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- 日本フレイル予防サービス振興会が設立1周年報告会を開催、会員企業は34社に拡大。産業界からフレイル予防の社会実装を加速へ
一般社団法人日本フレイル予防サービス振興会理事長の久木邦彦氏 一般社団法人日本フレイル予防サービス振興会は2026年6月19日、設立1周年を迎えての事業報告会を東京都内で開催した。2025年5月の設立時に10社だった会員企業は34社へと大幅に拡大しており、超高齢社会という巨大な国家課題に対し、業界や業態の垣根を越えて産業界が本格的に結集し、フレイル予防の社会実装を推進する決意が示された。報告会には、理事長である久木邦彦氏のほか、理事の矢島鉄也氏、理事の神谷哲朗氏が登壇した。 設立1年で会員企業が3倍超に、産業界が主導する意義 冒頭に登壇した久木氏は、この1年間の歩みと意義について語った。久木氏は、「当法人は2025年5月23日、産業界としてフレイル予防推進に積極的に関与・貢献するという強い決意の下、有志企業わずか10社で設立されました」と経緯を振り返った。それから1年が経過した2026年6月1日時点で会員企業は34社にまで拡大し、内訳はイオンやキユーピーをはじめとする正会員が10社、食品・保健サービスなど多岐にわたる業種からなる一般会員が21社、活動を支える賛助会員が3社という構成になっている。 加齢に伴い心身の活力が低下する「フレイル」は、健康と要介護の中間に位置する状態であるが、適切な介入によって健康な状態へ回復できる科学的にも極めて重要な局面である。その予防には栄養、身体活動、社会参加という3つの柱を複合的に実践することが不可欠とされる。久木氏は、行政の啓発活動や大学研究室の理論だけでは生活者の日常に深く浸透させることは容易ではないと指摘した。「生活者が毎日足を運ぶ店舗を持ち、日々手にする商品やサービスを生み出している産業界が手を取り合い、日常の暮らしの中に自然とフレイル予防を溶け込ませていくことこそが、34社まで拡大した私たちの果たすべき使命である」と、産業界が主導する意義を強調した。 草の根の啓発イベントと「地域連携」の二面展開 この1年間でスタートさせた具体的な取り組みとして、大きく4つの実績が紹介された。 1つ目は、地域に根差した草の根の啓発活動である。同会はこの1年間で多くの自治体や地域の関係者と効果的に連携し、普及・啓発イベントを計15回開催した。具体的には、横浜市保土ヶ谷消防署主催の救急セミナーへの出展や柏市主催の健康イベント、イオンモール大垣、岐阜県・安八温泉など、地域の住民が日常的に集まる場所でのイベントを実施し、1年間で約3,000人の生活者にフレイル予防を訴求した。 そのうち約500人にはフレイル測定を体験してもらったが、測定の結果、約4割の参加者に何らかの「フレイルの兆候(プレフレイルまたはフレイル)」が見られるなど、自覚症状のない層へのアプローチとして大きな意味を持つデータが得られた。この測定体験を通じて、買い物のついでに楽しみながらも自身の体の変化を知り、食事改善や運動の必要性へリアルに気づく機会を創出している。 こうした地方や中小都市での広がりについて、神谷氏は、今後の高齢化の背景を交えて方針を補足した。団塊の世代が2035年に85歳を迎えることで介護認定率が現在の数字で約6〜7割に達するという厳しい試算に触れ「最も大変な課題になってくるのは人口が集中する大都市部。大都市圏における大きな通いの場の利用や大手の店舗会場を活用して自治体と取り組む課題解決を『一丁目一番地』として先決事項に進める」とした。 一方で、大企業が少ない地方や中山間地域への今後の展開については、「地域連携を中心に進める」と言及した。「地方においては、地域の商店街や郵便局、道の駅といった周辺のさまざまな事業者、そして自治体が横に連携し、行政とともにイベントや事業を組み立てていく地域連携を中心軸に据える」とのことで、これは全国の自治体が参画するプラットフォームである「フレイル予防推進会議」の構成自治体とも話を重ねながら、今後の展開に向けた準備を進めているという。 この「フレイル予防推進会議」とは、フレイル予防に向けて自治体・産業界・学術界が三位一体となって連携し、普及啓発活動を行う産官学連携のプラットフォームである。2024年7月24日の設立以来、地域の特性に応じた予防事業を推進する基盤となっており、同会もこの枠組みを生かしながら、地方自治体や事業者と連携したアプローチを今後さらに本格化させていく方針だ。 店頭での「コラボレシピ」展開と「自主認証ガイドライン」の展望 2つ目の取り組みは、フレイル予防の啓発活動と企業の販売活動を、適切かつ健全に連動させるためのガイドライン整備である。生活者が店頭で迷うことなく、安心してフレイル予防の商品やサービスを選べる未来を目指し、現在は第1弾として食の提案に関するガイドラインの作成と、それを認証する自主認証制度の検討に注力している。 これと連動する3つ目の取り組みが、具体的な食の提案である。同会は「食べて元気にフレイル予防」をテーマに、高齢期に特に重要となる適切なエネルギーとたんぱく質の摂取、あるいは食品多様性の確保を意識したレシピを作成した。2026年2月にイオン大垣店で実施したイベントを皮切りに、6月中旬からはイオンリテール南関東・中部カンパニー全店の店頭において売り場と連動した大々的な訴求を開始しており、関連商品を同じ売り場で陳列することで気づきから購買までをつなげる導線を広げている。 このガイドラインの進捗状況について、矢島氏は「このガイドラインは、まさに業界の実証・認証制度に向けたものである」とした上で、エネルギーとたんぱく質をテーマとした会員企業のコラボレシピのような進め方で認証ができるかについて、事前に厚生労働省や消費者庁の担当部局とも意見交換をしながら準備を進めている現状を明かした。 今後のスケジュールについては、「有識者委員の先生方にも中身を見てもらいながら専門的な指導を仰ぎ、今年度(2026年度)中に作業を進めて、来年度のなるべく早い時期までに制度を構築できるよう進めていく」方針を示した。さらに「今年の秋頃には認証の実証に向けたさまざまな取り組みを少しずつ行っていきたい」と語り、制度化へ向けた具体的な見通しを明らかにした。 左から矢島氏、神谷氏 人材育成と2年目の展望 4つ目の取り組みは、最前線でサービスを届ける人材の育成である。この1年間で有識者や外部専門家によるセミナーを3回実施したほか、同会のホームページ内に動画コンテンツやeラーニングシステムを整備した。同会の有識者理事である辻哲夫氏(東京大学高齢社会総合研究機構・未来ビジョン研究センター客員研究員)による講演をはじめ、フレイル予防の基礎知識をいつでも継続的に学べる環境を整え、会員企業の社員教育をバックアップしている。 最後に、同会が見据える2年目の本格的な進化として、3つの展望が共有された。 第一に、前述したフレイル予防推進会議の参画自治体との連携をさらに強化し、全国の自治体と34社の持つノウハウやアセットを掛け合わせることで、地域に密着したフレイル予防の取り組みを全国へスケールアップさせていく。第二に、現在進めている自主認証制度を早期に構築し、信頼性の高い認証制度を確立させることで、生活者へ確かな安心を届ける準備を進める。第三に、会員企業が持つ商品、サービス、 流通、そして人材といったリソースを、自治体が抱える健康・長寿社会づくりへの課題解決へダイレクトに注ぎ込み、自治体におけるフレイル予防事業への支援を本格化させていく。 久木氏は「まだ始まったばかりの挑戦ではあるが、一人ひとりが自分らしく、よりよく生きていける明るい高齢社会と、健やかな人生100年の実現に向け、私たちは2年目も全力で活動していく」と締めくくり、今後の活動への温かい支援と注目を呼びかけた。
- クオール初の献血バス活動を実施、地域密着型店舗から挑む社会貢献の新モデル〜若年層の献血者減少と安定供給への懸念に、生活動線上の薬局・コンビニ協業店舗からアプローチ〜
