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若手経営者が25年後のドラッグストアについて議論

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第25回JAPANドラッグストアショーのイベントステージでは、「これからのドラッグストアの話をしよう。セルフケア、セルフメディケーション推進とネクスト25」をテーマにパネルディスカッションが開催された。進行役の『ダイヤモンドドラッグストア』編集長の小木田泰弘氏は、今年のドラッグストアショーのメーンイベントとして、若手経営者と協会会長が一堂に会するこのパネルディスカッションに大きな期待を寄せた。


ドラッグストア業界の成長

2024年度のドラッグストアの売上高は10兆307億円に達し、ドラッグストア業界の長年のスローガンであった「2025年10兆円産業」を前倒しで達成した。日本チェーンドラッグストア協会会長の塚本厚志氏は、この成長は消費者の支持と、熱心な経営者たちのたゆまぬ努力の賜物だと述べ、2030年には13兆円の達成を目指すとした。

ゴダイ株式会社代表取締役社長の浦上卓也氏は、ドラッグストアが高い成長率を誇る理由として、出店ペースの速さと、ベビー用品から介護用品まで、あらゆるライフステージに対応できる品揃えを挙げた。さらに、各企業が独自のビジネスモデルを追求していることも成長のカギだと指摘した。

株式会社大賀薬局代表取締役社長の大賀崇浩氏は、日本の社会が成熟し、アンチエージングやセルフメディケーションへの意識が高まったことが成長の背景にあると分析。SNSなどを通じた情報拡散により、海外からのインバウンド需要も成長を後押ししていると述べた。


伸びる食品と調剤

2024年度は特に食品と調剤の売上が顕著に伸びており、食品は前年比13.2%増、調剤は8.4%増となった。

株式会社丸大サクラヰ薬局常務取締役営業本部長の櫻井寛氏は、食品の売り上が伸びた理由を3つ挙げた。1つ目は、薬や化粧品と合わせて生活必需品が買えるワンストップショッピングの利便性が消費者に支持されたこと。2つ目は、レトルト食品や冷凍食品などの商品が増加し、常温で長期保存可能な商品が増えたことによる食品加工技術の進化。3つ目は、健康志向の高まりや物価高により、手頃な価格で健康的な商品を提供するドラッグストアへのニーズが高まったという消費者ニーズの変化を挙げた。

スギホールディングス株式会社代表取締役副社長の杉浦伸哉氏は、調剤の伸びについて3つの要因を説明した。1つ目は、ドラッグストアでも調剤ができるという認知が広まったこと。2つ目は、買い物のついでに処方箋を受け取れるという利便性。3つ目は、電子お薬手帳や電子処方箋など、デジタル化への先行投資が患者獲得につながっていることだという。


NEXT25に向けたドラッグストアの未来

エバグリーン廣甚株式会社代表取締役社長の米原まき氏は、ドラッグストアが今後の高齢化社会において、健康寿命の延伸に貢献することが使命であると語った。ドラッグストアから健康診断の受診を促したり、気軽に健康相談ができる場を提供することで、国民の健康管理をサポートしていく必要があると述べた。

株式会社アカカベ代表取締役社長の皆川友範氏は、日本のドラッグストアが国内の人口減少に直面する中で、グローバル展開の可能性に言及した。日本の人口は1億2,000万人だが、世界の人口は84億人であり、海外市場には大きな可能性があると指摘。すでに東アジアで店舗を展開している企業の例を挙げつつ、日本が培ってきた健康や美容に関する知見を生かし、さらなる海外展開を進めるべきだと述べた。


セルフケア・セルフメディケーションとDX

ドラッグストアではさまざまな―ビスを提供している。
ドラッグストアではさまざまな―ビスを提供している。

改正薬機法により、OTC医薬品の販売や調剤業務に変化が訪れる中、セルフケア・セルフメディケーションの重要性が高まっている。

皆川氏は、調剤業務の外部委託拡大を予測し、DXへの対応とともに、患者とのリアルな接点を強化する必要性を説いた。

杉浦氏は、認定薬局制度の改定により、ドラッグストアは「健康増進支援薬局」の認定を積極的に受けるべきだと強調し、OTC販売から受診勧奨、調剤までをシームレスに提供し、医療における価値を高めていくべきだと語った。

浦上氏は、DXの進展により、スマホアプリなどを通じて個人の健康状態に合わせた商品やサービスが提供できるようになると述べた。

一方、大賀氏は、セルフケアにはデジタルの可視化だけでは不十分であり、行動変容を促す「エンタメ」といったアナログな要素、すなわち人とのコミュニケーションが不可欠だと主張した。


フェムケアとオムケア

フェムケアゾーンに設置された「生理痛VR体験装置」
フェムケアゾーンに設置された「生理痛VR体験装置」

ドラッグストアショーでは、女性の悩みに寄り添う「フェムケア」ゾーンが設けられ、関心を集めた。

米原氏は、生理痛や更年期障害といった女性特有の悩みを解消するフェムケア市場は、今後も成長が見込まれると述べた。また、男性にも生理痛の体験ができるブースが設置されており、性別に関係なく健康への理解を深めることの重要性を強調した。

櫻井氏は、社内でフェムケアの認定講座を実施し、従業員が女性の身体的機能や悩みを学ぶ機会を設けていることを紹介した。



今後のドラッグストアの成長は「人材」を高めていくことがカギ

若手経営者たちの話を聞いた塚本氏は、NEXT25が非常に楽しみになったと語った。今後のドラッグストア業界の成長には、売り上や利益といった数字だけでなく、業界に関わる人々の資産である「人材」を高めていくことが重要だと述べた。

地域密着とグローバル展開は相反するものではなく、地域のお客様の幸福度を高めることができれば、それを求める世界中の人々に届けることができると指摘した。一過性の満足ではなく、生涯にわたる顧客との関係性を築くことが、今後の成長を加速させる鍵であると締めくくった。


イベントステージでは、米原氏は、俳優のとよた真帆さんとともに登壇し、これからのドラッグストアについて語り合った。
イベントステージでは、米原氏は、俳優のとよた真帆さんとともに登壇し、これからのドラッグストアについて語り合った。

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