々に寄り添う活動を、今後も積極的に推進していく構えである。
- 調剤報酬の不公平な評価にJACDSが警鐘!
薬局の「機能無視」を批判、令和8年度調剤報酬改定で公平な評価を要求 関口氏 山口氏 一般社団法人 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は2025年12月5日、令和8年度(2026年度)調剤報酬改定に向けた要望事項を公表し、特定の薬局グループの規模や形態のみに基づく不当な報酬区分の撤廃を強く求めた。特に、300店舗以上のグループ薬局に対する調剤基本料の「足切り」的な減算措置と、敷地内薬局を有するグループ全体への「連座制」導入の動きに対し、「企業努力を否定し、健全な業界発展を阻害する」と危機感を表明した。 会見には、JACDS調剤推進委員会委員長の関口周吉氏(龍生堂本店 社長)、副委員長の山口義之氏(トモズ 薬剤部シニアマネージャー)、そして委員である秋山洋一氏(ウエルシア薬局調剤運営本部 調剤企画部長)が出席した。 規模による基本料減算に「公平性を欠く」 JACDSが最も問題視するのは、令和4年度改定で導入された300店舗以上のグループ薬局に対する調剤基本料の区分である。同一の機能・サービスを提供していても、規模が大きいという理由だけで著しく低い点数が適用されており、「明確に公平性を欠く」と批判している。 秋山氏 山口氏は「企業努力をした結果として収益率が良くなったとしても、それは努力が実った結果であります。そうした企業努力を否定するような報酬の仕組みは、ぜひ避けていただきたい」と述べ、技術やサービスに対する対価として公平に評価すべきであると強調した。 この区分の影響は、データにも深刻に現れており、中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査でも300店舗以上グループの損益率は低下していることが指摘されている。JACDS加盟企業の独自集計では、その損益率が直近で1.5%まで落ち込んでいるという。 業態特性を生かした医療貢献の深化 関口氏は、委員会の役割と今後の方向性について、以下のように決意を表明した。 「当委員会では、ドラッグストア事業体ならではの医療貢献のあり方を追求しています。具体的には、医療計画に則した事業運営を前提としつつ、ドラッグストアとしてその役割をどこまで拡大し、地域医療へ貢献できるかを重点的に検討しています」とし、業態のポテンシャルを最大限に引き出し、新たな医療貢献の領域を確立することが課題であるとした。 敷地内薬局の「連座制」導入に強い反対 改定議論で再度焦点となっているのが、大規模病院の敷地内薬局をグループ内に持つ薬局全てに対し、調剤基本料を一律に引き下げる「連座制」の適用検討である。 JACDSはこれに対し、「行政の裁量の逸脱」であると強く反対した。敷地内薬局はすでに特別調剤基本料が適用され、著しく低い点数に設定されている。同協会の調査では、敷地内薬局の損益率はマイナス10.8%に達しており、すでに赤字経営の状態である。 このような状況下で連座制を導入することは、グループ全体に多大な経済的負担を強いる「懲罰的な報酬」であり、薬局の運営撤退を迫ることに他ならないと主張。その結果、高齢者や車椅子利用者など、敷地内薬局の利便性に頼る患者の利益を損なうことになると警鐘を鳴らした。 地域加算と「かかりつけ」要件の課題 その他の要望事項として、以下の点が挙げられた。 地域支援体制加算の見直し:グループの規模や都市部・地方といった立地条件によって報酬に差をつけるべきではないとし、薬局が提供する技術やサービスの実績に応じて公平に評価するよう要望した。 かかりつけ薬剤師指導料:業務遂行に必要な「1年以上在籍」要件について、学術的根拠が示されていないこと、また医療DXの進展を踏まえても必要性が認められないとして、在籍年数要件の延長に反対している。 JACDSは、薬局の規模や形態にかかわらず、全ての薬局が国民の健康を支える力を最大限に発揮できるような、健全で持続可能な制度設計の実現に向け、今後も政府や関係団体に対し強く働きかけていく構えである。
- 【薬局四方山話】医療用医薬品の保険給付に関する議論
薬事政策研究所 田代健 自民党と日本維新の会(以下「維新」)による新政権が発足した。維新は閣外協力の条件の一つに社会保障改革を掲げており、薬局業界ではそのうち「OTC類似薬の保険給付からの除外」が注目されている。ここではこの政策の土台の部分を簡単に整理し、今後の状況をつかむための一助としたい。 1. 医療費の問題 維新は、現役世代の手取りが増えない原因として、給料から天引きされる社会保険料の増加を挙げており、国民医療費を年間4兆円節約すれば天引き額を一人あたり年間6万円減らせると主張している (BOX) 。 その節約のための主な政策の中に「医療用医薬品の保険給付の見直し(OTC類似薬の保険給付の除外により3500億円削減)」というものがある(*1)。 2. 保険給付の範囲と処方権との関係 猪瀬直樹氏が公開した具体的な品目のリストを見ると(*2)、例えば抗アレルギー薬のロラタジンが含まれている(2025年10月現在で後発品の薬価は10mgで14.8円)。一方、その活性代謝産物であるデスロラタジン(デザレックス®)は処方箋医薬品で、リストに含まれていない(こちらの薬価は5mg錠で38.7円)。今までロラタジンを処方していた医師は、保険を使った処方ができなくなるのであればデスロラタジンに切り替えるのではないだろうか。医師が保険給付とセットの処方権を守ろうとすれば、処方箋医薬品を処方するインセンティブが作用し、薬剤費はむしろ増加するだろう。それを回避するには、抗アレルギー薬全体で処方権と保険給付を揃え、医師の裁量の余地をなくすような制度設計が必要だ。 3. OTCへの処方権の拡大 「保険給付から外す」のとよく似た方法として「保険給付率を0%に引き下げる」という仕組みが考えられる。この場合、医師は従来通り処方することができるし、公費と併用することもできる。