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【薬師のことのは|ほうかご】有機化学って、やる意味あるの?―薬剤師になって気付いたあの時の学び―

  • toso132
  • 1 時間前
  • 読了時間: 4分

執筆:しほ(薬剤師)


薬師のことのは しほ

薬学生の皆さん、はじめまして。しほと申します。私は薬学部が6年制になった後に入学し、皆さんと同じように実務実習やCBT、OSCEなども受けてきました。

皆さんは日々の授業中や、学期ごとのテスト勉強をしている際、「薬剤師になってから、こんな内容使うの?これやる必要あるのかな…」と思いながら勉学に勤しまれていることはありませんか? また、一夜漬けの暗記や、テストが終わったら何も覚えてない!なんてこと…。ここでお話ししたいのは、結論、「今は忘れてしまってもいい。とにかくこなすべし!」ということです。

ここでは、国試を受けてから、そして薬剤師になってから、私が気付いた『学生時代に”あれ”をやる意味』をお話できればと思います。


今日のテーマは、多くの方が壁に直面するであろう、『有機化学』についてです。まず薬剤師になる前に、皆さんが受けるのは国試です。国試・卒試に受からなければ、薬剤師にはなれませんので、まずは、ここを突破することを考えることでしょう。

有機化学については、私は低学年の頃に履修しました。じっくり理解をして身につけることにより、何年かたっていても思い出せる科目の一つです。例えば、共鳴です。苦手な方も多いのではないでしょうか。共鳴こそ、何度も問題を解き、法則を体に染み込ませることで、何年か後、国試・卒試の勉強をするときに意外とすんなり思い出すことができます。

「どうせ忘れるのなら、国試・卒試の時に勉強すればいいや」そう思う方もいらっしゃるかもしれません。国試・卒試前には、他にも覚えなければいけないことがたくさんあります。膨大な問題量が、次から次へと降ってくるのです。直前になって、有機化学をじっくり勉強し、解く練習をする時間があるでしょうか。きっと、有機化学よりも優先して、点数がすぐ取りやすい科目の暗記に走るのではないでしょうか。

そして、「有機化学は捨てた!」と言いながら国試に挑み、結果、その一問の失点に泣く…ということに…。そんなことがあっては、在学中の講義も、テストも乗り越えてきたあの努力と時間も、非常に惜しまれます。もったいないですよね。したがって、まず国試・卒試の合格の近道のためにも、今のうちに理解しておくことが大切なのですね。

そして、薬局の薬剤師になってから、有機化学が何の役に立つのか?疑問に思いませんか。例えば、有機化学の授業で、光学異性体のことを学びますよね。S体とR体ですね。薬局で働いてみたらこんなお薬がありました。


・ジルテック(セチリジン)と、ザイザル(レボセチリジン)

・オメプラール(オメプラゾール)と、ネキシウム(エソメプラゾール)

・アモバン(ゾピクロン)と、ルネスタ(エスゾピクロン)


何か気が付くことはありませんか? どれも成分名の初めの音に、「SやR」が付いていますね。例えば、ジルテックは、S体とR体が含まれているラセミ体です。このうちR体だけを抽出したものがザイザルです。このR体は、S体よりも薬理作用が強力であり、かつ、長時間持続します。他にも、オメプラールは、S体とR体を含んでいますが、ネキシウムは、代謝酵素CYP2C19の影響が小さいS体のみを抽出したものです。これにより、遺伝的体質による効果の個人差を少なくすることができます。このように、光学異性体に関連する薬剤が複数存在し、それぞれの特徴が異なります。先ほどの例のように、薬理作用が強力になった製剤や、効果の個人差をなくした製剤もあれば、副作用が軽減された製剤などさまざまです。処方された薬が変更になった患者さんに、「この薬は、前の薬とどう違いますか?」と聞かれた際、光学異性体について理解をしないまま、正しい説明ができるでしょうか。近年では、PPIがOTCとしても販売されるようになりましたね。病院で処方歴のあるネキシウムと、OTCのオメプラゾール配合製剤について尋ねられた場合、患者さんに分かりやすく説明し、安心・安全にお使いいただけるでしょうか。このように、現場につなげるためにも、今のうちに基礎を固めておく意味が大いにあるのです。


 今回は、『学生時代に”有機化学”を学ぶ意味』をお伝えしました。きっと、学生のうちにしか経験できないことがたくさんあることと思います。6年間の学生生活を充実させながら、今やっていることが必ずいつか、将来の自分に繋がると信じて卒業なさってください。本稿が皆さんの学びの一助となれば幸いです。


プロフィール

しほ:薬剤師。一児の母。薬学の専門性に加え、英語学習にも挑戦。AI時代だからこそ、自身の「生の声」で伝えることを大切にし、ポッドキャストやブログを通じて健康・育児・学習の記録を多角的・多層的に発信している。【note】https://note.com/kusushi_kotonoha


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