訪問介護の現場で深刻化する「薬の困り事」—「飲み忘れ」「服薬拒否」が二大課題に、薬剤師との連携強化が急務
- toso132
- 10月28日
- 読了時間: 3分
一般社団法人くすりの適正使用協議会が訪問介護員402人を対象に実施したアンケート調査により、高齢者の在宅介護現場における服薬の課題が浮き彫りとなった。回答者の53%が利用者の薬に関する困り事を抱えており、具体的な困りごとのトップは「飲み忘れ」、次いで「服薬拒否」であった。地域包括ケアシステムが推進される現代において、在宅での薬の適正使用を妨げる、看過できない深刻な問題である。
経験年数で異なる「困りごと」の傾向
調査によると、日常業務で利用者の薬について困り事を抱える訪問介護員は半数を超え、「飲み忘れ」「服薬拒否」に続き、「薬の量・数が多い」といった課題が上位を占めた。
特に注目すべきは、訪問介護員の経験年数によって困り事の傾向が異なる点である。経験10年以上のベテラン層では、「飲み忘れ」に気づく割合が69.3%と高く、10年未満の層(57.6%)を上回った。これは、ベテラン介護員が利用者の生活パターンや変化から「飲み忘れ」の兆候を察知する能力が高いことを示唆する。一方、「服薬拒否」は10年未満の層が56.6%と、10年以上の層(39.5%)を大きく上回っており、経験の浅い層が利用者の直接的な「拒否」に直面しやすい実態が浮き彫りとなった。


薬剤師への相談は2割に留まり、解消されない連携不足
薬について困った際の相談相手は、事業所(上司、ケアマネジャー等)や看護師が中心であり、薬の専門家である薬剤師に聞く人は23.5%に留まっている。
さらに、訪問介護員の62.4%が「日常業務で薬剤師とコミュニケーションがとれていない」と感じており、その最大の理由が「コミュニケーションをとる機会がない」(79.3%)であった。この連携不足を解消するためには、「コミュニケーションをとる機会を定期的に設定する」ことが最も多く求められており、多職種連携を円滑にするための恒常的な仕組みづくりが急務である。



「介護と服薬あるあるマンガ」が現場の気づきを促進

同協議会は、この課題解決のため、2020年より「介護と服薬あるあるマンガ」をウェブサイトで公開し、現在20本に達している。調査では16.9%の介護員がこのマンガを認知し、40.3%が現場の現状に合致していると回答した。「飲み忘れ」「服薬拒否」といった具体的な問題提起と解説をセットにしたマンガは、介護職が薬に関して「変だな」と思えるアンテナを張るための知識習得ツールとして、一定の役割を果たすと期待されている。現在、マンガには順次ミニクイズも作成されており、知識の定着に活用できる。
専門家も連携強化に期待
本調査結果を受け、マンガの監修者からも連携強化への強い期待が寄せられている。
子供プラス未来の玉井典子氏(薬剤師)は、療養生活を送る高齢者を支えるため、多くの専門職が垣根を超えて連携していく必要性を強調。「忙しい介護職が気軽に薬についての疑問や困ったことなどの解決するツールの一つとして『介護と服薬あるあるマンガ』は有用である」とし、これを通して薬剤師との「つながりのはじまり」になることを願っている。
生活介護サービス株式会社代表取締役の山岸大輔氏(介護福祉士)は、介護士が現場で直面する飲み忘れや服薬拒否といった課題は少なくないとし、「なじみやすい4コマ漫画を通して薬剤師の皆さまと連携を深め、服薬支援の質を高める取り組みを通じて、利用者の安全、より良い暮らしの実現を目指したい」と述べた。
このアンケート結果は、高齢者の生活を支える介護職と薬の専門家である薬剤師との連携強化こそが、在宅介護における医薬品の適正使用を推進する鍵であることを明確に示唆する。同協議会は「介護と服薬あるあるマンガ」のさらなる啓発を通じて、両者のコミュニケーションと連携を促進し、薬の適正使用に貢献していく方針である。






コメント