しかし2002年の医療保険法改正の際に「将来に亘って保険給付率は7割を維持すること」という条件(*3)が付言され、自己負担率は3割を超えられなくなっている。新政権がこの見直しに踏み込むことができるかどうかは注目ポイントだと筆者は考える。 他に、選定療養制度を使う方法も考えられる。この場合はあくまでも「患者の意思による選択」が前提となるため、「OTC類似薬を処方すること」について患者のなんらかの意思決定を条件とすることで保険給付から外すという方法を捻り出すかもしれない。 国内には「医療機関は存在するが薬局は存在しない」という地域がある。この場合、上記の「保険給付0%」あるいは「選定療養」であれば従来通り院内処方で対応できるが、保険給付から外すのであれば、医療機関がOTCを販売できるような例外規定を設けざるを得ないだろう。このような規定を一度導入すれば、際限なく拡大解釈され、医療機関が「医師推奨のOTC」を自由に販売するようになるのではないかと筆者は危惧する。 4. 「医療費」を抑えればよいのか? 維新は社会保険料について「現役世代から高齢者への仕送り」と表現するが、健康な後期高齢者や病気と闘っている現役世代を考慮に入れれば、「薬を使っている人」から「薬を使っていない人(及び法人や政府)」への「仕送り」に他ならない(高齢者の自己負担率の引き上げも同様)。これは社会的な弱者の生存権に直結する問題であり、ポピュリズム的な空気感で判断するのではなく ・「限られた予算をどのように配分したいか?」という目標の妥当性 ・「実際にどのように配分されたか」という評価 の2点を厳密に確認する必要があると筆者は考える。 5. 最後に 現状では、「薬剤師の専門性」は製薬会社のマーケティングよりも優先順位が低い。OTCとして販売できる製品を実際に薬剤師が販売できるかできないかは、「製薬会社がどこの棚で売りたいか」という判断によって決まる。保険給付は財政的には重要な問題だが、薬学の観点からは、OTC類似薬の議論は「医薬品の分類と薬剤師の現在の仕事ぶりとの見直しの必要性」を示唆しているのではないかと筆者は考える。 *1 社会保険料を下げる改革提言 https://o-ishin.jp/policy/2025_lower_social_insurance_premiums/ *2 4月17日の社会保障下げる(医療費削減)のための自公維3党協議に提出した資料を解説付きで公開します。 https://note.com/inosenaoki/n/ncde0c2747fd3 *3 厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/03/h0306-2.html BOX 〜データを吟味しよう〜 薬学生の皆さんには、公表された数字を鵜呑みにせず、自分自身で確認してみる習慣を身につけてもらいたい。特に臨床的なデータについて、その習慣が目の前の患者を守ることにつながるかもしれないからだ。健康食品のデータなども批判的に吟味してみる練習を積むことをお勧めしたい。 例えば、筆者は維新の「4兆円節約して年間6万円」という試算は過大だと考える。 国民医療費の財源の内訳は 公費(税金から補填) 37.5% 事業主が負担する保険料(サラリーマンを雇っている会社が負担する保険料) 22.0% 被保険者の負担分(給与明細書で天引きされている部分) 28.2% 患者負担(患者が窓口で支払う分) 11.8% となっている(*)。 維新は被保険者として現役世代だけの6400万人という数字を使い、国民医療費の支出全額について 節約額4兆円÷現役世代(被保険者)6400万人≒6万円 と計算しているが、支出を4兆円節約した場合にサラリーマンの天引き分の減少額は 4兆円×被保険者の負担分0.282≒1.2兆円 にとどまる。また、 後期高齢者1800万人も社会保険料を負担しているので8200万人(社会保険料を負担している全ての人(現役世代6400万人+後期高齢者1800万人))で均等に割ると、 1.2兆円÷8200万人≒1.5万円 となる。つまり、一人当たりの手取りの増加は年間1.5万円程度となる(残りの4万5000円分は、政府や企業の増収となる)。もちろん、この筆者の計算も鵜呑みにせず、自分自身で考えよう。 なお、維新が「現役世代からの仕送り」を減らすと主張したいのであれば、具体的には後期高齢者医療保険における「後期高齢者支援金」がまさにそれで、目立たないながらも以前から見直しはされている。 * 国民医療費の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/23/dl/R05data.pdf
- 患者と市民も参画する創薬エコシステムを目指して~新湘南ウェルビーイングフェスタ2025
11月29日、神奈川県藤沢市の創薬開発イノベーション拠点、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて、一般市民向けのイベント「新湘南ウェルビーイングフェスタ2025~ウェルビーイングって何だろう?今と未来のヒントがここにある~」が開催された。 「ウェルビーイング」とは「肉体的にも精神的、社会的にもすべてが満たされた状態」を指す言葉で、これからの医療福祉や社会づくりにおいて重要視されていくキーワードだ。 昨年に続き2回目となるこのイベントでは、施設の屋内外を会場に、ウェルビーイングの実現をテーマにした企業や大学による製品システム、サービスの紹介や、医療、テクノロジーの専門家と市民が共同参加できるワークショップなどが行われた。 研究者と市民が創薬に共同参画する時代へ イベント内では「お腹の病気をもとに考える、患者さんと市民が一緒に作る未来のクスリ ―患者・市民が製薬企業とできること―」と題したワークショップも開催され、創薬開発に携わる研究者と患者、一般生活者とが共同で創薬に関わることについて各立場からの講演が行われた。 