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  • クオール薬局、全国117自治体で「クーリングシェルター」として開放へ

    クーリングシェルターマーク クオールホールディングス株式会社の中核子会社であるクオール株式会社は、全国117の自治体と協定を締結し、全国310店舗のクオール薬局を「クーリングシェルター」として開放する。これは、深刻化する夏の気温上昇による熱中症リスクの軽減を目指す取り組みの一環である。 近年、夏の猛暑は深刻な社会問題となっており、特に高齢者や子どもにとって熱中症は命に関わるリスクが高い。総務省消防庁のデータによると、2024年の熱中症による救急搬送者は過去最多の97,578人に上っており、涼をとれる場所の確保が喫緊の課題となっている。 クオール薬局がクーリングシェルターとして指定されたことで、熱中症特別警戒アラートが発表された際には、地域住民は薬局を緊急避難場所として活用できる。クーリングシェルターとは、環境省が推奨する取り組みであり、熱中症特別警戒アラート発表時に誰でも無料で涼しく過ごせるよう自治体が指定した避難・休憩場所のことである。 この取り組みでは、以下のサービスが提供される。 冷房の効いた薬局の待合室の提供 ウォーターサーバーによる飲料水の無償提供(一部店舗で実施) 経口補水液や塩飴など、熱中症対策商品の取り揃え クオールは今後も対象店舗を拡大し、地域に密着したヘルスケアの実現に貢献していく。 クオール薬局のクーリングシェルター設置市町村については、 こちら

  • 最先端研究施設でサイエンスを体験!3,700人が来場した「湘南アイパークフェスタ2025」

    2025年5月24日、神奈川県藤沢市の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)が一般公開され、「湘南アイパークフェスタ2025 -最先端研究施設で学ぶ・楽しむ・やってみる-」が盛況のうちに開催された。アイパークインスティチュート株式会社が主催する本イベントは今年で3回目を迎え、日本最大級のライフサイエンス研究拠点である湘南アイパークの魅力を広く一般に伝えることを目的としている。今年は過去最多となる3,700人が来場し、最先端のサイエンスに触れる貴重な一日となった。 新企画「学生研究発表会」に未来の研究者たちが集結 今回初めて開催された「湘南アイパーク学生研究発表会~集まれ未来の研究者!」では、高校生・大学生・大学院生から公募されたライフサイエンス分野の研究発表17組が登壇した。湘南アイパークに入居する14社・団体から22名の研究者がアドバイザーとして参加し、学生たちの研究内容や具体的な進め方について活発な質疑応答が行われた。参加した研究者からは「学会のような雰囲気で発表者のレベルが高く、刺激を受けた」という声が聞かれた。来場者からも「高校生の発表に驚きがあった」「学生たちのレベルの高い研究発表が聞けて、とても有意義だった」と好評を博した。 現役研究者が明かす「薬のトリビア」と21の体験ブース 「研究者トークショー」では、湘南アイパークの現役研究者が新薬の開発費用や期間などをクイズ形式で紹介・解説し、来場者からは「薬はいつからあるの?」「薬を飲みすぎるとどうなるの?」といった質問が次々と寄せられた。「薬を作るのがこんなに大変だと知らなかったので、勉強になった」といった感想も寄せられ、薬学研究への理解を深める機会となった。 また、毎年人気の入居企業・団体による「サイエンス体験ブース」は、約400メートルにわたる「ブロードウェイ」に21ものブースが所狭しと並んだ。白衣をまとってスポイトを握る小学生や、真剣な表情で研究者に質問する大人の姿が多く見られた。来場者からは「薬の研究職を目指している小学生の息子が、実際の研究員の方のお話が聞けて、とても満足していた」「各企業が魅力的なアイデアを出し合って準備してくれたことに感動した」といった声が寄せられ、出展企業からも「子供たちのきらきらした眼差しが印象的だった」といった感想が聞かれた。 イベント全体を通して、来場者からは「子供も研究に興味を持ったようで、将来につながる貴重な学びになった」「子供に体験学習させられるだけでなく親も専門家に直接質問することができ、有意義だった」といった声が多数寄せられた。アイパークインスティチュートは今後も、地域住民をはじめ幅広い層の人々が最先端のサイエンスに触れ、その魅力を身近に感じられる機会を創出していくとしている。 「湘南アイパークフェスタ2025」の動画はこちら: https://youtu.be/uzD-nMDiZ1o?si=3jfCuxzoDe84ZfQF

  • 後悔しない就職活動をしよう

    将来、どんな薬剤師になりたいですか?病院で患者さんのために働きたい、新薬開発に貢献したい、それとも新しい医療サービスを創り出したい。薬剤師の活躍の場は大きく広がっています。新卒として就職できるのは人生で一度きりです。新卒という大切な時期を有効に使い、自分にぴったりのキャリアを見つけよう。 答えてくれた人 株式会社NSS 取締役社長 寺本卓矢さん   ―ここ数年の就職動向の傾向についてお教えください。 6年制薬学教育が臨床を意識したカリキュラムが中心になったことで、病院、薬局、ドラッグストアを選ぶ人が大半を占めています。特にここ10年で伸びているのがドラッグストアです。ドラッグストアの人気が高まった背景には、店舗数の増加に加え、OTC医薬品だけでなく保険調剤も行うという認知の変化、キャリアパスの多様化、大手ドラッグストアの規模や福利厚生の充実などが挙げられます。学生の中には大手企業は安定しているというイメージも持っている人もいます。大手企業が多いドラッグストアが選ばれるのもそういったことが関係しているかもしれせん。 一方、病院は減少傾向にあります。専門性を高めたいと思っている方にとっては最適な職場なのですが、奨学金の返済を意識している人は、給与面のところで選択肢から外す傾向が多いようです。最近では病院が病院薬剤師の不足を問題視し、資金貸与制度を導入している病院もあります。大学で勉強している間は病院がお金を貸与し、借りた学生は薬剤師の免許を取った後、一定期間その病院で働けば貸付金の返済が免除されるという制度です。また、大学も病院薬剤師を確保するために、地域の病院で勤務することを条件に入学する「地域枠」を設けています。これは修学期間一定の金額を貸与し、不足する地域の病院に行って一定期間勤務することに返還が免除されるというものです。今後の動向に注目したいところです。 そのほか目立ったところでは製薬企業やCROがあります。新薬メーカーなら、医薬品開発あるいは、医療者と医薬品についてディスカッションして医薬品の適正使用を推進する、ヘルスケア企業なら市場調査を通じて消費者のニーズを把握して新しい商品を開発する、CROなら治験を通じて医薬品の開発を支援するといった仕事に魅力を感じているようです。そのほか、狭き門ですが、厚生労働省や地方の公務員などもあります。ドラマや映画の影響で麻薬取締官や科学捜査研究所を目指す人もいます。 ごく少数ではありますが、従来の病院、薬局、ドラッグストア以外の職種を選択する学生も出てきています。SNSの発達により情報収集が容易になったことで、従来の王道ルート以外の選択肢を知る機会が増えたことが要因として考えられます。具体的には、電子カルテや医療系アプリの開発、化粧品開発、医療系コンサルタント、メディア関係、一般企業のコンサルタントなど、薬剤師免許を使わない就職を選ぶケースも見られます。薬学部が多く存在する都市部は薬剤師が充足傾向にありますので、今後このような傾向は増加する可能性があります。   ―就職活動はいつから始めたらいいでしょうか。 5年生の10から11月にかけて面接が始まり、薬局やドラッグストアではこの時期に内々定を出しています。そして内定受諾書を提出するのが6年の夏。早い人は5年生の1月頃には内々定をもらっているケースもあります。そう考えると、遅くとも4年生のうちからやった方がいいと思いますね。4年生の冬に薬学共用試験、4年生の終わりから5年生にかけて実務実習がありますから、余裕をもって取り組むのがいいでしょう。SNSで企業情報などを発信しているところもありますので、まずはそこからはじめるとよいでしょう。 インターンシップにはできる限り参加することをお勧めします。インターンシップは企業の人と多く話せるチャンスだからです。5年生は病院実習と薬局実習がありますが、薬局実習は配属先が偶然に左右されるため、大手、中小、地場チェーンなど、複数のインターンシップに参加することで、それぞれの特徴を理解し、自分に合った職場を見つけることが重要です。インターンシップは4年生から実施している企業もあり、5年生ではほぼ全ての企業が実施しています。募集情報はインターネットやSNS、大学のキャリア支援センターなどで公開されています。 OB・OG訪問は一般職種ではよく行われますが、薬学部では病院、ドラッグストア、薬局への就職ではあまり一般的ではありません。そのため、自主的に情報収集やインターンシップへの参加を行うことが重要になります。企業(製薬会社など)ではOB・OG訪問が盛んに行われています。 企業説明会は年間を通して開催されており、極端に言えば1年生からでも参加できますが、実際には3年生から参加する人が多く、メーンは5年生、一部4年生、ごく少数の3年生という構成です。合同企業説明会は1日で複数の企業の話を聞けることが大きなメリットです。 就職活動スケジュール一例   ―就職活動における自己分析の位置づけは。 自己分析は就職活動において非常に重要です。例えば、好きなこと、得意なこと、やりたいこと、この違いを整理すると、やりたいことが明確になります。自己分析を行うことで、自分に合った職場を選び、入社後のミスマッチを防ぐことができます。自己分析では、自分が将来どうなりたいのか、好きなことと得意なことのバランス、自分の価値観などを明確にします。自己分析を手伝ってくれる企業や大学のキャリア支援センターなども活用するといいでしょう。 自己分析とキャリアプランは密接につながっています。キャリアプランを立てる際は、将来のことばかりを見据えるのではなく、自分が何を大切にしたいのかという軸を明確にすることが重要です。自己分析と並行して業界研究を進めることで、自分が目指すべき方向性が見えてくるかもしれません。自己分析せずに就職すると、入社後の離職につながる可能性が高くなります。新卒薬剤師と他学部の大卒の3年以内の離職率はほぼ同じですが、薬剤師の場合は就職が容易な分、ミスマッチによる離職が多いと考えられます。私のところにも毎年、入社してから半年くらいで相談に来る人がいます。自分で選べる立場だからこそ自己分析は、真剣に取り組んでほしいと思います。 ―転職を視野に入れた就職活動はありでしょうか。 結論あまりおススメはできないです。さまざまな事情で転職してしまうのは仕方ないと思いますし、キャリアアップとしての転職は良いケースもあります。 しかし転職は以前に比べて難易度が上がっており、特に異業種への転職は非常に困難になっています。新卒で入社する企業でどれだけの経験とスキルを積めるかが、その後のキャリアに大きく影響します。例えばドラッグストアでOTC医薬品の販売のみを行ってきた場合、保険調剤の経験がないとみなされるため、転職が難しくなるケースがあります。そのため、目先の給与や福利厚生だけでなく、将来のキャリアを見据えた就職先選びが重要です。 長く勤められる、自身を成長させてくれる企業選びが就職活動の本質かもしれません。 ―就職活動がうまくいかない時の対処法は?  就職活動がうまくいかない時は、一人で抱え込まずに誰かに相談することが重要です。大学の研究室の先生、先輩、キャリア支援センター、就職情報サイト、就職支援サービスなど、相談できる窓口はたくさんあります。特に大学のキャリア支援センターは身近な相談先として積極的に活用するといいでしょう。 また、身近にさまざまな企業の採用担当もいるので、相談してみるのも良いかもしれません。身近な人にほど相談しにくいというケースもありますので、うまく周りを活用できるとよりスムーズに就職活動を進めることができると思います。直接弊社HPに問い合わせて相談してもらっても構いません(笑)。 ―薬学生にメッセージをお願いします。 新卒カードは一生に一度しか使えない貴重な機会です。就職活動には十分な時間をかけ、慎重に企業を選ぶことが重要です。安易に就職先を選んでしまうと、後悔する可能性があります。 実務実習や国家試験の勉強で忙しい時期ではありますが、低学年のうちからさまざまな業界を知るために積極的に行動することをお勧めします。情報収集だけでなく、実際に企業や施設を訪問し、職場環境を見学することも非常に重要です。社会人になってから他の企業や施設を見学する機会はほとんどないからです。 自己分析をしっかりと行い、自分に合った就職先を見つけてください。 寺本卓矢(てらもと・たくや)株式会社NSS 取締役社長 2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う 株式会社NSS 取締役社長 2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う。

