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  • 【ツムラ漢方記念館】17年ぶりにリニューアル!体験型展示で漢方を身近に

    生薬シンボルゾーン。100種類以上の生薬を展示 医療用漢方製剤で国内トップシェアを誇る株式会社ツムラは、茨城工場の敷地内にある「ツムラ漢方記念館」の展示を17年ぶりに刷新した。「漢方・生薬を学ぶ・知る・楽しむ」をコンセプトとする同館は、医療関係者を中心に年間約3,000名が訪れる、漢方に関する専門的な情報発信拠点である。歴史的に貴重な書物や100種類を超える生薬の展示、漢方製剤の製造工程や品質管理に関する展示などを通して、漢方の正しい知識を伝えてきた。 今回のリニューアルでは、「漢方薬を、ツムラを、もっと分かりやすく!」をコンセプトに、同社の品質への取り組みを幅広い世代に理解してもらい、来館者がその体験を誰かに話したくなるような魅力的な展示を目指した。体感型の展示を増やし、イラストや写真などの視覚情報を充実させることで、より感覚的に理解できるような工夫が凝らされている。特に注目されるのは、新たに設けられた「TSUMURA KAMPO LABO」である。ここでは、薬学部の実務実習生が模擬調剤を体験することができる。 生薬体験コーナー約70種類の生薬を展示し、壁面には生薬のイラストも掲示。香りや形状を実際に楽しむことができる。 TSUMURA KAMPO LABO 模擬調剤の様子 また、310平方メートル、テニスコート約3面分の広さを誇る薬草見本園には約300種類もの薬用植物が植栽されており、実際に植物に触れ、香りを感じることで、漢方薬の原料となる生薬をより身近に感じることができる。薬用植物は、方剤ごとにまとめて栽培されている。例えば、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」の区画には、牡丹皮(ぼたんぴ)、牛膝(ごしつ)などが植えられている。300種類もの薬用植物が息づく空間は、まさに生きた教材であり、漢方への理解を深める貴重な機会となるだろう。 薬草見本園。右奥の建物はツムラ漢方記念館。方剤ごとにまとめて栽培されている。 明治時代に入り、西洋医学が主流となる中で漢方医学は一時衰退したが、昭和期に入り、日本東洋医学会の設立や西洋薬の副作用問題などを背景に、再び注目を集めるようになった。1960年代には漢方薬が薬価基準に収載され、1976年には医療用漢方エキス剤が保険適用となるなど、現代医療における漢方の地位が確立されていった。2001年には医学教育モデル・コア・カリキュラムに「和漢薬を概説できる」が採録され、2002年には薬学教育モデル・コア・カリキュラムに「現代医療の中の生薬・漢方薬」が採録されている。 漢方の古典『傷寒論』『金匱要略』 現在の日本漢方の考えは江戸時代中期に広まった。 同館館長の吉田勝明氏は、「今後も訪れたお客様がワクワクしながら楽しく漢方を学べる施設を目指し、五感を通じて正しい情報を発信していきたい」と意気込みを語った。 吉田氏 調剤過誤を防ぐために、製品番号を「色」と「ライン」の組み合わせで示す識別方法を導入している。この方法では製品番号の一の位を色で、十の位と百の位をラインの太さと本数で表現する。例えば、137番の場合、「茶色」の色表示と「太いラインが2本」および「細いラインが3本」のライン表示の組み合わせで識別している。 工場の敷地内から見える牛久大仏 リニューアルの主なポイント TSUMURA KAMPO LABOの新設: 薬学部の実務実習生が模擬調剤を体験できる。 生薬体験コーナーの拡充: 約70種類の生薬を展示し、壁面には生薬のイラストも掲示。香りや形状を実際に楽しむことができるエリアとなった。 2階展示の刷新: 大型マルチビジョンで生薬の栽培・調達から製造・販売までの流れを動画で紹介。製造工程はイラストと実物展示を組み合わせた。 ツムラ漢方記念館 茨城県稲敷郡阿見町吉原3586 茨城工場の敷地は東京ドーム約4個分という広さを誇り、約1100名の従業員が勤務している。敷地内にはツムラ漢方記念館のほか、工場施設、研究施設がある。同館はツムラ創業100周年の記念事業として設立され、2008年度のグッドデザイン賞(公共建物空間/土木/景観)を受賞した。また、ウェブ上で漢方が学べる 「バーチャル漢方記念館」 を公開している。