クオール株式会社は、日本赤十字社神奈川県赤十字血液センターおよび株式会社ローソンの協力のもと、2026年6月13日に「ローソンクオール薬局中央林間二丁目店」の駐車場(神奈川県大和市)にて、同社初となる献血バスによる献血活動を実施した。この取り組みは、毎年6月14日の「世界献血者デー」を翌日に控えたタイミングで行われ、地域医療への貢献と命をつなぐ活動に共感した多くの地域住民が参加した。 日常の生活動線上で参加できる献血機会を提供 会場となった同店は、小田急江ノ島線および東急田園都市線の中央林間駅から徒歩7分という利便性の高い立地にあり、当日は10:00〜12:00および13:45〜16:00の時間帯で実施された。薬局とコンビニエンスストアを融合した生活密着型店舗としての特性を生かし、買い物や処方箋受付のついでに立ち寄れる環境を整えたことで、幅広い世代が日常の生活動線上で気軽に献血に参加する機会を創出した。 なお、献血への参加者全員には、協力への感謝としてモバイルバッテリーとローソンの「からあげクン」引換券が贈られた。 医療現場の課題解決と協業による新たな可能性 現在、医療現場で必要とされる赤血球製剤の約98%が400mL献血由来とされており、地域医療を維持する上で血液の安定確保は不可欠な課題となっている。しかし、少子高齢化に伴う若年層の献血者減少※が続いており、将来的な供給への懸念が高まっている。今回の取り組みは、世界保健機関(WHO)が制定した世界献血者デーの趣旨である「無償献血の重要性の発信」に合致するだけでなく、地域に根差した健康拠点として大きな意義を持つものとなった。 クオールとローソンの両社は、今回の実施を通じて得られた知見を今後の他地域における店舗運営にも活用していく方針である。生活に密着した受け入れ拠点を全国に広げることで、献血バスの活動範囲を拡大させ、地域における血液確保の安定化と地域医療の支えに寄与していく構えだ。 ※出典:厚生労働省 WEB MAGAZINE 【特集】日本の未来を変える、若者の献血より(https://www.mhlw.go.jp/web_magazine/feature/20260410.html)
- 【大木ヘルスケアHD】2026秋冬商談会を開催ー「75歳まで働かなければならない社会」を見据えた店頭提案と、これからのドラッグストア・薬局の役割
大木ヘルスケアホールディングス株式会社は、2026年6月16日から17日の2日間にわたり、TRC東京流通センターにて「2026 OHKI 秋冬用カテゴリー提案商談会」を開催した。同社はこれに伴い記者会見を執り行い、代表取締役社長の松井秀正氏が、深刻化する少子高齢化や労働人口減少に立ち向かうための新たな流通・店頭戦略について説明した。 社会課題の深掘りと「一貫した価値観」 同社は「新しい売り上げ、新しいお客様を作る」というテーマを一貫して掲げており、今回は前回のキーワードでもあった「75歳まで働かなければならない社会」という現実をさらに深掘りした提案を行った。 日本の現状として、医療費の急増(2023年度は約48兆円、60歳から75歳にかけて医療費は約2倍に増加)、労働人口の減少(2040年には2025年比で約1,100万人の労働力が減少)、さらには人口減少に伴う需要そのものの減少という「3つの危機」に直面している※1。これに対し、高齢者が75歳まで働くことができる健康な体を維持することは、現役世代の負担を減らし、社会保障制度を維持するための「時間稼ぎ」として不可欠であると同社は指摘する。 さらに、2040年には地方を中心に多くの地域で病院の維持が困難になる「医師不足ハザードマップ」※2の現実があり、生活者が自分たちの体を自分たちで守る「セルフメディケーション」の重要性がこれまで以上に高まっている。 ドラッグストア・薬局の役割の変革 こうした背景から、店頭の役割は単に「商品を置く場所・売る場所」から「健康を提供する場所」へと進化することが求められている。提案商談会では、現役で働き続けるシニア層(65〜70歳)が抱える「5大不調」(見えづらさ、膝・腰・関節の痛み、疲労・栄養不足、胃腸の不調、睡眠悩み)に対し、OTC医薬品や医薬部外品を適切に届けるための具体的な売場設計が提案された。例えば、漢方薬を従来の専用コーナーに隔離するのではなく、「頭痛薬」や「胃腸薬」といった症状別の定番棚へ導入することで、消費者の機会損失を防ぎニーズ充足率を高める事例(大建中湯の定番棚導入による販売数伸長など)が紹介された。 また、2026年6月より栄養保持目的の医薬品(エンシュアやラコールなどの医薬品栄養剤)の保険給付が適正化(見直し)され、市販の栄養補助食品で代替可能な場合は保険対象外となる方針が進んでいる。これにより、低栄養傾向にある高齢者に対して、店頭で適切な食支援やサプリメントの提案を行う重要性が一気に加速する。 次なる成長市場「フェムケア」:薬局の売場を活性化する新たな切り札 今回の提案商談会における重要なテーマの一つとして、経済産業省も発信を強めている「フェムケア」の展開が挙げられた。女性の社会進出が進む中で、女性特有の健康悩みに寄り添う市場は非常に高いポテンシャルを秘めている。 同社は、フェムケアを単なる一時的なトレンドとして終わらせるのではなく、生活者のQOL(生活の質)向上に寄与する定番カテゴリーとして店頭に定着させるための売場提案を行った。具体的には、女性のライフステージに応じた「世代別の悩み」に焦点を当て、吸水ショーツをはじめとするデリケートゾーンケア、生理・PMS対策、そして更年期ケアまで、幅広いラインナップを分かりやすく分類・陳列する売り場作りを提示した。 特に、このフェムケアは薬局における物販活性化の切り札としても位置づけられている。多くの女性が抱えながらも声を大にしにくい「尿もれ(軽失禁)」などの隠れた悩みに対し、心理的な抵抗感を減らして手に取りやすいパッケージデザインの製品やサプリメント、温活グッズを一堂に集結。これらを薬局の定番棚へ導入し、後述する薬局の「待ち時間」を活用してアプローチしていく戦略が示された。 薬局における物販と「地域医療のハブ」への進化 特に注目すべきは、「門前薬局等立地依存減算」( 調剤基本料の「特別調剤基本料」)のルール変更に伴う、薬局のあり方の変化である。病院の門前に立地し、処方箋の受け付けだけに依存する経営スタイルは転換を迫られており、今後は薬局であってもドラッグストアのように優れた商材(特に説明のしやすい医薬部外品やエビデンスのある商品)をそろえ、患者の悩みに合わせて能動的に提案していくフローが必要とされている。 薬局内での平均待ち時間は約14分であり、そのうち約20%の患者は「店内を見て待つ」という生産行動をとっているというデータもある※3。この貴重な時間に、診療科目に合わせたフェムケア商品や季節の悩みを解決できる医薬部外品などを視覚的に分かりやすく演出することが重要となる。薬剤師やスタッフがアシストしやすい商品選定を行うことで、未病段階での早期介入を可能にし、薬局が「地域住民の健康寿命延伸に貢献する地域医療のハブ」へと進化していくことが期待されている。 激変する社会で求められる役割とは これからの医療提供体制や社会保障の形が激変していく中で、薬学生が活躍する未来のフィールドは、単に「処方箋通りに薬を調剤して渡す」だけの場所ではなくなる。 高齢者が75歳まで元気に働き続けられる社会を支えるためには、病気になってから治療するのではなく、病気になる前の「未病・予防」の段階でいかに適切に介入できるかが鍵となる。そのためには、処方箋に書かれた医療用医薬品の知識だけでなく、OTC医薬品、漢方、栄養補助食品、さらにはフェムケアや日々の生活習慣を支えるヘルスケア商材まで、幅広い選択肢から生活者に最適な提案ができる「健康アウトカムのプロ」としての役割が薬剤師に強く求められる。 制度の改定やテクノロジーの進化、社会のニーズの変化をポジティブに捉え、リアルな店舗だからこそできる「対面での対話とケア」の強みを磨いていくことが重要である。薬学生の持つ専門知識と柔軟な提案力こそが、これからの地域住民の健康と、持続可能な社会を支える大きな原動力となるに違いない。 ※1 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」および厚生労働省、総務省統計局のデータを基に算出 ※2 厚生労働省の「第12回 新たな地域医療構想等に関する検討会」で提出された特別集計データ ※3 GMOヘルステック株式会社の調査データ
