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キャリアの正念場で訪れる「サイレント退職」の衝撃―ユニ・チャーム、「女性の多様な働き方に関する調査」から

働く女性がキャリア形成の「上り坂」に差し掛かる時期、誰にも相談できぬまま職場を去る。そんな深刻な実態が明らかになった。

ユニ・チャーム株式会社は、2026年1月21日、働く女性のライフイベントとキャリアに関する調査結果を発表した。そこで浮き彫りになったのは、妊活や出産・育児への不安を抱えながら、組織にSOSを出せずに離職する「サイレント退職」という現代特有の課題だ。


退職検討の平均は「29.6歳」―キャリア形成期と重なる実態

今回の調査で最も注目すべきは、女性たちが退職を意識する「年齢」である。

調査の結果、退職または退職を検討した平均年齢は29.6歳であった。年齢層別で見ると、25歳〜29歳が37.5%と最も多く、次いで30歳〜34歳が30.8%と続く。

この時期は、入社数年を経て責任ある業務を任され始めたり、専門スキルの習得が加速したりする、いわばキャリア形成の黄金期だ。その一方で、結婚や妊活といったライフイベントが現実味を帯びる時期でもある。この二つが衝突した際、多くの女性が将来への不安を解消できず、組織から離れる決断を下している。


キャリア形成
Q.退職・転職をした、または検討した際の年齢(n=324)


4人に3人が「誰にも言わずに」去っていく現実

調査によれば、ライフイベントとキャリアの両立に悩み退職・転職した女性のうち、実に72.1%が上司や人事に十分な相談をしていなかった。


キャリア形成
Q.退職・転職をした際、ライフイベントとキャリアプランの悩みを上司や人事に相談できましたか?(n=251)

なぜ、彼女たちは口を閉ざすのか。相談できなかった理由の第1位は「上司には言いづらいと感じた(50.3%)」。次いで「キャリアに悪影響があると思った(27.1%)」と続く。職場の空気や、制度以前の「心理的安全性の欠如」が、優秀な人材を流出させる防波堤を崩している形だ。

さらに見過ごせないのは、退職を検討した平均年齢が29.6歳という点である。30歳前後という、現場で中核を担い始める時期の層が、将来への不安からキャリアを断念している現状は、社会全体にとっても大きな損失といえる。


キャリア形成
Q.社内の人に相談できなかった理由を教えてください。(複数回答・n=181)

「無知」が招くキャリアの分断

離職の根本的な要因として挙げられたのは、具体的な「知識」と「モデル」の欠如だ。

  • キャリア設計の考え方や事例を知らなかった(42.0%)

  • 両立する方法を知らなかった(41.4%)

  • 身近にロールモデルがいなかった(34.3%)

キャリア形成
Q.退職・転職をした主な理由を教えてください(複数回答・n=181)

こうした「知らない」という不安が、離職という決断を後押ししている。しかし、退職・転職を検討した女性の71.5%が「研修などがあれば判断は変わっていた」と回答しており、組織が正しい情報を提供し、対話の土壌を整えることの重要性が示唆された。


キャリア形成
Q.退職、または退職を検討した際の具体的なエピソードとは

組織全体でアップデートする「みんなの妊活研修」

この課題に対し、同社が展開するのが「ソフィ 知ることから、はじめる。みんなの妊活研修」だ。

同研修の特徴は、当事者だけでなく、性別や年齢を問わず組織全体で学ぶ点にある。妊活に関する正しい知識を共有することで、個人の抱える悩みを「組織の課題」として昇華させ、互いに理解し合える文化を醸成する。


薬学生へのアドバイス―専門知識を「自分の人生」の守り神に

これから医療の担い手として社会に出る薬学生にとって、この調査結果は決して他人事ではない。国家試験に向けた膨大な知識の習得に追われる日々かもしれないが、以下の3点を意識してみてほしい。

  1. 「知識」は自分を守る武器になる 薬学のプロとして薬理や疾患を学ぶのと同時に、自分自身の「リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)」についても主体的に学んでほしい。正しい知識があれば、不必要な不安に振り回されず、キャリアの選択肢を広げることができる。

  2. 就職先選びの「新基準」を持つ 給与や立地だけでなく「その職場にロールモデルはいるか」「ライフイベントに対する相互理解の文化(研修の有無など)があるか」をチェックしてほしい。29.6歳というキャリアの分岐点は、薬剤師としても認定取得や管理職への昇進が重なる時期だ。

  3. 「相談」という技術を磨く 「サイレント退職」を防ぐには、組織の改善も必要だが、個人が早い段階で周囲に相談する勇気とスキルも重要だ。実習などを通じ、指導薬剤師や多職種と「言いづらいこと」をどう対話するか、そのコミュニケーション能力も今のうちに養ってほしい。


専門職である薬剤師だからこそ、知識を患者のためだけでなく、自分自身の豊かな人生とキャリアを両立させるために活用してほしい。


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