top of page

検索結果

このサイトを検索

空の検索で459件の結果が見つかりました。

  • 患者が求める医薬品情報とは?

    2025年6月10日、一般社団法人くすりの適正使用協議会の講演会で、認定NPO法人支えあい医療人権センターCOMLの山口育子理事長が「患者が欲しい医薬品情報とは」と題し、医療現場における患者と情報の課題、そして「くすりのしおり」の活用について講演した。 医療現場における患者と情報の課題 COMLがこれまで対応した7万1,000件以上の電話相談から見えてくるのは、いまだに患者の期待が医師に一極集中している現状である。これは、チーム医療が浸透している医療者側とは対照的に、医師以外の医療職が自身の専門性や役割を患者に十分に伝えられていないためだと山口氏は指摘する。薬剤師についても、「薬のプロ」とは認識されているものの、その具体的な役割が患者には見えにくく、「役割の見える化」が喫緊の課題とされている。 また、説明不足を訴える相談が後を絶たない現状も浮き彫りになった。インフォームドコンセントが「説明すること」と解釈され、医療者からの一方通行な情報提供になりがちである点が原因である。たとえ薬剤師が丁寧に説明しても、患者が一度に多くの専門情報を全て理解し記憶することは困難であり、結果として「聞いていない」と捉えられるケースが多いとのこと。この問題を解決するためには、説明後の「患者の理解確認」が不可欠であり、患者自身に説明内容を言語化してもらうことで、理解度や誤解の有無を把握し、早期の情報共有を図るべきだと提案した。さらに、患者と医療者が情報を共有し、共に考えて決めていく「Shared Decision Making(共有意思決定)」の重要性も強調された。 医療コミュニケーションの課題と国民性 山口氏は、現在の患者が抱える大きな課題として、「理解できていない人が多い」点を挙げている。情報過多の社会において、患者の周囲には情報があふれているにもかかわらず、それを適切に受け止め、理解し、自らの意思決定につなげられる人は少ないのが現状である。特に、わからないことを「わからない」と言えず、理解できていないのに頷いてしまう患者が多いことを指摘し、医療者側からの「確認」の必要性を訴えた。 また、患者と医療者の間に生じる「思いのずれ」も課題である。例えば、医療安全のための患者確認も、その目的が患者に伝わっていない場合、不信感やトラブルに発展することがある。インターネットの普及により、誤った情報をうのみにしたり、それを武器にしたりする患者もいるため、患者側の情報リテラシー向上が喫緊の課題であるとした。薬剤師には、患者に信頼できるサイトを案内するなど、情報リテラシー向上への寄与が求められている。 加えて、医療現場での質問の意図が患者に伝わっていない問題も指摘された。薬局での個人情報記入の際も、その目的が説明されないために、患者が適切に情報提供しないケースがあるという。ルーティンワークであっても、その理由や目的を伝えることで、患者が自身の情報提供の重要性を理解し、適切な連携が促進されると述べた。 これらの課題を克服できない背景には、日本において子供の頃から医療の仕組みや受診の仕方を学ぶ機会がないこと、そして日本人全体が日常的にコミュニケーションが苦手であるという国民性が影響していると山口氏は分析している。医療におけるコミュニケーションは高度なものであり、自己決定や自己主張を苦手とする傾向も、患者が主体的に医療に参加することを阻害していると述べた。 治療スタイルの変化も、患者の孤独感を増幅させている要因である。かつての入院中心の治療から外来治療が主流となり、医療者との関わりが減少したことで、患者は副作用への対処などを孤独な状況で行うことが増えている。だからこそ、薬局の薬剤師の存在が重要であると強調し、薬剤師の役割発揮を長年訴え続けてきたものの、目に見える変化が少ないことにジレンマを感じていると述べた。 医薬分業が進み、処方箋の受け取り率が8割を超えた現在でも、複数の医療機関にかかり、複数の薬局を利用し、複数のお薬手帳を持つ患者が少なくないため、一元管理という薬剤師の重要な役割が果たされていない現状も指摘された。マイナンバーカードによる一元管理も進むと見込まれるが、普及には時間を要することから、患者に対して一元管理の必要性を具体的に説明することの重要性を強調した。 講演の最後に、山口氏は、患者にとって分かりやすい情報提供のために、「くすりのしおり」や「ミルシルサイト」のさらなる充実を強く求めた。現状では、一部の製薬会社で患者向け資材が整備されていないケースがあり、それが患者に「情報提供に後ろ向きな会社」という印象を与えかねないとの懸念を示した。患者の理解促進に不可欠な患者向け資材の掲載率が、現在の約25%から50%、さらには75%へと向上し、患者に前向きな製薬会社が増えることを期待し、講演を締めくくった。