  • 起業家の伴走者として社会課題解決に貢献し、持続可能な社会の実現を目指す

    株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズ マネジャー 後町陽子 今まで治らなかった病気を治す薬を開発する、新しいテクノロジーを活用して業務の効率化を図り、必要な人に必要な医療を届けるといったように、社会課題解決を目指す企業に対して投資する。このような社会課題解決型スタートアップ企業に対して、成長を支援し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を目指す投資活動「インパクト投資」が注目されている。持続可能な社会を実現するためのアプローチとして今後の成長が期待される分野だ。ここでは、株式会社キャピタルメディカ・ベンチャーズのマネジャーの後町陽子さんにインパクンパクト投資や自身の近況について聞いた。 ──インパクト投資って日本ではありまなじみのない言葉ですが、従来の投資とはどう違うのでしょうか。  従来の投資は経済的なリターンを追求するものです。つまり富がある人がより富む方向にお金が流れます。一方でインパクト投資は、経済的なリターンだけでなく、社会的なインパクト、つまり社会の課題を解決する事業かどうかを重視する点が大きな特徴です。従来の投資は、企業の成長性や利益性を基準に資金を投入し、その結果として得られるリターンを期待しますが、インパクト投資は、投資先の企業が社会課題の解決に寄与するかを考慮します。例えば、これまで一部の専門性の高い医療者のみしか提供できない匠の技があり、必要な患者さんに届かないという社会課題があった場合に、新しいテクノロジーを用いた医療機器により多くの医療現場で提供できるようにするプロダクトを開発する企業に対して出資する。その事業が成長すれば、社会課題の解決につながります。インパクト投資とはすなわち、社会課題に新たな解決策をもたらす事業によって社会にポジティブなインパクトをもたらす意図を持つ企業への投資のことです。  日本政府が打ち出す「新しい資本主義」の中にインパクトの観点が盛り込まれており、G7サミットにおいても持続可能な社会に向けた具体的方策について議論されています。  インパクト投資の投資先分野は教育、医療やヘルスケア、貧困問題などで、企業の種類や状態もさまざまあります。 ──後町さんは現在どのような仕事をされていますか。  私たちが主に投資の対象にしているのは、医療、介護、福祉、健康といったヘルスケア領域のスタートアップ企業です。創業間もない会社は、これから事業成長する可能性がある段階で、会社としての価値が世の中にはまだ認められていません。新しい技術やサービスを作り上げるためには資金が必要ですが、医療や介護などの問題の解決に取り組む会社は、きちんと効果を出すプロダクトやサービス開発に時間を要すため、すぐに大きな収益が上がらないケースが多く、他分野に比べて資金調達に苦労することがしばしばあります。そのような現状に対し、私たちはまず、投資対象領域の社会課題を構造的に整理する課題デザインマップを作り、社会課題を網羅的に把握します。そのうえで、課題解決に資するスタートアップ企業を探し、出資をさせていただきます。そして私たちは、投資先の事業成長のサポートを行います。最終的には、投資した企業が株式上場あるいはM&A(株式譲渡)というかたちで利益を得るというのがベンチャーキャピタルの事業の大きな流れです。私たちのゴールはインパクト投資によって、社会課題の解決に挑むスタートアップ企業の成長を促し、あらゆる社会問題の解決に希望が持てる社会を創ることです。  普段は、投資先企業の経営会議に出席して、投資先企業の方々と一緒に事業の問題点の確認をしたり、改善に向けたディスカッションを行ったりしています。時には難しい局面を迎え、経営者も迷うことがあります。そんなときには多くの投資先企業の支援で得た知見やノウハウなどを生かしながら、少しでも事業を前に進める力になれるように努めています。  また、年に1度、各投資先の社会課題解決に向けた事業の進捗状況を「インパクトレポート」というかたちにまとめて公表しています。 インパクト投資に興味のある人向けにインパクト投資家仲間とトークセッション   ──具体的にどんな企業と関わっていますか。   遠隔心臓リハビリアプリを開発する会社やAIを使って高度な放射線治療を最適化するソフトウエアを開発している企業、地域の介護サポート人材と介護施設をマッチングするサービスを提供している企業などを担当しています。最近では、バイオ系の創薬のスタートアップ企業も担当しています。私たちのようなベンチャーキャピタルが出資を行う場合、ファンドの運用期間は10年と限られているので、期間内に成果を出すことが求められています。 目標に向かって進み続けていても、時には悩むこともある。合宿を開催して起業家の成長を促す。 ──今の会社に入社したきっかけは? 前職は、病院の経営コンサルティングをやっていました。ここ数十年の日本は、社会保障制度を持続可能なものにするために、医療費を抑制する方向に舵を切っています。さらに近年は物価高騰、エネルギー費の急騰、人件費の高騰などにより、病院経営は非常に厳しい状況にあります。経営を改善するために経営者は患者を増やすための新たなサービスの提供、また、業務の効率化を図るために、新しい医療機器の購入、あるいはデジタル化の推進などを行いたいと思っているものの、資金がないため実現できていないという現実を目の当たりにしてきました。現場の医療者の方々は日々身を粉にして患者さんや地域のために頑張っているのに、働く環境や医療の提供の効率がなかなか上がらず疲弊していってしまうという負のスパイラルを断ち切る方法はなかと考えている時に、医療分野の起業家を育成するプログラムの運営を依頼されました。その時に医療をより良くするために奮闘しているスタートアップ企業があるのだと気づかされ、これらの企業をサポートする手段の一つにインパクト投資というものがあると知り、今の会社に入社したのです。 それから間接的には、JICA青年海外協力隊としてアフリカで活動していたことも関係していたかもしれません。もともと社会課題を解決することに関わる仕事に就きたいと思い、大学卒業後、JICA青年海外協力隊に応募しました。医療環境や貧困を改善する目的で活動していたものの、国の枠組みで行っているため、プロジェクトは2~3年で終了します。プロジェクトが終わった後も現地の人たちでできるように引き継ぎはするのですが、持続可能という面ではなかなか難しいのが現状です。その時に感じたのが医療はそれでいいのかなと。援助という枠組みは必要だと思いますが、そこに住んでいる人が必要な医療を受け続けるためには、もっと別のやり方があるのではないか、その時は漠然と感じていました。そう考えると今の仕事はその答えの一つかもしれません。 女性起業家ランチ ──今後の目標をお教えください。   ヘルスケア領域については、医療アクセスの問題、従事者・介護従事者の働き方の問題など、解決しなければいけない課題はたくさんあります。その一方で、その課題解決を目指す人や企業はまだまだ十分とはいえず、課題解決への思いを持っている方々の伴走者として事業の成長を促すことが、社会をより良くすることにつながるのではないかと信じています。     ──最後に薬学生へメッセージをお願いします。   皆さんは卒業後の進路ついて、病院、薬局、企業、行政の4つくらいをイメージしているでしょうか。私自身もそうだったのですが、学生時代に日本薬学生連盟のイベントで海外の薬学生と交流した時にさまざまな薬剤師の可能性に気づかされました。私の場合は、公衆衛生に興味を持ち、JICA青年海外協力隊としてアフリカで活動しました。薬学生の皆さんもいろいろな人と出会って、薬剤師の可能性を探ってみてください。臨床で働くことは素晴らしいことだと思いますし、尊敬もしています。人生100年時代といわれるようになり、働く期間も長くなりました。1つのことを続けて専門性を極めることも選択肢の一つだと思いますが、ライフステージの変化や人との出会いで自分がやりたかったことが新たに見つかるかもしれません。いろいろな選択肢があるということを学生時代に知っておくと、豊かな人生を送ることができるのではないかと思っています。 後町陽子(ごちょう・ようこ) 明治薬科大学卒業後、JICA青年海外協力隊エイズ対策隊員としてガーナで活動。帰国後、病院・薬局にて臨床経験を積んだ後、病院経営コンサルタントとして、オペレーション改革・組織改革、人材マネジメント支援、ヘルスケアスタートアップの育成プログラム運営等を担当。外資系コンサルティングファームにて製薬企業向け戦略コンサルティングおよびDX支援を経験後、現職にて投資・投資先支援等を担当。薬剤師・経営学修士。

