日本薬学会第145年会シンポジウム:「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」
- toso132
- 5月1日
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更新日:5月14日

日本薬学会第145年会シンポジウム:「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」
3月26日から29日にかけて開催された「日本薬学会第145年会」において、金城学院大学薬学部教授の大嶋耐之氏がオーガナイザーを務める一般シンポジウム「2040年に生き残るための薬剤師職を考える」が開催された。行政、薬局、病院薬剤師、大学教員が登壇し、薬剤師を取り巻く環境変化と将来像について活発な議論が交わされた。
まず、大嶋氏はシンポジウム開催の背景として、2040年に到来する課題を提示した。具体的には、①超高齢社会のピークと医療費の増大、②医療の都市部集中と過疎化、③テクノロジーの進化による薬剤師業務の変容、④厚生労働省の予測による約10万人の薬剤師過剰の可能性、である。これらの課題に対応するため、第8次医療改革計画では、在宅医療への関与拡大、地域医療との連携強化、デジタル技術の活用などが求められていると説明した。
そして、2040年に活躍できる薬剤師像として、①薬物療法に関する深い知識と最新の医療情報に対応できる能力、②医療人としての責任感と覚悟、③生涯学習の継続、を挙げた。
上田市議会議員の飯島伴典氏は、日本の人口動態、特に生産年齢人口の減少が深刻であると指摘した。その上で、薬剤師は処方箋通りの調剤だけでなく、国民の健康な生活を確保するために、地域包括ケアシステムにおいて地域特性を把握し、医療資源や必要なサービスを見える化する必要性を述べた。また、「人生会議(アドバンス・ケア・プランニング)」への積極的な参加や、地域の課題解決に貢献するための手段としてのDX化の重要性を訴えた。さらに、2050年には人口空白地帯が増加する可能性に触れ、医療を中心としたまちづくりへの薬剤師の貢献を促した。
株式会社バシラックス代表取締役の大道一馬氏は、大手調剤薬局の経営悪化を指摘し、従来の店舗数拡大戦略のリスクを強調した。薬剤師の職域が狭まっている現状に危機感を抱き、脱処方箋、脱保険調剤の必要性を訴えた。そして、薬剤師が取るべき行動として、①専門性を高め、特定の分野に特化した薬局を目指す、②地域住民のニーズに応えられる地域に根ざした薬局を目指す、③DXやAIを活用し、業務効率化や新たなサービス提供に取り組む、④オンライン薬局との差別化を図り、独自の価値を提供する、ことを挙げ、「特色ある薬局をつくれば、生き残っていける」と強調した。
聖マリアンナ医科大学病院薬剤部の前田幹広氏は、AIが進化する中で、定型業務は代替される可能性が高い一方、臨床判断能力、コミュニケーション能力、倫理観、プロフェッショナリズムはAIには代替できない重要なスキルであると述べた。特に、薬の開始や調節、中止などの臨床判断や、多職種と連携する上でのコミュニケーション能力の重要性を指摘した。AIを活用して効率的に情報を収集・分析し、得られた時間を患者とのコミュニケーションや臨床判断にあてることで、より質の高い医療を提供できると提言した。
熊本大学生命資源研究・支援センターの竹尾透氏は、未来の薬剤師育成における大学の役割として、高度な専門知識と研究能力を備えた薬剤師の育成を挙げた。そして、大学だけでなく、病院、薬局、企業、行政といった薬学教育に関わるプレイヤーが連携し、学生の実践的な学びを支援することの重要性を強調した。最後に、薬剤師の未来は明るいと述べ、学生たちが夢を語り合い、行動することで、新たな未来を切り開いていけるとエールを送った。
シンポジウムの締めくくりとして、大嶋氏は「薬剤師教育、受け入れ体制、そして薬剤師自身の学び方や行動変容の重要性が浮き彫りになった。行動こそが未来を拓く鍵」と述べ、それぞれの立場で具体的な行動を起こすことの重要性を強調した。また、未来の薬剤師像を模索し、行動を促すための新たな組織「Be Reborn Pharmacist Council」の発足を発表し、「学生を主体とした討論会を積極的に開催し、未来の薬剤師像について議論を深めたい」と意気込みを語った。








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