深刻化する市販薬の乱用(オーバードーズ)問題、法改正による規制と「社会全体での支援」の重要性を議論
- toso132
- 2 分前
- 読了時間: 4分

一般社団法人くすりの適正使用協議会が2026年6月9日に開催した「2026年協議会講演会」において、厚生労働省医薬安全対策課長の安川孝志氏が登壇した。同氏は「くすりの適正使用のための最近の医薬品安全対策の動きについて」と題した講演の中で、近年若者を中心に深刻な社会問題となっている市販薬(OTC医薬品)の乱用(オーバードーズ)問題を取り上げ、行政の最新の取り組みと、薬剤師をはじめとした医療関係者が果たすべき役割について言及した。
法改正による「指定濫用防止医薬品」の厳格化と柔軟な運用
制度的な対策として、薬機法改正に伴い「指定濫用防止医薬品」が法的に位置づけられ、2026年5月より施行された。
厚生科学研究(令和6年度実態調査)に基づき、乱用のリスクが明確に確認された2つの成分が新たに指定されている。
せき止め薬等に主に使用される「デキストロメトルファン」
抗ヒスタミン薬である「ジフェンヒドラミン(※内服剤に限る)」
これにより、店頭では18歳未満への販売数量制限(原則1個のみ、あるいは大人用量への制限など)や大容量製品の販売制限といった、厳格な販売ルールが適用され、徹底が図られている。
一方で、トローチ剤のように乱用の実態がないと判断された外用剤(区分上、内服ではないもの)については、今回の規制対象外とされた。安川氏は、一律に予防原則だけで広く網をかけるのではなく、今後の乱用動向の変化に応じて随時指定の範囲を検討していくという、実態に即した柔軟かつエビデンス(科学的根拠)に基づいた運用の姿勢を示した。
販売規制にとどまらない、薬剤師・登録販売者への「ゲートキーパー」としての期待
しかし、安川氏は「単に販売規制を強化するだけでは、オーバードーズ問題の根本的な解決にはならない」と指摘した。若者が乱用に至る背景には、家族関係や友人関係、学校生活の悩みといった、日常生活における不安や孤立などの根本原因が存在するためである。
そのため、薬局やドラッグストアの店頭に立つ薬剤師や登録販売者は、単なる売り手にとどまってはならない。乱用の兆候や不審な購入行動に気づく「ゲートキーパー(門番)」としての役割を果たし、専門の相談窓口へと適切につなぐなど、地域全体で孤立した若者らを支える環境づくりが必要不可欠であるとした。
厚生労働省としても、この取り組みを現場の意識だけに委ねず、2026年度の予算事業として「乱用防止対策事業」を組み、現場のサポート体制を強化している。
実態調査と周知:現場で活用してもらうための「ゲートキーパー対応マニュアル」の実効性を高めるため、各地域での実際の活用状況を調査・確認し、より現場に即した形での周知を進める。
研修会の実施:現場の対応力を向上させるため、薬剤師や登録販売者を中心とした研修会を各ブロック単位で精力的に実施する。
また、この問題は医療や薬事の枠組みだけで解決できるものではない。自殺対策や孤独・孤立対策、こども家庭庁による子供政策などを担当する関係省庁とも緊密に連携し、政府・社会全体で包括的に若者を支える仕組みづくりを進めていく方針が示された。
医療従事者に求められる「適正使用への能動的な姿勢」と情報資材の活用
さらに安川氏は、適正使用を推進するうえで、薬剤師をはじめとした医療従事者が「医薬品情報をどのように扱うべきか」という点についても言及した。
現在、くすりの適正使用協議会などが作成するさまざまな情報提供資材や、患者向け医薬品ガイドなどの活用・見直しが進められているが、医療のプロフェッショナルとして最も重要なのは、公的データである「添付文書」の記述の背景にある真意をくみ取ることであるとした。
単に記載内容を表面通りになぞるだけでなく、「なぜこの注意喚起が書かれているのか」「どういう議論や背景があってこの記載に落ち着いたのか」を知るために、「承認時の審査報告書」などを能動的に読み込み、より深い知識を持って医薬品のリスクの程度を理解したうえで患者に接する姿勢が、これからの薬剤師には強く求められている。
最後に安川氏は、製薬企業、医療従事者、行政、関係団体といった各ステークホルダーがそれぞれの役割を認識し、一丸となって適正使用の推進と再発防止(薬害の歴史の教訓)に取り組むことの重要性を強く訴え、講演を締めくくった。



コメント