top of page

【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】薬局・ドラッグストアで働く管理栄養士の教育の必要性と教育効果について

更新日:7月8日

札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士)川口 美喜子



ree

薬局やドラッグストア(DRGs)で働く管理栄養士のリカレント教育の必要性

薬局やDRGsで働く管理栄養士が、地域の健康ニーズを把握し、健康意識向上や生活習慣病予防、高齢者の健康サポート、栄養管理のデジタル化支援の展開に積極的に進むと医療サービスの需要が減少し、医療費削減に大きく貢献できる可能性がある。急速な高齢化と人口減少により、社会保障費の増加や労働力不足、医療・介護の負担増大といった顕在化している課題解決に尽くす使命があると考える。しかし、薬局やDRGsの管理栄養士の活動がその効果を発揮するには、現在なお多くの企業や店舗が課題解決のために模索している。その内容は、1.専門性の役割の認知度が低く、本来の栄養業務の役割が果たせていない。2.専門知識を更新する教育、研修が提供されていない。3.専門職としての待遇が報酬を含めて不十分で離職率が高い。4.栄養指導が健康保険適用範囲の制度外である。5.地域社会の健康増進への積極的な関与が不足している。などが考えられる。

薬局やDRGsの管理栄養士の専門性を有効にすることを困難にしている原因追究の研究調査を進め、栄養管理の専門家として医療現場や予防医療について地域に密着し、高齢者の健康予防と在宅療養の栄養サポートを提供する存在として活動することを推し進めなければならない。これまで本誌の誌面で、地域での貢献、薬剤師との連携、がんの栄養支援に活躍している薬局管理栄養士の好事例を紹介してきた。

今後はさらに、日本では確立されていない薬局・DRGsの管理栄養士独自の具体的な教育支援体制と活動施策の推進について構造化する必要があると考える。


薬局やDRGsの管理栄養士のリカレント教育の実施報告

管理栄養士リカレント教育として、大妻女子大学において第8回夏期研修会を2024年8月15(木)~8月18日(月)の連続5日間、ハイブリッド形式で開催した。Aコース:生活環

境を巡る予防・重症化予防の支援を考える、Bコース:地域資源・多職種協働・住宅訪問栄養食事指導を考える―の2コースを準備し、Aコースは、薬局やDRGsの管理栄養士、歯科の管理栄養士教育として構成した。講義内容は、DRGsの管理栄養士が顧客から受ける相談内容を収集、分析して構成した。フレイル予防、低栄養対策、摂食嚥下障害、認知症、生活習慣病、アレルギー疾患、がん栄養、妊産婦と乳幼児に加え、制度の理解、地域の診断と行政との連携について講義を行った。ICTツールを活用した栄養アセスメントも実施した。

本研修は、栄養ケアプロセスの理解の実習と実践的な調理実習によって、知識や技術を習得するための研修ではなく、これからさらにどう学ぶか、そして研究後に即戦力として地域に活躍、貢献できることを目的としている。


薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、コミュニケーション能力にある

地域住民の生活習慣の問題を解決するために、生活習慣を変えることができる。そして、予防医療に取り組むことで、少ない薬で病気を治すという医療経費削減に貢献する。予防は支える医療であり、そのためにはコミュニケーションによる、人々の安心感、分かり合えるということが重要である。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、笑顔で顧客に対応ができるという、非言語で「語る」という最も支持的なコミュニケーションを体得していることだと思う。


研修会の事例検討(実際の薬局での対応)

事例:70歳代 女性、相談内容「暑さによる食欲低下、外出する機会が減り、運動量が少なくなったことでさらに食欲が湧かないことが増えた。さっぱりとしためん類など簡単に済ませることが多い」

応対した管理栄養士の情報提供「めん類に加えてたんぱく質を補うような納豆や卵、豆腐などプラス1品を提案。外出の機会つくることで食欲を取り戻すことがあるので、暑い時間を避けて短時間の散歩だけでも気分転換に試すことを勧めた。体重計測の習慣がないため来店の際に測定して、様子を見ることを伝えた」

この事例から、低栄養の予防も重要であるが、まず食欲があり、おいしい食事をしてもらうための栄養アセスメントとそれに基づく、具体的な栄養支援を受講者が話し合った。

1.今回の栄養相談の対応について考えてみよう。

2.この顧客の時間軸を先に進めて、女性に起こりうることを想定してみよう。

 生活の場(環境)、栄養状態、機能面、生活面、精神面 など

3.女性が望む暮らしを継続するために同職種で連携協働できること、すべきことを考えてみよう。

事例を通し、栄養相談の対応には、知識や技術そして経験が不足していること、さらにレベルアップできることを確認できた。薬局やDRGsの管理栄養士の強みは、生活習慣病予防及び介護予防の「予防」の段階から非言語で「語る」支持的なコミュニケーションによって良い援助者となれることを感じた。


薬局やDRGsで働く管理栄養士の教育効果について

日本においても薬局が医療提供の一環としての役割を強化していく中で、事例のように日常的な相談において、アセスメントによって地域で管理栄養士の貢献度を高め、地域の健康管理・予防医療において重要な役割を果たすと考える。

そのため、薬局やDRGsの管理栄養士の課題と貢献できるための要素や要因の関係性を捉える研究調査を実施し、問題の解決策のために本質的な管理栄養士の教育体制の構築が必要になると考える。

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page