- 【日本保険薬局協会】コンサータ錠の登録薬局間における在庫調整などの特例措置を厚生労働省へ要望
日本保険薬局協会は、2026年6月11日、厚生労働省に対し、「コンサータ錠の登録薬局間の在庫調整等に関する要望」を提出した。 コンサータ錠については、近年の需要増加などを受けて限定出荷が継続する中、医療機関および薬局において必ずしも十分な量が入手できない状況が生じている。しかし、現行の運用では登録薬局間での譲渡・譲受が認められていない。そのため、在庫を有する薬局があっても、継続的に本剤を必要とする患者を有する薬局へ在庫を移動できない状況があり、患者が調剤を受けられず在庫のある薬局への変更を余儀なくされる事態が懸念されている。 同協会は、不正流通や目的外使用を防止するための厳格な適正流通管理の重要性を認識しつつも 、供給不安定時において管理体制が硬直的に運用されることは真に必要な患者に医薬品が届かない事態を招くと指摘。患者負担の軽減や継続的な薬学的管理の観点から 、主に以下の3点について速やかな検討と実施を強く要望した。 1. 登録薬局間の譲渡・譲受の特例措置 コンサータ錠適正流通管理システム上の登録薬局間において、譲渡・譲受を認める特例措置の設置を提案している。対象を「譲受先に継続して必要な登録患者が存在すること」「譲渡数量は当面の継続調剤に必要な最小限とすること」などの条件を満たす場合に限定し、製品名やロット番号、実施日などを記録して確認できる仕組みにすることで、トレーサビリティを確保できるとしている。また、ただちに認められない場合であっても、未開封品については製造販売業者および卸売販売業者の関与のもとで再配分できる仕組みの検討を求めた。 2. 薬局の承継・移転等に伴う在庫承継の取扱いの整理・周知 薬局の開設者変更、事業承継、店舗移転・統合などに伴い、実質的に薬局機能や患者対応が継続している場合であっても、現場において在庫承継が認められず「廃棄・新規購入が必要」と受け止められた事例が複数報告されている。関係法令上一律に廃棄を求める規定はないと理解されることから、関係者間で認識を整理し、登録薬局からの相談に対して統一的な説明がなされるよう運用の周知を求めている。 3. 自立支援医療等の利用患者における薬局変更時の取扱い柔軟化 医薬品の供給事情により、患者がやむを得ず在庫のある別の薬局へ変更せざるを得ない場合、自立支援医療等を利用している患者は手続上の不利益や負担増加が生じる恐れがある。そのため、指定薬局変更手続の迅速化やオンライン・当日申請の活用、事後的取り扱いなどについて、厚生労働省から関係自治体へ統一的な考え方を示すよう要望した。 同協会は、過剰な発注を控え適切な購入・在庫管理に協力していく姿勢を示したうえで、地域における医薬品供給体制の維持と患者への安定供給に向け、柔軟かつ速やかな対応を求めている。
- 2026年度 新歓 ~自分らしい香りを探そう~企画長インタビュー
(一社)日本薬学生連盟は、2026年5月に対面イベント「新入生歓迎会 ~自分らしい香りを探そう~」を開催し、ハーバーリウムを作り、香りが健康に与える影響について学びを深めました。今年度は関西地域、東海地域、関東地域に加えて、新たに北陸地域でも実施しました。イベントを主催している地域連携委員会で委員長を務め、さらに関西地域企画長も兼任した河野真優さん(大阪医科薬科大学5年生)、東海地域企画長の山田真由香さん(名城大学5年生)、北陸地域企画長の芦沢拓海さん(富山大学4年生)、関東地域企画長の山崎成央さん(明治薬科大学5年生)にお話を伺いました。 (取材・執筆:東京薬科大学4年生 庄司春菜、校閲:東京薬科大学5年生 馬越春莉) ―北陸で開催することになったきっかけはありますか。 芦沢:大学に在学していても日本薬学生連盟の存在を知る機会がなかったため、知れば興味を持ってくれる人も多いのではないか、北陸でも団体を周知したいという思いから開催を決めました。新歓を機に日本薬学生連盟で活動する仲間を増やし、製薬企業が多い富山県の特徴を生かした活動をしたいと考えています。 北陸地域の新入生歓迎会 ―委員長として、感想を教えてください。 河野:今年度から委員長となり初めてのイベントだったため、最初は何をしたら良いかわからず準備が大変でした。しかし、スタッフ全員で作りあげ、前任の助けもあり無事に開催できたことが良い経験になったと感じています。 関西地域の新入生歓迎会 ―運営として、楽しかったことは何ですか。 山田:当日が楽しかったです。クイズを行う場面があり、「この匂いは何でしょう?」という内容で、面白いコメントがたくさん出て良かったと思いました。和気あいあいとした雰囲気が好きなので、その雰囲気を作ることができたのが良かったです。 東海地域の新入生歓迎会 ―特に、盛りあがった企画はありましたか。 芦沢:ハーバーリウムの匂い当てクイズです。1問ずつ実施した後、最後に6問分の香りをそろえた状態で、「これは何の匂いだろう」とランダムに回した際、それぞれが感じる匂いが異なっていた場面が特に盛りあがりました。 山崎:アロマのクイズで、グループごとに意見を出し合った場面です。親しみやすい内容だったこともあり、活発に話し合うことができました。また、ハーバーリウム作りの花を違うグループの人と交換することで、参加者同士が交流を深めることができたと思います。 関東地域の新入生歓迎会 ―運営を行ううえで大変だったことはありましたか。 河野:メールの返信が大変でした。東海と関東では外部の方に依頼して施設を借りたため、返信が遅くならないよう気を付けていました。また、それぞれのイベント前日まで参加者を募集していたため、参加人数の把握が難しかったです。 山田:事前にワークショップの内容をしっかり勉強してから臨もうと思っていましたが、実務実習期間中ということもあり、なかなか準備の時間を確保できなかったことです。 芦沢:これまで企画運営の経験がなかったため、イベントの運営イメージがわかず、大変でした。先に開催された関西の新歓に参加したことで、少し安心することができました。 山崎:今年は参加人数が30人と多く、ハーバーリウムの材料が不足したり、容器の買い出しに時間がかかってしまったりなど、予想していない事態が起きてしまったことが大変でした。他のスタッフが協力してくださったおかげで、無事に皆さんに楽しんでいただいて企画を終えることができたと思います。 ―今後、団体や自身の活動に生かせそうなことはありましたか。 河野:後任が決まっているのであれば、一緒に準備を進め、大体の流れがわかっている状態で進めるのがよいと思いました。 山田:これからの企画長には、人を頼ることも大切だと伝えたいです。東海地域で募集をかけるだけでなく、個別にも声をかけると良いのではないかと思います。 日本薬学生連盟の詳細は↑ 芦沢:現在、興味を持っているもののやりたいことが見つからず、日本薬学生連盟の活動に参加するか悩んでいる学生が周囲に多くいます。継続的に活動をすることで、より多くの学生のやりたいことを見つけるきっかけを作ることができたら良いと思います。 山崎:新しく日本薬学生連盟へ入会する人も多く、この団体の活動がさらに活発になり、より多くの薬学生に広がる大きなきっかけになったと実感しています。私自身も企画長としてやるべきことを知ることができたため、本経験を今後の日本薬学生連盟の活動に活かしていきたいと考えています。
- 13兆円市場への挑戦と「攻めの予防医療」――JCDSが語るドラッグストアの未来