  • 問◆フレイルに関する内容として、正しいのはどれか。

    問 226(衛生) フレイルに関する内容として、正しいのはどれか。2つ選べ。 ❶フレイルは、加齢に伴う身体的、精神的な機能低下のことである。 ❷フレイルは、要介護になった状態のことである。 ❸フレイルは、回復することない病態である。 ❹フレイルの進行を防ぐことは、健康寿命の延伸につながる。 ❺フレイルは、過栄養により防ぐことができる。 (第109回薬剤師国家試験より) *** 蔵之介です。薬学実践問題【衛生/実務】からフレイルに関する設問です。リード文に続き、フレイルとその予防に関する提案の2連問。超高齢社会において要介護者の急増は喫緊の課題なので、毎年のように出題されています。  フレイルとは、『加齢に伴う身体的、精神的な機能の低下』を意味し、とくに高齢者に多い状態です。『自立した健康な状態(no frailty)』と日常生活動作に介助を必要とする『要介護状態(disability)』の中間的な段階に位置します。語源は、欧米の老年医学で使用されているfrailty(フレイルティ)。直訳すると、「虚弱」や「老衰」になります。しかし、この日本語訳だと“不可逆的に老い衰えた状態”というネガティブな印象を与えるため、日本老年医学会は、2014年5月に『フレイル』という新しい概念を提唱し、フレイルが持つ多面性や正しく介入すれば再び健常な状態に戻れるという可逆性を強調しました。 フレイルは、加齢により筋肉量が減少して、筋力が低下した状態(サルコペニア)や運動器障害のため移動機能が低下した状態(ロコモティブ・シンドローム)などを含む『身体的フレイル』と配偶者との死別など、ライフイベントから抑うつや軽度の認知機能低下になる『精神・心理的フレイル』、独居や経済的困窮などを背景に、社会との繋がりが希薄化する『社会的フレイル』などから構成されます。フレイル予防には、散歩や軽い筋トレなど、適度な『身体活動(運動)』や栄養バランスやオーラルフレイルに配慮した『栄養・口腔機能』、余暇活動、ボランティア活動などを積極的に取り組む『社会参加・こころの健康』などがあります。フレイルは早期に対処すれば、進行を緩やかにし、健康寿命を延ばすことができます。中年期はメタボリックシンドロームに注意しますが、高齢期では低栄養の改善や良質な蛋白質の摂取が重要になります。過栄養ではなく、バランスの取れた適切な栄養の補給になります【正解は1、4】。 出題予想 フレイルの判定基準、サルコペニア、ロコモティブ・シンドローム、オーラルフレイル、フレイルサイクルなど。 ■解説 蔵之介(アポクリート株式会社)

  • 【くすりの適正使用協議会】 オーバードーズ対処法啓発資材を公開

    一般社団法人くすりの適正使用協議会と、日本大学薬学部薬剤師教育センターは、オーバードーズ(以下OD)の対処法に関する啓発資材を共同制作し、2024年10月1日より同協議会サイトで無料公開している。資材は、国立精神・神経医療研究センターの松本俊彦氏と厚生労働省が監修した。 近年、医薬品のODが社会問題となっており、市販薬の乱用経験のある若者は60人に1人といわれている。ODに陥る要因は、好奇心や快楽を求めてというだけではない。勉強やスポーツで好成績を上げたいという向上心、あるいは劣等感や孤独感、プレッシャーや寂しさを紛らわすといったことから市販薬を不適切に使用するケースが少なくないという。一方で、ODを繰り返し、依存症になってしまった、あるいはその可能性がある若者は、精神保健の専門家に繋がり適切な医療を受けることが重要である。これらを踏まえ同協議会ではODに悩む当事者、それに悩む家族などに向けた資材を新たに作成。同資材の内容はODにハマってしまうきっかけを漫画で紹介、さらに本人、友達、保護者、先生、それぞれへ向けたメッセージを掲載し、依存症かもしれない本人、友達、保護者、先生が当事者としてODの迷路から脱出するヒントをまとめている。 同資材は同協議会HPで公開しているほか、日本薬剤師会、日本チェーンドラッグストア協会、日本保険薬局協会、日本医薬品登録販売者会、日本OTC医薬品協会に対して、同資材の活用に向けて会員への周知を打診している。また2024年10月1日には、警視庁等4団体で締結した「児童・生徒の薬物乱用防止に関する覚書」に基づき、くすり教育の強化とともに、資材について警視庁、東京都薬剤師会にも普及・活用を依頼している。 ■資材概要 【制作】一般社団法人 くすりの適正使用協議会、日本大学薬学部薬剤師教育センター 【監修】松本 俊彦(国立精神・神経医療研究センター)、厚生労働省 【資材の形態】A4・1枚(両面)のPDF形式、サイトコンテンツ ■オーバードーズ対処法啓発資材のサイト https://www.rad-ar.or.jp/knowledge/post?slug=overdose

  • 問◆エリザベス・キューブラー=ロスによって提唱された死にゆく人の心理過程で第2段階はどれか。【国試探検隊】

    問80(法規・制度・倫理) エリザベス・キューブラー=ロスによって提唱された死にゆく人の心理過程で第2段階はどれか。1つ選べ。 ❶受容 ❷取り引き ❸怒り ❹否認と孤立 ❺抑うつ                               (第109回薬剤師国家試験より) *** 蔵之介です。必須問題【法規・制度・倫理】からの出題です。米国の精神科医、エリザベス・キューブラー=ロスは、1926年にスイスで生まれました。1960年代のがん治療は、有効な治療法もなく、死を待つだけの時代でした。病院での末期患者の対応にショックを受けた彼女は、当時、タブー視されていた「死」を研究テーマに選びました。シカゴの病院で200人を超える末期患者と対話し、ときにはハゲタカ呼ばわりされながらも、人はどのような心理変化を経て死んで逝くかを分析しました。そして、医学が及ばない領域とされてきたサナトロジー(死生学)の講義を始め、世界的ベストセラーとなった著書『死ぬ瞬間-死とその過程について』 (1969年)のなかで、1否認、2 怒り、3取引、4抑うつ、 5受容という「死の受容のプロセス(5段階モデル)」を提唱しました【解答は3】。がんを告知された患者は、【第1段階】『医師の診断を疑い、何かの間違いだ』、自己防衛の手段として(否認)し、現実から逃避しようと周囲と摩擦(孤立)。【第2段階】『なぜ、自分なのか?』、八つ当たり(怒り)。【第3段階】『治るなら、何でもする』、神にすがる(取り引 き)。【第4段階】『もう何もできない』、悲嘆や絶望で(抑うつ)。【第5段階】『どうにもならない』と静かに受け入れる(受容)。終末期医療の先駆者として、今日に至る緩和やホスピスのあり方に多大な影響を与えました。5段階モデルには批判もありますが、元図は単純な階段ではなく、併行して(希望)もありました。晩年、脳梗塞に倒れ、半身不随になりました。テレビ局の取材の中で、『死を受容することはできず、自分のモデルに意味はない』と自らを否定。他人の死と自分の死とは違ったようです。2004年、娘や孫に看取られて静かに旅立ちました(78歳没)。 出題予想 シシリー・ソンダースのトータルペイン(全人的苦痛)やグリーフケア(遺族のケア)など ■解説 蔵之介(アポクリート株式会社)

  • 薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士 食支援は患者にとっておいしいという選択が実行されることがある