  • 薬学生のプラットフォームを創り、新しい価値を提供

    一般社団法人日本薬学生連盟 2024年度会長 馬越春莉 一般社団法人日本薬学生連盟(APS-Japan)は、「薬学生に新しい価値を」「薬学生のプラットフォームを創る」というミッションを掲げ、世界の薬学生との交流や、病院。企業への訪間、さらには薬物乱用防止などの公衆衛生活動などを通じて、将来への見間を深めている薬学生による薬学生のための団体である。ここでは4月に会長に就任した馬越春莉(東京薬科大学3年)さんにAPS-Japanの活動内容や薬剤師に対する思いなどについて間いた。 ―APS―Japanの概要についてお教えください。 WHO(世界保健機関)やFIP(国際薬剤師連合)と正式にパートナーシップを結ぶIPSF(国際薬学生連盟)に日本で唯一正式加盟している、薬学生による薬学生のための団体です。ミッションとして、「薬学生に新しい価値をJ「薬学生のプラットフォームを創る」を掲げ、さまざまなイベントを実施しています。これらのミッションを達成するために、他大学との交流に加え、他学部や社会人の方との意見交換、国際会議への参加などの機会を提供し、会員の未来への足掛かりにしていただいております。北は北海道、南は九州まで全国の薬学生 が参加しており、2023年2月末時点の会員数は369人です。基本的には薬学部の1年生から6年生までが主体となって活動しているのですが、一部他学部の学生も参加しています。 3大イベントとして、主に1年生の新規会員を迎える「新歓」、秋新歓と呼ばれる「薬学 生ジャンボワー」(薬ジャム)、1年の集大成である「年会」があり、毎年恒例の行事とし、 コロナ禍を除き、対面(新歓は遠方の方に配慮してオンラインを併用)で開催しています。新歓と薬ジャムは東京、名古屋、大阪、九州の主要者卜市で開催しているのですが、年会は1カ所で行うため、全国の薬学生が1年1こ1回対面で会う場となっています。昨年の年会では、『はたらく細胞』の医療監修者である原田知幸先生を講師としてお招きし、医療知識の伝え方について学びました。 また団体内には、6部署、3委員会があり、それぞれのセクションがイベントを企画し、年間を通して開催しています。中でも力を入れているのが、国際渉外部が中心となって取り組んでいる国際イベントヘの参加です。2023年度はインドネシアで開催されたアジア太平洋薬学生シンポジタム(APPS)に日本の代表として私を合め3人が参加しました。APPSはIPSFのアジア支部が年に1度開催する会議で、シンポジタムやワークショップ、ポスターセッションなどを通じて学術的、文化的な交流を深めていきます。 そのほかに、公衆衛生委員会では、献血の呼びかけ、世界糖尿病デーには、啓発活動を行っています。さらに地域連携委員会では、薬膳コーラを作るイベントを開催したり、専門家を講師としてお招きして、医療に関する知識を深めたりしています。各イベントは、薬ジャムと同様に主に東京、大阪、名古屋、九州のほか、オンラインでも多数開催しており、その情報はSNSで発信しています。会員でない方も参加可能なので、興味があれば気軽にのぞいてみてください。 ――APPSに参加されたようですが、どんな経験をしましたか。 昨年7月3日から9日にかけてジョグジャカノレタで開催されたAPPSには、副会長として参加し、期間中は主にRA(RegiOnalAssembly)という総会に出席し、それぞれの団体の活勃や薬学部の現状などについて情報交換しました。また、参加したアジアの学生との観光や会食を通じてインドネシアの国民性や文化について学びました。海外の学生は自分の考えを持っており、たくさんの議論が交わされ、多くの刺激を受けました。 私自身、英語を学びたいという思いがあってAPSJapanに入会したのですが、国際会 議への参加は貴重な経験になりましたね。 ――APS-Japanの魅力について馬越さんの考えをお教えください。 団体として動くことに意味があると思っています。団体があるから普段会えないような専門家に声をかけることもできますし、団体が積み重ねてきたノンハタを先輩に教えていただく、あるいは団体で学んできたことを後輩に教えていくという場をつくれるのが団体としての魅力です。私自身、将来、小児期医療に携わりたいと思っているのですが、以前、弊団体の活動でつながりを持った小児科医の先生にお話を伺う機会があり、そのときに「日本の小児期医療はまだまだ遅れている。最新の知識を得るには海外の論文を読むことが必要になるので、しっかりと英語の勉強をしてはしい」という言葉をいただき、モチベーションが高まりました。 また、薬学生同士だけでなく、さまざまな医療系の学生にもつなぐことができます。それは弊団体が主体的に行うこともありますし、逆に他団体から声をかけていただくこともあります。薬学という枠組みにとらわれるのではなく、海外の方を合め、さまざまな立場の方と交流を深めることで、自分の視野が広がるのだと思います。 ――APS-Japanの会員になるにはどうしたらいいのでしょうか。 ホームページ(https:〃aps,apanoorg/)から登録することが可能です。所定のフォームに自身の情報を記載し、入会費(2,000円)をお支払いいただければレギュラー会員として登録されます(年会費は無料)。レギュラー会員になれば、弊団体からイベント等のお知らせメーノレを受け取ることが可能なりますので、各種イベントにいつでも参加することができます。各オベントの活勃レポートをホームベージに掲斎完していますので、ご関心のある方はご参照ください。 ―― 自分で企画したいことがある場合はどうすればいいのでしょうか。 自分が企画側の立場になりたいと思った場合はスタッフ会員になっていただきます。 スタッフ会員になる手順として、レギュラー会員になったときと同様に所定のフオームに記載していただきます。どの部門・委員会に所属したいのか等を記載し、その後、希望する部門。委員会の責任者と面談したのちに、スタッフ会員として活動していただきます。 ――卒業後はAPS―Japanとのつながりはなくなるのでしようか。 OB・OGとしてイベントに招待して、企画の運営を手伝っていただくことがあります。その中で新たな交流が生まれ、仕事や就職といった将来のことを相談できる場も生まれます。またOBoOGの方は病院薬局、製薬企業のほか、海外でボランティア活動をされている方もいらっしゃいます。仕事への理解を深めるために、OB・OGの方に講演を依頼することもあります。さまざまな領城でご活躍されている方のお話を聞くことで、新たな気づきが生まれているようです。 ――会長としてどんなことをしていきたいですか? 薬学生に対して幣団体の魅力をどう伝えていくかが当面の課題になっています。国際系に強いこと、団体だからこそできることに焦点を当てて、薬学生に広く周知していきたいと思います。 ――馬越さんにとって薬剤師とは ジェネラリストやスペシャリストということがいわれていますが、私自身いろいろな学会に参加して感じたことは、薬全体の知識を持っていることが薬剤師であり、それが医師との違いだと思っています。それに加え、医療の技術が進歩し、小児期医療、周産期医療、がん医療といった専門領域で多くの薬剤師が活躍しています。その意味で薬剤師はジェネラリストでもあり、スペシャリストでもあるのだと思います。今後そういった薬剤師が増えることで、薬剤師の社会的価値は高まっていくのではないかと考えます。 ―― 最後に薬学生にメッセージをお願いします。 何か自分自身がやりたいことによい進してほしいと思っています。例えば、学生だから学会は敷居が高いと思うかもしれませんが、私自身もそのような思いをもちつつ1年生のときに初めて学会に参加しました。学会に参加したことで、自分が分からない部分を理解できたこと、大学での学びが、臨床につながっていることに気づかされました。いろいろなことに挑戦することで、新しい世界や将来の夢が見つかるかもしれせん。それは学生のうちにしかできないことです。高学年になれば、実務実習や就職活動、そして国家試験が控えています。なるべく低学年のうちから行動に移してほしいと思います。 馬越春莉(ばこし・はるり) 2004年生まれ。神奈川県出身。日本薬学生連盟2023年度副会長を経て、2024年度会長を務める。東京薬科大学3年。中学生からバドミントン部で活動し、高校時代は全国大会出場を目指し、マネジャーとして高校総体に出場した。現在はバドミントン部の部長を務めている。趣味は散歩、バドミントン、手芸、学会巡り。「子どもたちを笑顔にしたい」その想いから、既成の概念にとらわれるのではなく、主体的に学び、何事にも挑戦することを常に意識して学生生活を送っている。