塚本氏 2026年6月15日、日本チェーンドラッグストア協会(JCDS)の特別記者会見が開催された。新体制の発表とともに、2030年に向けた業界の成長戦略や社会課題への取り組みについて示された。 2030年「13兆円市場」の達成に向けた道筋 会長を再任された塚本厚志氏は、ドラッグストア業界の現状を「10兆円産業」としたうえで、2030年までに13兆円の市場規模を達成するという目標をあらためて強調した。この目標を達成するための大前提として、単なる売上の拡大ではなく、生活者から健康生活拠点として本当に認められることを掲げている。 13兆円への拡大を牽引する具体的な要因としては、まず食品をはじめとする現在伸長している商材カテゴリーを健全に成長させていく、既存事業の延長線上の取り組みが挙げられる。これに加えて、上場企業を中心とした各社が持つ資金力や財務力を活用し、M&A(企業再編)を戦略的に進めることで拠点数を拡大していくことも見込んでいる。さらに「NEXT25」プロジェクトのもと、若い経営者や企業のキーマンたちが2025年以降の業界の未来を見据え、健全な発展のために足元の事業を構築する取り組みを各企業で実施していることも市場拡大を支える要素となっている。 セルフケアの進化と調剤市場の展望 「攻めの予防医療」でお役に立つ 超高齢社会において、若年期からの「サクセスフル・エイジング(いかに人生をかっこよく、全うするか)」や「健康寿命の延伸」への貢献がドラッグストアの使命であると塚本氏は指摘する。医療に近い領域から日々のセルフケアまでをカバーする「攻めの予防医療」こそが、長年セルフケアに取り組んできたわが業界の真骨頂であるとした。 調剤市場を「トータルケアの拠点」に 一方、ドラッグストアにおける重要な成長ドメインである調剤分野に目を向けると、日本薬剤師会が発表した「保険調剤の動向」では、全国の処方箋発行枚数がコロナ禍などの特殊要因を除いて初めて前年割れを記録し、外来患者数の減少や人口減少を背景とした市場全体の縮小傾向が見られる。 こうした状況の中、塚本氏は「一方で処方箋単価の方は上がっており、重篤な疾患向けなどの高い薬が出回るケースが多くなってきていると感じる。そんな中で、ドラッグストアにおける調剤分野の売上は、時系列で見ても前年比で伸び続けているのが事実だ」と指摘した。 さらに、ドラッグストアが持つ日常の買い物やセルフケア、セルフメディケーションから処方箋対応までを1拠点でトータルにケアできる「面分業」の強みに触れ、「マーケット全体が縮む、あるいは処方箋の発行枚数が減っていくかもしれないが、ドラッグストアで処方してもらいたいという患者さんが増えている。生活者が処方箋をどこに持っていこうかなという時に、ドラッグストアを一番最初に想起していただけるよう、協会としてもPRをしていきたいし、各社もそのような取り組みをしていくものと考えている」と今後の展望を語った。 また、2040年頃に65歳以上人口がピークを迎え、その後も75歳以上・85歳以上の人口が長期的に増加していく高齢社会を見据え、ドラッグストアの果たすべき役割はさらに進化を求められている。急性期医療の進展に伴い慢性期疾患の在宅移行が見込まれることや、より高度な在宅医療への対応が必要とされる現状を受け、今後はドラッグストアとして患者の生活に寄り添いながらどのように貢献できるか、その方向性を模索していく方針だ。こうした生活支援と医療が融合したトータルケアの拠点として、調剤市場における新たな需要を確実に取り込んでいく構えを見せている。 生活者に最も身近な健康の拠点として、ドラッグストア業界が果たすべき役割と責任は次の時代に向けてさらに大きなものとなっていきそうだ。
- 薬学生と現場の薬剤師をつなぐ新潮流、「教科書には載っていない薬局のリアル」を開催――日本薬学生連盟の主体性とカケハシの思いが融合した、新しいキャリアイベントの全貌
株式会社カケハシと一般社団法人日本薬学生連盟による共同開催イベント「教科書には載っていない薬局のリアル」が、2026年6月14日、東京会場・渋谷で開催された。今年で3回目を迎える同イベントであるが、日本薬学生連盟とのコラボレーションは初の試みである。 先んじて6月7日に開催された大阪会場の熱気を受け継ぐ形で迎えた東京会場は、日本薬学生連盟の強力な広報力とネットワークが加わったことで、参加申し込み数は50人を超え、参加法人数も従来の2倍にあたる12法人へと急拡大。会場には、さまざまな大学から集まった薬学生たちがひしめき合い、大盛況となった。 学生が本音で話せる空間 イベントは、カケハシの前田あゆみさん(薬剤師)によるオリエンテーションを経て、メインコンテンツである交流会およびフリータイムへと移った。大学が主催するような通常の合同企業説明会とは異なり、参加企業の現役薬剤師たちと学生が私服で直接テーブルを囲む、きわめてフランクな対話の場が用意された。 実際に東京会場に参加した学生からは、従来の就職活動に対する課題意識と、イベントならではの魅力が語られた。「大学が主催するような通常の合同企業説明会は、どうしても堅苦しい雰囲気になりがちです。しかし、今回のイベントは非常にフランクな形で企業や薬剤師の先生方と接することができるため、学生側も緊張せずに『本音』を話しやすいです。人柄や職場のリアルな雰囲気がダイレクトに伝わってきました」 また、今回の東京会場における大きな特徴として、1・2年生といった低学年層の参加が非常に多かった点が挙げられる。日本薬学生連盟会長の田代莉咲子さん(昭和医科大学薬学部4年)は、「東京のイベントは1、2年生が多く、学校の縦のつながりなどで参加してくれてます。早期の段階から就活や学外イベント、薬学全般に対して高い興味を持って動いており、低学年層の意識の高さに驚かされました」と語る。低学年にとっては「まだ将来の進路を考え始める初期段階であり、今は広い視野を持って、興味のあるなしにかかわらずさまざまな情報を得る時期」として、イベントが機能している現状が示された。 会場に設置されたカケハシの電子薬歴システム「Musubi」の体験ゾーンやAI薬歴の紹介コーナー。多くの学生が実際に端末に触れながら、最新の薬局デジタルトランスフォーメーション(DX)の現場を体感していた。 この活発なコミュニケーションを強力に後押ししたのが、参加者全員の胸元に貼られた「興味・専門分野を示すカラーシール」の工夫である。これは学生側が「いま何に関心があるか」を示すだけでなく、参加した薬剤師側も「現場、本社、在宅医療、専門認定、店舗マネジメント、経営」といった自身の強みを4つ掲げる仕組みである。 田代さんは、「どの先生がどういった分野のスペシャリストなのかがひと目でわかります。たとえ自分自身がまだ将来のビジョンを明確に決めかねている段階であっても、視覚的なアプローチがあることで、会話のきっかけを容易につかむことができました」と、その効果を高く評価していた。 さらに会場内には、カケハシが提供する電子薬歴システム「Musubi」の体験ゾーンやAI薬歴の紹介コーナーも設置され、多くの学生が実際に端末に触れながら、次世代の薬局DXの現場を体感していた。 日本薬学生連盟が語る「共催の意義」と企画者の思い 今回の共催に至った経緯について、田代さんは次のように語る。「これまでは学生だけの力では、多くの薬剤師の先生方を集めるような大規模イベントをゼロから形にすることは困難でした。現場で働く薬剤師の先生方と直接話せる貴重な機会を一緒につくれるということで、ぜひともご一緒させていただきたいと思い、大変うれしくお引き受けいたしました」と、共催がもたらした価値を強調した。 さらに、同イベントへの参加を通じて、自団体の認知拡大や広報活動の限界突破にもつなげていきたいという。「企業様からのアプローチを通じて、自分たちの発信力だけでは届かなかった層の薬学生にまでイベントを届け、同時に連盟の活動を知ってもらえる貴重な機会になりました」と振り返る。 一方で、イベントを企画した前田さんも、この場に並々ならぬ思いを寄せている。自身も明治薬科大学からカケハシへ新卒入社した経歴を持ち、かつて先輩薬剤師との出会いによってキャリアの選択肢が劇的に広がった経験があるからだ。 前田さんは、現代の薬学生が陥りがちな「病院か、薬局か」という二者択一の思考に一石を投じたいと考えている。「薬局と一言で言っても、門前薬局か地域密着型か、あるいはデジタルをどう活用しているかによって学べることは全く違います。学生の皆さんには、この場でひたすら選択肢の幅広さを知り、良い意味で大いに悩んでほしいです。AIが普及するこれからの時代だからこそ、ネット上の情報だけでなく、自分で動いて直接手に入れる『一次情報』が何よりも強みになります。未来への不安を払拭し、自分の強みを育てるヒントにしてほしいですね」と、学生たちへの期待を熱く語った。 