    札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士) 川口美喜子 管 理栄養士が医療者として実践する食支援と栄養の意義を考えてみます。食支援は、「栄養・食事・食べる」を2つの側面の重複する領域で暮らしを守ることあります。栄養学的側面は、科学的根拠を第一に考え、健康の維持と増進、疾病の予防と治療に必要な栄養を満たすことです。そして、患者の生理的・心理的ニーズを満たす精神・社会的側面を考慮することが重要となります。精神・社会的側面とは、食べる人の食習慣や食文化を満たし、心の豊かさや満足をもたらし、人間関係やコミュニケーションの形式に役立つことであり、食べる人のQOLや社会性を高めることです。その2つのアプローチが重複するナラティブにより進めることが薬局の管理栄養士には重要になります。単に疾病の治療に必要な栄養素の十分な確保だけでなく,患者の生理的・心理的ニーズを満たすことです。栄養支援は、管理栄養士の職能と洞察力、コミュニケーションによって、向き合うことになります。医療の中で「栄養管理」はやや異端なケアであり、ある意味、ミラクルです。科学的根拠に基づく栄養療法と、説明できない栄養もあり続けます。セルフケアでは、科学に基づく療法よりも、「私にとっておいしい」という選択が実行されます。 現行の教育では、薬局・ドッラクストアの管理栄養士が果たす顧客の栄養支援に必要な基礎教育のカリキュラムはありません。それぞれの企業が管理栄養士教育を進めています。今回は、北九州市を拠点に展開する調剤薬局およびドラッグストアチェーンの株式会社サンキュードラッグです。医薬品の提供に加え、栄養や健康に関する相談サービスにも積極的に取り組み、地域の健康サポートの実施が述べられています。今後、薬局の管理栄養士教育を標準化していく必要性を再認識することができます。 事例紹介 患者の健康状態をリアルタイムで把握し、患者の行動変容を促す 株式会社サンキュードラッグ 岡田圭子 医療機関に勤務する管理栄養士は、患者の身体状況や検査結果を基に栄養指導を行います。医療機関で栄養指導を行っていた私は、初めて薬局で栄養相談をした際に、こうしたデータが揃っていないことに大変驚きました。薬剤師は処方された薬の種類や量から病状を把握できますが、管理栄養士にはそのような手段がありません。そのうえ、初回面談時に患者様に検査結果や体重変化をお尋ねしても、明確な情報が得られないことが多く、ご自身が食べたものを思い出せない方も少なくありません。そこで、検査項目のどの数値を確認すべきか、またその数値がどの程度であれば食生活をどのように調整すべきかを説明しました。これにより、患者様がご自身の健康状態を意識し、次回の面談時には検査結果を持参されるようになりました。また、栄養相談の報告書を薬剤師が医療機関に提出することで、医師が患者様に検査結果を持参するよう指示し、薬局へ紹介いただくケースも増えてきました。その後、入職した現在の職場は、年間28万人が買い物や処方薬の受け取りなどに利用するドラッグストアチェーンでした。そのため、買い物「ついで」や薬の受け取り「ついで」に、気軽に食事や運動の相談ができる健康づくりの場が9店舗に設けられていました。そこでは、会員制の栄養相談や体操教室、地域住民向けの栄養講座、また、新たに供食の場の提供を開始し、健康的な食生活の知識を広める活動を行っています。栄養相談には血圧や体組成計を測定し、患者様の健康状態を定量的に把握しています。会員様によっては血液検査結果を持参していただくこともあります。 近年、重症化予防として、医療機関との連携を強化し、医療機関で行われる月1回の栄養指導と栄養指導の間に、週1回の来店を促し、30分ほどの食事支援や運動支援を実施しています。また、この取り組みではICTを活用し、患者様と同じソフトを使用することで、患者様が自宅で入力した食事や運動、体重などのデータを、管理栄養士が別の場所でいつでも確認できる環境を整えています。これにより、管理栄養士は患者様の状況をリアルタイムに把握し、チャットを通じて適切なアドバイスを提供することが可能となりました。その結果、会員様が継続的に食生活の改善を意識しやすくなり、早期に食事療法を見直し、修正することが可能となりました。さらに、会員様の承諾を得たうえで相談内容を医療機関の医師や管理栄養士にフィードバックすることで、医師から病状や治療方針の指針を示していただいたり、管理栄養士から指導内容や指示栄養量の変更を提示していただいたりすることで、会員様の詳細な情報を共有し、一貫した栄養管理を行うことができています。 また、店舗業務以外でも、特定保健指導、在宅栄養相談、介護予防・日常生活支援総合事業などの事業を、専任の管理栄養士20人ほどで実施しています。今後は生活習慣病の予防のみならず、重症化予防にも重点を置き、医療機関や行政ともさらなる連携を強化し、地域全体の健康増進に貢献していきたいと考えています。さらに、この取り組みを継続していくためには、管理栄養士のスキル向上が重要であると考えており、質の高い栄養サポートを提供できる体制を整え、地域に根ざした支援をより充実させていくことを目指しています。

  • 第14回アジア製薬団体連携会議(APAC)開催:アジアの患者さんへの革新的新薬提供に向け議論進展

    4月22日、「第14回アジア製薬団体連携会議(Asia Partnership Conference of Pharmaceutical Associations, APAC)」が開催された。2012年より毎年東京で開催されているAPACには、国際製薬団体連合会に加盟するアジア各国・地域の製薬団体13団体に加え、規制当局関係者やアカデミアが一堂に会し、「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」という共通のミッション実現に向けて、「研究」「開発」「申請/GMP」「市場アクセス」「承認後変更管理」の各分野で議論が重ねられている。 今回の会議では、「革新的な医薬品をアジアの人々に速やかに届ける」というミッションのもと、「規制・許認可」「創薬連携」「添付文書の電子化(e-labeling)」「製造・品質管理(MQS)」「aUHC(アジアにおける、すべての人が支払い可能な費用で適切な健康増進、予防、治療、機能回復に関するサービスを受けられること)」の計5つのセッションが行われ、オンラインと現地参加を合わせて約600名が参加し、活発な議論と提言がなされた。 会議の総括と合意事項について、APAC運営責任者の村上信夫氏(日本製薬工業協会国際委員長)が記者会見で説明を行った。村上氏は、特にaUHCに関する議論の進展について強調し、「これまで日本が中心となって議論を進めてきたが、『アジアの患者さんに革新的な新薬を届ける』という共通の課題に対し、この1年間で他のアジアの製薬団体も非常に積極的に参加し、議論を深めることができた。民間医療保険の役割や、台湾の事例を参考にした基金設立の可能性についてのカンファレンスでのセッション発表も非常に高い評価を受け、今後も継続的な議論が必要であるという意見が多数出た」と述べた。 さらに、e-labelingに関する規制当局と製薬団体の議論に触れ、「個人の見解としては、この1年間で製薬団体と当局双方の積極的な参加と議論が進み、関係強化ができたこと自体が最大の成果であった」と語った。 創薬連携では、創薬研究の新モダリティとして注目を集めるマイクロバイオーム研究に関し、研究者からは「産学連携によるマイクロバイオーム研究の加速化」と「日本国内のマイクロバイオーム研究の課題と可能性」について、またPMDAからは「マイクロバイオーム医薬品の規制面からの考え方」について発表があった。これらの発表を通じて、日本とアジアにおけるマイクロバイオーム研究の現状を確認し、創薬応用への可能性について考察を深めた。 また、今回の会議においてベトナムの製薬団体(Pharma Group Viet Nam)が新たにメンバーに加わり、来年の第15回APACに向けて14団体で協力していくことが決定したと発表された。 村上氏