  • 【アインホールディングス】さくら薬局グループの買収で2,000店舗超の薬局ネットワークを構築へ

    2025年5月29日、アインホールディングスはさくら薬局グループを子会社化するため、さくら薬局グループの特別目的会社である株式会社NSSK-Wの持株会社である株式会社NSSK-WWの全株式を取得する株式譲渡契約を締結した。 この戦略的買収により、アイングループの薬局業界における存在感は大きく拡大し、グループ全体の調剤薬局店舗数は2,000店舗を超える見込みである。 アインホールディングスはこれまで、新規出店とM&Aを積極的に活用し、薬局ネットワークの拡大を進めてきた。アインホールディングスは、医療機関と連携した在宅医療対応や継続的な服薬管理、「かかりつけ薬剤師・薬局」機能の強化など、全国各地で地域に密着した医療サービスの提供に尽力している。 今回子会社となるさくら薬局グループは、「さくら薬局グループ」ブランドで約800店舗の調剤薬局を展開しており、首都圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)、関西圏(大阪、兵庫)、東海地方(愛知、静岡)といった人口集中エリアに強固な基盤を持つ業界大手の一角である。 さくら薬局グループを迎え入れることで、アインホールディングスはさらなる店舗網の拡充を図るとともに、両社の事業ノウハウを融合させる。これにより、患者様および地域医療に対するサービスを一層充実させ、全国の地域医療インフラとしてグループの企業価値を高めていく考えだ。

  • 問◆薬剤師の業務に関係するインターネット等の利用に関する記述のうち、正しいのはどれか。【国試探検隊】

    問141薬剤師の業務に関係するインターネット等の利用に関する記述のうち、正しいのはどれか。1つ選べ。 ❶有名人のAさんに対して調剤を行ったことについて名前と処方内容を含めてSNSに投稿する。 ❷亡くなった後の患者の情報は個人情報でなくなるため、薬剤師の個人ブログで患者の情報を公表する。 ❸インターネット上の医療情報は、裏付けがある情報か検討した上で利用の可否を検討する。 ❸薬局のホームページにおいて、一般用医薬品の広告をする際、利用者の口コミを表示する。 ❹医療機関では漏えいのおそれがあるため、セキュリティ対策を行ったとしてもWi‐Fi(無線 LAN)は利用できない。 (第108 回薬剤師国家試験より) *** 蔵之介です。一般問題【法規・制度・倫理】から、インターネットに関する設問です。新傾向の問題だと少々焦りますが、出題する側にとってもコア・カリに準拠していないなどと批判を受ける覚悟がいります。そのため難易度は平易で常識的な問題が多いです。1~4は、どこか?違和感があります。5は、特に問題はないと思います【解答は5】。 これでは単なるヤマカンなので、順に整理します。1は、守秘義務違反。薬剤師の守秘義務は、職業法で規定される他の医療従事者とは違い、医師とともに刑法134条に記された格調高い?ものです。2は、薬機法第66条の広告規制に抵触します。サプリメントだと、画面の下に小さく「個人の感想です」などと表示されていますが、一般用医薬品なので、66条2の「医師その他の者がこれを保証したものと誤解されるおそれがある記事を広告…」に該当します。3、最近、フリーWi-Fiを導入する医療機関が増えてきました。他方、医療機器への悪影響や導入コストのために採用していない病院もあります。総務省の「無線LANのセキュリティに関するガイドライン」でも、禁止されてはいません。4、死亡した人の情報は、「個人情報」に該当しないので、個人情報保護法の対象にはなりません。しかし、厚労省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」において、生存する個人の情報と同様の安全管理措置を講ずることが求められています。なお、この文章はチャットGTPで作成しました(真っ赤な嘘です)。 ■解説 蔵之介(アポクリート株式会社)