  • 【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】薬局・ドラッグストアで働く管理栄養士の教育の必要性と教育効果について

    札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子 薬局やドラッグストア(DRGs)で働く管理栄養士のリカレント教育の必要性 薬局やDRGsで働く管理栄養士が、地域の健康ニーズを把握し、健康意識向上や生活習慣病予防、高齢者の健康サポート、栄養管理のデジタル化支援の展開に積極的に進むと医療サービスの需要が減少し、医療費削減に大きく貢献できる可能性がある。急速な高齢化と人口減少により、社会保障費の増加や労働力不足、医療・介護の負担増大といった顕在化している課題解決に尽くす使命があると考える。しかし、薬局やDRGsの管理栄養士の活動がその効果を発揮するには、現在なお多くの企業や店舗が課題解決のために模索している。その内容は、1.専門性の役割の認知度が低く、本来の栄養業務の役割が果たせていない。2.専門知識を更新する教育、研修が提供されていない。3.専門職としての待遇が報酬を含めて不十分で離職率が高い。4.栄養指導が健康保険適用範囲の制度外である。5.地域社会の健康増進への積極的な関与が不足している。などが考えられる。 薬局やDRGsの管理栄養士の専門性を有効にすることを困難にしている原因追究の研究調査を進め、栄養管理の専門家として医療現場や予防医療について地域に密着し、高齢者の健康予防と在宅療養の栄養サポートを提供する存在として活動することを推し進めなければならない。これまで本誌の誌面で、地域での貢献、薬剤師との連携、がんの栄養支援に活躍している薬局管理栄養士の好事例を紹介してきた。 今後はさらに、日本では確立されていない薬局・DRGsの管理栄養士独自の具体的な教育支援体制と活動施策の推進について構造化する必要があると考える。 薬局やDRGsの管理栄養士のリカレント教育の実施報告 管理栄養士リカレント教育として、大妻女子大学において第8回夏期研修会を2024年8月15(木)~8月18日(月)の連続5日間、ハイブリッド形式で開催した。Aコース:生活環 境を巡る予防・重症化予防の支援を考える、Bコース:地域資源・多職種協働・住宅訪問栄養食事指導を考える―の2コースを準備し、Aコースは、薬局やDRGsの管理栄養士、歯科の管理栄養士教育として構成した。講義内容は、DRGsの管理栄養士が顧客から受ける相談内容を収集、分析して構成した。フレイル予防、低栄養対策、摂食嚥下障害、認知症、生活習慣病、アレルギー疾患、がん栄養、妊産婦と乳幼児に加え、制度の理解、地域の診断と行政との連携について講義を行った。ICTツールを活用した栄養アセスメントも実施した。 本研修は、栄養ケアプロセスの理解の実習と実践的な調理実習によって、知識や技術を習得するための研修ではなく、これからさらにどう学ぶか、そして研究後に即戦力として地域に活躍、貢献できることを目的としている。 薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、コミュニケーション能力にある 地域住民の生活習慣の問題を解決するために、生活習慣を変えることができる。そして、予防医療に取り組むことで、少ない薬で病気を治すという医療経費削減に貢献する。予防は支える医療であり、そのためにはコミュニケーションによる、人々の安心感、分かり合えるということが重要である。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、笑顔で顧客に対応ができるという、非言語で「語る」という最も支持的なコミュニケーションを体得していることだと思う。 研修会の事例検討(実際の薬局での対応) 事例:70歳代 女性、相談内容「暑さによる食欲低下、外出する機会が減り、運動量が少なくなったことでさらに食欲が湧かないことが増えた。さっぱりとしためん類など簡単に済ませることが多い」 応対した管理栄養士の情報提供「めん類に加えてたんぱく質を補うような納豆や卵、豆腐などプラス1品を提案。外出の機会つくることで食欲を取り戻すことがあるので、暑い時間を避けて短時間の散歩だけでも気分転換に試すことを勧めた。体重計測の習慣がないため来店の際に測定して、様子を見ることを伝えた」 この事例から、低栄養の予防も重要であるが、まず食欲があり、おいしい食事をしてもらうための栄養アセスメントとそれに基づく、具体的な栄養支援を受講者が話し合った。 1.今回の栄養相談の対応について考えてみよう。 2.この顧客の時間軸を先に進めて、女性に起こりうることを想定してみよう。  生活の場(環境)、栄養状態、機能面、生活面、精神面 など 3.女性が望む暮らしを継続するために同職種で連携協働できること、すべきことを考えてみよう。 事例を通し、栄養相談の対応には、知識や技術そして経験が不足していること、さらにレベルアップできることを確認できた。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、生活習慣病予防及び介護予防の「予防」の段階から非言語で「語る」支持的なコミュニケーションによって良い援助者となれることを感じた。 薬局やDRGsで働く管理栄養士の教育効果について 日本においても薬局が医療提供の一環としての役割を強化していく中で、事例のように日常的な相談において、アセスメントによって地域で管理栄養士の貢献度を高め、地域の健康管理・予防医療において重要な役割を果たすと考える。 そのため、薬局やDRGsの管理栄養士の課題と貢献できるための要素や要因の関係性を捉える研究調査を実施し、問題の解決策のために本質的な管理栄養士の教育体制の構築が必要になると考える。