  • 薬剤師として社会に貢献することを念頭に行動してほしい

    公益社団法人日本薬剤師会 会長 岩月 進 「薬剤師および薬局に関する制度の改正」「DX推進」「Amazonファーマシー」など、薬剤師を取り巻く環境が劇的に変化している。これから先、薬剤師の将来はどうなっていくのか。ここでは、日本薬剤師会会長の岩月進氏に未来の薬剤師像や薬学教育について聞いた。 ―薬剤師、薬局の取り巻く環境が劇的に変化する中、今の薬剤師に求められる資質をお教えください。 薬剤師という資格は国から付託された資格であることを忘れてはいけません。ここ数十年、薬剤師を取り巻く環境は変化しましたが、どんな状況になったとしても国民に奉仕することを念頭に置いて行動しなければならないのです。免許を取得すれば、薬剤師法に基づいた権限が与えられますが、それと同時に自らの行動に対して責任を負うことでもあります。今一度、自覚を持ってほしいと思います。  近年の規制改革や規制緩和の考え方は、免許がなくても一定の要件を満たせば許容するというものですが、薬剤師に限らず免許というものは、行政処分の対象になるわけですから、ミスをすれば責任を負わなければなりません。そこが実は免許の一番大事なところなのです。「私のせいじゃない」「機械が間違った」それで済むのであれば免許そのものの必要性が問われるのです。 ―国は、薬剤師の業務を「対物から対人へ移行する」ことを打ち出していますが、その意味するところをお教えください。  調剤に関わる薬剤師の必読書である『第十三改訂 調剤指針』の中には、薬剤師業務を「対物と対人」に分けていますが、その考えをまとめたのは私です。それを受けて多くの関係者が、薬剤師業務を「対物から対人へシフトする」ことを提唱していますが、厳密に言えば、この考えは誤りで、対人業務は対物業務の精度を上げるための手段です。患者情報を引き出し、医薬品情報とマッチングして個別最適化した調剤をするというのが本来の意味なのですが、いつの間にか対人業務を充実させることのみがクローズアップされたのです。 ―薬剤師を輩出する大学の果たすべき役割は大きいと思いますが、現在の薬学教育についてどのような考えをお持ちでしょうか。    第一に学生だけでなく、薬学教育に関わる人たちが常に薬剤師の根本的な精神を意識してほしいと思います。 現在の6年制薬学教育は、調剤、さらに言うと医薬分業について熱心に教育しているという印象はぬぐえません。しかしながら薬剤師として社会に貢献することは、調剤だけではありません。医薬品開発や品質管理の仕事として製薬会社や卸、CRO(医薬品開発業受託機関)、公務員として保健所や麻薬取締官、自衛隊など、業種は多岐にわたっています。10年ほど前からWHO(世界保健機関)やFIP(国際薬剤師・薬学連合)は、西アフリカ諸国で蔓延している感染症の対策チームの一員として薬剤師を派遣し、公衆衛生管理に従事させ、一定の成果を上げています。成功体験を持っている彼らからすれば、南アジアについても目を向けているのですが、本来アジアのリーダーであるべき、日本や韓国、台湾が積極的に取り組むべき事案なのに、いまだに進展が見えない状況を見て、アジアの薬剤師が公衆衛生に関わるべきではないかという声も上がっています。日本は自然災害が多い国なのですから、災害対策も含めた環境衛生や公衆衛生にも目を向けるべきだと思います。  製造業に目を向けると、今後、国内市場はシュリンクしていきますので、アジアへの進出はより加速し、それに伴い薬剤師の需要も高まっていくでしょう。そう考えると英語をはじめとした語学も重要になってきますね。 コミュニケーションスキルを高めるプログラムも数多く用意されていますが、薬剤師として一番重要なのはバイタリティーです。例えば地方の病院に勤めた際、地域にとけ込めないから辞める、夜勤や休日出勤は嫌だということでは困ります。どういう環境におかれても強い意志を持ち合わせなければなりません。その次に必要になるのがテクニカルなスキルで、コミュニケーションスキルは3番目です。バイタリティーとテクニカルスキルを身につけたうえで、その知識や技能を患者さんにどう還元するかといったときに、コミュニケーションスキルが必要になってくるのです。 また、薬剤師国家試験の合格率は、高校生の学校選択の大きな要素であることは認めますが、だからといって大学は国家試験対策予備校ではありません。 ―日本の人口減少と高齢化が進む中、2040年問題も控えています。岩月先生が考える未来の薬剤師像についてお教えください。 2040年には労働人口が減少し、過疎化や医療者の偏在も今より深刻になることが予想されます。それを解消するために、オンラインで服薬指導をしてドローンを使って薬を届ける機会も増えるでしょう。しかし忘れてはいけないのは、オンライン服薬指導のような非対面のやり取りは、どんなに精度を高めたとしても真正性(人やデータなどの対象物が本物であること)の疑問がつくわけです。例えば、警察が取り調べをオンラインではやらないのは真正性を担保するためです。私たちは人の命に関わる仕事に従事しているわけですから、IT技術を駆使しながらどうやってその真正性を担保するかということを念頭に置きながら仕事をすべきでしょう。 これまで専門家は知識や体験を切り売りしてきましたが、今後それはAIにとって替わられるでしょう。では何が必要なのか、それは想像力です。例えば薬が飲めなかったら、飲めない理由ばかりを探すのではなく、飲める方法を患者さんとのやり取りの中で見つけ出すというように、患者さんや家族の一つひとつの言葉から想像力を働かせて、最適な薬物治療を導き出すことが求められるのではないでしょうか。 ―2024年6月から岩月体制がスタートしました。日本薬剤師会のビジョンについてお聞かせください。 医療提供体制が病院完結型から地域完結型に移行される中、薬局の役割はますます大きくなっています。在宅医療やOTC医薬品の販売、健康相談といったように薬局のサービスはさまざまありますが、1つの薬局ですべてのサービスを提供することは難しいのが現状です。それを解消するために、地域の薬局が手を取り合って、地域の中に疑似的な大規模薬局を整備していく必要があるかと考えます。専門性の高い治療が必要な患者さんを対応する薬剤師がいなければ、専門薬剤師が在籍する薬局と連携する、あるいは専門薬剤師が先頭に立って地域の薬剤師の底上げを図ることも必要になるでしょう。これについては地域によって事情が異なりますので、地域の薬剤師会が主体的になって行動してほしいと呼び掛けているところです。 ―先日行われた衆議院選挙の投票率は53.85%で、戦後3番目の低さでした。特に若者の政治離れが叫ばれる中、「投票」を通じて政治参加することの意味をお教えください。 薬剤師は法の定めにより、国から付託された資格です。薬剤師法にうたわれた使命を果たさなければ、国から免許は不要といわれる可能性もあります。したがって免許を使って仕事している以上、政治に関心がないという考えはもってほしくない、というのが大前提です。その上で免許を使って、社会に貢献するためには、働く環境を整備する必要があり、それを実現するためには、現場の薬剤師の生の声を政治の中枢に訴えなければいけません。現場で起こっている課題があるけれど、法律が足かせになってうまく患者さんに対応できないといったこともあります。それを怠れば、現場の実情を知らない人がつくった制度ばかりになってしまい、現場ではうまく機能しません。私たちの意見を代弁してくれる薬剤師の資格を持った人が、政策決定に関わる場にいることは大事なことなのです。国家により効率的に貢献する、そのための手段として政治があるのだと思っていただければと思います。 もし自身で政治の世界に身を投じて、薬剤師が地域で活躍できるための政策をつくりたいと考えている方は、全国に薬剤師会の支部がありますので、そちらにお問い合わせいただければ幸いです。 岩月 進(いわつき・すすむ) 1978年名城大学薬学部卒業。2004年から2010年、2020年から2024年日本薬剤師会常務理事を経て、2024年第26代日本薬剤師会会長に就任。2017年から現在まで愛知県薬剤師会会長も務める。厚生労働省医道審議会薬剤師分科会構成員、厚生労働省社会保障審議会医療保険部会臨時委員、厚生労働省薬事・食品衛生審議会薬事分科会要指導・一般用医薬品部会臨時委員などを歴任。 第58回日本薬剤師会学術大会 2025年10月12日(日)~10月13日(月・祝)の2日間、国立京都国際会館にて開催 詳細はこちら https:// www.c-linkage.co.jp/jpa58/ 学生会員募集 4つの会員特典 1 日本薬剤師会ホームページ(会員向けページ)の閲覧可 2 生涯学習支援システムJPALS(ジェイパルス9の無料利用 3 日本薬剤師会が開催する研修会の案内 4 日本薬剤師会雑誌への投稿可 詳細はこちら https://www.nichiyaku.or.jp/about/student/index.html

