薬局から発信する「Well-being」への挑戦:スギ薬局の新たな地域連携モデル
- toso132
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2026年2月25日から3日間にわたり、東京ビッグサイトで開催された「Care Show Japan 2026」。その中で行われたセミナーにおいて、株式会社スギ薬局の植田恵子氏(医療営業本部 関東営業統括部 統括部長)が登壇した。本講演は「薬局から発信する『Well-being』実現のための取組」と題され、地域住民の幸福と健康を多角的に支える次世代型薬局の在り方について、示唆に富む内容となった。
スギ薬局が推進する「トータルヘルスケア戦略」
スギ薬局は、創業50周年を迎える2026年2月期に売上高1兆50億円を見込み、全国2,000店舗を超えるネットワークを展開している。同社が掲げる「トータルヘルスケア戦略」の核は、健康維持や予防・未病のセルフケア領域から、服薬支援、在宅医療、そして終末期の生活支援に至るまで、顧客のライフステージを生涯にわたって支えることにある。
植田氏は、身体的・精神的・社会的に満たされた持続的な状態を指す「Well-being」の概念が、同社の経営理念そのものであると強調した。この実現のため、薬剤師や管理栄養士、登録販売者、看護師といった多様な専門職が連携。リアル店舗の強みにデジタル技術と行政連携を掛け合わせた、独自の活動を推進している。
処方箋なしで集える「健康茶房」の試み
現場での具体的な実践として注目を集めたのが、帝京平成大学の学生らと共同で実施している「健康茶房(けんこうさぼう)」である。この取り組みは、薬局を単に「薬を受け取る場所」とするのではなく、「住民が自然と集うコミュニティの場」へ転換させることを目的としている。
2025年9月よりスギ薬局神田駅南口店において月1回、仕事帰りの人々をターゲットとした夕方の時間帯に開催。薬剤師や学生たちが提供する健康茶をきっかけに、地域住民やリピーターとの対話を通じて日常の悩みや健康ニーズを引き出す場となっている。植田氏は、当初は処方箋のない顧客への接遇に戸惑っていた薬剤師が、学生たちの柔軟な感性を模範とすることで意識変革を遂げ、現在では延べ200人近い来場者を得る成果を上げていると語った。
多様な外部連携による専門的支援のネットワーク
同社は単独の活動に留まらず、外部パートナーとの連携を通じて支援の質を高めている。
その一環として、同志社大学の瓜生原葉子教授が提唱する「医療のエコ活動」の趣旨に賛同するアステラス製薬と協働した取り組みを開始した。この活動は、医療費の高騰やドラッグ・ロスといった社会課題を、日常生活の視点から「自分ごと」として捉え直すことを目的としている。スギ薬局はアステラス製薬の活動を推進・支援する企業として連携し、絵本ラウンジでのイベントなどを通じて、処方箋がなくても薬や食の悩みを気軽に相談できる環境づくりを啓発。情報発信や市民の行動変容を促す活動を展開している。
また、「一般社団法人こども偏食少食ネットワーク協会」との連携では、家庭での食事に悩む保護者の相談窓口としての役割を担っている。東京・世田谷区のスギ薬局桜新町店では、専門資格である「子ども摂食アドバイザー」を取得した管理栄養士や薬剤師による相談会を開催した。ここでは単なる助言に留まらず、小児科医や言語聴覚士など30件以上の専門職と連携するフォローアップ体制を構築しており、専門的な支援へとつなげるネットワークの構築が進んでいる。
さらに、千葉市のスギ薬局蘇我調剤店では、店舗スタッフ自らが地域行事に参加。行政やメーカーと協力して歯科チェックや骨密度測定などの独自イベントを実現した。これらは、住民が日頃から頼れる「身近な専門家」としての信頼関係を築く礎となっている。
地域医療のハブとしての展望
植田氏は講演の結びに、薬局1店舗だけでは限界があり、地域、医療機関、行政、大学、企業が機能を補完し合う「顔の見える関係づくり」が不可欠であると強調した。
厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」が示す2035年の姿に向け、薬局は地域包括ケアシステムの中核となり、立地にかかわらず地域の相談拠点となることが求められている。スギ薬局が進める一連の取り組みは、薬局が「地域医療のハブ」として機能し、人々のウェルビーイングを持続的に支える社会的インフラへと進化する具体的な道筋を提示している。



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