後悔しない就職活動をしよう
- toso132
- 5月1日
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更新日:7月8日

将来、どんな薬剤師になりたいですか?病院で患者さんのために働きたい、新薬開発に貢献したい、それとも新しい医療サービスを創り出したい。薬剤師の活躍の場は大きく広がっています。新卒として就職できるのは人生で一度きりです。新卒という大切な時期を有効に使い、自分にぴったりのキャリアを見つけよう。
答えてくれた人 株式会社NSS 取締役社長 寺本卓矢さん
―ここ数年の就職動向の傾向についてお教えください。
6年制薬学教育が臨床を意識したカリキュラムが中心になったことで、病院、薬局、ドラッグストアを選ぶ人が大半を占めています。特にここ10年で伸びているのがドラッグストアです。ドラッグストアの人気が高まった背景には、店舗数の増加に加え、OTC医薬品だけでなく保険調剤も行うという認知の変化、キャリアパスの多様化、大手ドラッグストアの規模や福利厚生の充実などが挙げられます。学生の中には大手企業は安定しているというイメージも持っている人もいます。大手企業が多いドラッグストアが選ばれるのもそういったことが関係しているかもしれせん。
一方、病院は減少傾向にあります。専門性を高めたいと思っている方にとっては最適な職場なのですが、奨学金の返済を意識している人は、給与面のところで選択肢から外す傾向が多いようです。最近では病院が病院薬剤師の不足を問題視し、資金貸与制度を導入している病院もあります。大学で勉強している間は病院がお金を貸与し、借りた学生は薬剤師の免許を取った後、一定期間その病院で働けば貸付金の返済が免除されるという制度です。また、大学も病院薬剤師を確保するために、地域の病院で勤務することを条件に入学する「地域枠」を設けています。これは修学期間一定の金額を貸与し、不足する地域の病院に行って一定期間勤務することに返還が免除されるというものです。今後の動向に注目したいところです。
そのほか目立ったところでは製薬企業やCROがあります。新薬メーカーなら、医薬品開発あるいは、医療者と医薬品についてディスカッションして医薬品の適正使用を推進する、ヘルスケア企業なら市場調査を通じて消費者のニーズを把握して新しい商品を開発する、CROなら治験を通じて医薬品の開発を支援するといった仕事に魅力を感じているようです。そのほか、狭き門ですが、厚生労働省や地方の公務員などもあります。ドラマや映画の影響で麻薬取締官や科学捜査研究所を目指す人もいます。
ごく少数ではありますが、従来の病院、薬局、ドラッグストア以外の職種を選択する学生も出てきています。SNSの発達により情報収集が容易になったことで、従来の王道ルート以外の選択肢を知る機会が増えたことが要因として考えられます。具体的には、電子カルテや医療系アプリの開発、化粧品開発、医療系コンサルタント、メディア関係、一般企業のコンサルタントなど、薬剤師免許を使わない就職を選ぶケースも見られます。薬学部が多く存在する都市部は薬剤師が充足傾向にありますので、今後このような傾向は増加する可能性があります。

―就職活動はいつから始めたらいいでしょうか。
5年生の10から11月にかけて面接が始まり、薬局やドラッグストアではこの時期に内々定を出しています。そして内定受諾書を提出するのが6年の夏。早い人は5年生の1月頃には内々定をもらっているケースもあります。そう考えると、遅くとも4年生のうちからやった方がいいと思いますね。4年生の冬に薬学共用試験、4年生の終わりから5年生にかけて実務実習がありますから、余裕をもって取り組むのがいいでしょう。SNSで企業情報などを発信しているところもありますので、まずはそこからはじめるとよいでしょう。
インターンシップにはできる限り参加することをお勧めします。インターンシップは企業の人と多く話せるチャンスだからです。5年生は病院実習と薬局実習がありますが、薬局実習は配属先が偶然に左右されるため、大手、中小、地場チェーンなど、複数のインターンシップに参加することで、それぞれの特徴を理解し、自分に合った職場を見つけることが重要です。インターンシップは4年生から実施している企業もあり、5年生ではほぼ全ての企業が実施しています。募集情報はインターネットやSNS、大学のキャリア支援センターなどで公開されています。
OB・OG訪問は一般職種ではよく行われますが、薬学部では病院、ドラッグストア、薬局への就職ではあまり一般的ではありません。そのため、自主的に情報収集やインターンシップへの参加を行うことが重要になります。企業(製薬会社など)ではOB・OG訪問が盛んに行われています。
企業説明会は年間を通して開催されており、極端に言えば1年生からでも参加できますが、実際には3年生から参加する人が多く、メーンは5年生、一部4年生、ごく少数の3年生という構成です。合同企業説明会は1日で複数の企業の話を聞けることが大きなメリットです。