  • 【薬局四方山話】薬局と市場原理

    薬事政策研究所 田代健 I 市場原理による経営統合 この数年間、医療界で続いている医薬品の安定供給の問題については読者の皆さんもよくご存じだろう。 武見敬三厚生労働大臣は、7月4日に後発品メーカー13社の代表を集めた「後発医薬品の産業構造改革に向けた大臣要請」という場で、各品目につき5社程度に限定することが望ましい、という考えを述べた際に、「数量シェアや品目ともに多い企業は、再編、統合、適切な品目削除によるシェアの拡大や生産収益性の向上により、総合商社型の企業へ成長していくこと」を求めた。 製造業である製薬会社が物流に特化した総合商社のような企業に成長してしまってよいのか?など、意味のわからないポイントがいくつか散りばめることで主張をぼやかしてはいるが、大臣は製薬会社を統合して整理することを求めている。これに先んじて厚生労働省が5月22日付で公表した「後発医薬品の安定供給等の実現に向けた産業構造のあり方に関する検討会」の報告書では、具体的に「5社」といった数字は挙げていないが業界再編のモデルとして ・大きい企業が小さい企業を買収し、事業を統合する ・同じ大きさの企業が集まって新しいブランドにまとまる ・ファンドが複数の企業を買収し、事業をまとめる ・企業が事業を他の企業に譲渡する というパターンを列挙し、その前段階として ・複数の企業が集まって、それぞれのブランドを残したまま事業をまとめる ・事業丸ごとの譲渡の前に他社に製造委託し、事業をまとめる ・卸や薬局に働きかけて事業をまとめる といったパターンを挙げている。 このリストの特に前半は、さまざまな分野で市場が成熟してくるにつれて企業の統合が進んでいくケースを整理したもので、後発医薬品メーカーに限らず一般的に通用すると思われる。その一方で、企業と市場との関係にこれまでとは違った形も現れつつある。 例1) 香港のオアシス・マネジメントという投資ファンドがドラッグストア業界2位のツルハホールディングスの株式を取得したことが明らかになったのは、2022年の12月だった。翌23年6月に同ファンドは創業家の会長職の廃止などの要望を提出し、8月の株主総会で否決された。ここまで買収を通じて成長してきたツルハは自分が統合される側に回ることを模索し始め、ツルハに出資するイオンがオアシスのツルハ株を買い取る形で、同じイオン系列でドラッグストア業界1位のウェルシアホールディングスと2027年までに統合することになった。ここで登場したオアシス・マネジメントのような「アクティビスト」の介入がきっかけとなり、「ファンドが介在して企業を統合する」のではなく、「ファンドを排除するために企業が統合する」という形は珍しいようだ。 例2) アメリカの場合、特別買収目的会社(Special Purpose Acquisition Company)というものが認められており、株式公開していない法人を形式上買収し、上場させるだけの目的で24カ月間限定のペーパーカンパニーを設立することができる。これによって幅広く(リスクを分散しつつ)資金を調達することができるということで、医療経営に変化をもたらすという議論があるようだ。 日本でも社会保障費の収入が頭打ちとなっている中でさらに支出を増やすことを考える場合に、同じような発想で市場を通じて国内外の投資家から資金を調達するという試みが始まる可能性は高いと筆者は考える。 経済学には「市場の失敗」という概念がある。市場経済にはバグのようなものがいくつかあり、自由な取引に任せていると問題が生じることが知られている。その一つが「寡占」問題で、先述のようにメーカーや小売が経営統合を進めていくと、いずれごく少数の企業が市場を支配するようになり、適正な価格を維持できなくなるとされている(それを防ぐために独占禁止法が用意されていて、公正取引委員会には強力な権限を与えられている)。機関投資家の自由な投資活動は、このような市場取引を濃縮したエッセンスのようなもので、今回のオアシスの介入は特に「寡占化」を加速しているように見える。 II 新しい「封建主義」の可能性 ところで、ここまで述べてきたような「市場経済」は機能不全を起こしていて、新しい「封建主義」に移行しつつある、という議論も出てきている。代表的な例は、ギリシャ人経済学者で財務大臣を務めた経歴をもつヤニス・バルファキスによる「資本主義からテクノ封建主義("technofeudalism”)へと移行しつつある」という指摘だ(他にも「封建主義」といった同様の概念が何人かの論者から提唱されている。ジョエル・コトキン著『新しい封建制がやってくる: グローバル中流階級への警告』という本も出ていて、同じ封建主義でもここで紹介しているのとは異なった展開を描いているようだ。「AIの登場により将来必要とされなくなる職業」のようなトピックに興味があれば、面白いかもしれない)。 日本を含む先進各国では (1) 経済の長期的な停滞 (2) 政府による富の富裕層への再分配 (3) 中間層の没落 といった変化から抜け出すことが難しくなっており、市場での自由な競争に基づいて社会が豊かに成長するという資本主義の体制は行き詰まっている((2)と(3)についてはブランコ・ミラノヴィッチという経済学者が指摘した「エレファント・カーブ」という現象がよく知られている。先進国の高所得層と発展途上国の低所得層の所得が急激に伸びた一方で、先進国の中間所得層の所得が伸び悩んでいるというものだ)。資本主義体制では、土地や工場(資本)を持つ資本家が労働者を使って商品を作り、販売して得た利益(資本の増加)をさらに投資に回すことで事業を拡大する。例えばベトナム製のジーンズと岡山県のジーンズとが価格や品質で競合し、技術革新や価格破壊が起こるという感じだ。一方、中世の封建主義体制では、王様(日本では将軍)が臣下に領地を与える代わりに臣下が忠誠を誓うというような特徴があるが、それはおいといて経済的な部分に注目すると、封建領主が土地を囲い込み、その領域内で活動する領民は地代(小作料)を封建領主に支払う。米沢藩の米農家と加賀藩の米農家とが競合することがないようなものだ(ただしそれぞれの米を江戸の市場に持ち込めば、競争が始まる)。GA[M]FAの各プラットフォームではクラウド上の巨大なデータベースが囲い込まれ、実質的な「領地」とみなすことができる。それぞれのサービスが競合することはなく、さまざまな企業はそのプラットフォームの中で「地代」を払いながらサービスを提供する。それぞれの企業は他社のプラットフォームを利用することはできない(アンドロイドOSのスマホユーザーはiPhoneのアプリを使うことができない。逆も同様)。iPhoneアプリの開発者はApp Storeに登録するためにAppleに「地代」を支払う。また、日本医師会がgoogleの口コミの削除をめぐって提訴したように、データベースの当事者自身ですらもその内容を管理することができず、さらには検索エンジンの上位に表示されることを目指すビジネスが存在するというように、データベースがかなり強力な実体としての位置を占めるようになっている。 皆さんが薬局で実務実習を受ける際には、パソコンやタブレットが何台稼働しているかを数えてみてもらいたい。細々した作業の一つ一つに端末が必要とされ、処方箋データだけがかろうじて標準フォーマットで一方通行で送信されるが、残りはバラバラだ。これが薬局における「医療DX」の現状で、さまざまな事業者が群がっているが、これからシステムの統合が進み、同時に薬剤師業務も整理されてくるだろう(そして薬剤師の仕事は患者や医薬品と向かい合っている時間よりも液晶ディスプレイを凝視している時間の長さによって「評価」されることになるかもしれない)。その果てに残るシステムは、おそらくGA[M]FAと、もしかしたらTikTokやLINEのようなプラットフォームの上で稼働することになると思われる。 Amazonファーマシーを例にとってみよう。薬剤師が話題にする際には参加薬局の採算性に注目しがちだが、大きな動きとしてみた場合には、これまでは大学病院などの正門の近くやあるいは敷地内といったリアルな「土地」を巡って大小の資本が競争していたのが、Amazonファーマシーの場合にはAmazonの液晶画面の中での競争となる。その競争のルールを決めるのは他でもないAmazonであるという点が、ポイントとなる。 III 最後に 今から100年前にもロシア革命(1917年)や大恐慌(1929年)などの世界的な混乱が生じたが、そこからジョン・メイナード・ケインズによるマクロ経済学の概念が登場し(1936年)、第二次世界大戦や冷戦を経つつも資本主義は命脈をつなぐことができた。今回も、「自由な市場」というものが後退し、仮に封建主義的な市場の要素が強くなってくるとしても、資本主義が終わるというよりはむしろバージョンアップしていくような気がする。おそらく皆さんが50歳前後になる頃には、今では想像もつかないような財政目標や経済的な指標によって医療やビジネスが動いていくと筆者は期待している。 投資家の基礎用語 【ファンダメンタルズ】投資家は、株式市場に上場している企業の決算情報などを検討し、事業の内容に将来性を感じ「この会社の株に投資したい」と判断すれば株式を買う。このような人が増えればその企業の株価は上昇するが、逆に「この会社の株は売ってしまおう」と判断する人が増えれば株価は低下する。このような企業の実績の判断材料となる指標を「ファンダメンタルズ」という。 【株価純資産倍率(PBR)】会社丸ごとの価値と株価とのバランスを評価する指標で、1以上を保つことが望ましい(会社の資産を全部換金して株主に配当してしまう方が株主にとっては得ということになってしまうため)。『日経新聞』のサイトでは業種別のPBRの上位ランキングと下位ランキングを見ることもできる。 【アクティビスト(モノ言う投資家)】投資ファンドの中には、ファンダメンタルズを見るのではなくPBRの低さなどの割安感に注目して株を買い、株主として経営陣の刷新や事業再編などの要望をし、株価を上げた後で売る、というビジネスモデルがある。 読者の皆さんも、興味のある企業がもし株式を上場しているようなら、ファンダメンタルズやPBRなどの指標を投資家の目線でじっくり吟味してみると面白い発見があるかもしれない。 市場の失敗 市場の失敗には寡占の問題以外にも 【情報の非対称性】 売り手が情報を多く持っていて買い手が情報を持っていない状態。例えば中古車販売市場で売り手が欠陥のある中古車を販売して買い手がその情報を知ることができない場合、買い手は最初から欠陥のある中古車をつかまされると疑ってかかり、安くて低品質な中古車しか買わなくなり、値段もそれなりに高い高品質な中古車が売れ残るようになる。医療においては、医療提供者と患者との間の情報の格差が大きいことに加えて患者側の需要の切迫度が高いため、取り引きが医療側に有利になっている(自動車の需要が供給を大きく上回っていれば、低品質で高価格な中古車の疑いがあっても買わざるを得ない)。 【市場の外部性】 工場で製品を作る過程で大気や河川を汚染したまま放置している場合などのように、本来売り手が負担して価格形成に含まれるべきコストが取りこぼされる状態。市場に参加していない人たちが不利益を被り、売り手は過剰に利益を得ることができてしまう。卑近な例では、感染症にかかった従業員が無理に出勤して職場でウィルスを拡散させてしまった場合、その職場に生じた損失は最初の従業員に負わせることはできない。このような事態を防ぐために、「5日間は自宅療養」のようなルールを公共で作る必要がある。 【フリーライダーの存在】 企業が経済活動を行う際に利用する公共のインフラ(例えば道路)の維持費などを分担する際に、負担した人と負担しなかった人とを区別することが難しい場合、負担しない人ばかりになってしまう可能性がある。例えばワクチンの接種者が70%で集団免疫が成立するという場合、誰もが副反応を恐れて接種しなければ集団免疫が成立しない。などが知られており、政府の介入が必要とされている。 ちなみに、政府に任せるとうまくいかなくなるという「政府の失敗」という概念もある。興味のある人は調べてみよう。