また、参加した企業側にとっても、この場は単なる採用活動の域を超えている。前田さんは、「参加企業からは『学生と話しやすい若手薬剤師が外に出て活躍する挑戦の場』として活用されており、さらに会場に多く集まった1〜3年生といった低学年層の潜在的なニーズや生の声を直接聞ける、他にはない貴重なプラットフォームとして機能しています」と、双方向におけるメリットを説明した。 「未来への架け橋」と今後の展望 イベントの締めくくりとなる閉会式では、日本薬学生連盟の財務統括理事である磯貝颯哉さん(明治薬科大学3年)と、会長の田代さんが登壇し、それぞれの思いを語った。 磯貝さんは、「最初は会場全体に少し硬い雰囲気もあったが、本番の交流会が始まると非常に活発に意見が交わされ、素晴らしい1日となりました。日本薬学生連盟としても、まさに学生と企業との『架け橋』になれたと確信しています」と、確かな手応えを口にした。 続いて挨拶に立った田代さんは、参加企業への深い謝意を述べたうえで、次のように総括した。「私自身、病院勤務を経て薬局に移られた先生や、一貫して薬局でキャリアを積まれてきた先生など、多種多様な背景を持つ薬剤師の方々と対話ができ、非常に実りのある時間を過ごすことができました。参加した学生の皆さんは、進路を考え始めたばかりの1年生から、まさに就職活動の渦中にいる5年生までさまざまであったが、それぞれにとって有意義な時間になっていればこれほどうれしいことはありません」と語り、会場に集まった薬学生たちへ向けて、今後の連盟活動への参画を呼びかけた。 大阪・東京の両会場における大盛況を受け、すでに他地域への規模拡大や地方開催(東海地方など)を要望する声が法人・学生の双方から寄せられている。学校の教室や教科書からは見えてこない「次世代の薬局のリアル」をコンテンツとして体感し、自らのキャリアを主体的に切り開くためのプラットフォームとして、同イベントは今後さらにその存在感を増していくに違いない。
- 教育現場と生成AIの現在地――「無免許運転」状態の子供たちと戸惑う教員
国内最大級のICT・ネットワークイベントである「Interop Tokyo 2026」(2026年6月10日〜12日、幕張メッセ)の講演において、「教育現場から見た生成AI活用のリアル― AIリテラシーと認知オフロードのはざまで揺れる学び ―」と題した講演が行われた。現在、教育現場における生成AIの活用は急速に広がる一方で、「子供たちの思考を支えるものなのか、それとも委ねてしまうのか」という強い葛藤が多くの現場で生まれている。 全国の学校を巡る文部科学省学校DX戦略アドバイザーで、札幌国際大学准教授の安井政樹氏の視点からは、世におけるAIの進化のスピードと、学校現場の認識との間に大きな乖離があるリアルな実態が見えてくる。 年齢制限を知らない現場 特に深刻なのは、小学生や高校生といった子供たちが、大人の想像以上に生成AIを使いこなしているという事実である。小学生の間では、親のスマートフォンなどを介して日常的に生成AIを利用している割合がすでに8割近くにのぼる。高学年になれば、ほとんどの児童が手を挙げるのが現状である。 しかし、ここに大きな問題が潜んでいる。多くの生成AIには年齢制限が設けられており、例えば13歳未満の利用は禁止、あるいは制限されているが、学校の教員も保護者もその事実をほとんど認知していない。安井氏は、この状況を「言わば『無免許運転』の状態で子供たちが規則を無視して利用している状況であり、アクセス規制の存在すら教員側が分かっていないケースも少なくない」と危惧する。 教員と子供たちの「温度差」 子供たちは日々、YouTubeをはじめとする多様なデジタルコンテンツに触れており、例えば画像の中に不自然な「空」の描写があれば、それがフェイク画像であると直感的に気づくほどの感覚を身につけている。これに対して、多忙を極める学校の教員はそれらのメディアを十分にチェックする余裕がないため、フェイク画像であることすら見抜けない場合がある。これは教員がサボっているわけではなく、純粋に「見る暇がない」ほどの過密な業務環境に起因している。 こうした大人の目の届かないところで子供たちの利用が先行している結果、重大なセキュリティー上のリスクも生じている。特に高校生などでは、学校が関知しない私物のアカウントを使い、個人的な恋愛相談や日常の機微なプライベート情報をAIに入力するケースが常態化している。その際、入力したデータがAIの学習に利用されるのを防ぐ「オプトアウト設定」の存在を知り、自ら設定変更を行っている生徒はほとんどいない。 本来、各自治体の教育委員会などは、データが学習に利用されない安全な「教育用アカウント」を整備している。しかし、学校現場や教員側が私物アカウントと教育用アカウントの安全性の違いを正しく認識できていないため、適切なアカウントでの利用を指導できていないのが実態である。 さらに深刻なのは、子供たちが性的な悩みやいじめといった極めてセンシティブな相談、あるいは友人同士の喧嘩の解決法までもAIに委ねており、AIが一種の「駆け込み寺」やセーフティーネットとして機能している側面がある点だ。安井氏は「だからこそ、大人がセキュリティーやリテラシーの指導を放棄したまま、子供たちだけの空間に放置することは極めて危険である」と警鐘を鳴らす。 認知オフロードと「思考放棄」の境界線 教育現場でAI活用を阻む最大の懸念として挙げられるのが、思考をAIに丸投げしてしまう「認知オフロード」の問題である。しかし、安易に子供たちの学力低下やリテラシー不足を責めるのは筋違いである。 従来の教育活動は、教員が質問して子供が答えるというサイクルで成り立っていた。しかし現在、子供たちは「AIに質問して答えを教えてもらう」という逆のサイクルに身を置いている。安井氏は「何でもすぐに教えてくれるAIに依存することで、自分で考えるプロセスそのものを手放してしまうリスクが生じている。この思考の外部化こそが、教育現場で懸念されている認知オフロードの本質である」と指摘する。 求められる「リミッター」と教育用AI 一般的に「AIリテラシーの育成にはファクトチェックが不可欠である」と説かれることが多い。だが、大人の日常生活を振り返ってみても、グルメサイトの口コミを毎回ファクトチェックしている者はほとんどいない。大人にすら定着していない行動を子供に強いることには無理がある。 子供たちは「自分のためにならない」と頭では理解していても、目の前に答えがあればどうしてもそれを求めてしまう。安井氏は「トラックに速度超過を防ぐ『リミッター』が装着されているように、子供向けの教育用AIにも、そもそも『答えを直接出さない』という制限をシステム側でかけておく必要がある」と提言する。 さらに、AIが単に事実を正しく出力するだけでなく、子供の年齢や発達段階に応じて、人生の先輩たちがしてきたようにオブラートに包んだ回答や適切な表現の出し分けができる機能(例:サンタクロースや命の誕生に関する質問への対応)が、これからの教育用AIの方向性として求められている。 宿題のあり方という本質的な課題 教員がAIの活用に反対する背景には、子供に宿題や探究を「やりたい」と思わせていないという本質的な授業デザインの課題が隠されている。 子供たちが「ヒントを出すAI」ではなく「答えを出すAI」を使って一瞬で宿題を終わらせようとするのは、子供やAIが悪いからではない。安井氏は「諸悪の根源は、大人の側が『宿題はとにかく早く終わらせるもの』『レポートやスライドは期日までに形にするもの』という、やらされるだけの学習を強いてきたことにある」と断言する。 「『宿題は自分の苦手を見つけたり、できないところをできるようにするためのものだ』という学習観へこの国全体がシフトしない限り、子供たちが本質的な意味でAIを壁打ち相手として使うことはない。AIを活用して子供たちが難易度を選べるような宿題の出し方へと、教員側の意識を変革していく必要がある」というのが安井氏の強いメッセージだ。 日本特有の「一律・正確」の壁と向き合う 学校への生成AI導入をさらに難しくしているのが、日本人の国民性と教員の「間違えたくない」というマインドセットである。 