  • 【クオール】宮城県とがん啓発・検診推進で包括連携協定を締結

    左から、宮城県村井知事とクオール株式会社柄澤社長 クオールホールディングス株式会社の中核子会社であるクオール株式会社は、宮城県とがん啓発およびがん検診の受診率向上に関する包括連携協定を締結した。この協定は、薬局を拠点に地域住民へがんに関する正しい知識と検診の重要性を伝え、がんの早期発見を促すことで、県民の健康寿命の延伸を目指すものである。 協定締結の背景 日本における死亡原因の最たるものががんであり、2022年の厚生労働省の統計によれば、およそ4人に1人ががんで命を落としている。がんによる死亡や治療に伴う生活の質の低下を防ぐには、早期発見・早期治療が極めて重要である。クオールは、宮城県が進めるこの取り組みに賛同し、地域住民のクオリティ・オブ・ライフ向上への貢献を目指し、今回の協定締結に至った。 今後の取り組み 薬局での情報提供強化: 全国のクオール薬局にて、がんに関するパンフレットやポスターを掲示し、地域住民ががん検診の重要性を認識しやすい環境を整備する。 薬剤師・医療事務スタッフによる推進活動: 薬剤師や医療事務スタッフが、来局者に対してがん検診の受診を促す声かけや情報提供を積極的に行う。 クオールは、地域に密着した薬局の強みを活かし、がんの早期発見・早期治療に繋がる具体的な活動を展開することで、宮城県民の健康増進に寄与していく。

  • 【スタートアップ】「第2の医薬分業」と在宅医療の最前線

    東京在宅薬局株式会社 ほうもん薬局江東店 代表取締役・薬剤師 田中 平(たなか・たいら) 「東京都内で訪問在宅の一番を目指す」と意気込むのは、東京在宅薬局株式会社の代表取締役で薬剤師の田中平さんd。現在は、個人在宅を事業の中心に据え、目黒区、新宿区、江東区で3店舗の薬局を運営している。 大学卒業後は「数字で評価される仕組みが自分には合っている」という理由から製薬企業に就職した田中氏。彼が就職した頃のMR(医薬情報担当者)の仕事は、製品の流通を担う部分が多かったものの、時代の変化とともに、製品に特化した情報を医療従事者に提供することが仕事の大半を占めるようになった。田中氏は当時を振り返り、「MR活動のあり方が変化し始めた頃から、自分がイメージしている仕事ではない気がして違う道を模索し始めた」と語る。そして、「取引先の薬局の社長と話しているうちに、薬局薬剤師ならMRとは違った立ち位置で医療に貢献できるのではないかと考えた」と、独立に至った経緯を説明する。 独立を決意してからの田中氏の行動は迅速であった。M&Aの仲介会社に登録し、半年後には開業したという。それが社会人3年目の27歳のときであった。近隣には2つのクリニックがあったが、1ヶ月後に悲劇が訪れる。1つのクリニックの院長が新型コロナウイルス感染症に罹患して亡くなり、そこから薬局の売り上げは3分の1近くまで落ち込んだ。このままでは倒産という状況であったが、翌年2月、新宿の薬局からM&Aの話を持ちかけられ、半年後には2店舗目の薬局を立ち上げた。「何とか今の状況を打開したいという思いで契約した」と田中氏は胸の内を明かす。 2店舗目の薬局は特別養護老人ホームを担当していたこともあり、施設への営業をかけた。しかし、すでに大手薬局が担当しているところが大半であったため、個人宅にターゲットを絞った。2021年の夏頃から在宅クリニックに営業をかけ、ようやく1件を担当することができた。田中氏は「薬のことはもちろんのこと、食事や生活環境など、外来では見えなかった部分があり、薬剤師が介入する場面が多いと痛感した」と在宅医療における薬剤師の役割を指摘する。そして、「患者やその家族、他職種から薬剤師冥利に尽きる一言をいただくことも多く、そこからは個人在宅を事業の中心に据えようと決意した」と話す。そこから同社の取り組みが他職種から評価され、今では約250人の患者を担当しているという。 そして2023年4月には、江東区に3店舗目の薬局を新規開業する。「訪問先が片道30~40分かかるところもあったため、効率化を図ること、新規開業しても経営の見通しが立ったため、訪問在宅に特化した薬局をオープンした」と田中氏は経緯を説明する。3店舗目の薬局を開業してから1年ほど経つが、現在は500人の患者を担当しているという。 田中氏に今後の展望について尋ねると、「院外処方箋が普及した時期を『第1の医薬分業』とすると、在宅医療が普及していく現在は『第2の医薬分業』ではないかと考えている。個人在宅に関しては大手薬局もそれほど取り組めておらず、中小薬局が生き残る道はここしかない。一人ひとりの患者のニーズに合わせた対応をすれば、東京で一番になれるのではないかと思っている」と語る。そして、「訪問在宅を盛り上げたいと思っている学生がいましたら一度、問い合わせてほしい。疑問に思っていることがあれば何でも回答する」と締めくくった。 取材後記 田中社長の話を伺い、「在宅薬局」として薬剤師がしっかりと介入し、評価され、必要とされることを改めて再認識させられた。真の意味で「選ばれる薬局」となっている「ほうもん薬局」さん。これからに注目である。(薬学ステップ寺本)