  • 医師の働き方改革、成功事例を表彰 「メディカルジョブアワード2025」開催

    医師の採用支援プラットフォーム「Med-Pro Doctors」などのサービスを提供している株式会社ENは、2025年2月16日に第2回目となる「メディカルジョブアワード 2025」を開催した。このアワードは、医療現場における働き方改革の成功事例を表彰し、その取り組みを広く社会に共有することを目的としている。 全国の医療機関から50件を超える応募が集まり、一次選考を通過した7つの医療機関が最終登壇した。審査は「医療従事者の働きやすさ」「職場のチーム力強化」「患者へのサービス向上」の3つの視点から行われた。 厳選な審査の結果、最優秀賞は、一般社団法人ハートアライアンス 聖路加国際病院心臓血管外科 中村亮太氏の「心臓血管外科施設群『ハートアライアンス』が変える働き方と教育」が選ばれた。発表の中で中村氏は、自身が所属する心臓血管外科という領域が、長時間労働が常態化している現状を指摘。医師だけでなく、他の医療従事者も同様に、長時間労働を強いられている状況を変えたいという強い思いが、中村氏の活動の原動力となった。また、長時間労働が当たり前であるという風潮の中で、自身のキャリアやビジョンをあきらめざるを得なかった先輩医師たちの存在もあり、心臓血管外科領域における働き方改革を推進している。ハートアライアンスでは、病院の垣根を越えた連携体制を構築し、業務効率化のためのアプリ開発など、さまざまな取り組みを行っている。1つ目は仕組みの共有: 独自のアプリ開発による労務管理、手術器具の標準化、手術説明資料の共有、病診連携の標準化、転院搬送における連携など、2つ目は人の共有: オンコール体制のシェア、病院間連携アプリによる人的リソースの共有、多職種連携(看護師、臨床工学技士など)の推進、研修プログラムの共同開発など、3つ目は知識の共有: 合同ウェビナー開催、手術トレーニング部の活動―である。これら3つの取り組みを通じて、心臓血管外科医の働き方改革を推進し、一定の成果を上げているという。今回の受賞を機に、中村氏は「自身の活動をさらに広げ、心臓血管外科領域における働き方改革を推進し、患者、国民、医療現場、そして社会全体に貢献していきたいです」と述べた。 主催者で代表取締役・医師の鎌形博展氏は「それぞれの現場で創意工夫を凝らした素晴らしい取り組みを発表してくださいました。これらの事例は、医療業界全体の働き方改革を推進するうえで、非常に貴重な参考となるものばかりです。今後も、医療現場の持続可能な発展に向けて、皆様と共に歩んでまいりたいと存じます」と締めくくった。 ◆受賞者 ・最優秀賞 「心臓血管外科施設群『ハートアライアンス』が変える働き方と教育」 一般社団法人ハートアライアンス・聖路加国際病院心臓血管外科 中村亮太氏 ・オーディエンス賞 「『総合診療』と『コミュニティホスピタル』で地域医療を改革する」 一般社団法人コミュニティ&コミュニティホスピタル協会 近藤敬太氏 ・審査員特別賞 「診療看護師が急性期病院の働き方改革に与えるインパクト」 聖マリアンナ医科大学救急医学・株式会社Legix 代表取締役 堤 健氏 「かけはし方式 てんかん専門クリニックが実践する医師の働き方改革」 医療法人社団かけはし理事長 生田陽二氏 ・審査員特別賞 「医師不足に立ち向かう若手医師の挑戦」 新潟県町立津南病院 千手孝太郎 氏 ・優秀賞 「遺伝カウンセラーのタスクシェアで実現するゲノム医療の未来-多職種連携と新たな働き方」 香川大学医学部附属病院臨床遺伝ゲノム診療科特命助教 十川麗美 氏 「私の考える慢性期医療の魅力と元気会横浜病院の取り組み」 医療法人社団元気会横浜病院副院長・経営企画室 中村大輔氏