  • 【一日一笑】最初から変更してくれれば良かったのに

    医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 薬剤師冥利に尽きるうれしい言葉を受け取り、薬剤師としてちょっと鼻が高くなる…。ルンルンである。しかし、毎回初めてのよう。そこはちょっと待て。こういった場合には、認知機能の低下を疑い、クリニックや病院にトレーシングレポート (保険薬局の薬剤師が得た情報を処方医に、即時性・緊急性は低いものの、処方医に伝える必要があると薬局薬剤師が判断した場合に作成し、情報提供するもの) を用いて、認知症のテストを勧めてみるのも薬剤師としての重要な仕事である。 認知症を疑うポイントとしては、よく言われるのが、財布の小銭の量があまりにも多く、常にお札で支払う。あるいは、季節にそぐわない服装などいろいろある。そのため、自身でポイントを確認しておき、患者さんと向き合う際には少しでも疑わしいと感じた際にはなるべく迅速に対応できるよう心掛けている。 薬がなーい!!! 血圧の薬、気管支ぜんそくの薬、咳止めなどなど、もうすでに何が通常通り出荷されていて、何の流通が止まっているのかを認識するのも大変なほど。医療用医薬品の出荷調製品(医薬品の供給が不安定になること)については、メーカーなどから直接伝えられるものや、メーカーHPなどを自身で調べる、SNSなどで他の薬剤師が発信しているものでも確認。しかし、出荷調製品であると発表されていないものでも実際に注文してみると入ってこないという商品もある。 通常、処方箋を患者さんから受け取った際には処方監査を行い、お薬手帳等を確認し調剤を始めていたが、在庫がない薬が書かれている場合、すんなりと調剤を進めることはできず、卸への出荷状況の確認、近隣薬局への小分け依頼による薬の調達。どうしても入手できない場合は、医師に対して処方薬の変更の依頼をする。処方薬の変更依頼に関しては、現在の状況で対応可能な薬剤の提示が必須となるため、代替案の提示を行うことが重要となる。 医師に提案を行うと薬不足があまり騒がれていない頃は、あまり状況を理解してもらえず、「変更はしませんので、持っている薬局に行ってもらってください」と言われてしまうことも珍しいことではなかった。 この場合、処方箋をつらそうな患者さんに返却し、薬の有無の確認を行った薬局名を伝え、それ以外の薬局に行くしかないと伝えることくらいしかできない。 処方箋を返却した患者さんからは、後日「あの後数時間探し回ったけど、どこにもなくて、多くの薬局から変更依頼があったみたいで、何軒か行ったところでしょうがなく先生が処方薬の変更をして薬をもらえましたけど、最初からそうしてくれれば良かったのに」と愚痴をこぼす患者さん。 現在も医薬品の供給はかなり厳しい状況が続いている。卸業者の方々も薬局からの問い合わせが多く非常に仕事量が増えていると思われる。ある卸の方は、若い頃先輩と飲みに行くと「昔は製薬業界の景気も良くて本当にいい時代だったよ」なんて昔話をよく聞かされて、昔話をされてもといつも思っていたようだが、最近では、後輩と飲みに行くと自分でも「昔は薬の流通がしっかりしていてね、今みたいに薬が手に入らないことなんて薬局に連絡しないでよくて、本当にいい時代だったよ」なんて、昔話をするようになってしまったと話されていた。 昔話が始まった時点で右から左へ聞き流しがちな私だが、今回の昔話はいつかきっと…という、若い人へのエールに感じた。この状況しか経験していない入社3年目までの方々は、一体どんな思いで仕事と向き合っていただろう…。いつかまた安定供給される日が来ると信じて。ただし、収束した後の「昔は、薬が手に入らない時代があって苦労したよ、君たちは当たり前に手に入っていいね」のタイプの昔話を口に出すのはNGで。 現在は医師も薬剤の不足を理解している方々が多い。今の薬剤師に求められる専門家としての意見!薬が手に入らないなら薬剤師は何をすればいい?代替案を探し、薬剤変更の場合、用量変更が必要?変更してもらうとしたら飲み合わせは?薬剤間の特性や違いは?さらにコストとベネフィットは? 医師が普段使い慣れている薬から他剤へ変更してもらうためのサポート、薬のプロとしての薬剤師の視点。今の医療を支えるために薬剤師の力を発揮するチャンスだ!!! 公園前薬局

  • 【アルフレッサヘルスケア】「ライフサポートフェア2025」で帝京平成大学が健康茶房を開催

    アルフレッサヘルスケア株式会社は、2月20~21日かけて東京都立産業貿易センター浜松町館において「ライフサポートフェア2025」を開催した。同フェアは医療・介護・健康に関わる幅広い商品やサービスが集まる展示会で、生活習慣病の予防を促進する提案や、食品売場の進化による差別化戦略を具体的な施策として紹介した。 今回は大学として初めて帝京平成大学が出展。同大学地域連携部となかのヘルスケアコミュニティが協働で健康茶房を開催した。健康茶房は、地域住民の健康増進を目的とした取り組みで、薬学生が中心となり、健康茶を飲みながら健康に関する情報を発信したり、参加者同士の交流を深める場を提供したりしている。そのほか地域連携部では、中野区の福祉施設へのボランティア活動や、子供を対象にした講座も開催している。 今回の出展は、地域連携部の顧問を務める薬学部教授の小原道子氏が同社に健康茶房を紹介したところ、健康サポート薬局の事例として紹介してほしいという打診があり実現したという。参加した学生スタッフからは「普段の健康茶房とは違い、医療関係者や企業の人が多く、緊張した」「さまざまな企業が出展しているブースを見ることができ、勉強になった」という声があった。同社代表取締役社長の西田誠氏は「フェアの参加を通して、新たな気づきを得てほしい。将来的には学生とコラボして商品開発にも挑戦したい」と今後の展望を話してくれた。 健康茶房のドリンクメニュー