  • 問◆アジソン病で特徴的に認められる所見はどれか。【国試探検隊】

    問 63 アジソン病で特徴的に認められる所見はどれか。1つ選べ。 ❶高血圧 ❷高血糖 ❸体重増加 ❹色素沈着 ❺活動性亢進               (第108回薬剤師国家試験より) *** 蔵之介です。必須問題【病態・薬物治療】からの出題です。アジソン病は副腎の機能不全により、副腎ホルモンが不足する疾患。起立性低血圧や易疲労感、食欲不振、体重減少、色素沈着などの症状がみられます。また、コルチコステロイドが不足すると、インスリン感受性が高まり低血糖を起こします【解答は4】。 アジソン病と言えば、第35代アメリカ大統領のジョン・F・ケネディが有名です(政治家に病気はタブーなので、在職中は公表されていません)。若々しい雄姿と卓越したスピーチで、キューバ危機、アポロ計画、公民権法などを克服し、ギャラップの世論調査では歴代1位と絶大な人気を誇ります。しかし、現実はだいぶ違うようです。幼少時から病弱で、アジソン病による脊髄の発育不全で、家庭内では松葉杖状態。副腎ホルモン(コルチゾン)の長期的な補充療法による副作用のせいか、骨粗鬆症(腰痛)、精神症状、不眠など、大量の鎮痛薬や睡眠薬を手放せず、マリリン・モンローをはじめとする醜聞には事欠かきませんでした(日本のケネディ神話とは、かなりのギャップが…)。閑話休題。 ウォール街の相場師の異名を持つ父ジョセフは、株式や不動産投資で巨万の富を築きました。息子を大統領にという野望は、長男のジョセフ・ジュニアの戦死により次男のジョンに託されました。莫大な選挙資金をバックに、三男ロバートが選挙戦を仕切り、名スピーチライターのセオドア・ソレンセンなどのブレーンを抱え、43歳の若さで大統領選に挑戦しました。対立候補は経験豊富な共和党のリチャード・ニクソン。歴史的な接戦を制したのは、史上初のテレビ討論会です。スタイリストを雇い、濃紺のスーツに入念なメーキャップ。対するニクソンは、議論を重視しノーメイクに無精ひげ。薄い色のスーツは弱々しい印象を与えました。ラジオを聴いた人はニクソン、テレビを見た人はケネディに軍配を挙げました。カラーテレビの時代ならコウメ大夫のように厚塗りしないと隠せませんが、60 年代のモノ黒テレビには、「色素沈着」は日焼けしたスポーツマンに映りました。映像の時代のフロントランナーの暗殺事件を伝えたのも、日米初の衛星テレビ中継でした。 出題予想 バセドウ病のようなメジャーな疾病ではなく、少々マイナーな「橋本病」を予想します。 ■解説 蔵之介(アポクリート株式会社)

  • 「企業で活躍したい薬学生必見!! ~薬連OB・OG講演会~」スタッフインタビュー

    一社)日本薬学生連盟外務部は2024年2月17日に「企業で活躍したい薬学生必見!! ~薬連OB・OG講演会~」を開催しました。この企画では、学生時代に弊団体に所属し、現在は製薬企業で勤務する先輩2人に、ご自身の現在の仕事内容や就職活動の体験談などを伺いました。今回はこの企画で企画長を務めた山田真由香さん(名城大学薬学部3年生)と2023年度外務統括理事の余語佑月さん(同2年生)にお話を聞きました。 ── このイベントを企画した理由を教えてください。 山田: 私は製薬企業への就職に関心がありましたが、大学ではなかなかお話を聞く機会がありませんでした。そこで、この企画を通して情報収集したいと思いました。 余語: 私はもともとOB・OGを呼んだ企画を行いたいと考えていました。また、この団体の卒業生の進路は多彩で、非常に興味深いお話を聞けると思ったことも理由です。 ── 企画を行ううえで楽しかったことはありますか。 山田: 企画冒頭のアイスブレークの内容を考えるのが楽しかったです。ブレークアウトルームに分かれて自己紹介をしたあと、司会者が参加者に質問をするというゲームを行いました。その質問内容を考えるのが楽しかったです。 余語: 講師との連絡がカジュアルで、話しやすかったです。通常は講師の方とメールでやり取りすることが多いのですが、今回はLINEでやり取りしていたため堅苦しくなりませんでした。 ── 企画の中で大変だったことはありますか。 山田: 2人の先輩に同じ情報を共有するのが少し大変でしたが、全体的にはほぼスムーズに準備を行うことができました。 余語: 全体的に企画準備をスムーズに行うことができ、大変なことは特にありませんでした。今回はスタッフの人数が少なかったため一人ひとりが責任感を持って活動したことや、講師であるOGの方がこちら側の勝手を分かっていたのが理由かもしれません。 ── 企画当日、先輩からお話を聞いた感想を教えてください。 山田: 就職活動の大変さを実感しました。これまでは5年生から行おうと思っていましたが、今回のお話を聞いてもう少し早めるべきであるとも感じました。また、社会人に求められるコミュニケーションを実際に見て学ぶことができ、今後の学生生活の糧となる時間でした。 余語: 私も就職活動の大変さを実感しました。また、卒業生の優秀さを実感しました。企画中に英語の勉強法が話題に挙がったのですが、その時に「目に入ったフレーズを唱える」とおっしゃっていて、非常に勉強になりました。これまでも「何かをしないといけない」と思ってはいましたが、今回の企画で「何をするべきか」が明確になったような気がします。 ── 企画を通して成長したと思うことはありますか。 山田: これまでは自分でできることは一人でやりたいと思っていましたが、今回の企画を通して人を巻き込むことを覚えました。スタッフに仕事を振ることができ、自分の仕事量もそこまで多くなりませんでした。 余語: 企画を有意義に活用できたことです。これまでは企画の運営ばかりに集中してしまって当日の講演を聞く余裕がなく、企画から得られるものがほとんどありませんでした。今回はこれまでの経験もあるのか、運営以外にも目を向けられるようになりました。講演をじっくり聞くことができたので、実りある時間を過ごすことができました。 ── 今後この団体でやってみたいことはありますか。 山田: 学年関係なく楽しく遊べる企画をやってみたいです。以前謎解きゲームをやってみたいと思っていたのですが実現できなかったので、いつかやってみたいです。 余語: 就職活動をほとんど知らない低学年が、就職活動をある程度経験した高学年のアドバイスを聞く機会をつくってみたいです。今回のイベントで、低学年でも就職活動に興味を持っている学生が少なくないことに気が付きました。そこで、低学年と高学年が関わる機会を設けるためにもこのような企画をやってみたいです。