湘南アイパーク内のコミュニティ「WorldCafe」メンバーでマルホ株式会社の研究者である平野尚茂さんは、前世紀からの病気と医薬品開発の歴史的背景を解説し、近代の創薬は感染症や急性死に対応した救命治療するために医師や研究者主体で薬の開発が行われていたが、2000年代前後には生活習慣病薬の開発を背景に診断に基づく標準治療として科学とエビデンスが重視されるようになり、2010年代ごろからは患者の生活や人生への負担を取り除くための心身を含めた最適化を求める医療の時代になったと説明。これからは患者と市民も創薬開発に一緒に参画することが求められると述べた。 患者の視点での薬との向き合い方 続いて炎症性腸疾患(IBD)の患者側の声として、IBD患者と家族のコミュニティ「Gコミュニティ」の運営や、情報発信を行う株式会社グッテの宮﨑拓郎さんと、コミュニティのメンバーで自身もクローン病患者である小林由佳さんが登壇。小林さんは18歳の時に発症し、大学進学、海外の大学院進学を経て現在東京の企業で勤務しており、社会人10年目を迎えるが、その間のライフステージにおいて手術と治療を繰り返した。持病と向き合いながら学業や仕事を続けてきて感じた問題点を説明しながら、現在は自分に合った生物学的製剤と出会えたお陰で生活が改善されていると語る。 今回伝えしたいこととして、闘病している患者本人の意思を尊重してほしいと話し、「私自身はあまり過度に心配されたくない性格だが、中には気配りを求める患者さんもおり、症状も人それぞれですし、ケアしてほしい度合いも人それぞれであるなか、患者も一概ではなく様々な考えの方がいることを知ってほしい」と訴えた。 地域住民が健康づくりにどう関わるか また地域住民の立場から、湘南アイパークの立地する藤沢市村岡地区の渡内町内会の会長をつとめる木村宏治さんは新湘南ウェルビーイングフェスタについて「無病息災を祈る祭り」と表現。地域社会における住民と健康の関わり方について、民俗学で提唱されている「ハレとケ」の考え方をあてはめて説明。ケ(日常)が続いてケガレ(気が枯れて元気がなくなる)状態を復活させるためのハレ(非日常の祭り)のサイクルが繰り返されることで人生が成立するとした。人生100年時代においては生涯ずっと健康であり続けることは難しいが、病気で薬を飲んだり、災害に遭ったとしてもハレとケのサイクルの中で町内会と住民は結びつきの中で健康について地域の中で目を配れることができるのではないかと語った。 創薬エコシステムの町での住民、患者の参画のあり方 登壇者全員によるパネルディスカッションでは、創薬研究者、患者、そして住民の間で、いかにして相互理解を深め、地域に根差した文化を築くか、また創薬エコシステムが根付く地域において、患者と住民がどのように薬づくりに参画し、そのあり方をどのように発展させるべきかについて議論された。 総括として研究者にとっては患者や住民との日常生活的な話し合いこそが、研究における新しい発見につながるとの見解が示され、研究者が抱える課題に対して、患者の生活の視点から新しい解決策やヒントが得られる可能性があり、地域のネットワークを密接にすることで、その機会を日常的に持てるようにすることが、新しい薬の種を生み出す鍵になると締めくくられた。 >新湘南ウェルビーイングフェスタ 2025
- 【城西大学薬学部】ウェルネスフードジャパン2025への初出展で、企業への科学的エビデンス提供を強化
城西大学薬学部薬科学科助教の矢島克彦氏 城西大学薬学部は、2025年11月26日(水)から28日(金)まで東京ビッグサイトで開催された日本最大級の健康関連展示会「ウェルネスフードジャパン2025」に出展した。この出展は、大学が保有する高度な研究知見と分析機器を社会に開放し、企業との共同研究や製品開発を促進するという、新たな産学連携強化の取り組みである。 薬学の「科学的エビデンス」で機能性食品開発を支援 会場では、薬学部の3学科(薬学科・薬科学科・医療栄養学科)が連携し、創薬支援から機能性食品の研究、品質評価に至るまで、大学の強みである「科学的エビデンス」に基づく研究事例が紹介された。 今回インタビューを実施したのは、肥満予防や生活習慣病対策に焦点を当てた機能性食品開発の研究である。薬学部薬科学科助教の矢島克彦氏(栄養生理学研究室)は、自身の研究テーマについて、「生活習慣病の起点とされる肥満を防ぐため、睡眠中の脂質代謝を高め、寝ている間に脂肪燃焼量を増やす機能性食品や栄養素の探索研究をメーンに進めている」と説明した。 「寝ている間に健康に」現代のニーズに応える研究 矢島氏の研究チームでは、含まれる脂質の脂肪酸比率を調整することで、食後の脂肪燃焼量が増大する効果を有する「太りにくいマフィン」などの菓子類を開発し、食べた後の脂肪燃焼量が高まる効果を実証している。これは、日常生活から離れたサプリメントではなく、マフィンやパン、アイスといった普段の食生活に溶け込む形態での食品介入を重視しており、商品化に直結しやすいアプローチである。 「現代の消費者は、忙しさから『寝ている間を有効活用したい』という意識が高く、寝ている間の脂肪燃焼を増やすといったコンセプトが市場で求められている」とのことであり、こうした企業のニーズに応えるため、食品大手企業との共同研究も積極的に展開しているという。 学生が研究の最前線で学ぶ「社会とつながる学び」 同展示会は、研究成果を社会に発信するだけでなく、学生にとっての「社会とつながる学び」の場としても機能した。白衣を着た学生らが来場者に対し、自身の研究内容を直接説明する姿が見られ、鈴木龍一郎氏(城西大学薬学部薬科学科主任教授)はこれを「アクティブラーニング」の実践であると語った。研究成果を外部に伝えることで、学生自身の理解度と社会性を深める教育的な狙いがある。 産学連携の強化が大学資源の有効活用に 城西大学薬学部がこのような産業展示会に出展するのは今回が初めてだが、今後は恒例化していく意向である。出展の目的は、機能性評価のフィールドや動物実験のノウハウを持たない企業に対し、大学の充実した分析機器や専門知識といった研究資源を開放し、共同研究や受託研究の窓口となることである。 この出展は、大学が持つリソースを社会貢献へと結びつけ、健康食品産業のさらなる発展に寄与する姿勢を示すものであった。企業側からも、機能性評価の依頼や素材提供に関する問い合わせが複数寄せられるなど、早くも産学マッチングの手応えを感じているという。
