JACDSが令和8年度調剤報酬改定に突きつけた抗議と、薬剤師の未来像
- toso132
- 2月26日
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2026年2月20日、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は、同年6月に施行される「令和8年度調剤報酬改定」の答申内容を受け、緊急記者会見を開催した。将来の薬剤師である薬学生の皆さんに向け、会見で語られた重要事項を整理して紹介する。
立地や面積という「物理的制限」への強い抗議:憲法違反の疑い
会見で最も焦点が当たったのは、薬剤師が提供する医療サービスの質とは無関係な「物理的条件」によって報酬が制限される新ルールへの反発である。
今回の改定では、東京23区や政令指定都市において、既存の薬局から500メートル以内に新規開局し、特定の集中率基準を満たすと、調剤基本料が15点減算される「門前薬局等立地依存減算」が導入された。JACDS副会長の横山英昭氏は、これが憲法22条の「職業選択の自由」および14条の「法の下の平等」に抵触する恐れがあると指摘した。
1975年の最高裁判決(薬局距離制限事件)では、既存薬局からの距離を理由とした開設制限は違憲とされている。横山氏は、今回の改定が報酬制度という形を借りて実質的にかつての距離制限を復活させるものであり、公定価格制度としての合理性を欠く「不当な規制」であるとして、厚生労働省へ陳情書を提出したことを明らかにした。また、会長の塚本厚志氏からも、地域支援体制加算に導入された「調剤室の面積基準」について、店舗の広さと専門性は無関係であり、制度の公平性を損なうものであるとの強い疑義が示された。
厳格化する「人的要件」と現場の危機感
会見では、薬剤師の働き方に直結する「人的要件」の厳格化についても、具体的なデータをもとに危機感が語られた。
JACDS調剤推進委員会副委員長の山口義之氏は、加盟企業約7,700店舗を対象に行った緊急アンケートの結果を報告した。今回の改定では、従来の「かかりつけ薬剤師指導料」が廃止され、「服薬管理指導料」におけるかかりつけ機能の評価へと再編されたが、これに伴い薬剤師個人の勤務実態を問う要件も変更されている。アンケートによれば、この新しい人的要件に対し、約6割の企業が「要件の維持・充足が厳しくなった」と回答している。山口氏は、人手不足が深刻化する中で、週の勤務時間や在籍期間といった形式的なハードルが現場の大きな負担となっている実態を数字で示した。
これを受け、副会長の関口周吉氏は総評として、現場のモチベーションに及ぼす影響を訴えた。関口氏は、今回の改定で在宅医療への取り組みなどが一部評価された点は認めつつも、全体としてはマイナス改定であるとの認識を表明。現場の薬剤師が報酬を維持するために、勤務時間や在籍期間といった「数字」の充足に追われる状況になれば、本来もっとも時間を割くべき対人業務や患者支援に支障をきたしかねない。関口氏は、こうした「現場の努力が正当に評価されない」仕組みのままでは、「現場のモチベーションを保つことは非常に困難である」と、制度のあり方に強い疑義を呈した。
次世代の薬剤師像:政府が掲げる「進化」への投資
こうした厳しい現状に対し、塚本氏は、政府の方針に掲げられた「アドバンスド・エッセンシャルワーカー」という言葉を引用し、薬剤師が今後目指すべき方向性に言及した。
これは、AIやデジタル技術を使いこなし、高い生産性と深い専門性を両立させることで、単なる調剤業務を超えた付加価値を提供する人材を指す。新設された「物価高騰・ベースアップ評価料」は、単なる賃上げの原資にとどまらず、薬剤師がこうした次世代の人材へ進化するための教育や、IT環境への投資の原資として有効に活用されるべきものである。塚本氏は、薬剤師が地域住民のヘルスケアリテラシーを向上させる重要な社会インフラとしての誇りを持ってほしいと、将来を担う世代へ期待を寄せた。



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