  • 【日本薬学生連盟】第26回年会を開催 緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割を議論

    3月17日、第26回年会「薬学生の集い」が開催された。この年会は、薬学生の団体である一般社団法人日本薬学生連盟が主催する年に一度の大型イベントである。今年のテーマは「YELL」で、「参加者を応援したい、年会を経て前に進んでいってほしい」という思いが込められている。OTC化に向けた緊急避妊薬の現状に関する講演や、お薬カードゲーム、お土産交換会など、参加者一人ひとりが主体的に学び、交流を深めるための多彩な企画が用意された。 オープニングでは、年会部長の坂田実優さん(大阪医科薬科大学4年)がイベントの概要を説明した。続いて、会長の馬越春莉さん(東京薬科大学3年)が団体紹介を行い、「積極的に参加して、明日への一歩を踏み出すための糧にしてください」と参加者に呼びかけた。 メーン企画では、SRHR Pharmacy Project代表の鈴木怜那氏が登壇し、緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割について解説した。鈴木氏は、緊急避妊薬のアクセスが日本において非常に困難であることを指摘し、その背景には、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)という概念の理解不足があることを説明した。 私たちは日々の生活の中で、知らず知らずのうちに他者の尊厳を傷つけていることがある。 鈴木氏 特に、結婚や出産といったプライベートな領域においては、無意識の言葉や行動が相手を深く傷つけていることもある。このような現状に対し、近年注目されているのがSRHRという概念だ。SRHRの考え方では、自分の体は自分のものとして、プライバシーや自己決定が尊重されるべきであるとされている。例えば、子供を持つか持たないか、いつ、何人持つかを自分自身で決められる権利などが含まれる。しかし、日本ではまだこの考え方が十分に浸透しておらず、「いつ結婚するの?」「子供はまだ?」といった質問が、相手の尊厳を傷つける可能性があるという認識が低いのが現状だ。鈴木氏は「特に緊急避妊薬に関しては、女性が自分で決定することへのハードルが高く、SRHRの考え方が十分に反映されているとは言えない」と指摘する。日本では緊急避妊薬の悪用・乱用を懸念する声も根強く、薬剤師の目の前での服用を義務付ける案も出ている。 緊急避妊薬は、①排卵を遅らせることで精子と出会うタイミングをずらす②受精卵が着床しにくいよう子宮内膜を薄くする③精子が子宮内に入りにくくする―という主に3つの仕組みで妊娠を防ぐ薬であり、中絶薬とは異なる。また、性暴力被害者のみが使用する薬ではなく、避妊に失敗したあらゆる人が使用する可能性がある。 薬剤師は、薬局やドラッグストアで妊娠検査薬や低用量ピルなど、SRHRに関連する製品を扱う機会が多くある。鈴木氏は「SRHRの考え方を理解することで、相手の不安を解消して、適切な情報や選択肢を提供し、自己決定をサポートすることができる」と述べた。 さらに、日本で認められている避妊法が少ない現状や、性教育の遅れについても触れ、薬剤師が正しい知識を提供し、相談しやすい環境をつくることが求められると訴えた。そして薬以外のことで相談があった場合は、一人で抱え込むのではなく、地域の専門機関につなげることも重要だと指摘した。最後に鈴木氏は「緊急避妊薬に関する正しい知識を身につけ、偏見を持たずに患者と向き合ってほしい」と呼びかけた。 講演後には、参加者が事例をもとにグループワークを行い、緊急避妊薬に関する理解を深めた。 グループワークの様子 午後に行われたお薬カードゲームの様子。病気(例:関節リウマチ)に対する治療薬(例:メトトレキサート)を探す(あるいは逆)、神経衰弱感覚で遊ぶカードゲーム。楽しみながら医薬品や病気に関する知識を深めた。 参加者に配布された資料

  • 【薬局四方山話】葛根湯に凝ってみる

    薬事政策研究所 田代健 読者の皆さんは、漢方というものについてどのような印象を持っているだろうか?もしかすると「安全」とか「優しく効く」といった印象を持っている人も多いかもしれない。店頭でも、お客さん・患者さんが「(西洋の)薬よりも自然な漢方の方が体に良いはず」と言うことはしばしばある(無意識に漢方を「薬」の範疇から除外している)。そこで、「生薬は自由に移動できない植物が自身を守るための化学兵器の集大成であり、しかも合成した医薬品と違って含まれている分子を全て把握できているわけではない以上、細心の注意を払って摂取しなければならない」と説明したりすることもあり、驚かれる。漢方という分野は、勉強すればするほど一般の人が抱くイメージと実際との間にズレを感じる人が多いように筆者には感じられる。 今回は、漢方薬の中でもおそらく最も名前の知られた葛根湯を素材として、一般向けではなく薬学生向けに少しマニアックに深掘りして漢方の考え方の一端を紹介してみたい。 1. 葛根湯という薬 葛根湯は、3世紀頃に書かれた『傷寒論』という医学書に記載された薬で、桂枝・芍薬・生姜・大棗・甘草・葛根・麻黄という生薬の組み合わせからなる。桂枝から甘草までは「桂枝湯」という薬で、これが漢方における風邪薬の出発点となる。この桂枝湯の中心は桂枝と芍薬で、この2つの生薬が体の外側と内側のバランスをとる働きをする(覚える必要はないが、後世の中医学(中国の伝統医学)ではこのバランス作用を「営衛調和」と理論化した)。 風邪の初期で悪寒などの症状が軽く、うっすらと汗ばんでいるような時には桂枝湯を使う。悪寒などの症状が強く、汗をかいていない状態で、かつ、首から肩にかけて凝りがある時には、葛根湯を使う。実際にはこのような状態の風邪は多くはなく、処方箋で応需するのも総合感冒薬の漢方版くらいの位置付けのものがほとんどだ。漢方医学は一枚岩ではなく、いくつかの流派があるのだが、その中に「古方派」というものがあり、江戸時代に生まれて現在にも続いている。この流派では先述の『傷寒論』と、これとセットで書かれた『金匱要略』という2つの医学書に記載された処方だけであらゆる疾患を治療することにこだわる。この古方派の筆頭格の吉益東洞(1702-1773)という医師がどのような症例にどのような処方を行ったかという記録が残されている(『東洞先生投剤証録』)。写本により多寡はあるようだが、 450例近くの症例が記録されている。筆者が所有する本を眺めてみると葛根湯はその中で1例しかない( 図表1 )。このことからも、「風邪のひき始めには葛根湯」ではないことが分かる(そもそも、社会保険制度のなかった当時、風邪をひいたくらいで気軽に漢方薬を買うことは庶民にはできなかった)。また、この 図表1 は耳のわきに「塊」が生じたという症例だが、首から肩にかけての「筋肉のこわばり」に葛根湯を使うことは『金匱要略』の方に記載されており、現代でも肩凝りに処方されることがある。   2. 風邪の考え方 風邪をひいた際に、脳は体温を上げるように指示を出す。これによって生じる脳の設定温度と実際の体温との差が「悪寒」として感じられる。その寒気のために震えたりすることによって体温が上昇する。つまり「発熱」する。この発熱によってウイルスの活動が低下し、逆に免疫系が活性化することで感染症が無事に解決すると、脳の設定温度は平熱に戻る。そして体温を下げるために「発汗」する。まとめると、通常の風邪の場合、悪寒→発熱→発汗の順を追って治癒する。 解熱鎮痛剤が発熱を抑えるのと対照的に、葛根湯は発熱を促すことで治癒を早めようとする。しかし平熱が低かったりして発熱に耐えられない人は、体温が十分に上昇する前に発汗してしまい、熱を逃してしまう。このような場合に葛根湯を使うと、部屋の窓を開けたまま暖房を一生懸命かけるのと同じようなことになり、体力を無駄に消耗してしまう。葛根湯の場合、効能・効果に「体力のある人」と書いてあるのは、「少し発熱しても発汗しない人」という意味だ。発汗してしまう人の場合は、まずは冒頭に紹介した桂枝湯を使って「窓を閉める」という治療を行う。これによって自然に体温が上がるのを期待するわけで、『傷寒論』には「後で熱いお粥などを食べると良い」と注記している。 余談になるが、読者の皆さんは、店頭で風邪薬を買う時に強壮剤を一緒に買ったりするだろうか?筆者は、風邪薬を求めに来たお客さんには漢方薬を出しているが、強壮剤と合わせることは基本的に勧めていない。というのも、『傷寒論』ではニンジンのような「元気が出る生薬」は慎重に配合されていたからだ(3世紀の治療に用いられた「ニンジン」は現在使用されているオタネニンジンだったのかといった問題もあるのだが、いずれにせよ『傷寒論』ではニンジンは発汗し過ぎた後などに使用する)。また、服用後に「熱いお粥を食べて薬の力を補うとともに温かくすると良い」といった指示とともに「生の冷たいものや辛味の強い食べ物は控えること」といった注意もされている(「辛いもの」が具体的に何を指すのかは諸説あるが、ニンニクやニラ、ネギの類はだいたい当てはまると考えてよさそうだ)。現代風に解釈すれば、強壮剤にはエネルギーを引き出す作用はある(ニンニクに含まれるビタミンB1 、B6 など)が、強壮剤を効かせるために余計な体力を消耗してしまうというデメリットも考慮すべきだということになる。むしろお粥やうどん、つまり直接エネルギー源となる炭水化物をとって温かくして休む方が理にかなっているということだろう。(とはいえ昭和の時代には、「風邪をひきかけた」といえば家庭で湯呑み1杯のお湯にみそとニンニクとショウガを溶いたような独自のドリンクを作って、フーフーしながら飲んだりした。筆者自身は冷えた日に玉子酒を作ったりすることもある。同じような発想で、正式な治療の前の早い段階で強壮剤を飲んで早く寝るという方法は1日くらい試してみてもよいかもしれない。) 3. 肩凝り 「肩凝り」という症状が日本人にしか認識されないことはご存じだろうか?文献的な起源は江戸時代にあるようで、日本人が「凝る」という現象に注目するようになったのは、日中の健康観の違いが反映されていると筆者は考える。 中国医学の土台には陰陽五行説という思想がある。詳細は省くが、この思想は「国内の産業のバランスをとって国家を上手に統治する」という政治の理想を個人にも当てはめるという考え方がベースとなっている。そしてこの医学は不老長寿を目指す道教とも互いに影響し合って発展したわけだが、それを日本人が学んだ際、おそらく道教と関わっていて神道・仏教の考え方と一致しない部分は切り捨て、「このような症状にはこの処方」という技術論だけを取り入れた。特に先述の古方派が中国医学の理論を否定し「一気留滞説」や「万病一毒説」などを主張し始めたころから、「体に何かが溜まる」という状態を意識するようになり、日本人は「流れをよくすること」を健康観の中心に据えるようになった。現在でも、私たちの健康には「(血行やリンパの)流れをよくする」「凝りをほぐす」といった価値観がしっかり根付いている。薬局の店頭で接するお客さん・患者さんが理想と考える「健康」が、検査値が正常であることなのか、五臓六腑のバランスが調和していることなのか、澱みがなくきれいに流れていることなのか、といったことに少し興味を持ち、実際に使用する薬がどのような作用を持っているのかということとのギャップを埋めてあげられると、コミュニケーションが少しグレードアップするかもしれない。 4. 最後に 「漢方には西洋医学的なエビデンスの裏付けがないから意味がない」と考える薬剤師も多い。また、漢方メーカーも戦略的に西洋医学的なエビデンスを探索している。 二重盲検試験によって効果を判定するという考え方は、例えばファミリーレストランなどで「どの店舗で誰が調理しても一定数の顧客がある程度満足するトンカツの調理方法を探る」という考え方に近い。その基準をクリアできなかった調理方法は「おいしくない」と評価するのだ。この発想の起源は工場の生産管理におけるフォード主義にあり、経営管理から個人の資質という要素を除去することが目的だ。これに対して漢方の考え方は「効くまで処方をカスタマイズしていく」という考え方であり、トンカツ屋の主人が細かく揚げ加減を微調整していくような調理方法に近い。その結果として「トンカツはうまいか、まずいか」という評価ではなく「うまいトンカツ屋」と「まずいトンカツ屋」という評価が残る。前者のような「根拠に基づいたトンカツ調理」では、一定数存在するはずの「私はおいしいと思わない」という客にどう応えればよいのかが分からない。漢方の場合、目の前の1人の患者について、汗をかいても治らなかった場合、あるいは他の症状が出てきてしまった場合、さらには発熱が脳の設定温度を上回ってしまった場合に次の手をどう打つか?ということを考える。もちろんこれが万能というわけではなく、感染症に限っても抗生物質の登場以前に漢方で治療できなかった患者が大勢いたことは忘れてはならないのだが、このような思考法は、薬剤師が薬を販売する際にどう頭を使うかという訓練になるのではないだろうか。