教育現場では「失敗や漏洩を極端に恐れて公式な利用を禁止する一方、教員が個人の私物アカウントでこっそりAIを使う『シャドウAI』が横行する」という矛盾した状況が起きている。間違えることを悪とする文化が、AIという新しいテクノロジーの柔軟な受容を妨げている。 電車の時刻表と目玉焼きの理論 日本人は「電車の時刻表は正確に守られるもの」「機械は毎回同じ正しい答えを出すもの」という、世界的に見ても極めて厳しい信頼度を機械に対して持っている。そのため、生成AIのように確率論で動き、毎回出力が変わるような「ファジーなもの」を受け入れることが心理的に難しい。 学校の研修現場では、教員から「講師の先生とまったく同じアプリをAIで作るにはどうしたらいいか」と問われることが多いという。AIは同じプロンプトであっても二度と同じ回答を出さないが、その感覚が腑に落ちない教員は多い。安井氏はこれに対し、次のような身近な比喩を用いてレクチャーしていく必要性を説く。 「人生で目玉焼きを作るとき、卵も焼き加減も形も毎回異なり、完全に同じ目玉焼きには二度と会えない。人間の創作と同じように、AIの出力も毎回異なるものである」 「プロポーズの言葉」にみる解像度の低い議論 また、学校現場での議論は「AIを使うのはありか、なしか」という雑で極端な二択に陥りがちである。例えば、通知表の「所見」作成にAIを使うことの是非は大激論になりやすい。 安井氏は、これを「プロポーズの言葉を考えるときにAIを使うか」という問いに置き換えてみると分かりやすいと語る。AIが出した文章をそのままコピペして伝えるのは全員が「なし」と答えるが、「『どのような表現があるのかを参考にし、それを踏まえて自分の言葉で考える』のであれば、多くの人が『あり』と答えるはずである」。 学校におけるAI活用においても同様に、0か100かの議論ではなく、「どのような使い方が良くて、どのような使い方が不適切なのか」という解像度を上げた丁寧なルールづくりと分析を行うことが、現場の安心感につながる。 覚える力から、解決する力へ 社会の変化に伴い、私たちが依拠すべき「学力」の定義そのものをアップデートしなければならない。 スマートフォンやIT機器の普及により、現代人は他人の電話番号を暗記する必要がなくなった。同様に、大人になれば自分の住所と名前以外の漢字を日常的に手書きする機会は激減している。 「習った漢字を記憶して再生するテスト」の成績は落ちているかもしれないが、「知らない漢字をタブレットなどで自ら調べて解決するテスト」を行えば、現代の子供たちのほうが高い能力を発揮する。安井氏は、これからの学力観について次のように提言した。 「これまで教育は、何でも素手で、自分の力だけでこなさせようとする傾向があった。しかし、電話番号や漢字の暗記といった『かつて必要だった力』はあえてAIやデジタルにオフロードし、その分『集まった情報をどう活用するか』『どう思考を深めるか』という『これから必要な力』の育成へリソースを割くべきである」 今後の教育現場においては、単なるツールの「使い方」を覚えさせることにとどまらず、まずは「『使っていくことは問題ない、良いことなのだ』というマインドセットの刷新から始める必要がある」。そして、個別最適な学びや高校入試対策といった具体的な課題に対し、「学力を高めるためにいかにAIを協働パートナーとして使いこなすか」という、本質的な教育観の変革が今、まさに求められている。
- 【摂南大学】いつでもどこでも資格に挑戦できる環境へ――学生の就活を支えるeラーニングサービスを導入
摂南大学は、学生の資格取得を強力に支援するため、時間や場所を選ばずに学習できるeラーニングサービスを新たに導入した。近年の資格志向の高まりを受け、従来の対面型支援に加え、より気軽に挑戦できる環境を整えるのが狙いである。 今回の取り組みには、主に3つのポイントがある。1点目は、就職活動の強力な支援となる資格取得に向けて、eラーニングサービスを新規に導入したことである。2点目は、挑戦に踏み出せない学生向けに「いつでもどこでも」学ぶことができる環境を整え、学習へのハードルを下げたことである。そして3点目は、学生がアカウントを登録するだけで、全てのコンテンツを無料で受講できる仕組みを構築したことである。 高まる資格への関心と、学生が抱える「壁」 近年、就職環境の高度化や多様化が進むなか、大学にはより実践的なキャリア支援が求められている。その中で資格取得は、学生の専門性や学習意欲を客観的に証明する手段として、企業からも高く評価されている。 同大では2012年に「資格サポートセンター」を設置し、資格取得や公務員試験対策を支援してきた。また、「資格・能力取得奨励金制度」を設けて経済面からも後押しを行っている。同センターが実施する各種講座には年間約250〜350人の学生が参加しており、主な講座としてMicrosoft Office Specialist(Excel 365・Word 365)や簿記検定、宅地建物取引士、ITパスポート、公務員試験対策など、幅広い対策を展開してきた。 しかし、高い関心を持つ学生がいる一方で、「何から学べばよいか分からない」という悩みや、「いきなり通学型の講座を受けるのはハードルが高い」といった理由から、挑戦を躊躇している学生も一定数存在していた。 学校法人初、ベネフィット・ワンのサービスを活用 こうした学生の「きっかけづくり」として、同大はスマートフォンやタブレットで手軽に学べるeラーニングサービスの導入を決定した。 今回、ベネフィット・ワンが提供する福利厚生サービス「ベネフィット・ステーション」を採用した。同サービスの導入は、学校法人としては初の試みとなる。これにより、学生はアカウントを登録するだけで、語学やPCスキル、会計、ビジネスマナーなどの豊富なeラーニングコンテンツを無料で受講することが可能となった。 同大は、このeラーニングサービスを通じて資格取得への意欲を持つ学生の裾野を広げたい考えである。これを機に、従来からある資格サポートセンターでの専門的な学習支援や奨励金制度の利用者を増やし、大学全体のキャリア形成支援をさらに強固なものにしていく方針である。
- 深刻化する市販薬の乱用(オーバードーズ)問題、法改正による規制と「社会全体での支援」の重要性を議論
一般社団法人くすりの適正使用協議会が2026年6月9日に開催した「2026年協議会講演会」において、厚生労働省医薬安全対策課長の安川孝志氏が登壇した。同氏は「くすりの適正使用のための最近の医薬品安全対策の動きについて」と題した講演の中で、近年若者を中心に深刻な社会問題となっている市販薬(OTC医薬品)の乱用(オーバードーズ)問題を取り上げ、行政の最新の取り組みと、薬剤師をはじめとした医療関係者が果たすべき役割について言及した。 法改正による「指定濫用防止医薬品」の厳格化と柔軟な運用 制度的な対策として、薬機法改正に伴い「指定濫用防止医薬品」が法的に位置づけられ、2026年5月より施行された。 厚生科学研究(令和6年度実態調査)に基づき、乱用のリスクが明確に確認された2つの成分が新たに指定されている。 せき止め薬等に主に使用される「デキストロメトルファン」 抗ヒスタミン薬である「ジフェンヒドラミン(※内服剤に限る)」 これにより、店頭では18歳未満への販売数量制限(原則1個のみ、あるいは大人用量への制限など)や大容量製品の販売制限といった、厳格な販売ルールが適用され、徹底が図られている。 一方で、トローチ剤のように乱用の実態がないと判断された外用剤(区分上、内服ではないもの)については、今回の規制対象外とされた。安川氏は、一律に予防原則だけで広く網をかけるのではなく、今後の乱用動向の変化に応じて随時指定の範囲を検討していくという、実態に即した柔軟かつエビデンス(科学的根拠)に基づいた運用の姿勢を示した。 販売規制にとどまらない、薬剤師・登録販売者への「ゲートキーパー」としての期待 しかし、安川氏は「単に販売規制を強化するだけでは、オーバードーズ問題の根本的な解決にはならない」と指摘した。若者が乱用に至る背景には、家族関係や友人関係、学校生活の悩みといった、日常生活における不安や孤立などの根本原因が存在するためである。 そのため、薬局やドラッグストアの店頭に立つ薬剤師や登録販売者は、単なる売り手にとどまってはならない。