- AI解析が解き明かす「新時代の就活ランキング」—Z世代の価値観を映す企業評価とは
従来の就職活動の前提が根本から変わりつつある。株式会社secondz digitalと法政大学キャリアデザイン学部(田中研之輔教授担当クラス)の産学共同プロジェクトにより、AI解析に基づく「AI時代の就活ランキング」が公開された。このランキングは、従来の評価基準である「総合偏差値」に代わり、新しい評価軸「言及割合」と、若年層で自己理解のツールとして人気のMBTIタイプを組み合わせることで、個人の特性に合った企業選びを支援する画期的な試みである。 1. 従来の「総合偏差値」と新しい指標の対比 就職活動における総合偏差値(就職偏差値)とは、企業の入社難易度を客観的な指標で評価し、偏差値で表したものである。これは主に入社難易度、平均年収、知名度、安定性といった企業の「スペック」を総合した指標であった。 しかし、Z世代がワークライフバランスや人間関係・カルチャーといった「いまっぽい価値観」を重視するようになった結果、従来の総合偏差値では見えにくい企業の「風土・相性」を測る指標が求められるようになった。 2. 「言及割合」を算出するAEOエージェントの仕組み この新しい評価を可能にしたのが、AEO(AI Engine Optimization)エージェントの仕組みである。AEOエージェントは、ChatGPTやGeminiなどの対話型AIが情報を生成・回答するプロセスを分析・評価・最適化するツールを指す。同プロジェクトでは、AEOエージェントが、学生が設定した6つの就活軸に関する質問をAIに投げかけ、回答の中で企業名が推奨された頻度を示す「言及割合」を計測した。これにより、企業情報をAIが「採用の観点」でどのように解釈し、評価しているかを数値として可視化することに成功した。 3. 「AI時代の就活ランキング」総合TOP3 学生が設定した6軸を統合した「総合ランキング」において、高い言及割合を獲得し、AI解析が「いま選ばれる企業」として推奨したTOP3は以下の通りである(2025年11月20日〜30日集計)。 順位 社名 言及割合 1位 株式会社リクルートホールディングス 28.54% 2位 株式会社サイバーエージェント 23.18% 3位 伊藤忠商事株式会社 14.80% 4. 自己理解のツール「MBTI」 同プロジェクトでは、特にZ世代に人気の高いMBTI(Myers-Briggs Type Indicator)診断結果とも連動したランキングを公開し、「自己理解×企業選び」を支援している。 MBTIは、人がどのように世界を認識し、意思決定を行うかの心理的な選好を示す指標であり、16種類の性格タイプに分類される。Z世代の間では、MBTIが自身の強みやコミュニケーションスタイルを理解し、「どのような環境が自分に合っているか」を考えるためのツールとして広く活用されている。本ランキングは、このMBTIのタイプ特性と企業の風土の相性をAI解析でマッピングした点が特徴である。 例えば、「直観 × 外向(EN系)」というタイプ群を見てみよう。「EN系」とは、MBTIの4つの指標のうち、「外向(E: Extraversion)」と「直観(N: Intuition)」の特性を持つタイプ(ENFP、ENFJ、ENTP、ENTJ)の総称だ。これらのタイプは、新しいアイデアや変化を積極的に好み、周囲を巻き込むリーダーシップや高いコミュニケーション能力を備えている傾向がある。そのため、自由な発想が尊重される環境や、大規模なプロジェクト、新規事業など変化の大きい組織との相性が良いとされる。 こうした「直観 × 外向(EN系)」の特性を持つ人々に対し、高い創造性やリーダーシップを発揮できる環境をAIがどのように推奨したのか。このランキングは、AIへの質問において、ENFPの「創造性・共感力・巻き込み力」からENTJの「戦略構築・事業推進力」まで、EN系が持つ強みを生かせる企業を具体的に問うた結果である。その結果は以下の通りである(2025年11月19日~30日集計)。 順位 社名 言及割合 1位 楽天グループ株式会社 56.94% 2位 株式会社リクルートホールディングス 54.17% 3位 株式会社サイバーエージェント 39.58% 5. AIはキャリア選択の「伴走者」となる 法政大学の田中研之輔教授は、「MBTIを活用したマッピングは、性格特性と働き方の相性を考える入り口として、学生にキャリア適合の視点を提供した」とコメントしている。 学生の価値観を反映した「6つの就活軸」と、個人の特性を考慮した「MBTI別ランキング」は、単に「どこに入るか」という総合偏差値的な発想から、「どの環境なら自分が成長できるか」という適合性を軸に企業を選ぶという、AI時代に不可欠な発想を促す。AIが算出した「言及割合」は、学生の自律的なキャリア形成を支援する強力な「解釈のツール」となるだろう。 このランキングと6つの就活軸の詳細、および16タイプすべてのMBTI別ランキングは、secondz digitalの 特設ページ にて公開されている。 secondz digital代表取締役の板井龍也氏と法政大学の学生との議論 プロジェクト参加学生の声 実際にプロジェクトに参加した学生からは、従来の就職活動では得られなかった情報に対する期待が寄せられている。 ●人間関係・カルチャー系の内容は他のサイトでもなかなか調べることができないので、実際の就活でも使いたいと思いました。年齢を過度に尊重する場所はあまり得意ではないので、このような情報が分かるといいなと思いました。 ●MBTI診断はいわゆる性格診断ですが、自分がどんな働き方に向いているのかを考えるヒントになるのだと気付きました。外向的か内向的かという基本的な部分でも、合う会社の雰囲気は結構変わるので、企業選びの軸を作る上では意外と役に立つと感じました。 ●「飲み会の頻度」や「陰口の少なさ」のような、人間関係に関わるランキングはこれまであまり見たことがなくて、新しい視点だと感じました。このような内部情報は実際に働くうえで気になる部分なので、人間関係を重視したい人にとってはかなり助かると思います。 同プロジェクトは法政大学キャリアデザイン学部(キャリア体験学習(インターン):田中研之輔教授担当クラス)の講義にて実施。 ・参加学生数:26人 ・期間: 2025年9月〜11月、計3回の講義 テーマ:就活の未来を変える、AI×企業分析 学生たちは従来の就活指標にとらわれず、「自分や友人が本当に知りたい・比較したい企業の条件」を議論し、6軸を決定。 ※AEOエージェントによる数値解析・ランキング算出はsecondz digitalが実施。