  • 【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】「地域」を支える薬局管理栄養士の新たな役割を目指して

    札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子 地域を「栄養・食事」で支える。今後の薬局管理栄養士が目指す課題であり、一つの目標だと考えています。 昨年4月に東京から北海道札幌市内の大学に赴任しました。大学が中心にあり、周囲は宅地化された団地と田畑や農地です。大学にはバス通勤のため、バス停から大学までの半径605mを中心にこの地域を見つめました。交通手段は本数の少ないバスか自家用車です。医科、歯科などの診療施設はなく、コンビニは大学内のみ、スーパーやドッラグストアはありません。地域の方々にインタビューを行いました。この地の自然や助け合いの生活への満足感はありますが、健康や買い物の不安や不便があります。この地域住民の方々が望む健康な暮らしは、住民の方と共に予防をして、地域力をアップしていくことにあると思います。その役割の担い手として、薬局の管理栄養士は人材不足の問題、管理栄養士の役割を広く周知するための啓発活動も必要ですが、地域の方々が自発的に栄養・食事から予防を意識できるように、地域の活動に積極的に関わっていくことが望まれます。 今回の実践報告は、北海道十勝地方帯広市を拠点として、地域に根差した活動を行っている株式会社まつもと薬局 栄養部部長一色 恵さんから、「これからの保険薬局は、地域の健康サポート薬局として、医療・介護・福祉・保健等様々な分野での機能性が求められている。薬剤師と共に管理栄養士が高い専門性を発揮し、地域住民のサポートを多方面から行い、最期まで地域で生活できる栄養ケアが必要とされる」この考えに基づいた活動報告です。 事例紹介 栄養計画を立案し、透析患者の食事摂取量不足を改善 株式会社まつもと薬局栄養部部長 一色 恵 株式会社まつもと薬局は、北海道十勝地方帯広市を拠点に、6つの薬局と2カ所の機能訓練特化型デイサービスを運営しています。十勝地方は約32万人が暮らす地域で、当社は「薬」「栄養」「運動」を融合させることで、「健康」「医療」「福祉」に貢献し、地域住民の豊かで健康的な生活を支えることを理念としています。 薬局管理栄養士のこれまでと現在 当社では28年前の1996年より薬局に管理栄養士を配置し、医療食販売や栄養相談を行ってきました。中でも腎臓病の食事療法は難しく、コロナ禍になるまでは腎臓病食の調理実習を年2回計46回続けてきました。コロナ禍を機に情報ツールの活用が進み、患者様の管理栄養士へのニーズが変化していると感じます。薬局内での活動に留まらず外に視野を広げ、変化にいち早く気づき順応していため、より専門的な知識の獲得と、経験、実績の重要性を感じています。管理栄養士全員のスキルアップを図るため、在宅訪問管理栄養士認定や腎臓病療養指導士認定の取得、保健指導のスキルアップ研修などに積極的に参加しています。 在宅医療における薬局管理栄養士の活躍 最近は、ケア会議参加や多職種の方々と共に在宅療養が必要な患者様の支援も行っています。ここで、透析患者Aさん(60代男性)のサポート事例を紹介します。 Aさんは、透析治療を週3回受ける独居の患者様で、既往歴には脳血管障害があり手に若干の麻痺があります。ヘルパーが週3回ほど夕食の準備と買い物をサポートしていました。Aさんの主張は「食事がおいしくない」でした。栄養アセスメント評価は、透析食の知識不足による食事摂取量の不足と判断しました。栄養計画は、検査値の見方や、カリウム・リンの働き、塩分・水分管理の必要性の資料を用いた確認と同時にヘルパーに透析食の調理ポイントについて実践を交えて伝えしました。その結果、適度な味付けとなり、彩りも良くなったことでAさんの食が進むようになりました。また自分で買い物に行きたいとリハビリにも取り組むようになり、検査値も安定しました。この事例はAさんの了承を得たうえで、病院の管理栄養士と情報共有を行い、地域の多職種で介入した成功事例です。 他にも薬剤師に同行し、がん治療中の患者様の食欲低下や、胃ろう後の在宅でのケアなどさまざまなケースに関わっています。 私が目指す薬局管理栄養士のこれから 厚労省が2025年を目途に構築を掲げている地域包括ケアシステムに向けて、十勝地域の包括ケアシステムの中で、管理栄養士が当たり前に存在する状況を目指しています。2019年から、日本栄養士会が運営する「認定栄養ケア・ステーション」として地域住民に栄養ケアを行う拠点として活動しています。地方では高齢化、過疎化、若年層の減少が着実に進んでおり、在宅療養の充実や、依然として低い健康診断受診率を上げる取り組みなど、生活習慣病疾患が多い地域では取り組むべき多くの課題があります。 食は、生まれたときから人生の最期まで、生活の中心にあるものです。長年、店舗での栄養相談や情報提供を行ってきた経験を生かし、保健薬局にかかせない存在となり、包括ケアシステムの中核として薬局管理栄養士が、地域で中心的な役割を担えるよう尽力していきます。

