top of page

【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】薬局・ドラッグストア勤務の栄養士・管理栄養士の専門性の認知を目指して

更新日:3 日前

札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子


以前にも本誌に調査内容を投稿しましたが、地域の方々にとって薬局・ドラッグストア勤務する栄養士・管理栄養士の存在や、職能への理解が非常に低い状況です。また企業間と店舗によっても、その差は大きいと感じています。

管理栄養士の配置と専門性による働きに関する制度の問題、薬剤師による理解と協働の推進など多くの課題があります。それぞれの企業が独立しているため、薬局の管理栄養士は接客、商品の理解と販売に向けた教育は共通するものの、管理栄養士が望む専門的職能である栄養相談、在宅訪問栄養支援、商品の開発などについての教育や配置には差が見られます。

今後は、地域の保健サービスによる予防医療、重症化予防を担う薬局・ドラッグストア勤務の栄養士・管理栄養士の専門性の認知と貢献が望まれます。今回は、そのための教育と実践的な活動を展開している大阪市内にあるマルゼン薬局の管理栄養士、飯尾真実さんに報告いただきました。


事例紹介

管理栄養士が切り開く地域貢献

マルゼン薬局 管理栄養士  

飯尾真実


マルゼン薬局は調剤だけでなく健康、食事、介護のことを気軽に相談できる場所として、大阪市内に地域密着型の保険薬局を10店舗展開しています。そのうち5店舗は健康サポート薬局として認定されており国内平均の4%を上回る実績です。

また「認定栄養ケア・ステーション」を2軒取得など、訪問介護事業所との業務提携による強みも生かし、薬局で働く管理栄養士として薬局内での栄養相談業務はもちろんのこと、訪問栄養指導や地域イベント・栄養講座など、積極的に地域に繰り出しており、これらの取り組みが、地域の方々にとって「住み慣れた場所でよりよい暮らしをする」ための一助となることを願っています。


さらに、こうした活動を通じて、医療機関だけでなく行政や介護事業者など多職種との連携が不可欠であるとも実感しています。薬局には、調剤報酬において薬剤師の地域での活動を評価する「地域支援体制加算」という制度がありますが、弊社の薬局において「地域ケア会議」への薬剤師の参加が定着したのは、管理栄養士による地域活動が先行し、地域との信頼関係を築いていたからと言っても過言ではありません。地域ケア会議において、管理栄養士は、介護予防や疾病管理の視点から、利用者の生活状況や食習慣を考慮した、栄養に関する専門的なアドバイスを唯一提供できる存在です。


例1)腰椎圧迫骨折により社会的孤立が見られ、コンビニ惣菜中心の食事で塩分過多やエネルギー不足が懸念されていた方に対しては、宅配弁当の利用や、定期的な体重測定で栄養状態を把握することを提案しました。

例2)低栄養で体重減少が見られる方に対しては、1カ月で1kg増量を目標に、1日200~300kcalのエネルギーアップのための工夫として、油脂類の追加や栄養補助食品の活用を具体的に提案しました。

例3)地域イベントでは、フレイル予防の講座で「ランチョンマットシート」を使い、主食・主菜・副菜・乳製品・果物を視覚的に理解できる工夫を行いました。買い物体験も取り入れ、参加者が自分の食事バランスを確認しやすい形式とし、好評を得ています。

このような地域活動が評価され、管理栄養士が地域包括支援センターから講師の依頼を受けるようになり、現在ではフレイル、認知症予防、減塩、災害時の栄養といた多様なテーマで講演を行っています。中には「銭湯」で開催された講座もあり、地域に根ざした取り組みにも進んで参加していますし、地域医療機関の糖尿病外来の栄養指導を担ったり、透析施設の栄養指導も獲得し実践しています。


現在、地域には常駐の管理栄養士が少なく、栄養指導は訪問看護師の役割とされがちですが、管理栄養士は家庭の食事内容を踏まえた指導や、薬剤師と同等の血液データ分析も可能な専門職であると考えています。その役割やスキルが十分に知られていないのは残念であり、今後さらに認知を広げることが求められます。4年間の専門教育を受けた管理栄養士として、地域社会での役割拡大や、介護人材不足への対応が期待されており、私たちは今後も結果を出し続けることで、国の制度や考え方にも良い影響を与えられるような存在を目指していきます。

Comments


Commenting on this post isn't available anymore. Contact the site owner for more info.
bottom of page