- 第111回薬剤師国家試験 実施概要
2026年2月に実施が予定されている「第111回薬剤師国家試験」の概要について、試験日程、予定試験地、および詳細な試験時間割が発表された。 詳細は こちら を参照。
- 世界経済と日本経済の「死角」:製薬業界が問われる未来戦略
日本製薬工業協会(製薬協)主催の「第24回製薬協フォーラム」では、BNPパリバ証券のチーフエコノミストである河野龍太郎氏が登壇。「世界経済の死角、日本経済の死角」と題した講演で、日本経済が長年抱える構造的な課題と、グローバル化がもたらす社会の分断について鋭い分析を展開した。 製薬協会長の宮柱明日香氏は、河野氏を「日本を代表するトップエコノミスト」と称え、講演が製薬産業の未来を考える貴重な機会であると強調。政府が創薬・先端医療を成長戦略の中核に位置づけた一方で、業界が直面する研究開発力の低下、ドラッグラグ、薬価制度の予見性欠如といった課題に触れ、「今、日本が革新的な医薬品を適切に評価する魅力的な市場になれるのかが問われている」と危機感を示した。 第一の死角:グローバル経済の「内向き化」と覇権の動揺 河野氏は、グローバル化がもたらす社会の分断と、それに基づく世界経済の保護主義的な潮流を第一の「死角」と捉えている。 保護主義の常態化と社会の二極構造 アメリカ・トランプ政権下で顕在化した保護主義(相互関税など)は、政権が変わっても継続する可能性が高い。この根底にあるのは、1990年代後半のデジタル革命とグローバリゼーションによって生じた社会の二極化である。すなわち、高度な教育を受け国境を越えて所得を稼ぐ「エニウェア族」が存在する一方で、土地に縛られ所得が停滞する大多数の「サムウエア族」に社会が分断されたことへの反発が、ポピュリズムと内向き志向を強めているのである。 また、アメリカが関税を課す根拠を「米国が運営する国際システムに各国がフリーライドしている」という論理に求めることは、歴史的に帝国が末期的に見せるパターンであり、アメリカの覇権や基軸通貨ドルが揺らぐ可能性を孕んでいると分析した。 第二の死角:賃金停滞と「収奪的」社会の構造 日本経済は現在、完全雇用に近い特殊な環境にあるにもかかわらず、深いマイナスの実質金利(-2.5%)が歴史的な円安を招き、家計の実質購買力を抑制している。しかし、より根深い問題は、企業が生み出した富が家計に還元されない構造にあると河野氏は指摘する。 生産性上昇と実質賃金の乖離 日本経済は過去四半世紀で、時間当たり生産性がドイツやフランスと同程度の約3割上昇しているにもかかわらず、時間当たり実質賃金はほぼ横ばいで推移しており、近年はむしろ下落している。このことは、労働者が生み出した超過収益(レント)が従業員に分配されず、企業部門、特に株主に集中する「レント・シェアリングの欠如」という現象を明確に示している。 長期雇用制の代償と内部留保の異常蓄積 賃金停滞の背景には、1990年代の金融危機後、日本の大企業が長期雇用制を維持するために選択した戦略がある。企業は、人件費を抑制することで利益を捻出し、自己資本たる内部留保を積み上げ続け、その額は1998年の約120兆円から2024年には640兆円へと異常な水準に達している。 この人件費抑制策の主な手段は、2022年まで続いた正社員のベースアップ凍結であり、これと並行して、人件費の一部を変動費化するための非正規雇用の拡大が進められた。その結果、実質賃金が上がらず、消費も伸びないために国内企業の売り上げが増えず、国内投資が抑制され、海外投資ばかりが進むという「合成の誤謬」の状態が続いているのである。 「収奪的」な社会構造への懸念 雇用の約4割を占める非正規雇用の賃金が長期間低く抑え込まれてきた実態は、良かれと思った長期雇用制の維持が、結果として非正規雇用という「安価な労働力」に相当頼る社会構造を生み出したことを意味する。河野氏は、この構造が日本社会を「気がつかないうちに収奪的な方向に向かわせている」という強い懸念を表明しており、この格差の拡大と生活基盤の脆弱化こそが近年の政治の流動化の一因となっていると分析している。 求められる根本的改革:ガバナンスとイノベーションの再定義 日本がこの構造的な停滞から脱するためには、根本的な制度の見直しが必要であると提言された。 コーポレート・ガバナンスの再構築 日本政府が推進してきた株主利益最大化を企業経営者の役割とするアメリカ流のガバナンスは、日本の長期雇用や人材育成の文化と齟齬をきたし、長期的な創薬研究開発や人材育成に必要な投資を抑制し、短期的なコストカットに走らせる原因となった。したがって、企業経営者の役割は、株主だけでなく、従業員、地域社会といった全てのステークホルダーの利益増進に切り替えるべきであり、日本の企業文化に元々存在した包摂的な側面を再評価する必要がある。 「包摂的なイノベーション」を目指す社会制度の構築 イノベーションは、その恩恵が一部に集中する「収奪的」な性質を持つものであり、社会がこれを「飼い慣らす」必要性を指摘する。日本はこれまでイノベーションを推進する側のサポートに偏り、AIやグローバル化によってダメージを受ける側(低・中所得者層)へのサポートを怠ってきたことが最大の問題である。