  • 【薬局四方山話】漢方との出会い

    薬事政策研究所 田代 健 今回は、筆者が漢方の獣道にさまよいこんでいった経緯を話したい。「実家が薬局である」「後継者不在の薬局を買い取った」「開業する医師に声をかけられた」といったルートではなく、全くゼロから薬局を開業したというルートは比較的少ないようなので、少しでも参考になれば幸いだ。 1. 学生の頃 筆者は10代の頃、生物学の(化学的ではなく)物理的な側面や情報といった側面に興味を持っていた。薬学部への進学を決めた動機も面白い研究(注1)をしている教授がいたためで、漢方どころか薬剤師という資格にも全く興味を持っていなかった。ただ、1年生の頃から附属病院の精神科外来の若手医師たちの論文抄読会に参加させていただく機会があり(筆者1人ではなく、勉強好きな学生が4人ほど誘われたのだが、要するに「海外の論文を読んで要約する」という人力版ChatGPTのような作業を無邪気な学生にさせていたのだと今では思う)、直接面倒を見てくれていた医師が「時間がある時には古本屋で明治時代の医学書を探して自分の研究分野(自閉症)の記述を探したりする。今の医学にはない視点を見つけられることもあって結構勉強になるんだよ」と話してくれたことがあり、古い医学を単なる昔話として見るのではなく、「実用的なツール」として見ることを教えられた。ちなみに、このように書くと筆者は英語が得意で活動的な性格のように見えるかもしれないがむしろ内向的で語学のセンスもない。ただ「勉強会やセミナーなどに興味がある人はどうぞ来てください」という機会があれば遠慮せずに手を挙げていただけにすぎない。たったそれだけのことで、いろいろと貴重な体験をさせてもらうことができたし、追い込まれることが英語の勉強になった。 2. 薬局勤めの頃 医療とは異なる業界で社会人になってから、ビジネスとしての薬局に興味を持ち、在宅医療に力を入れている薬局に転職した。この時点でも漢方というものを特には意識していなかったのだが、勤務先では漢方薬の処方箋を少し幅広く応需していた。これは偶然ではなく、高齢の患者が多いために漢方薬の処方も多かったのかもしれない。ここで同じ処方名の漢方薬でもメーカーが異なると味も変わることに気づき、添付文書などの資料だけでは知ることのできない違いがメーカー間に存在するはずだと職場で議論したことも、漢方の奥深さを感じるきっかけになった。また、身内の病気に際して何か役立つものはないかと探したことで、代替療法を真剣に検討したことで、関心が強くなったかもしれない。 今日であれば、薬局薬剤師として自分の専門分野を持つということについてさまざまな選択肢があるのではないかと思うが、当時はまだ対応する制度も存在しなかった在宅訪問と、「精神科に興味がある」というくらいの各自の嗜好性があるくらいだった。ただ、職場では口を揃えて「漢方は分からない」と言われていたため、それでは自分が勉強してみようと思い立った。そこで「漢方に興味がある」という話をしたところ、先輩がOBの薬剤師から漢方の入門書を2冊借りてきてくれた。これが中医学(注2)の教科書で、神戸中医学研究会『基礎中医学』(東洋学術出版社)ともう1冊は覚えていないのだが、絶望的に意味が分からなかった。その後、自分なりに書店でいろいろ手にとってみると、古方派(注3)の入門書が自分には分かりやすいと感じ、自分でも理解できそうだと選んだのは藤平健・小倉重成『漢方概論』(創元社)だった。ただ、医療用の漢方薬には後世方派(注4)も多く、古方派の勉強だけでは徐々に行き詰まってくる。 3. 勉強会に参加 自分で薬局を新規に開設した時点では、OTCやサプリメント、ハーブなどが実際にどの程度効くのかというデータを集めることを目指していた。商品を仕入れるために「電話帳」で卸を探して電話をかけて取引を始めてもらい、開業前の店舗で担当者と打ち合わせをしていると、外からのぞき込んでいる男性がいた。隣町の薬局経営者が、その卸から筆者の噂を聞いて偵察に来ていたのだった。そのまま付き合いが始まったことから、その薬局が加入していた漢方メーカーの会員組織 (図表) に紹介され、漢方の獣道に踏み込むことになった。 その漢方メーカーが主催する勉強会に参加してみると、症例検討会をやっている。当番の薬剤師が「これこれの症状の患者の「証(しょう)」を○○と判断し、△△を使ってもらったが効果が見られない」というような症例を提示し、質疑応答を重ねながら、なぜその△△ではいけないのか、次にどのような薬を使うべきか、といった検討をするのだが、非常に刺激的だった。 この勉強会では、中医学の体系で議論をしていた。古方では「方証相対」と言って最初に「傷寒論・金匱(きんき)要略(ようりゃく)で使われる処方」の一覧があり、人間の体質を「その一覧表の中のどの処方が合うか?」という観点で分類していく。例えば「あそこを歩いている色白な女性は当帰(とうき)芍薬散(しゃくやくさん)証(しょう)だろう」というような議論をしたりする。中医学の体系では「八(はっ)綱(こう)弁証(べんしょう)」「六(ろっ)経(けい)弁証(べんしょう)」「臓腑(ぞうふ)弁証(べんしょう)」「気血弁証」「三焦弁証」などなど、必要に応じていくつかの分類体系を組み合わせて患者の証を見極め、その証に応じて治療方針を立て、使用する生薬を選ぶ。これを「弁証論治」といい、中医学ではゼロから処方を組み立てるが、日本のエキス剤の漢方では既製品の組み合わせで最適解を探す。現代人が討論するプラットフォームとしては、古方派よりも中医学の言語体系のほうが普遍性が高く、中医学の書籍の刊行点数も増えている。筆者が勉強し始めた頃と比べると、初学者向けの良質な入門書の選択肢も格段に増えているように見える。 4. 独学 メーカー主催の勉強会に参加していると、講師的な立場の薬剤師から個人的な研究会に声をかけられたりする。「〜研究会」「〜塾」といったもので、年会費を払って毎月の会合に参加する。筆者も声をかけられたのだが、学問はオープンでフラットであるべきだと当時は考えていたため、秘密結社のようなグループに参加してリーダーの指導に従うという形に抵抗を感じて独学することを選んだ。これが正しい判断だったのかどうかは筆者には分からない。仲間を得て切磋琢磨しながら勉強することも大切だし、それぞれの研究会の雰囲気との相性といったものもあるだろう。代わりに、筆者は江戸時代の医学書を自分なりに勉強した。いずれにせよ、陳腐な言葉ではあるが、「最大の教師は患者」であることにかわりなく、何か調べたい時には今でも江戸時代や戦前の医学書をひっくり返すことが多い。 ところで漢方以外では、西洋のハーブにも関心を持っていた。例えば眠れないという人にジャーマンカモミールとレモンバームをブレンドしたお茶を売ったり、ちょっと喉が痛いという程度であればシソのお茶で済んだりというのは評判が良かった。しかし、「あまり良くなかった」という評価だった場合にそれをどう解釈し、次の一手に反映させるかという理論的な骨組みが存在しないことに物足りなさを感じた。 理論体系という点ではインドのアーユルヴェーダ医学(注5)も興味深い。一度、「アーユルヴェーダの家庭医学」という本(注6)を取り寄せて、「鼻炎にはニンニクの搾り汁を点鼻するとよく効く」と書いてあったのを実際に試したところ、強烈な痛みで悶え苦しみ、はたで見ていた妻に大笑いされた。これで懲りたことと、そもそも販売する商品を入手することが難しいというのがボトルネックになり、アーユルヴェーダとしっかり向き合うことができずにいる。 5. これから漢方を勉強し始める人に 最後に、漢方の勉強に興味を持った人に伝えたいことがある。 人間の体は2000年前と今日とで(体格や栄養といった差はあるにせよ)生理学的な機構としてはおそらくほとんど変化していない。だからこそ古人の臨床的な観察眼の鋭さに驚かされるわけだが、気候は平成から令和にかけて変わりつつあり、今後さらに変わっていくことが予想される。 これまでの日本の漢方は、傷寒論をベースとして「体を温める」という治療が中心だった。例えば、夏に冷たいものをとりすぎると、胃が冷える。その冷えた胃を温めるために体力を消耗するために、夏バテが起こる、といった考え方で、夏にも体を冷やさないことを重視する。ただ、これは気温が体温を上回ることはないという条件の上で通用する話で、温暖化が進み気象条件が変わった今、これをそのまま当てはめて「夏にも体を温める」といったことをしてしまうと命に関わる場合が出てくる(そして実際に、猛暑の中でも「冷房の風は体に良くない」と信じて窓を開けて熱いお茶を飲む高齢者は存在する)。これからは漢方でも体を冷やす治療の比重が増してくる。「漢方」と一言で言っても、中身をアップデートすることが必要だと筆者は考える。 注1 「プロペラのような形状のアクリル板の片面にミオシンタンパクを貼り、アクチンフィラメントを溶かした溶液に浸してATPを加えると筋収縮運動の仕組みでプロペラが回転する」といった研究 注2 数千年以上の歴史を持つ中国の伝統的医学 注3 江戸時代に起こった漢方医学の流派の一つ。山脇東洋、吉益東洞が有名。今日の漢方医学の主流派 注 4戦国時代に起こった漢方医学の流派の一つ。曲直瀬道三が有名 注 5古代インドの医学 注6 Vasant Lad, "The complete book of ayurvedic home remedies"(Three rivers press,1998) 漢方の入門書について 筆者が最初の頃に勉強した『中医学入門』は借りて読もうとしても全く歯が立たず、結局自分で買い直したのだが、外国語を学ぶのと同じで、他にも何冊も乱読したりして単語や思考のルールに慣れてしまってから見返すと、特に難しいことは言っておらず、よくまとまっていると感じる。ただ、初めての人がいきなり読んでも頭が痛くなるだけだろう。『漢方概論』の方は分かりやすく入り口にはちょうどいいが、現代の漢方の文脈に合わせるためにはあまり深入りしないほうが安全だろうと思う。 図表 漢方薬の流通形態 (1) ナショナルブランド:「ツムラ」や「クラシエ」など、テレビなどでCMを打っているブランドで、一般的な広域卸から仕入れることができ、ドラッグストアでも買える。 (2) 特約店医薬品:メーカーごとに「〜研究会」のような名前の会(「会員店組織」)を作り、その会の会員だけが取り扱うことができる漢方薬。この会に入会するためには近隣の他の会員の同意が必要で、それによって薬局間の競合や値崩れを防いでいる。比較的認知されていそうな例は、漢方相談薬局の店頭に中国風のデザインのパンダのキャラクターが存在する「イスクラ」だろうか(筆者は加入していない)。漢方薬以外に、「誰が飲んでも体に良さそう」という位置付けの保健薬に力を入れて売り上げの柱としているメーカーが多い。さまざまなメーカーがあるが、年会費が発生したり取り扱い金額によって仕入れ値が変わったりするなど、拘束条件もそれぞれに設定されているため、どこに所属するかという判断が重要になる。 (3) 会員限定ではない医薬品:特に会に所属するなどの制限を設けずに漢方卸から仕入れることができ、直接取り引きすることもできる。「小太郎漢方」と「八ツ目製薬」がよく知られている。前者は特に新規処方を増やしており、勢いがあると感じる。 (4) 薬局製剤:薬局で届出を出し、自ら煎じ薬を調整する医薬品。筆者の薬局では煎じ薬の調剤も応需しているため、生薬を取り扱っているのだが、薬局製剤は行っていない。理由は、①既製品のエキス剤などで十分品質が良い②煎じで効果を評価しようとした場合に生薬のロットの問題、煎じ方の問題、処方そのものの問題、といった問題を切り分けるのが難しい、要するに再現性が低いという2点だが、「煎じ薬のほうが良い」という価値観も根強いことは確かで、上手に使っている薬局も存在する。 (2)や(3)のような医薬品を扱うメーカーは販売実績の著しい薬剤師を講師に招いて勉強会や研修会を開催し、薬局同士の横のつながりが生まれる(利益相反を気にする人はまずいない)。その中で、研究会ごとの個性が醸成されていく。 いわゆる「調剤薬局」で働いていると見えにくいのは、(2)と(3)のタイプの漢方薬ではないだろうか。