乱用の兆候や不審な購入行動に気づく「ゲートキーパー(門番)」としての役割を果たし、専門の相談窓口へと適切につなぐなど、地域全体で孤立した若者らを支える環境づくりが必要不可欠であるとした。 厚生労働省としても、この取り組みを現場の意識だけに委ねず、2026年度の予算事業として「乱用防止対策事業」を組み、現場のサポート体制を強化している。 実態調査と周知:現場で活用してもらうための「ゲートキーパー対応マニュアル」の実効性を高めるため、各地域での実際の活用状況を調査・確認し、より現場に即した形での周知を進める。 研修会の実施:現場の対応力を向上させるため、薬剤師や登録販売者を中心とした研修会を各ブロック単位で精力的に実施する。 また、この問題は医療や薬事の枠組みだけで解決できるものではない。自殺対策や孤独・孤立対策、こども家庭庁による子供政策などを担当する関係省庁とも緊密に連携し、政府・社会全体で包括的に若者を支える仕組みづくりを進めていく方針が示された。 医療従事者に求められる「適正使用への能動的な姿勢」と情報資材の活用 さらに安川氏は、適正使用を推進するうえで、薬剤師をはじめとした医療従事者が「医薬品情報をどのように扱うべきか」という点についても言及した。 現在、くすりの適正使用協議会などが作成するさまざまな情報提供資材や、患者向け医薬品ガイドなどの活用・見直しが進められているが、医療のプロフェッショナルとして最も重要なのは、公的データである「添付文書」の記述の背景にある真意をくみ取ることであるとした。 単に記載内容を表面通りになぞるだけでなく、「なぜこの注意喚起が書かれているのか」「どういう議論や背景があってこの記載に落ち着いたのか」を知るために、「承認時の審査報告書」などを能動的に読み込み、より深い知識を持って医薬品のリスクの程度を理解したうえで患者に接する姿勢が、これからの薬剤師には強く求められている。 最後に安川氏は、製薬企業、医療従事者、行政、関係団体といった各ステークホルダーがそれぞれの役割を認識し、一丸となって適正使用の推進と再発防止(薬害の歴史の教訓)に取り組むことの重要性を強く訴え、講演を締めくくった。
- 【くすりの適正使用協議会】患者向け情報の一元化と信頼の基盤強化に向けた新中期計画を報告
一般社団法人くすりの適正使用協議会は2026年6月9日、都内で「2026年協議会講演会」を開催した。講演会では、同協議会理事長の俵木登美子氏より、この1年の主な活動や「くすりのしおり」、ならびに「ミルシル」を核とした患者向け資材の連携状況、今後の展望についての報告が行われた。 2026~2028年度の新中期活動計画が始動 同協議会は3年ごとに中期活動計画を策定しており、2020年から2022年は「信頼できる情報を届ける基盤づくり」、2023年から2025年は「基盤強化と情報の充実」をテーマに据え、患者向け資材を集約するプラットフォームの構築と拡充を進めてきた。そして今年度からは、2026年から2028年を対象とする新たな中期活動計画が始動している。新計画では「信頼できる情報」のさらなる充実を図り、必要とする人々へ効果的な発信ルートを通じて届けることを目指している。 専門委員会による多角的な取り組み 各委員会における活動成果も多岐にわたる。くすりのしおりコンコーダンス委員会では、患者により分かりやすい情報を提供するため、優しい日本語化の推進やピクトグラムの活用検討を行っている。また、製薬企業で初めて「くすりのしおり」の制作に携わる担当者に向けた、作成実務の手引き(マニュアル)を新たに策定したほか、ケアマネジャーなどの介護関係者や薬剤師を対象としたアンケート調査の結果を学会で発表している。 くすり教育と啓発については、協議会の極めて重要な継続活動として位置づけられており、さまざまな学会へのブース出展を通じて現場の教師や医師との意見交換を行っている。さらに、薬物乱用防止教室と融合したショート動画の掲載、大学での出前研修、養護教諭らを対象としたオンライン講座の開催、社会問題となっているオーバードーズ(OD)問題に関するシンポジウムの開催など、多角的な啓発を実施した。一般向けにも、市販後の副作用収集への協力を呼びかける動画や、薬の基本的なルールを伝える動画を公開している。 また、高齢者の日常生活を支える介護職へ向けた啓発として、4コママンガを作成しているほか、介護現場での困り事に関するアンケート結果を日本薬剤師学術大会で発表した。先進医療製品適正使用推進委員会の取り組みでは、バイオ医薬品に関する動画の作成や普及、薬剤師向けのeラーニング資材の提供を行っている。さらに、薬学部での活用を目的として、数年前から47学部81教員に薬学生向けコンテンツを提供するなどのアカデミア支援も進められている。 最新モダリティへの対応と薬剤疫学の新たな共同研究 新中期活動計画における新たな挑戦として、これまでのバイオ医薬品に留まらず、核酸医薬品、放射性医薬品、再生医療等製品といった新しいモダリティの認知向上と基礎知識の啓発活動が開始された。俵木氏は、始まったばかりのこの活動への会員会社(製薬企業)の積極的な参加を呼びかけた。 薬剤疫学委員会においては、毎年実施している各種セミナーに加え、今年3月の薬剤疫学セミナーからは日本薬剤疫学会による後援を取り入れ、受講生に「認定薬剤疫学家」の更新ポイントが付与される仕組みを構築した。 データベースを用いた共同研究では、妊娠と薬情報センターのデータを活用した研究成果が、昨年5月に英文誌『Drug Safety』へ掲載されるという高い評価を得た。現在は別のデータベースを用いた論文の投稿準備を進めるとともに、リアルワールドデータの利活用推進を目的とした新しいデータベース研究の立ち上げというスタート地点に立っている。 デジタル化が進む医療現場と「ミルシル・プラットフォーム」の展望 同協議会は、今年度もお薬手帳を25万5000部配布したほか、健康・医療情報を見極めるための資材「情報の鵜呑み禁止!」や、オーバードーズ、ポリファーマシーに関する資材の活用を進めている。 2022年4月に開始され4年が経過した「ミルシル」サイトは、2026年5月時点で月間PV数が408万を数える規模へと成長している。一般生活者を対象としたインターネット調査によると、医療用医薬品について調べる際に「インターネットで調べる」と答えた割合が、医師や薬剤師に聞く割合を優位に上回っており、スマホの急速な普及に伴う情報収集行動の変化が顕著に現れている。 現在、ミルシルサイトへの患者向け資材の掲載には80社が協力しており、製薬企業が作成する公式な医薬品情報をもとに、薬の効能や副作用、服用時の注意点などを簡潔にまとめた「くすりのしおり」3500件に対して、2000弱の資材が紐付いている。また、医薬品リスク管理計画(RMP)に基づき、患者向けに副作用の初期症状や特に注意すべき点などを分かりやすく解説した「患者向けRMP資材」の掲載も進んでおり、現場の医療関係者からも高い評価を得ている。特に医療現場では、吸入器や注入器といった「デバイスの使い方を解説した動画や資材」の利用が多く、服薬指導の実務において高く重宝されている。 サイトの利用者調査では、一般の約3割、医療関係者の約7割がリピーターであり、資材を見た一般の80.3%、医療関係者の86.4%が「参考になった」と回答した。さらに、一般ユーザーの約半数が「この情報を見て医療関係者に相談しようと思った」と答えており、情報提供がコミュニケーションのきっかけとして機能している状況が伺える。 将来的には、チャットやオンラインによる電子的・デジタルな服薬指導や服薬フォローアップが急速に増加することが予想される。同協議会は、この変化に対応して「ミルシル・プラットフォーム」への情報一元化をさらに推し進め、医療関係者が店頭やデジタルツールを介してすぐに最適な服薬指導を行える環境を整備する方針である 。 俵木氏は最後に、厚生労働省で検討が進められている「患者向け医薬品ガイド」の全面見直しと新しいガイドの誕生に触れ、これらを皆様が作成する資材とともに確実に患者へ届けるため、このプラットフォームを大事に育てていきたいとし、参加者への継続的な支援と協力を求めて報告を締めくくった。