―就職活動における自己分析の位置づけは。
自己分析は就職活動において非常に重要です。例えば、好きなこと、得意なこと、やりたいこと、この違いを整理すると、やりたいことが明確になります。自己分析を行うことで、自分に合った職場を選び、入社後のミスマッチを防ぐことができます。自己分析では、自分が将来どうなりたいのか、好きなことと得意なことのバランス、自分の価値観などを明確にします。自己分析を手伝ってくれる企業や大学のキャリア支援センターなども活用するといいでしょう。
自己分析とキャリアプランは密接につながっています。キャリアプランを立てる際は、将来のことばかりを見据えるのではなく、自分が何を大切にしたいのかという軸を明確にすることが重要です。自己分析と並行して業界研究を進めることで、自分が目指すべき方向性が見えてくるかもしれません。自己分析せずに就職すると、入社後の離職につながる可能性が高くなります。新卒薬剤師と他学部の大卒の3年以内の離職率はほぼ同じですが、薬剤師の場合は就職が容易な分、ミスマッチによる離職が多いと考えられます。私のところにも毎年、入社してから半年くらいで相談に来る人がいます。自分で選べる立場だからこそ自己分析は、真剣に取り組んでほしいと思います。
―転職を視野に入れた就職活動はありでしょうか。
結論あまりおススメはできないです。さまざまな事情で転職してしまうのは仕方ないと思いますし、キャリアアップとしての転職は良いケースもあります。
しかし転職は以前に比べて難易度が上がっており、特に異業種への転職は非常に困難になっています。新卒で入社する企業でどれだけの経験とスキルを積めるかが、その後のキャリアに大きく影響します。例えばドラッグストアでOTC医薬品の販売のみを行ってきた場合、保険調剤の経験がないとみなされるため、転職が難しくなるケースがあります。そのため、目先の給与や福利厚生だけでなく、将来のキャリアを見据えた就職先選びが重要です。
長く勤められる、自身を成長させてくれる企業選びが就職活動の本質かもしれません。

―就職活動がうまくいかない時の対処法は?
就職活動がうまくいかない時は、一人で抱え込まずに誰かに相談することが重要です。大学の研究室の先生、先輩、キャリア支援センター、就職情報サイト、就職支援サービスなど、相談できる窓口はたくさんあります。特に大学のキャリア支援センターは身近な相談先として積極的に活用するといいでしょう。
また、身近にさまざまな企業の採用担当もいるので、相談してみるのも良いかもしれません。身近な人にほど相談しにくいというケースもありますので、うまく周りを活用できるとよりスムーズに就職活動を進めることができると思います。直接弊社HPに問い合わせて相談してもらっても構いません(笑)。
―薬学生にメッセージをお願いします。
新卒カードは一生に一度しか使えない貴重な機会です。就職活動には十分な時間をかけ、慎重に企業を選ぶことが重要です。安易に就職先を選んでしまうと、後悔する可能性があります。
実務実習や国家試験の勉強で忙しい時期ではありますが、低学年のうちからさまざまな業界を知るために積極的に行動することをお勧めします。情報収集だけでなく、実際に企業や施設を訪問し、職場環境を見学することも非常に重要です。社会人になってから他の企業や施設を見学する機会はほとんどないからです。
自己分析をしっかりと行い、自分に合った就職先を見つけてください。
寺本卓矢(てらもと・たくや)株式会社NSS 取締役社長

2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う
株式会社NSS 取締役社長
2015年 日本薬科大学卒業後、地域密着の調剤薬局へ就職。そこで管理薬剤師、エリアマネージャー、新卒採用、新卒研修構築などを経験。薬局での薬剤師業務の傍ら新店舗開発や人事採用、人材採用コンサルタント業務を行う。薬剤師として常に新たなチャレンジをしながら医療業界、特に調剤薬局と薬学生に対して貢献できるよう業務を行う。その後、現在は新店舗開発や人事採用、法人営業、薬局M&A、イベント企画を行う。






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