物価高が大学生の「学び」に与える影響――大学生協連「第61回学生生活実態調査」結果発表
- toso132
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全国大学生活協同組合連合会(大学生協連)は2026年2月24日、現代の大学生の経済状況や意識を浮き彫りにする「第61回学生生活実態調査」の結果を報告した。長引く物価高騰が、支出構造から学習習慣に至るまで、学生生活の根幹を揺るがしている実態が明らかとなった。
1.食費増のしわ寄せが「書籍費」に
調査によると、下宿生の1カ月の支出において食費は前年比で約3,700円増加し、2万9,853円に達した。しかし、支出総額は大きく伸びておらず、増大した食費を捻出するために他の項目が抑制されている。
特に顕著なのが「書籍費」の減少だ。2016年以降で初めて月額1,000円を割り込み(950円)、過去最低水準を更新した。大学生協連専務理事の中島達弥氏は「経済状況が大学での学びの質に直接影響を及ぼす局面に入っている」と分析している。
2.奨学金受給の現状:過去10年で最高の受給率と返済不安
奨学金の受給割合は2019年まで低下傾向にあったが、2025年には36.8%と過去10年で最も高い水準となった。増加の背景には「給付型奨学金」の拡充があり、受給者のうち「給付型のみ」の割合は15.2%(前年比5.3ポイント増)と急増した。
一方で、返済義務のある「貸与型(併用含む)」を利用する層の不安は根強い。貸与型受給者の約5割が「暮らし向きが苦しい」と感じ、約7割が卒業後の返済に不安を抱えている。公的支援の裾野が広がる一方で、受給形態による心理的格差が鮮明となっている。
3.学修時間の圧迫:アルバイトとの相関
アルバイト収入は時給単価の上昇により増加傾向にあるが、これが学生のゆとりには結びついていない。調査では「アルバイト時間が長いほど、予習・復習や読書をしない学生が増える」という明確な負の相関が確認された。
自由記述欄には「生活費のために深夜までバイトをせざるを得ず、睡眠時間が削られ、翌日の授業で居眠りをしてしまう」といった切実な声が寄せられており、生活維持のための就労が「学びの時間」を奪う構造的課題が浮き彫りとなった。
4.生成AIの定着:生活インフラとしての活用
生成AIの利用経験は92.2%に達した。レポートの要約や添削といった学修補助に加え、悩み相談や献立の相談など日常生活の補助ツールとしての活用も広がっている。大学生協連は、生成AIが特定の目的を超え、限られた資源の中で生活を効率化するための「生活インフラ」として定着したと結論づけている。
5.「変化への適応」と支援の限界
記者会見で、大学生協連26年度全国学生委員長の佐藤佳樹氏は、調査結果を踏まえて次のように述べた。「当たり前が変化し、学生たちはその中で必死に適応している。暮らし、学び、コミュニティの危機がある中で、コロナ禍での動向を踏まえ、現在は新しい当たり前が変化し、定着しているのではないか」
佐藤氏は、物価高や就職活動の早期化といった重圧にさらされながらも、生成AIを駆使するなどして何とか生活を維持しようとする学生たちの姿を「適応」という言葉で表現した。
大学生協側も企業と連携した「100円朝食」などの支援を続けているが、原材料費の高騰により生協自身の経営も厳しさを増している。記者会見の中では、民間組織だけの努力には限界があり、社会全体で学生の困窮を正確に把握し、重層的な支援を模索していく必要性が強調された。