「75歳まで働ける社会」をデザインする――大木ヘルスケアHD松井氏が語る、薬局・ドラッグストアの使命
- toso132
- 17 時間前
- 読了時間: 4分


2026年2月25日・26日の2日間、TRC東京流通センターにて、大木ヘルスケアホールディングス株式会社による「2026春夏用カテゴリー提案商談会」が開催された。同商談会は、単なる新商品の展示にとどまらず、小売店との強固なパートナーシップを通じて生活者の潜在ニーズを掘り起こす「需要創造型」の提案を目的としている。
代表取締役社長の松井秀正氏は、人口減少と高齢化が加速する日本において、薬局やドラッグストアが果たすべき新たな役割と、変容する市場の本質について、以下の4つの柱からなる深い洞察と戦略を提示した。
1.医療費の構造的課題とセルフメディケーションの本質
松井氏は、人口減少下でも増大し続ける医療費の現状に対し、20代と80代の健康維持コストの圧倒的な差を引き合いに警鐘を鳴らした。
65歳以降に急増する医療費という課題に対処するためには、30代・40代といった早期からの栄養管理や運動を通じた「自助」が不可欠となる。重症化後の介護や治療には膨大なコストを要するが、未病段階からサプリメントやOTC医薬品を活用し、専門家のサポートを得て健康を維持できれば、社会保障費の抑制と個人の幸福最大化を両立できる。生活者の最も身近な接点であるドラッグストアや薬局は、健康維持を「学ぶ、見る、触る、楽しむ」体験の場として、正しい情報を発信し続ける拠点とならなければならない。
2.「75歳まで働ける体と社会」:健康経営が切り拓く未来

今回の商談会における最重要キーワードの一つが「75歳まで働ける社会」の構築である。これは個人の努力に委ねるべき問題ではなく、企業の制度設計とセットで解決すべき課題として示された。公的年金の受給開始時期の見直しなどを背景に、日本はすでに「75歳まで自ら糧を得なければ社会が機能しない」段階に突入している。
ここで重要となるのが、テクノロジーを駆使した「健康経営」の視点だ。例えば、聴力が低下したベテランスタッフに対し、会社側が集音器などの補助器具を支給することで、その豊富な知見を店頭で生かし続けられる環境を整備することが挙げられる。年齢による役職定年制を廃し、個々の能力のピークに合わせて働き方や給与体系を柔軟に設計することこそが、今後15年後の社会を支える基盤となる。
3.「自助」の時代における小売業の使命

2003年の健康増進法制定により、日本の健康維持に関する指針は「国の責任」から「個人の責任(自助)」へと法的なパラダイムシフトを遂げている。
この潮流を受け、行政による一律の指導を待つのではなく、地域のライフラインである小売業が主導し、医療機関と連携した「持続可能なビジネス」としての地域包括ケアを構築することが急務である。公的なボランティア精神に依存するのではなく、民間主体で地域の生活者を守るネットワークを形成し、企業が従業員の健康コストを投資として負担する仕組みを整えること。それこそが、現代における真の社会インフラの姿である。
4.市場の二極化と「高付加価値商品」への挑戦

さらに松井氏は、ヘルスケア市場における「所得の二極化」という現実に正面から向き合うべきだと指摘した。
現在、高品質な原料を用いた高機能・高単価なサプリメントを求める層は、ドラッグストアではなくクリニック等の限定的な市場へ流出している実態がある。本来、専門家が常駐する店頭こそが、こうした「高価格であっても良質なもの」を含めた幅広い選択肢を提示すべきである。従来の「薄利多売」モデルを維持しつつも、3万円や5万円といった高価格帯でも確かなエビデンスを持つ商品を揃えることは、顧客の満足度を高め、外部への顧客流出を食い止める重要な戦略となる。
次世代を担う薬学生へ
今回の商談会で一貫して示されたのは、単なる物販業を超えた「生活者の健康寿命を総合的にプロデュースする」という決意である。将来、薬剤師として地域医療の現場に立つ際、目の前の患者への調剤・投薬のみならず、働く世代の未病対策や、高齢者が現役で活躍し続けられる社会実装にどう寄与できるか。松井氏の提言は、薬学の専門知識をいかにして社会価値へと変換すべきかという、キャリア形成における極めて重要な指針を示している。



コメント