- JAPANドラッグストアショー開催―過去最大規模で描くドラッグストアの未来像
尾池氏 人々の生活インフラとして定着し、いまや10兆円産業を超えて13兆円産業への成長を目指すドラッグストア業界。2026年7月31日(金)から8月2日(日)までの3日間、東京ビッグサイトにて過去最大規模となる「第26回 JAPANドラッグストアショー」(一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会主催)が開催される。今回は「セルフメディケーションによるドラッグストアの未来像 next25」をテーマに掲げ、実行委員長を務める尾池勇紀氏(光株式会社代表取締役社長)に、本イベントの見どころや薬学生に注目してほしい新たな試み、そして業界が果たすべき未来の役割について聞いた。 Q. 今回で26回目を迎える「JAPANドラッグストアショー」の概要や特徴について教えてください。 今回は、2026年7月31日(金)から8月2日(日)までの3日間、東京ビッグサイトの東展示場(1・2・3・7・8ホール)で開催します。前回は4つのホールを使用しましたが、今回は5つのホールを使用し、実質的に過去最大のスペース・最大規模での開催となります。出店コマ数も昨年より順調に増加しており、ヘルスケアやビューティーケアといった主要カテゴリーが大きく伸びています。 イベントの魅力は、BtoB(ビジネス)とBtoC(一般生活者)の両方にとって価値がある点です。金曜日はビジネス来場者のみ、土日は一般の生活者の方もご来場いただけます。昨年は約9万9,500人の方にご来場いただきましたが、内訳としてはビジネス来場者が約3割、一般来場者が約7割という形になっています。 Q. 今回のテーマ「セルフメディケーションによるドラッグストアの未来像 next25」には、どのような思いが込められているのでしょうか。 この「next25」というテーマは前回の内容を踏襲したものです。過去25年の歩みを経て、「次の25年(next25)に向けて業界をどのようにしていくか」という強い思いが込められています。 現在、世の中の環境は激しく変化しており、常に有事に対応するようなスピード感が求められています。その中で、私たちが13兆円産業を目指してどのような未来を描いていくのかを、業界全体で真剣に考えられる場にしたいと考え、このテーマを設定しました。 特に生活者に対しては、「セルフメディケーション」の大切さを一番のメッセージとして伝えたいと考えています。国の医療費問題が深刻化する中、軽度な不調は自分たちで対応していく意識がとても重要になります。ドラッグストアショーを通じて「こんな商品があるんだ」という新たな発見をしていただき、健康維持につなげていただきたいですね。 Q. 今大会ならではの見どころや、注力されている特別企画について教えてください。 私が京都で事業を展開している縁もあり、今回は地域性を盛り込んだ「京都物産展」を展開します。京都の水や米を使い、現地で瓶詰めされた日本酒のブランド「GI京都」や 、漬物、香などを実際にブースで販売する予定です。 また、人気の特別企画ゾーンはさらにパワーアップしています。今回で4回目を迎える「フェムケアゾーン」は、ミニセミナーで立ち見が出るほど注目度が高く 、今回も測定体験コーナーなどを用意しています。 さらに、今年からの新しい取り組みとして「マタニティ&ベビーケアゾーン」を新設しました。「家族みんなで支える出産と育児のケアをドラッグストアから」をテーマに 、妊活サポートからプレマタニティ、産後ケア、ベビーグッズまで幅広くカバーします。現代の共働き世代や男性の育児参加に寄り添い、家族全員での育児を支える商品やサービスを提案します。 このマタニティ&ベビーケアゾーンは、先ほどのフェムケアゾーンと親和性が高いため会場内で隣接させており、出展企業にとっても来場者にとっても相乗効果が生まれるように配慮しています。また、会場内には授乳室やオムツ替えコーナー、ベビーカー優先入場ゲートを設置し、赤ちゃん連れのご家族が快適に過ごせる環境を整えています。 フェムケアゾーン Q. 「食と健康ゾーン」でも、アワードの選考基準が変わるなどの新しい動きがあるそうですね。 今年から「食と健康アワード」において、従来の「食品カテゴリー」と「サプリメントカテゴリー」を別々に分けて表彰することにしました。 これまでは一括で審査していたため、どうしても試食して「おいしいもの」が受賞しやすい傾向にありました。しかし、サプリメントの本来の価値は効能効果や栄養補給にあります。サプリメントを開発するメーカーにも公平にスポットが当たるよう、市場の伸長率や販促への取り組みなども含めた新しい明確な表彰基準を構築し、それぞれの部門でグランプリやダイヤモンド賞などを授与する形へと進化させます。 Q. 薬学生や大学に向けて、今回新しく用意された企画はありますか? 今回、最も注目していただきたいのが、新設する「ドラッグストアアカデミックフォーラム」です。このフォーラムに参加する前に、まずは展示ホールの「主催者展示コーナー」を見てから参加していただくと、業界への理解がより一層深まります。主催者展示コーナーでは、売上・店舗数の推移、災害時の役割、DXやSDGsへの取り組みなどがパネルで展示されており、まずはここで業界の「全体像」をつかむことができます。ドラッグストアが確固たる社会インフラであることを頭に入れてからアカデミックフォーラムに進むことで、発表される研究の価値や、薬剤師が果たすべき未来の役割がより深く見えてきます。アカデミックフォーラムは、ドラッグストアにおける薬剤師の高度な実践研究や地域医療への貢献を体系的に発信することを目的としています。具体的には、2024年から2025年にかけて各学会で発表された実績のある演題を一堂に集め、ポスターセッション形式で展示します。一般のお客様の混雑を気にせず、学生の皆さんや大学の先生方がアカデミックな視点でじっくりと交流できるよう、今回は会議棟で開催します。会場では各企業の特色が分かる動画などを放映する予定ですので、それぞれの企業のカラーや最先端の取り組みを肌で感じていただけるはずです。 主催者展示コーナー また、例年大盛り上がりの「薬科大学対抗クイズ大会」も開催します。昨年は関東の大学の6チームが競い合いましたが 、今年は全国規模に広げようと、関西の大学にも積極的にお声がけをしています。大学の枠を超え、現役の勤務薬剤師も交えたチーム戦となるので 、こちらもぜひ楽しみにしてください。 薬科大学対抗クイズ大会 Q. これからの未来において、ドラッグストアが果たすべき「役割」についてどのようにお考えですか。 病院は「病気になってから」行く場所ですが、ドラッグストアの役割は「病気になる前」の日常生活の中でお客様と出会えることにあります。日々の生活習慣や、ちょっとした体の不調のタイミングで出会ったときに、「受診を勧めるべきか」、それとも「食生活や運動、サプリメントで対応できるか」を判断し、重篤な病気になる前の段階でサポートができます。生活者の身近に寄り添い、より長く元気に過ごしていただくための社会インフラとして 、ドラッグストアは国全体にとっても非常に重要な役割を担っていくと考えています。 Q. 最後に、未来の薬剤師を目指して勉強に励む薬学生へのメッセージをお願いします。 ドラッグストアの店舗伸長率(107%)においては、直近3年間でコンビニエンスの伸長率より高く、売上において10兆円を超えてなお、13兆円規模へと右肩上がりに成長を続けている極めてダイナミックな業界です。確固たる社会インフラとしての位置付けを確立した今でも 、私たちが薬剤師として社会に「やれること」はまだまだたくさんあります。 今回新設するアカデミックフォーラムを見ていただければ、ドラッグストアがいかに専門的な実践研究を行い、未来への可能性を秘めているかがお分かりいただけると思います。皆さんが将来どこで働くかを考える就職活動の選択肢として、これほど未来のある業種・業態はほかにありません。ぜひドラッグストアショーに足を運び、その熱気と未来の一部に直接触れてみてください。 第26回 JAPANドラッグストアショー https://www.drugstoreshow.jp/











