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【一日一笑】最初から変更してくれれば良かったのに

更新日:7月8日

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医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー

公園前薬局(東京都八王子市)

堀 正隆


薬剤師冥利に尽きるうれしい言葉を受け取り、薬剤師としてちょっと鼻が高くなる…。ルンルンである。しかし、毎回初めてのよう。そこはちょっと待て。こういった場合には、認知機能の低下を疑い、クリニックや病院にトレーシングレポート(保険薬局の薬剤師が得た情報を処方医に、即時性・緊急性は低いものの、処方医に伝える必要があると薬局薬剤師が判断した場合に作成し、情報提供するもの)を用いて、認知症のテストを勧めてみるのも薬剤師としての重要な仕事である。


認知症を疑うポイントとしては、よく言われるのが、財布の小銭の量があまりにも多く、常にお札で支払う。あるいは、季節にそぐわない服装などいろいろある。そのため、自身でポイントを確認しておき、患者さんと向き合う際には少しでも疑わしいと感じた際にはなるべく迅速に対応できるよう心掛けている。


薬がなーい!!!

血圧の薬、気管支ぜんそくの薬、咳止めなどなど、もうすでに何が通常通り出荷されていて、何の流通が止まっているのかを認識するのも大変なほど。医療用医薬品の出荷調製品(医薬品の供給が不安定になること)については、メーカーなどから直接伝えられるものや、メーカーHPなどを自身で調べる、SNSなどで他の薬剤師が発信しているものでも確認。しかし、出荷調製品であると発表されていないものでも実際に注文してみると入ってこないという商品もある。


通常、処方箋を患者さんから受け取った際には処方監査を行い、お薬手帳等を確認し調剤を始めていたが、在庫がない薬が書かれている場合、すんなりと調剤を進めることはできず、卸への出荷状況の確認、近隣薬局への小分け依頼による薬の調達。どうしても入手できない場合は、医師に対して処方薬の変更の依頼をする。処方薬の変更依頼に関しては、現在の状況で対応可能な薬剤の提示が必須となるため、代替案の提示を行うことが重要となる。

医師に提案を行うと薬不足があまり騒がれていない頃は、あまり状況を理解してもらえず、「変更はしませんので、持っている薬局に行ってもらってください」と言われてしまうことも珍しいことではなかった。


この場合、処方箋をつらそうな患者さんに返却し、薬の有無の確認を行った薬局名を伝え、それ以外の薬局に行くしかないと伝えることくらいしかできない。

処方箋を返却した患者さんからは、後日「あの後数時間探し回ったけど、どこにもなくて、多くの薬局から変更依頼があったみたいで、何軒か行ったところでしょうがなく先生が処方薬の変更をして薬をもらえましたけど、最初からそうしてくれれば良かったのに」と愚痴をこぼす患者さん。


現在も医薬品の供給はかなり厳しい状況が続いている。卸業者の方々も薬局からの問い合わせが多く非常に仕事量が増えていると思われる。ある卸の方は、若い頃先輩と飲みに行くと「昔は製薬業界の景気も良くて本当にいい時代だったよ」なんて昔話をよく聞かされて、昔話をされてもといつも思っていたようだが、最近では、後輩と飲みに行くと自分でも「昔は薬の流通がしっかりしていてね、今みたいに薬が手に入らないことなんて薬局に連絡しないでよくて、本当にいい時代だったよ」なんて、昔話をするようになってしまったと話されていた。


昔話が始まった時点で右から左へ聞き流しがちな私だが、今回の昔話はいつかきっと…という、若い人へのエールに感じた。この状況しか経験していない入社3年目までの方々は、一体どんな思いで仕事と向き合っていただろう…。いつかまた安定供給される日が来ると信じて。ただし、収束した後の「昔は、薬が手に入らない時代があって苦労したよ、君たちは当たり前に手に入っていいね」のタイプの昔話を口に出すのはNGで。

現在は医師も薬剤の不足を理解している方々が多い。今の薬剤師に求められる専門家としての意見!薬が手に入らないなら薬剤師は何をすればいい?代替案を探し、薬剤変更の場合、用量変更が必要?変更してもらうとしたら飲み合わせは?薬剤間の特性や違いは?さらにコストとベネフィットは?


医師が普段使い慣れている薬から他剤へ変更してもらうためのサポート、薬のプロとしての薬剤師の視点。今の医療を支えるために薬剤師の力を発揮するチャンスだ!!!


公園前薬局
公園前薬局








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