【くすりの適正使用協議会】「信頼できる情報を届けるためには」医薬品情報の現状と未来
- toso132
- 6月16日
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更新日:7月8日

2025年6月10日、一般社団法人くすりの適正使用協議会は、2025年協議会講演会を開催し、「くすりのしおり」の現状、協議会活動、そして最新の安全対策の動向について報告した。
協議会活動の進捗と「ミルシルプロジェクト」の成果
講演の冒頭で、同協議会理事長の俵木登美子氏より、この1年間の協議会の主要な活動と「くすりのしおり」への患者向け資材の連携状況、今後の展望について報告があった。同協議会は現在、3カ年の中期活動計画の最終年度を迎え、「信頼できる情報を届ける基盤の強化と情報の充実」を目標に掲げている。特に、これまでの活動で構築された「ミルシルプロジェクト」による信頼性の高い基盤を活用し、情報の質と量の充実を図っている。
各委員会の活動報告では、多岐にわたる取り組みが紹介された。薬剤疫学委員会は、明治薬科大学の赤沢学氏の指導の下、国立成育医療研究センターとの共同研究やMDVからのデータ提供による研究を進めている。特に、妊娠中の医薬品使用に関する研究成果は国際的な英文文献誌『Drug Safety』に掲載され、「妊娠中でも安心して必要な情報が伝わる社会へ大きな一歩を踏み出せた」と報告された。くすり教育・啓発委員会では、学校でのくすり教育支援として、出前研修や小学生向けのショート動画の活用が進んでいる。また、20年ぶりに小学生向けモデルスライドが全面改訂され、クイズ形式を取り入れるなど、子供たちの興味を引く工夫が凝らされた。さらに、一般への啓発活動として、患者が服薬後の状況を薬剤師に相談することの重要性を伝えるデジタルサイネージコンテンツや、介護現場での「介護と服薬あるあるマンガ」が作成・公開されている。
くすりのしおりコンコーダンス委員会は、「くすりのしおり」の機能改善として、「やさしい日本語」への変換を推進し、在日外国人の方々にも理解しやすい情報提供を目指している。英語版の作成も70%を超え、さらなる充実が図られている。また、薬剤師の服薬指導におけるフォローアップの実態調査を行い、「くすりのしおり」の活用がフォローアップの質の向上につながることが示唆された。先進医療製品適正使用推進委員会は、バイオ医薬品の適正使用啓発活動として、各種学会でのブース出展や啓発資材の配布を行っている。がんや自己免疫疾患に関する漫画シリーズの改訂や、薬学生向けの講義用教材の2025年版への更新も行われた。特に、患者向けのバイオ医薬品啓発動画が6月11日に公開され、自己注射など複雑な使用方法の理解促進に貢献することが期待される。
「くすりのしおり」の現状と未来の展望
「くすりのしおり」は月間約500万PV(ページビュー)を記録し、その多くは患者や家族が閲覧しているとのことである。「ミルシルプロジェクト」によって、「くすりのしおり」に連携している患者向け資材は着実に増加しており、現在、全掲載しおりの約4分の1に何らかの患者向け資材が紐付けられている。資材の内容は医薬品情報が86%と圧倒的に多く、その他に疾患情報や高額療養費などの関連情報も提供されている。資材の形式はPDFが最も多く、電子カルテへの連携を考慮した形式が推奨されており、ホームページコンテンツや、目薬、吸入剤、自己注射薬などの「使い方」を説明する動画も増え、患者が自宅で確認する際に非常に役立っていると報告された。
特に、昨年6月の調剤報酬改定で加算対象となったRMP資材については、現在84点が「ミルシルサイト」に掲載されており、今後さらに多くのRMP資材を掲載することで、患者・薬剤師双方にとって利便性の高いサイトとなることが期待されている。
薬剤師からは、「吸入剤の指導の際に使い方を印刷して使っている」「メーカーの適切な資材をサイトからプリントアウトできるので便利」といった活用例が紹介された。また、患者へのアンケートでは、20%の患者が患者向け資材のタブをクリックし、そのうち84%が情報が参考になったと回答しており、患者が本当に求めている情報が提供できていることが示唆された。
最後に、今後の展望として、「ミルシルサイトのプラットフォーム」が医療機関や薬局、そして患者にとっての医薬品情報のハブとなることを目指していると述べられた。具体的には、レセコンや電子カルテ、介護システムへのデータ連携をさらに強化し、各社のホームページに個別に情報を取りに行く手間をなくすこと、そして、紙の手帳から電子的な手帳への移行を促進し、オンライン服薬指導など多様な形式での情報提供を可能にすることを目指している。
俵木氏は、「患者に信頼できる情報を届けるために、『くすりのしおり』の充実が重要」と強調し、さらなる情報掲載への協力を呼びかけた。







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