  • 【スタートアップ】薬局薬剤師から薬局組織コンサルタントへ - 独立までの軌跡と成功の秘訣

    株式会社BeMore 代表取締役・薬剤師 若林雄太 病院や薬局、ドラッグストアといった臨床現場、あるいは行政や製薬企業、CROなど薬剤師が活躍できる場は幅広い。最近では、病院や薬局の経営をコンサルティングする薬剤師も増えてきた。2024年9月に薬局の組織コンサルティング会社を立ち上げた若林雄太さんもその一人だ。 若林さんが独立することを意識し始めたのは大学3年の頃。他学部に進学した高校の友人たちが有名企業に就職したことで、若林さんの心に変化が起こった。「私が社会人になった時、友人たちは社会人としてバリバリ働いています。このままいくと、生涯収入に彼らと大きな差が出てしまうのではないかという危機感を持ち、独立を意識するようになりました」と理由を説明する。 卒業後は静岡県の中小チェーン薬局に就職。「20店舗くらいの規模の薬局だったので、頑張れば社長になれるかもしれないと思い、入社を決めました」と話す。順調に仕事をしていたが、将来的に社長になることが約束された社長の娘が入社したことで、若林さんは次の道を模索し始めた。最初に選択肢に上がったのが薬局を開業すること。だが、調べていくうちに開業資金が2000万円ほど必要だということが分かり、リスクが大きいと判断。それなら自分の身一つで活動できるコンサルタントの道を考えるようになった。当時はコロナ禍で、個人で稼ぐという考えが広まったことも若林さんの考えを後押しした。この頃、若林さんは薬局で採用担当もしていたが、採用業務のやりがいを感じながら仕事していたこともあり、薬剤師新卒採用のコンサルティング会社に転職したという。 転職後は、実績を積み重ねていたものの、若林さんの中で「独立するならこの仕事ではないと感じ始めていた」という。そんな時、顧客から「採用してもすぐ辞めてしまう。打開策はないか」という相談を受けた。そのとき若林さんが所属していた会社も組織づくりをサポートする事業を推進することを打ち出し、若林さんも組織づくりについて学んだ。次に営業で多くの企業に訪問したが、なかなか思うようにいかない時期が続いた。「薬局では体験したこともないような失敗の連続でした」と当時のことを語る。ようやく1年後に一筋の光明がした。初めての契約を交わし、若林さんがコンサルティングに入ったことで、離職率の低下、売り上げの向上などに貢献したという。「クライアントから感謝されたときは、今までにない達成感を感じました」と振り返る。そこからみるみる業績を伸ばし、2024年9月に念願の独立を果たした。「独立初期が一番つらかったという経営者の話をよく耳にしますが、振り返ると私の場合は組織コンサルタントになりたての頃が1番つらかったかもしれません。まだ若造会社員だった私が経営者と同じ目線を持つことは難しく、当時はかなり苦労しました」と胸の内を明かす。 コンサルティングの契約期間は1年。1日1日が勝負だ。現在のところ、契約更新をし、継続してコンサルティングを行っているという。「3年かけて手に入る未来を、1年で手にできるようにすることが私の存在価値だと思っています」と意気込む。 独立して仕事も軌道に乗り、ようやく同級生の背中が見え始めてきた。これからも顧客の一つひとつの言葉に真摯に耳を傾け、顧客よりも顧客のゴールに向き合い、ともに成長していきたいという若林さん。最後に「独立を志している方に限って言えば、若いときは量より質とか言わずに、誰よりも働いた方がいいと思います。また、経営のノウハウを身につけるために、経営者との距離が近い会社を選ぶことをお勧めします」と薬学生にアドバスを送った。 取材後記 若林さんは前職の時から知っており、その力強さと推進力はすごいと感じていました。薬剤師としての新たな「独立」の形に期待しております。今後の活躍が楽しみです。(薬学ステップ 寺本) 経営組織づくりセミナーを実施

  • 【スタートアップ】薬剤師の枠を超え、地域医療を多角的に展開

    株式会社ObenTEN あいくる薬局戸山大久保店 代表取締役社長・薬剤師 宮永優馬 東京都新宿区で今年2月に2店舗目の薬局を開局した宮永優馬さんが薬剤師を志したのは中学生の頃だった。「母が乳がんで抗がん剤治療を受けている姿を見たことがきっかけでした。教師を目指していた時期もありましたが、母から薬剤師という安定した職業を勧められたことも影響しました」と当時を振り返る。しかし、薬剤師の道を決めた後も宮永さんの葛藤は続き、教師になりたいと親を説得したこともあったという。最終的には、自分で決めた道だから卒業だけはしようと薬剤師の資格を取得した。 大学時代は、アルバイトに明け暮れる日々だったという。飲食店や塾、ホテルのウェイターなどさまざまなアルバイトを経験した。授業は出ていたが、テストの成績は芳しくなく、常に留年の危機と隣り合わせだった。そんな中、2年生の時に友人とのタイ旅行が大きな転機となる。バックパッカーとして1カ月間タイを旅した経験は、宮永さんの価値観を大きく変え、さまざまな挑戦をするきっかけとなった。 将来はMR(医薬品情報担当者)になって日本の医療に貢献しようと考えていたが、面接を受ける学生との価値観の違いに違和感を覚え、最終的に福岡のドラッグストアに就職した。「たまたま参加したドラッグストアのインターンで、ドラッグストアの社長の考え方に感銘を受け、ドラッグストアを選びました」と宮永さんは理由を説明する。就職先のドラッグストアでは、医薬品販売や店舗運営、採用などさまざまな業務を経験した。また、1年目にはアメリカ研修に参加し、アメリカの医療制度やドラッグストアや病院、他業種の小売店などを視察したことが、独立への意識を高めるきっかけとなった。 アメリカ研修後、宮永さんは「自分の柱を持ちたい、趣味の写真を仕事にしたい」という思いから、ドラッグストアを退職し、フリーランス薬剤師という働き方を選び、それと並行してカメラマンとしても活動を始めた。土曜日と日曜日は福岡で撮影の仕事をし、その日の夜に大分経由で愛媛に移動。愛媛の薬局で水曜日まで働いて、木曜日と金曜日は東京で撮影といった生活を送っていたという。独立後半年ほどで、埼玉の薬局経営者から声がかかり、薬局薬剤師として働きながら、振袖スタジオのカメラマンを兼務した。その後、同じ薬局経営者から独立の誘いを受け、2023年2月に埼玉県ふじみ野市に「アイ薬局」をオープンした。「ゆくゆくは薬局を開業したいと社長に話していたところ、独立の案件を紹介され、この案件を逃したら次はないと思い、開業することを決意しました」と話す。 現在は、薬局2店舗の他、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、レンタルスペースも経営している。薬局事業以外にも、訪問看護や介護事業に参入することで、地域医療に貢献したいという思いがあったという。「訪問在宅をする中で、訪問看護師と連携することで自身を成長させることができました。薬局と同じ法人で訪問看護をしたほうがシームレスな医療が提供できるのではないかと思い、開業してから半年後に訪問看護事業を立ち上げました」と宮永さんは説明する。また、レンタルスペースでは、患者の食生活改善に貢献したいという思いから始めた。「飲食店の営業許可を取っているので、将来的にはお弁当やお惣菜を患者に提供したいですね」と宮永さん。 今後は、3店舗目の薬局を出店する予定だという。宮永さんは「3店舗目が軌道に乗ったら、訪問看護ステーションの近隣に薬局を構え、訪問看護師と連携して地域医療に貢献したいと思います」と意気込む。また、将来的にはサービス付き高齢者向け住宅の運営も視野に入れているという。 学生へのメッセージとして、宮永さんは「いつもと違うことをする」ことを挙げる。「大きなチャレンジをすることは勇気がいること。例えば、帰り道を変える、違うものを注文する、といったように小さなチャレンジを積み重ねて、チャレンジすることに慣れることを学生時代から心がけていました。皆さんも普段から意識してみてください」と話してくれた。   取材後記 宮永さんの決断力と推進力には驚かされました。これまでの道のりの話の中で「決断の速さ」が印象的でした。薬局事業のみならずさまざまな事業展開をしており、今後もとても楽しみです。(薬学ステップ 寺本) あいくる薬局戸山大久保店 百味箪笥をイメージした受付台