  • 問◆長井長義によって世界で初めて単離されたのはどれか。【国試探検隊】

    問72 長井長義によって世界で初めて単離されたのはどれか。1つ選べ。 ❶モルヒネ ❷エフェドリン ❸アトロピン ❹サリチル酸 ❺コカイン (第108 回薬剤師国家試験より) *** 蔵之介です。必須問題【法規・制度・倫理】からの出題です。長井長義といえば、生薬(麻黄)からエフェドリンの単離・抽出、渋谷にある長井記念館などが思い浮かびます【解答は2】。あらためて調べてみると、「日本の薬学の父」と呼ぶのにふさわしい人物です。長井長義は、幕末の頃、阿波国・徳島藩の御典医の長男として生まれました。藩命による長崎留学。勝海舟や坂本龍馬の撮影(当時は最先端のハイテク技術)で有名な写真家、上野彦馬から化学の手ほどきを受けました。明治4年、大学東校(東京大学の前身)に在学中、明治新政府の第1回官費留学生に選ばれ、ベルリンに留学。有機化学の大家、ホフマンに師事。助手に任命され13年間滞在しました。森鴎外(明治17年)や夏目漱石(明治34年)より、かなり早い時期です。帰国後は、医薬分業と薬剤師養成に尽力し、東京薬学会(現・日本薬学会)を創設して初代会頭に就任。爾来(じらい)40余年にわたり薬学会の発展に寄与しました。エフェドリンは大日本製薬によって製品化されました。今日でもヱフェドリン「ナガヰ」として販売され、局方にも収載されています。 また、テレーゼ夫人とともに女子教育に力を入れ、日本女子大学や雙葉学園の設立に貢献しました。雙葉会のシンボルである双葉葵(ふたばあおい)は植物学に精通した長井の提案とされます。テレーゼ夫人は、大正11年に来日したアインシュタイン夫妻のドイツ語通訳も勤めました。没後、長井邸は日本薬学会に寄贈され、この地に長井記念館が建設されました。エントランスに博士の胸像、地下2階には夫人の名にちなんだレストラン「テレーゼ」、8階には日本病院薬剤師会の事務局があります。 出題予想 人名が続くなら、カタリン・カリコ(mRNAワクチン)、柳沢正史(スボレキサント)、杉本八郎(ドネペジル)、フェリックス・ホフマン(アスピリン)… ■解説 蔵之介(アポクリート株式会社)