そのため、イノベーションを進める一方で、AIや外国人労働者との競争に直面する層をサポートする社会制度、具体的には給付付き税額控除や積極的労働市場政策などを構築することが不可欠である。「包摂的な社会制度」こそが、社会全体に恩恵をもたらす「包摂的なイノベーション」を生み出す土壌となる。 製薬産業への示唆 河野氏の分析は、創薬・先端医療を成長戦略の中核と位置づける製薬業界に対し、次のような戦略的な問いを投げかけている。製薬企業が生み出す高い付加価値は、研究開発者や従業員のベースアップに適切に還元され、更なるイノベーションを促す人的投資につながっているか。また、株主利益最大化に傾倒しすぎるガバナンスは、長期・高リスクを伴う創薬研究や人材育成への十分な投資を妨げていないか。そして、製薬イノベーションの果実を、国民の健康(ドラッグラグ解消、安定供給)だけでなく、構造改革を通じた社会全体への経済的貢献にもつなげる「包摂的」な役割を果たすことができるか。 これらの「死角」を見つめ直し、中長期的視点に立った官民連携を通じて、日本の未来を切り開くことが今、製薬産業に求められている課題である。
- 熊本大学発ベンチャー C-HAS+、線虫評価技術「C-HAS」で健康寿命の科学的エビデンスを提示
地域の力を科学で社会実装:熊本大学発 C-HAS+の使命 株式会社 C-HAS プラス(C-HAS+)は、「地域の力を活かし、ウェルネス・エクイティの実現を目指して」という理念のもと、熊本大学・熊本県・文部科学省による産学官連携プロジェクト「UpRod」の想いを受け継ぎ、熊本発の新産業創出を目指して誕生したベンチャーである。 同社は、大学の研究成果を生かした独自技術、具体的には線虫による健康寿命評価技術(C-HAS)、天然物エキスバンク、そして植物情報データベースを基盤とし、自然資源と科学を融合させることで、地域社会の課題解決に取り組んでいる。 独自技術を公開:健食・バイオアカデミックフォーラム2025に出展 このような背景と独自の技術基盤を持つC-HAS+は、その成果を社会に広く発信するため、2025年11月26日〜28日に東京ビッグサイトで開催された「健食・バイオアカデミックフォーラム2025|ウェルネスフードジャパン2025」に出展し、独自の天然資源探索技術と評価システム等を来場者に公開した。 同社は、大学の研究サポートを受けつつ、熊本大学大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター(GCNRS)との共同研究を推進しており、その成果は企業の健康・美容素材開発における時間とコストの劇的な削減を可能にしている。 C.エレガンス(線虫)健康寿命評価技術「C-HAS」の核心 来場者の関心を集めたのは、C.エレガンス(線虫)健康寿命評価技術「C-HAS」である。 この技術の革新性は、従来の非常に手間のかかる線虫実験とは異なり、線虫をインキュベーター内で30日間連続撮影し、その画像を解析することで、線虫の動きを定量的に解析可能にした点にある。 評価ロジックとして、C-HASは線虫の集団を「活発に動いて寿命も長いグループ」や「動きが緩慢で寿命が短いグループ」など4つに分類する。素材を添加した際に、この「活発な健康長寿グループ」の割合がどれだけ増加するかを指標として評価が行われる。 具体的な成果事例として、鹿児島で伝統的に作られる黒酢を線虫に与えたところ、健康長寿の線虫が45.3%増加したことが確認された。これは、古くから伝わる食品の健康効果を科学的エビデンスとして明確に提示するものである。 伝統と科学を融合した天然物探索データベース もう一つの主要サービスは、天然資源から機能性素材を効率よく探索するためのデータベースとエキスバンクの活用である。 探索の効率化として、植物の伝統的な薬効知識に加え、論文データベース(PubMed)と連携させることで、企業の開発者が求める病名や分子ターゲットから、効果のある植物を短時間でリストアップできる。これにより、企業がランダムスクリーニングにかける膨大な時間とコストを大幅に削減することが可能となる。 エキスバンクとの一体運用により、データベースで絞り込まれた植物、キノコ、菌類などの抽出エキスは、大学が保有するエキスバンクから提供される。企業は素材の「種」を探すプロセスをC-HAS+に委託し、自社の最終的なスクリーニングへと進めることが可能となる。 企業とアカデミアを繋ぐ窓口機能と製品化への貢献 C-HAS+は、熊本大学で生まれた国のプロジェクト「UpRod」の成果を社会に繋ぐ受け皿として設立された。 同社は、企業からの問い合わせや予算、権利的な調整など、企業対企業でやり取りしたい部分を一手に引き受ける「窓口機能」を担う。そして、高度なスクリーニングやエキスの詳細な分割といった高次な研究については、同社が窓口となりながら、大学の研究室と連携して実施する体制を強化している。 製品化へのアドバイスでは、健康分野だけでなく、酒造メーカーのクラフトジン開発において、特定の植物がもたらす「香り」に関するコンサルテーションを行うなど、健康と美味しさの両面で企業を支援し、すでに商品化されている事例も存在する。 最終的な製品化には年月を要するものの、すでにエキスを絞り込み、商品化に近づいている素材が数種類あること、また、菊の花エキスを用いた花粉症への効果で特許出願の成果を上げていることが展示ブースで報告された。 熊本大学薬学部の独自性 同社の技術を支える熊本大学薬学部は、その教育体制にも特徴がある。 学科横断的研究として、創薬・生命薬科学科(4年制)と薬学科(6年制)の学生が同じ研究室に所属する体制をとっており、基礎研究と臨床的視点の横の交流を促している。 研究マインドの養成も目標の一つであり、薬剤師を志望する学生も基礎研究や製剤部分などさまざまな研究に携わることで、研究の流れ全体を理解し、研究マインドを持った薬剤師として社会に送り出すことを教育目標の一つとしている。 同社は、熊本大学のこのユニークで豊富な知見と地域資源を融合させ、創薬・健康食品・化粧品分野において、今後も革新的な素材の探索と社会実装を推進していくと見られる。