  • 2025 Winter SEP スタッフインタビュー

    (一社)日本薬学生連盟の交換留学プログラム(Student Exchange Program)が2月4日~16日まで開催され、海外から4人の留学生が日本に来ました。実際にプログラムでスタッフを担当した永堀希歩さん(明治薬科大学薬学部3年生)と三浦吉太さん(日本薬科大学薬学部2年生)にお話を伺いました。 (執筆: 東京薬科大学薬学部2年生 庄司春菜) ―SEPの経験、計画・参加した企画について教えてください。 永堀 :SEPの経験は6回です。係は一通りやりました。私はSEO(※1)であるので、全体を見守る立ち位置にいました。参加した企画は、Welcome Party、薬局見学、浅草観光、μstream、Farewell Partyです。 三浦 :私は今回初めてスタッフとして関わり、LEO(※2)という役職につきました。私は門前仲町の観光を企画しました。この場所を選んだ理由は、観光地としては定番でない静かな場所であったからです。参加した企画は、Welcome Party、薬局見学、μstream、地域連携ワークショップ、Farewell Partyです。 ―今回のSEPにおいて、今までよりも良かった部分はありましたか? 永堀 :たくさんありました。スタッフ間での雰囲気が良くなったなと感じました。以前よりも留学生と積極的に話す人が増えたと思います。事前にZoomを使って日本人同士で会い、英語を話す機会を設けたことがコミュニケーション力の向上に繋がり、良かったです。 ―今回のSEPに参加する前はどのようなことを感じていましたか? 三浦 :初めてのスタッフかつLEOというまとめる立場にいたので、とても緊張していました。自分の中で、薬学生の集まりは勉学の向上を図るというイメージがありましたが、互いに仲良くなり、その中に学びに繋がるものがあると気づきました。 ―ハードルは高かったですか? 永堀・三浦 :最初、ハードルは高く感じました。終えた時は、スタッフとしてもっと人に頼ったり、聞いたりしても良かったかなと思いました。気を抜きすぎず、リラックスした気持ちで参加して仲良くできればいいなと思いました。 ―どのような成長ができることを期待して、活動をしましたか? 永堀・三浦 :英語を使う機会なので、自分の英語力の向上を期待しました。また、大学においても企画に携わる機会はありますが、他大学・大学病院・薬局などさまざまな団体が関わっていることで、社会に出ることを学ぶことができたと思いました。自分にとって成長できる機会であったと思います。 ―海外、日本人参加者も楽しんでもらえたと感じる場面はありましたか? 今後も続けていきたいことはありましたか? 反省点なども教えてください。 永堀 :Welcome Partyの前日に英語のウォーミングアップをしたことで、当日は緊張せずに話すことができて良かったなと思います。日本は交通費が高いので、留学生に渡すパンフレットに記載したり、インスタグラムにパンフレットを投稿したりして留学生が安心できるように工夫しました。英語の挨拶や表現などをまとめ、日本人参加者が見られるようにしました。反省点ですが、参加費の中に何が含まれているのか、持ち物、提出物の期限など大事なことはこまめに伝えることが大切だと思いました。何が起こるのかを事前に想定して対策することが大事だなと思います。 三浦 :Welcome Partyの前日に英語の練習を兼ねて開催されたミーティングはとても助かりました。そのおかげでWelcome Partyで英語で会話できる量が増えました。他の日本人参加者も会話が途切れず、盛り上がっていると感じました。 ―自分が想定していたよりも大変だったことはありましたか? 三浦 :集合時間・場所の指定、留学生の食べ物を考慮したところです。インドネシアから来た留学生は、宗教上豚肉が食べられません。私は「ラーメン屋であれば大丈夫だろう」と思い、豚骨ラーメン屋を選んでしまいました。このことを受けて、自分が異国の地へ行った気分で、あらゆる可能性を想定して考えなければならないと思いました。 ―成長できたと感じたのは、どのようなところですか? 永堀・三浦 :参加者の時とは違う成長を得られました。参加者の時は留学生と一緒に楽しみ、国の文化を知りました。スタッフとしてはさまざまな人と関わるという点で、視野を広くすることができたのではないかと思います。 ―お2人が考える“SEPの魅力”とは? 永堀 :薬学生に対してインターンシップを行っているというのが1番の魅力だと感じています。日本薬学生連盟がIPSFに加盟しているため、毎回いろいろな国の薬学生を招いて開催できているところです。それにスタッフとして携わることができているのが貴重な機会だなと思います。留学生と、互いの国の薬学教育について会話することで視野が広がりました。 三浦 :留学生だけでなく、日本人スタッフにもメリットがあると思います。今回SEPを通して、薬局での体験ができました。調剤室に入り、いろいろなものを見ることができてとても良い経験になりました。門前仲町の観光の企画を担当して、留学生だけでなく、日本人スタッフにも「すごく面白いね」と言ってもらえたのが、うれしかったです。日本人にも知らない魅力が発見できたというのが良かったと思いました。留学生とは国が違っても、同じ薬学生であるということで、話に共感することができました。 永堀さん、三浦さん、ありがとうございました! ※1 SEO: Student Exchange Officerの略で、SEP全体をまとめるリーダー。 ※2 LEO: Local Exchange Officerの略で、SEPの企画をまとめるリーダー。 (MIL vol.103 2025 Spring掲載)

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