【日本薬学生連盟】第26回年会を開催 緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割を議論
- toso132
- 5月1日
- 読了時間: 3分
更新日:3 日前

3月17日、第26回年会「薬学生の集い」が開催された。この年会は、薬学生の団体である一般社団法人日本薬学生連盟が主催する年に一度の大型イベントである。今年のテーマは「YELL」で、「参加者を応援したい、年会を経て前に進んでいってほしい」という思いが込められている。OTC化に向けた緊急避妊薬の現状に関する講演や、お薬カードゲーム、お土産交換会など、参加者一人ひとりが主体的に学び、交流を深めるための多彩な企画が用意された。
オープニングでは、年会部長の坂田実優さん(大阪医科薬科大学4年)がイベントの概要を説明した。続いて、会長の馬越春莉さん(東京薬科大学3年)が団体紹介を行い、「積極的に参加して、明日への一歩を踏み出すための糧にしてください」と参加者に呼びかけた。
メーン企画では、SRHR Pharmacy Project代表の鈴木怜那氏が登壇し、緊急避妊薬の現状と薬剤師の役割について解説した。鈴木氏は、緊急避妊薬のアクセスが日本において非常に困難であることを指摘し、その背景には、性と生殖に関する健康と権利(SRHR:セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)という概念の理解不足があることを説明した。
私たちは日々の生活の中で、知らず知らずのうちに他者の尊厳を傷つけていることがある。

特に、結婚や出産といったプライベートな領域においては、無意識の言葉や行動が相手を深く傷つけていることもある。このような現状に対し、近年注目されているのがSRHRという概念だ。SRHRの考え方では、自分の体は自分のものとして、プライバシーや自己決定が尊重されるべきであるとされている。例えば、子供を持つか持たないか、いつ、何人持つかを自分自身で決められる権利などが含まれる。しかし、日本ではまだこの考え方が十分に浸透しておらず、「いつ結婚するの?」「子供はまだ?」といった質問が、相手の尊厳を傷つける可能性があるという認識が低いのが現状だ。鈴木氏は「特に緊急避妊薬に関しては、女性が自分で決定することへのハードルが高く、SRHRの考え方が十分に反映されているとは言えない」と指摘する。日本では緊急避妊薬の悪用・乱用を懸念する声も根強く、薬剤師の目の前での服用を義務付ける案も出ている。
緊急避妊薬は、①排卵を遅らせることで精子と出会うタイミングをずらす②受精卵が着床しにくいよう子宮内膜を薄くする③精子が子宮内に入りにくくする―という主に3つの仕組みで妊娠を防ぐ薬であり、中絶薬とは異なる。また、性暴力被害者のみが使用する薬ではなく、避妊に失敗したあらゆる人が使用する可能性がある。
薬剤師は、薬局やドラッグストアで妊娠検査薬や低用量ピルなど、SRHRに関連する製品を扱う機会が多くある。鈴木氏は「SRHRの考え方を理解することで、相手の不安を解消して、適切な情報や選択肢を提供し、自己決定をサポートすることができる」と述べた。
さらに、日本で認められている避妊法が少ない現状や、性教育の遅れについても触れ、薬剤師が正しい知識を提供し、相談しやすい環境をつくることが求められると訴えた。そして薬以外のことで相談があった場合は、一人で抱え込むのではなく、地域の専門機関につなげることも重要だと指摘した。最後に鈴木氏は「緊急避妊薬に関する正しい知識を身につけ、偏見を持たずに患者と向き合ってほしい」と呼びかけた。
講演後には、参加者が事例をもとにグループワークを行い、緊急避妊薬に関する理解を深めた。




Comments