- 【大木ヘルスケアHD】新本社お披露目会を開催!「コミュニケーションが価値を生み出す」創造の場へ
左から、松井秀正氏、松井秀夫氏 創業400年へ向けた「共創」の拠点!老舗企業の決断と未来戦略 2025年12月1日、大木ヘルスケアホールディングスが新本社のお披露目会を開催した。築100年を超え老朽化した旧本社からの移転となる新拠点は、「コミュニケーションが価値を生み出す」という明確なコンセプトを掲げ、社内外の連携を深める「共創」の場として生まれ変わった。 「社会の役立ち」を拡張する共創空間 エントランスに掲げられた大木の精神 代表取締役社長の松井秀正氏は、新本社設立が「社会への役立ちを目指したメンバーの集まり」という大木の精神を体現する場であると、その強い思いを表明した。社長は、特に1階のコミュニケーションフロアに最も注力したことを明かし、その意図を次のように語っている。 「従来、社会への貢献という意識は、当社のメンバーに限定されがちでした。しかし、この機会にその視野を広げ、当社と協働してくださる全ての皆様、すなわちメーカー様、小売店様、業界関係者様を包含し、皆様こそが社会の役立ちを志す同志であると認識いたしました。その理念に基づき、このフロアを、開かれた『共創』のためのオープンなカフェスペースとして設計いたしました」 これは、自社だけでなく、業界全体を巻き込んだ「共創」を新本社の使命とするという決意の表明である。また、旧本社では待合室もなく来訪者に不便をかけていた反省から、「気軽に心地よく過ごしていただこう」という配慮のもと、電源なども用意したオープンな空間を提供することを強調した。松井社長は、業界全体が1社だけでは解決できない状況にあることを認識しており、「競合の卸さんや業界関係者と一緒になって力を発揮していきたい」と、新本社を共創の起点とする願いを込めている。 会長からのメッセージ:業界の安定を最優先 一方、取締役会長の松井秀夫氏は、日本の流通における卸売業の役割、特に「小さな小売をしっかり支えられる力がある」という点に言及した。新本社への移転は、消防法や耐震法といった基準を満たさない旧本社からの「社員の安全確保」が目的であったことを説明。 そして、会長は取引先、特に小売業の関係者に対し、新本社建設が値引き交渉などに結びつかないよう、異例の配慮を求めるメッセージを発した。「この度、弊社は本社ビルを新築したわけではございません。つきましては、小売店様のご担当者様との間で、『新本社建設を理由に、当社にも値引きを要求しなければならないのではないか』といった無用の摩擦や誤解が生じないよう、『実は、また中古のビルに移転したんですよ』と、お伝えいただくなど、ご配慮いただければ幸いです。業界全体の安定を最優先するため、ご理解とご協力をお願いいたします」 この発言は、目先の話題性ではなく、長年にわたるメーカーと小売の信頼関係を重視し、業界全体の安定を最優先する老舗企業の強い責任感を裏付けるものである。 新本社の空間戦略 1階コミュニケーションフロア 新本社は「コミュニケーションが価値を生み出す」というコンセプトに基づき、地上9階、地下2階の全フロアが戦略的に設計されている。 まず、コンセプトを象徴する1階コミュニケーションフロアには、オープンカフェスペースがあり、社員と社外関係者が自由に交流し、新たな発想や信頼関係を育む「競争の場」となることを目指している。このフロアは100人規模のイベント開催や、災害時の避難スペースにも活用される。 2階ミーティングフロア 続く2階ミーティングフロアは、価値創出を担う拠点であり、17のミーティングルームが配置されている。スモーク加工パーテーションでセキュリティを確保しつつ開放感を維持し、リモート会議対応の通信環境を備えることで、ミーティングの質とスピードを高めている。 3階から8階の執務エリアは、固定席とフリーアドレスを組み合わせ、オープンミーティングスペースや集中ブースを設けることで、多様な働き方をサポートし部門連携を促進する環境を整備している。 地下1階ジェンダーフリーのパウダールーム 最上階の9階役員フロアは、取締役会や戦略決定など機密性の高い情報を取り扱う場として、高いセキュリティと機能性を備えた応接室・執務室で構成されている。 また、利用者の多様性に配慮し、地下1階にはジェンダーフリーのパウダールームを設置。明るく落ち着いた空間で、老若男女問わず心地よさを追求した設計と 大木ヘルスケアホールディングスは、この新本社を新たな起点とし、全ての関係者との連携を深めながら、創業400年に向けて「社会への役立ち」を自己実現していく。その歩みに注目だ。
- ツルハ・ウエルシア統合 ドラッグストアの枠を超えた「ライフストア」構想
株式会社ツルハホールディングス(以下、ツルハHD)とウエルシアホールディングス株式会社(以下、ウエルシアHD)は、2025年12月1日付で株式交換による経営統合を実現し、その詳細なビジョンを公表した。この統合は、同年4月11日付の資本業務提携契約に基づき、ツルハHDを完全親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする株式交換の効力発生により実現したものである。両社は、単なる業界内の規模拡大に留まらず、創業以来大切にしてきた理念を進化させ、「人生に寄り添うライフストア」への革新的な変革を目指す。 グローバル進出と国内基盤の確立 この統合により、新生ツルハHDは売上規模で世界のドラッグストア企業における第2グループに入り、世界3位の背中が見える位置に立つこととなった。この第2グループとは、Walgreen CVSなど圧倒的な存在感を持つ第1グループの次のステージであり、ごく限られた企業しか到達できない領域である。日本のドラッグストア企業として初めてこの領域に到達する。 国内においては、全国47都道府県を網羅する約5,600店舗のネットワークを確立し、店舗数、売上高、従業員数で業界において圧倒的1位となる。