  • EBPMを推進し、薬剤師の社会的価値を高める

    公益社団法人日本薬剤師会理事 慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室 特任研究員 日髙玲於 2024年6月30日、日本薬剤師会理事に就任した日髙玲於さん。北里大学薬学部に在学中に一般社団法人日本薬学生連盟学術委員長として活動した。卒業後、薬局に従事し、在宅医療等に取り組む。その後、慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科へ進学し、1年間で短期修了し公衆衛生学修士(MPH)を取得した。現在は、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室で特任研究員として研究に取り組んでいる。ここでは、日髙さんの近況やこれから求められる薬剤師像について聞いた。 ──大学ではどんな生活を送っていましたか。 軽音部で活動したり、学園祭の実行委員を務めたりと割と活発な学生生活を送っていました。5年生からは日本薬学生連盟の学術委員長として全国規模の薬学生の団体を運営していました。 自分の人生の転機がいくつかあるのですが、日本薬学生連盟での活動はその一つです。アクティブな人って大学の中で少し浮きがちなのですが、全国の同世代の仲間に出会えたことで、自分の生き方を肯定できるようになりました。探究心やチャレンジ精神をもって活動している仲間に出会えたことが大きな励みになりました。それから北里大学の先生方にもたいへんお世話になりました。特に研究室の指導教官であった鈴木順子先生には薬事関連の制度のことや、社会の中の薬剤師の在り方など、いろいろご指導いただき、私に薬剤師としての道を示してくれました。 日本薬学生連盟で活動していた頃の日髙さん ──卒業後の進路についてはどう考えていましたか。 最初の頃は、大学に病院があったので病院薬剤師にあこがれていました。4年生時に社会薬学会に参加した際、在宅医療で活躍している薬局や病院の先生のお話を伺い、在宅緩和ケアに携わりたいと思うようになりました。 学生時代、母が肝臓がんになって、見つかったときはステージⅣ、余命3カ月と診断されました。家族として母が医療者からサポートを受けているところを見ていたのですが、看取るのは難しいことだと痛感しました。 ──看取りが難しいというのはどういうことですか。 家族が見ている患者の姿と医療者が見ている姿は、必ずしもイコールではないということです。普段、母はベッドでぐったりしているのですが、訪問医が来ると、母は起きて医師の質問にしっかりと受け答えをしていました。そして訪問医が帰ったら、ぐったりして3~4時間寝てしまいます。医師に気を使っていたのだと思います。最善の治療をするために患者から聞き取ることも大事なことだと思うのですが、あえてひくことも大事なのではないか、在宅緩和ケアは奥深いと思うようになり、卒業後は薬局に就職しました。 ──薬局ではどんなことをしていましたか。  1年目から在宅医療を担当し、患者からいろいろなことを学ばせていただきました。例えば30代でがんに罹患された方。小さいお子さんがいらっしゃいました。なぜこんな若い人ががんにならないといけないのかとやるせない気持ちを持ちながらサポートしていました。しかしそれは現実で、その中で薬剤師として、人として、患者が人生を全うするためにどう支えるのかということを常に考えていました。また、がんといっても腫瘍の種類が異なると症状やケアの仕方が違いますので、その度にガイドライン等を勉強して医師に提案していました。 医師との関わりについても現場で働いてみて気づくことがありました。医師の専門領域外の薬の選択について相談を受ける機会が多くありましたので、医師の専門性を十分理解したうえで、情報提供することを心掛けていました。例えば、緩和ケアを受けているがん患者の便秘の頻度は比較的高いため、排便コントロールが必要です。内科や循環器の医師の場合、その対処法についてはあまり詳しくないこともあります。便秘を解消するために、医師に処方提案したり、患者に生活指導したりしていると、便秘が改善されるようになりました。最初は苦労しましたが、実績を積み重ねることで他職種との信頼関係を構築することができました。 ──在宅医療の最前線でご活躍されていましたが、その後大学院へ進学されました。どうしてこの道に進もうと思ったのでしょうか。 現場で働く中で、制度や法律によって、なかなかうまく仕事ができないと感じることがいくつかありました。例えば患者宅を訪問する際、居宅療養管理指導料を算定するのですが、限られた時間で生産性を上げることも求められます。でも患者の生活背景などを把握するには時間をかけることも必要です。それについて会社から指摘を受けたことはありませんが、質の高い薬物治療を提供することと企業の利益を生み出すこと、この両方について常に意識して仕事に携わりながら、どこかモヤモヤした気持ちを持っていたのも事実です。薬剤師が介入することで患者から感謝される、とてもやりがいのある仕事だと思います。価値の見合ったフィーをつけることはできないか、制度や政策にアプローチするにはどうしたらいいのか、その一つの答えが私の中では公衆衛生学や医療経済学だったのです。大学院では、薬剤師業務を評価するための足掛かりとなる研究をしていました。 ──現在、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室で特任研究員として研究活動に従事されていますが、どんなことをされていますか。 国立保健医療科学院の委託を受けて、指定された医薬品や医療機器の費用対効果の分析を行っています。わが国では、2019年から費用対効果評価制度が導入されています。これは既存薬を対象として費用対効果を評価し、その評価結果を薬価に反映するものです。分析した結果については国立保健医療科学院を通じて国に提出されています。 ──今後の目標を教えてください。  自分の中で大事にしていることは、 EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を推進することです。これまで薬剤師の業界は、厚生労働省から「エビデンス作りを」ということ指摘されてきました。その意味で、薬剤師自身が薬剤師の価値を示すエビデンスを作ること、さらに作った後も制度に落とし込めるようにアプローチをしていくことが重要だと思っていますし、そういったことに携われるようになりたいと思います。  このたび日本薬剤師会の理事を拝命しました。各都道府県の薬剤師会の皆様の声に真摯に耳を傾け、さまざまな課題解決に向けて取り組んでいく所存です。    ──日髙さんが考えるこれから求められる薬剤師像について教えてください。  1つは患者の人生に寄り添って最期まで支えること。現場で感じたことは、患者は十人十色ということ。患者がどんな人生を送ってきたのか、どんな価値観を持っているの か、そういったことまで把握して、一人ひとりに合った薬物治療が提供できる薬剤師が求められるでしょう。  もう1つは大学院時代からパブリックヘルスを勉強していて思っていることなのです が、患者の行動変容を促すことが、健康アウトカムの改善につながるということです。行動変容を促すための言葉がけ、すなわちヘルスコミュニケーションを身につけた薬剤師が求められるのだと思います。余談ですが、調剤報酬で新たに算定できる項目が設けられても、相談いただく健康アウトカムが芳しくなければ、いずれその項目が減算されることもあります。 ──最後に薬学生に向けてメッセージをお願いします。  学生の間にぜひ自分の人生を引き上げてくれる人と出会ってください。そして、その人に出会ったら絶対につかんで離さないでください。『ハリーポッター』で言うと、ダンブルドア校長のような半歩先を照らしてくれる人、『ONE PIECE』だったら、ルフィに麦わら帽子を託したシャンクス、『鬼滅の刃』で言ったら、炭治郎を徹底的に鍛え上げた左近次、『僕のヒーローアカデミア』なら、緑谷出久を育てたオールマイトといった存在です。  競技かるたを題材とした漫画『ちはやふる』の中では、「たいていのチャンスのドアにはノブがない。自分からは開けられない。誰かが開けてくれたときに迷わず飛び込んでいけるかどうか…」というシーンがあります。目の前にあるチャンスは絶対に逃さないようにしてください。 日髙玲於(ひだか・れお) 1991年生まれ。北里大学卒業後、株式会社千葉薬品に入社。在宅医療研修を修了後に株式会社フロンティアファーマシーに出向。計5年間従事した後に慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科へ進学し、修士課程を1年間で短期修了し公衆衛生学修士(MPH)を取得、その後、慶應義塾大学医学部衛生学公衆衛生学教室HTA公的分析研究室特任研究員に就任、2024年6月30日より公益社団法人日本薬剤師会理事に就任。

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