【FAPA2024】第30回アジア薬剤師会連合学術大会参加レポート
- toso132
- 6月9日
- 読了時間: 6分
更新日:7月8日
串田一樹(昭和薬科大学)

FAPA60周年を迎える
FAPA2024 in SEOUL(第30回アジア薬剤師会連合学術大会:The30th Congress of
the Federation of Asian PharmaceuticalAssociations 2024)は、2024年10月29日から11月2日までの5日間、ソウル市の江南(カンナム)地区にあるCOEX(国際会議場/展示会場)で開催されました。今大会のメインテーマは、「The Next Generation of
Pharmacists in Asia」です。今回のFAPAの大会は、60周年を迎えており、新たな始まりという特別な意味を共有しています。デジタルヘルス、人工知能、革新的な医薬品開発の分野では、今後10年間前例のないペースで変化すると予想されており、イノベーションがもたらす薬剤師・薬局の未来について持続した活動を取り上げています。
FAPA2024 in SEOUL の大会長は、大韓薬剤師会の会長であるKwang Hoon CHOI氏が務められました。FAPAの設立時のメンバーである大韓薬剤師会は、1968年、1982年、2002年に続き、今回で4回目の開催になります。Kwang Hoon CHOI氏が挨拶の中で、この大会がアジアの薬剤師の未来を構想する祭典となるよう全力を尽くしてまいりますと、強いメッセージを述べられました。また、主催国の大韓薬剤師会の会長としても、韓国の先進的な薬局制度の確立に向けて政府や国会と協議を続けていくと決意を示されました。(写真1)
参加者は主催国の韓国から329人、台湾266人、タイ247人、フィリッピン243人、インドネシア121人、その次に日本から49人の参加でした。事前の参加登録は20カ国から合計1367人の参加があり、発表演題数は口頭発表189演題、ポスター発表473演題でした。日程上、同じ時期に日本薬局学会、日本医療薬学会が重なったためか、日本からの参加者が予想外に少なかったように感じました。参加者の中には、いつ、日本で開催するのか楽しみにしているという方が多かったようです。
アジアの次世代薬剤師をテーマとする今回のFAPA2024 in SEOULは、従来の役割を超えた、未来の薬剤師の新たなビジョンを議論する機会となっています。このビジョンには、薬剤師の役割を総合的なアプローチに拡大し、対話を重視した指導を通じて、ストレスなどの病気の根本的な原因にも対処することが含まれています。この急速に変化する環境に備えるため、FAPA2024 inSEOULは、アジア諸国の薬剤師および将来の薬剤師が持つべき能力やスキルについて議論し、最新の研究や事例を共有する重要な機会となっています。
Next Generation Pharmacists
アジアの次世代の薬剤師・薬局について、今大会では薬局の将来とビジョンについて基調講演の他、薬局を取り巻く社会の革新、薬剤師のプロフェッショナリズムの強化、薬局の進化について議論されました。わが国も同じですが、薬剤師は単に調剤するだけでなく、医療が求められている患者中心の健康管理者として、薬剤師の役割の拡大が求められています。この点は、2015年に公表された「患者のための薬局ビジョン」に示された中で、全ての薬剤師・薬局がかかりつけ機能を発揮して健康サポート機能の拡大につながるように、未病・予防への薬剤師の役割が期待されています。薬剤師・薬局はセルフメディケーション時代を迎え、積極的な支援が求められています。
アジアも高齢社会を迎える中、FAPA2024in SEOULを通して薬剤師がそれぞれの国の社会状況に適応し、専門知識を活用して医療システムを支える一員として一緒に考える機会になっています。今後、薬剤師・薬局がどのように行動するかが問われているのです。10月31日の歓迎会では、韓国の伝統的な筆文字芸術であるソイエによって、メインテーマである「Next Generation Pharmacists」の書道パフォーマンスが披露されました。ソイエは紀元前14世紀に中国で生まれ、西暦200年代後半に韓国に伝わったそうです。漢字は絵文字であるため、その構造要素は常に芸術的であると考
えられ、このジャンルの著名なイ・ジウン氏が行いました。ダイナミックなパフォーマン
スで、次世代への強いメッセージを伝統的な書道パフォーマンスで表現した歓迎会でした。(写真2)

FAPA2024を支える薬学生ボランティア
今回、大会の運営にたくさんの薬学生がボランティアとして協力されていました。その一人であるLee pu-roomさんにインタビューをしました。彼女はDongdukWomen's Universityの3年生です。今回、デジタルポスターの担当をされていて、私たちのポスター発表のお手伝いをしてくれた方で、いろいろ教えていただきました。デジタルポスターは、全てのポスター演題がパネル上で見られるのが特徴で、場所を取らずたくさんのポスター発表が可能です。ただ、一人の方がデジタルポスターを見ている間は次の方は見られないので待つことになります。従来のポスター発表を思い出しながら、また時代が変わってきたと感じる時でもありました。(写真3)
FAPA2024 in SEOULの大会運営には、韓国の薬学生がボランティアとして活躍していました。韓国には37の薬科大学があり、今回、総勢70人くらいの学生がボランティアとして参加していました。韓国には、KNAPS(Korean National Association for Pharmaceutical Students)という薬学生の組織があり、そこからボランティアの応募があったそうです。FAPAは、アジアのいろいろな国から参加されるため、ボランティア採用にあたっては審査が行われます。1次審査では、どうしてこのボランティアを志願したのか、外国語の会話能力や、国際行事に参加した経験があるかなどを聞かれるそうです。1次審査は書類で行われ、それに合格した学生は2次面接を受けます。Lee pu-roomさんは、面接応募申請書に日本語を話すことが得意と書いたので、面接では5分くらい日本語で自己紹介をしたとのことです。大会中は、受付、会場案内、デジタルポスターの操作など、私たちが戸惑っていると、スーッと近くに来てサポートしてくれます。ボランティアの学生さんの細やかな対応には感謝しています。お世話になりました。(写真4)


参加して感じたこと
アジアの各国とも高齢社会が押し寄せているため、薬剤師の役割及び薬局の機能については共通した課題があると思いました。制度設計も含めて社会構造がどのように変わっていくのか、その中で、医療分野はデジタルヘルスの推進、人工知能の導入、コミュニティケア、医療安全、ジェネリック医薬品などに関連する話題が共通していたと感じます。特に、ヘルスケアという概念が共通して語られていたことが印象深かったです。
主催国の韓国は、2025年から超高齢社会に突入するため、今年は「介護統合法」という医療サービスと介護サービスを統合して提供する法律が制定され、日本の地域包括ケアシステムと同じような医療・介護システムの体制が整備されているところです。医師、看護師、薬剤師、社会福祉士、介護職などの多職種が協力して高齢者を包括的にケアする取り組みが始まっています。韓国は日本と同じような状況ですので、今後、日韓の薬剤師交流も活発になるのではないかと考えています。







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