特に、薬剤師、登録販売者、管理栄養士などの約5万人の専門人材を擁する国内最大の組織となり、さらに両社の顧客データベースを完全に統合することで、約1億人規模の購買・アプリ接点データを構築するとしている。 ライフストアの定義と未来の顧客体験 ツルハHD代表取締役社⻑の鶴⽻順氏は、新生ツルハHDのビジョンとして「ドラッグストアから人生に寄り添うライフストアへ進化する」を掲げた。「ライフストア」とは、国内外の顧客の人生そのものに寄り添う店舗であると定義される。これは、薬を買う場所という従来の役割を超え、誕生から老後まで人生のあらゆる局面に寄り添い続ける存在を目指すもので、日々の買い物、美容、食料品、未病予防、相談機能、データによる健康支援などが全て一つにつながり、顧客の生活動線そのものを支えることが本質であるという。 成長戦略:3年間の基盤構築と重点施策 ビジョン実現に向けた実行は、最初の3年間で基盤を固めるフェーズ1から開始される。このフェーズでは、サプライチェーンを統合し、ナショナルブランド商品の共同調達による原価低減と、生活必需品の適正価格化を推進していく。 また、データ・システムの一元化は特に重要な施策であり、約1億人規模の顧客データ統合と、3年以内の基幹システム統合を通じて、グループを一つの体で動かし、「日本で最も生活者を理解する企業」を目指す。この基盤が整うことで、欲しい商品が欲しい時に手に入る、健康提案が自然につながるなど、ライフストア体験が具体的に提供されるようになるという。 調剤・プライマリーケア機能も強化され、調剤薬局をセルフケアの起点へと進化させるため、相談機能の強化や在宅・オンラインチャネルの拡大、データ活用による相談型AIエージェントの導入などを進める。統合の象徴として、新プライベートブランド「からだとくらしに、+1(プラスワン)」を来春より発売する予定である。フェーズ1で基盤が完成した後、フェーズ2では、その基盤が一気に稼働し、ライフストアの体験がどの地域にも同じ品質で広がる飛躍のフェーズとなる見込みである。 人材戦略と経営体制 ウエルシアHDは株式交換によりツルハHDの完全子会社となったが、ウエルシアが培ってきた強み、特に調剤専門性やセルフケア支援のノウハウは新生ツルハHDの中核資産として最大限に活用される。 新生ツルハHDの人材戦略は、統合後の最大の成長エンジンと位置づけられている。両社が持つ5万人の専門人材の知見を融合させ、ノウハウが循環する「学びの循環」を形成し、ライフストア形成のエンジンと位置づけている。この人材の知性、知識、経験値の統合こそが、グループ最大の成長エンジンであるという。 経営体制では、代表取締役社長は鶴⽻順氏が務める。ウエルシアHD代表取締役の桐澤英明氏は、新生ツルハHDの取締役兼執行役員に就任し、主に営業・商品領域を管掌する役員として、両社の経営統合を主導する。新生ツルハHDは、イオンからの非業務執行役員1名派遣に留め、経営の自主性と独立性を明確に確保し、日々の経営判断は両社のリーダーが主体となって行う方針である。 海外市場への展開と社会貢献 新生ツルハHDは、国内の基盤強化に加えて、海外市場への展開を積極的に進める方針である。ツルハとウエルシアがこれまで培ってきたノウハウに加え、イオングループの基盤と知見を活用し、ASEANを中心とした海外市場へ進出し、日本で磨かれた健康・生活支援の知識を世界に展開することを、新生ツルハHDの使命の一つと位置づけている。 また、桐澤氏が強調したように、国内では介護事業の強化を進め、ドラッグストア・調剤・介護を一体化した地域包括ケアの担い手となることを目指し、社会課題への貢献を使命とする。イオン取締役代表執行役社長の吉田昭夫氏も、イオングループのスケールメリットやインフラを活用し、新生ツルハHDの成長を力強く支え、ヘルス&ウェルネス領域を事業の中核に据える方針を示している。 なお、今回の発表では、株価影響やのれん算出影響を踏まえ、数値目標や業績見通しは含まれていない。数値計画については、2026年4月に改めて開示を予定しているという。 左から吉田氏、鶴羽氏、桐澤氏
- 武蔵野大学後援会が教養講座を開講!若者の「オーバードーズ」問題に迫る
武蔵野大学後援会は、2025年12月13日(土)に武蔵野キャンパスの雪頂講堂にて、教養講座「なぜ若者はオーバードーズをするのか?―市販薬乱用の理解と援助―」を開講する。若者の間で増加傾向にある市販薬の過剰摂取(オーバードーズ)に焦点を当て、その背景と適切な支援のあり方について解説される。 若者を取り巻くオーバードーズの現状と背景を深掘り 同講座には、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所 薬物依存研究部部長、兼薬物依存症センターセンター長である松本 俊彦氏が登壇する。 松本氏は、近年深刻化している若者の市販薬オーバードーズについて、彼らがなぜその行為に至るのか、また、周囲の支援者が具体的にどのように関わるべきかといった喫緊の課題について講演を行う。行為の背景にある問題や、支援の具体的な方法について、専門的な見地からの知見が提供される見込みである。 開催概要 講座名: なぜ若者はオーバードーズをするのか?―市販薬乱用の理解と援助― 開催日時: 2025年12月13日(土) 13時開場/13:30開演 会場: 武蔵野大学武蔵野キャンパス6号館 雪頂講堂(東京都西東京市新町1-1-20) アクセス: 三鷹・武蔵境駅からバス約10分/吉祥寺駅からバス約15分、「武蔵野大学」下車 田無駅からバス約5分、「至誠学舎東京前」下車徒歩5分 対象: どなたでも参加可能 定員: 500名(定員に達し次第、入場が断られる場合がある) 参加費・申込: 聴講無料・予約不要 主催: 学校法人武蔵野大学後援会 問い合わせ先 学校法人武蔵野大学後援会事務局 TEL:042-468-8298 E-mail:kouenkai@musashino-u.ac.jp 受付時間:9:00~17:00(土・日・祝日を除く)