  • 【日本製薬工業協会】武田薬品工業・宮柱明日香氏が新会長に就任日本の医療の未来をCo-creation(共創)で切り拓く

    日本製薬工業協会(製薬協)は2025年5月22日、新会長に就任した武田薬品工業株式会社の宮柱明日香氏による記者会見を開催した。 日本の医療の持続可能性と革新への貢献 宮柱氏は、会長就任にあたり、日本のユニバーサルヘルスケアの素晴らしさを再認識するとともに、将来に向けて持続可能な医療と社会をどのように築いていくかという問いを提起した。また、人生を変える革新的な医薬品を世界中の患者が待ち望んでいるとし、研究開発型企業としての責務を果たすことの重要性を強調した。 日本の医療における課題と解決への貢献 日本が直面する課題として、超高齢社会における医療ニーズの増加と働き手の減少、限られた医療資源の効果的かつ公平な再分配、そして科学技術やデジタル技術の進展に伴う医療の高度化と地域・経済格差の拡大を挙げた。特に、がんや再生医療、AI診断など最先端医療をいかに迅速に国民に届けるかが重要だとした。 製薬産業が果たすべき役割は単に医薬品を届けるだけでなく、革新的な医薬品の安定供給による治療成績の向上と国民の健康寿命の延伸、研究開発集約型産業としての経済発展への寄与、そしてデジタルテクノロジーを活用した医療の「見える化」を通じた新たな価値創造と社会的インパクトの創出を挙げた。これらの価値を相補的に高めながら、日本の持続可能な医療に貢献していくことを表明した。 Co-creation(共創)による価値創出の重要性 製薬産業が今後さらなる価値を生み出すためには、「国民、患者、政府、行政、アカデミア、医療機関など、幅広いステークホルダーとのCo-creation(共創)が不可欠である」と宮柱氏は強調し、製薬協として発信力を高めながら、国、行政、アカデミア、患者、国民といった多様なステークホルダーと対話を進め、共通の社会的課題解決に向けて連携していく考えを示した。さらに、海外の業界団体とも密に連携し、グローバルな視点から製薬産業の課題を議論していく意向を表明した。 日本の創薬力強化と生産体制の整備 日本の創薬力の低下も課題であるとし、世界売上上位医薬品の起源国における日本の位置づけが6位であることを指摘。特に、米国と比較してバイオファーマへの投資規模が著しく低い現状に危機感を示した。 また、国内医薬品供給の7割以上を輸入に依存している現状を挙げ、パンデミックや地政学的リスクに対する脆弱性を指摘。バイオ医薬品や新規モダリティ分野における国内での生産機能の誘致と強化が必要であると訴えた。これは、経済安全保障上のリスク回避だけでなく、医療の高度化に伴う新規モダリティの自国生産による経済成長、そして高品質な医薬品の製造拠点としての国際貢献にも繋がると述べた。 日本の医薬品市場、課題解決の最優先は「市場の魅力度向上」 日本の医薬品市場は、2016年以降、度重なる制度変更によって停滞を続けている。特に、特例拡大再算定や費用対効果評価、中間年改定といった制度は、詳細が直前に決定されることが多く、企業の投資判断を鈍らせてきた。2024年にイノベーション促進制度が導入され、革新的な新薬の価値が一部認められたものの、2025年の中間年改定など、依然として市場の予見性は低い。 この結果、日本の医薬品市場は2015年から10年間で年平均成長率がわずか0.4%と横ばい状態にある。これは、他の先進国が年平均5%から8%で成長している現状と比較すると著しく低く、市場の魅力度向上が喫緊の課題となっている。 宮柱氏は、「日本市場の魅力度を高める」ことを最優先事項に挙げ、その実現には、革新的な医薬品の価値を適切に評価し、特許期間中にその価値を維持する薬価制度の構築が不可欠だと強調した。日本が成長する市場であることを世界に示すことが、投資を呼び込む上で極めて重要だとの認識を示している。 過去8年連続で実施されてきた薬価改定が、社会保障の自然増を医薬品価格の引き下げで賄ってきた歴史がある。これにより、日本の薬価制度は限界に達しており、根本的な原因は高齢化に伴う社会保障費のシーリングが厳しすぎることにあると製薬協は分析。このシーリングのあり方を根本的に見直すよう求めている。 さらに、昨年来議論が続く医療技術評価(HTA)のあり方についても、改めて議論を徹底するよう要望している。特に、現在のHTAモデルが日本に本当に適しているのか、また、国民皆保険制度下で一部の医薬品を保険適用から除外するような議論は、医療保険の本質的な議論を伴うべきだと強調した。 医療DX推進による効率化と質の向上 医療DXの推進が、ヘルスケアエコシステム全体の効率化と質の向上に資すると述べた。製薬企業における創薬・臨床開発・生産のスピードアップ、流通における医薬品の適時供給、医療機関での臨床効果向上と治療アクセス改善といったメリットを挙げ、限られた財源を有効活用するためにも日本の医療DXを加速させる必要性を強調した。 DXによる効率化は、企業による革新的医薬品への再投資、医療機関での負担軽減と人材育成、そして患者・国民にとっての医療体験の向上、どこに住んでいても同じ質の医療を受けられること、有事の際の医薬品の安定供給、個別化医療の実現に繋がるとした。

  • 【スタートアップ】「患者さんのために」を胸に:ゼロからの開業を成功させた薬剤師・森田幸一さんの歩み

    株式会社ALL EARS うさぎ薬局 代表取締役・薬剤師 森田幸一 「妻には迷惑をかけていると思いますが、それでも一緒に働いてくれているので感謝しかないですね」と話すのは、神奈川県横浜市緑区でうさぎ薬局を経営する薬剤師の森田幸一さんだ。森田さんは大学院卒業後、病院に勤務していたが、40歳の2023年 6月に独立開業した。   医療職にあこがれて薬学部に入学。大学院時代での病院研修がきっかけで、病院に勤務していたが、薬剤師としてもっと患者さんに関わりたいという思いが募り、独立することを意識するようになったという。当時は子供が3人いたことから、自分の夢と家族を守るというバランスを考えながら独立を模索していた。最初は既存の薬局で働くことを周囲の人に勧められたが、薬局の勤務経験がまったくなく、管理薬剤師として働くことができないと状況だったことから、M&Aでの薬局開業を目指したという。「個人には収益のいい案件はなかなかまわってこない」というM&A仲介会社の言葉にも負けず、とにかく自分が納得できる案件を探し続けた。「独立のことを妻に話したら、最初は反対されましたが、いろいろな案件を見せて、将来の見通しを話しているうちに、応援してくれるようになりました。子供たちの将来をつぶさないためにも失敗は絶対に許されない状況でしたので、開業するまで2~3年の時間を要しました」と森田さんは同時を振り返る。   現在、薬剤師はパートを含めて5人、医療事務2人の体制で薬局を運営している。処方箋枚数は月間約1000枚で、主応需先は小児科のクリック。「調剤報酬改定の議論の中で処方箋の集中率のことが話題になっていたので、今後集中率を下げるために方策を立てていきたいです」と話す。 近年、医薬品の供給不足が課題となっており、地域の薬局が医薬品を取りそろえるのが難しい状況だ。特に森田さんのような新規で開業した薬局は、その状況は深刻だという。「取引歴がないと、卸から断られるケースがあるので、薬局を経営している大学時代の友人に薬を譲ってもらったり、医師に状況を説明して代替薬を使ったりというふうに工夫しています」と森田先生。 外来に加えて訪問在宅も3人の患者さんを担当している。近隣のクリニックに電話をして、患者さんへの思いや薬剤師介入のメリットなどを医師に話し、現在、在宅医療に力を入れているクリニックと連携して、患者さんの療養生活をサポートしている。 「患者さんから『ここまでやってくれた薬剤師はいなかった』という言葉をいただいたとき薬局を開業してよかったと思いましたね」と話す。 今後の目標について聞くと、「タイミングが合えば2店舗目を開業したいですね。それには信頼の置ける薬剤師が必要になります。これまでも家族をはじめ、大学時代の友人、病院時代の同僚者や先輩など、たくさんの人に支えられてここまでくることができましたが、これからも人とのつながりを大切にしていきたいと思います」と森田さんは締めくくった。 取材後記 森田社長とは、うさぎ薬局の開業前の病院薬剤師時代から何度かお話しさせていただきました。悩みながらも勇気を持って開業し、まだ時間はたっていませんが、既に地域に愛される素晴らしい薬局へと成長しております。今回の取材でも、森田社長の心意気やモチベーションの原点などを感じることができました。うさぎ薬局のさらなる成長と今後の新店舗も楽しみにしております!(薬学ステップ 寺本)

