【一日一笑】コロナ禍が問う日本の医療リテラシー
- toso132
- 9月29日
- 読了時間: 4分
医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー
公園前薬局(東京都八王子市)
堀 正隆

自分の既往歴は才能という強い武器の一つ!
私自身も既往歴は、いくつかあるが最も近いものでいうと昨年は胃潰瘍になった。痛みがどう変化していったか、どんな検査をどこでしたか、どんな治療をしたか、リスクファクターについてなど自分自身の経験、そして最悪な様態まで考えが行く不安。
胃潰潰瘍の患者さんと話をするとき、経験から患者さんの気持ちや症状もある程度理解でき、自身のために調べた知識も豊富である。親身にかつ丁寧に説明を行い患者さんに寄り添う姿勢をとることができる。皆様も多かれ少なかれ悩んだ経験や既往歴などいろいろあると思う。同じ症状の患者さんがいらっしゃったら職場の誰よりも自分が一番寄り添えると自信を持って!!
薬剤師という職業は、その経験や既往歴を長所にすることができる仕事。自分自身が悩んできたこと、既往歴をどうか誇りに持ち、少しでも目の前の患者さんの気持ちに寄り添える薬剤師になって欲しい。あなたのその経験は才能。ナラティブベーストメディスン、ま、同病相哀れむだね!!!
コロナ、未知なる感染症が広がりでも見えたお任せ医療と医療の乱用!
武漢での報道、後にクルーズ船ダイヤモンドプリンセス号の報道が出始めた。なんだか、遠い存在に感じていた、どこか現実味を帯びない感覚だったものが限りなく身近に感じ始めたことを覚えている。その後、この感染症への恐怖が一気に広がった。最初はマスク不足から薬局の戦いは始まった。毎日何人もの方がマスクの購入希望で来局されていたが、在庫状況を伝えるたびに心苦しい思いをした。その後、ある程度確保できるようになるとその頃には感染のピークを迎えていた。処方内容としては、調剤にさほど時間のかかるものではなかったが、あまりの件数に薬局の待ち時間も増え、患者さんの苛立ちもあり、心無い言葉をかけられることも少なからずあった。肉体疲労はもちろん、精神的疲労も多かったように感じる。そんな中で、私たちが支えてもらったのもまた患者さんの笑顔や温かい言葉だったように思う。マスクを二重、ガウン、手袋にゴーグルを着用し、細心の注意を払っての対応。涼しい時期はまだよかったものの、この格好で夏には炎天下の中走り回って対応に追われたものだ。このいかつい姿で近隣のコロナ陽性患者の隔離室へ薬を届けたとき。そこには不安に押しつぶされそうで涙ぐまれていた患者さん。「どうしたらいいのか分からなくて、不安だったけど対応してもらえて、薬も届けてくれて本当にありがとう」「薬剤師さん、コロナで不安だったけど説明も受けて、笑顔で質問にも対応してくれて元気をもらえた」などの言葉や、完治後に笑顔で挨拶に来てくれた方。そんな、一つひとつがとても身に沁み医療従事者としてのやりがいを感じた。
また、今回の件で考えさせられたこととして、クルーズ船へ派遣された私の友人からの話では、海外の乗客は自身の服用している薬剤を把握していたが、日本人のほとんどが把握できていなかったというものだった。日本の医療においてヘルスリテラシーの低さを目の当たりにし、衝撃を受けた。日本では皆保険制度の恩恵から、一人ひとりの医療費負担が低く、能動的ではなく受動的に医療を受けている日本人の感覚からきていることは間違いないが、せめて、自身で覚えられないものに対してはしっかりとお薬手帳を持つことへの重要性を再確認することの大切さ。そもそもお薬手帳の始まりは、皆さんも学んだであろう、1993年に起こった、別々の病院から抗ウイルス薬と抗がん薬が出され、1カ月のうちに23人の方が併用し、15人の方が亡くなられた「ソリブジン事件」をきっかけとして導入され、2年後の1995年の「阪神・淡路大震災」の時に、服用薬剤の把握を行うために活用され、災害においての備えの意味でも認知され、急速に普及するようになった。さらに、2011年「東日本大震災」においても、災害時においてのお薬手帳の必要性が再認識された。しかし、まだまだ手帳の重要性を理解できていない患者さんはいらっしゃる。

マイナポータルは、とても大切だ。でも、医療関係者は服用歴だけが分かればいい?もちろん最低限必要な情報。だけど、お薬手帳には服用中の薬剤はもちろん、薬剤服用中の体調変化、使っているサプリメント、体質についてなど多くの情報が記載されたこの手帳が医療従事者にとって患者さんの状況把握には、とても重要なもの。現場からできるだけ多くの方から患者さんに伝えてほしいと願っている。
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