【スタートアップ】「第2の医薬分業」と在宅医療の最前線
- toso132
- 5月30日
- 読了時間: 3分
東京在宅薬局株式会社
ほうもん薬局江東店
代表取締役・薬剤師 田中 平(たなか・たいら)

「東京都内で訪問在宅の一番を目指す」と意気込むのは、東京在宅薬局株式会社の代表取締役で薬剤師の田中平さんd。現在は、個人在宅を事業の中心に据え、目黒区、新宿区、江東区で3店舗の薬局を運営している。
大学卒業後は「数字で評価される仕組みが自分には合っている」という理由から製薬企業に就職した田中氏。彼が就職した頃のMR(医薬情報担当者)の仕事は、製品の流通を担う部分が多かったものの、時代の変化とともに、製品に特化した情報を医療従事者に提供することが仕事の大半を占めるようになった。田中氏は当時を振り返り、「MR活動のあり方が変化し始めた頃から、自分がイメージしている仕事ではない気がして違う道を模索し始めた」と語る。そして、「取引先の薬局の社長と話しているうちに、薬局薬剤師ならMRとは違った立ち位置で医療に貢献できるのではないかと考えた」と、独立に至った経緯を説明する。
独立を決意してからの田中氏の行動は迅速であった。M&Aの仲介会社に登録し、半年後には開業したという。それが社会人3年目の27歳のときであった。近隣には2つのクリニックがあったが、1ヶ月後に悲劇が訪れる。1つのクリニックの院長が新型コロナウイルス感染症に罹患して亡くなり、そこから薬局の売り上げは3分の1近くまで落ち込んだ。このままでは倒産という状況であったが、翌年2月、新宿の薬局からM&Aの話を持ちかけられ、半年後には2店舗目の薬局を立ち上げた。「何とか今の状況を打開したいという思いで契約した」と田中氏は胸の内を明かす。
2店舗目の薬局は特別養護老人ホームを担当していたこともあり、施設への営業をかけた。しかし、すでに大手薬局が担当しているところが大半であったため、個人宅にターゲットを絞った。2021年の夏頃から在宅クリニックに営業をかけ、ようやく1件を担当することができた。田中氏は「薬のことはもちろんのこと、食事や生活環境など、外来では見えなかった部分があり、薬剤師が介入する場面が多いと痛感した」と在宅医療における薬剤師の役割を指摘する。そして、「患者やその家族、他職種から薬剤師冥利に尽きる一言をいただくことも多く、そこからは個人在宅を事業の中心に据えようと決意した」と話す。そこから同社の取り組みが他職種から評価され、今では約250人の患者を担当しているという。
そして2023年4月には、江東区に3店舗目の薬局を新規開業する。「訪問先が片道30~40分かかるところもあったため、効率化を図ること、新規開業しても経営の見通しが立ったため、訪問在宅に特化した薬局をオープンした」と田中氏は経緯を説明する。3店舗目の薬局を開業してから1年ほど経つが、現在は500人の患者を担当しているという。
田中氏に今後の展望について尋ねると、「院外処方箋が普及した時期を『第1の医薬分業』とすると、在宅医療が普及していく現在は『第2の医薬分業』ではないかと考えている。個人在宅に関しては大手薬局もそれほど取り組めておらず、中小薬局が生き残る道はここしかない。一人ひとりの患者のニーズに合わせた対応をすれば、東京で一番になれるのではないかと思っている」と語る。そして、「訪問在宅を盛り上げたいと思っている学生がいましたら一度、問い合わせてほしい。疑問に思っていることがあれば何でも回答する」と締めくくった。
取材後記
田中社長の話を伺い、「在宅薬局」として薬剤師がしっかりと介入し、評価され、必要とされることを改めて再認識させられた。真の意味で「選ばれる薬局」となっている「ほうもん薬局」さん。これからに注目である。(薬学ステップ寺本)






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