  • 日本薬学会第145年会シンポジウム:「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」

    シンポジウムの様子 日本薬学会第145年会シンポジウム:「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」 3月26日から29日にかけて開催された「日本薬学会第145年会」において、金城学院大学薬学部教授の大嶋耐之氏がオーガナイザーを務める一般シンポジウム「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」が開催された。行政、薬局、病院薬剤師、大学教員が登壇し、薬剤師を取り巻く環境変化と将来像について活発な議論が交わされた。 まず、大嶋氏はシンポジウム開催の背景として、2040年に到来する課題を提示した。具体的には、①超高齢社会のピークと医療費の増大、②医療の都市部集中と過疎化、③テクノロジーの進化による薬剤師業務の変容、④厚生労働省の予測による約10万人の薬剤師過剰の可能性、である。これらの課題に対応するため、第8次医療改革計画では、在宅医療への関与拡大、地域医療との連携強化、デジタル技術の活用などが求められていると説明した。 そして、2040年に活躍できる薬剤師像として、①薬物療法に関する深い知識と最新の医療情報に対応できる能力、②医療人としての責任感と覚悟、③生涯学習の継続、を挙げた。 上田市議会議員の飯島伴典氏は、日本の人口動態、特に生産年齢人口の減少が深刻であると指摘した。その上で、薬剤師は処方箋通りの調剤だけでなく、国民の健康な生活を確保するために、地域包括ケアシステムにおいて地域特性を把握し、医療資源や必要なサービスを見える化する必要性を述べた。また、「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」への積極的な参加や、地域の課題解決に貢献するための手段としてのDX化の重要性を訴えた。さらに、2050年には人口空白地帯が増加する可能性に触れ、医療を中心としたまちづくりへの薬剤師の貢献を促した。 株式会社バシラックス代表取締役の大道一馬氏は、大手調剤薬局の経営悪化を指摘し、従来の店舗数拡大戦略のリスクを強調した。薬剤師の職域が狭まっている現状に危機感を抱き、脱処方箋、脱保険調剤の必要性を訴えた。そして、薬剤師が取るべき行動として、①専門性を高め、特定の分野に特化した薬局を目指す、②地域住民のニーズに応えられる地域に根ざした薬局を目指す、③DXやAIを活用し、業務効率化や新たなサービス提供に取り組む、④オンライン薬局との差別化を図り、独自の価値を提供する、ことを挙げ、「特色ある薬局をつくれば、生き残っていける」と強調した。 聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の前田幹広氏は、AIが進化する中で、定型業務は代替される可能性が高い一方、臨床判断能力、コミュニケーション能力、倫理観、プロフェッショナリズムはAIには代替できない重要なスキルであると述べた。特に、薬の開始や調節、中止などの臨床判断や、多職種と連携する上でのコミュニケーション能力の重要性を指摘した。AIを活用して効率的に情報を収集・分析し、得られた時間を患者とのコミュニケーションや臨床判断にあてることで、より質の高い医療を提供できると提言した。 熊本大学生命資源研究・支援センターの竹尾透氏は、未来の薬剤師育成における大学の役割として、高度な専門知識と研究能力を備えた薬剤師の育成を挙げた。そして、大学だけでなく、病院、薬局、企業、行政といった薬学教育に関わるプレイヤーが連携し、学生の実践的な学びを支援することの重要性を強調した。最後に、薬剤師の未来は明るいと述べ、学生たちが夢を語り合い、行動することで、新たな未来を切り開いていけるとエールを送った。 シンポジウムの締めくくりとして、大嶋氏は「薬剤師教育、受け入れ体制、そして薬剤師自身の学び方や行動変容の重要性が浮き彫りになった。行動こそが未来を拓く鍵」と述べ、それぞれの立場で具体的な行動を起こすことの重要性を強調した。また、未来の薬剤師像を模索し、行動を促すための新たな組織「 Be Reborn Pharmacist Council 」の発足を発表し、「学生を主体とした討論会を積極的に開催し、未来の薬剤師像について議論を深めたい」と意気込みを語った。 展示会場で開催されていた日本病院薬剤師会と日本薬科機器協会が主催したリクルートコーナー。30の病院と団体が参加した。また27日には、学生を対象にしたワークショップを開催し、病院薬剤師の業務や専門薬剤師の魅力を紹介した。

bottom of page