【日本製薬工業協会】武田薬品工業・宮柱明日香氏が新会長に就任日本の医療の未来をCo-creation(共創)で切り拓く
- toso132
- 5月23日
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日本製薬工業協会(製薬協)は2025年5月22日、新会長に就任した武田薬品工業株式会社の宮柱明日香氏による記者会見を開催した。
日本の医療の持続可能性と革新への貢献
宮柱氏は、会長就任にあたり、日本のユニバーサルヘルスケアの素晴らしさを再認識するとともに、将来に向けて持続可能な医療と社会をどのように築いていくかという問いを提起した。また、人生を変える革新的な医薬品を世界中の患者が待ち望んでいるとし、研究開発型企業としての責務を果たすことの重要性を強調した。
日本の医療における課題と解決への貢献
日本が直面する課題として、超高齢社会における医療ニーズの増加と働き手の減少、限られた医療資源の効果的かつ公平な再分配、そして科学技術やデジタル技術の進展に伴う医療の高度化と地域・経済格差の拡大を挙げた。特に、がんや再生医療、AI診断など最先端医療をいかに迅速に国民に届けるかが重要だとした。
製薬産業が果たすべき役割は単に医薬品を届けるだけでなく、革新的な医薬品の安定供給による治療成績の向上と国民の健康寿命の延伸、研究開発集約型産業としての経済発展への寄与、そしてデジタルテクノロジーを活用した医療の「見える化」を通じた新たな価値創造と社会的インパクトの創出を挙げた。これらの価値を相補的に高めながら、日本の持続可能な医療に貢献していくことを表明した。
Co-creation(共創)による価値創出の重要性
製薬産業が今後さらなる価値を生み出すためには、「国民、患者、政府、行政、アカデミア、医療機関など、幅広いステークホルダーとのCo-creation(共創)が不可欠である」と宮柱氏は強調し、製薬協として発信力を高めながら、国、行政、アカデミア、患者、国民といった多様なステークホルダーと対話を進め、共通の社会的課題解決に向けて連携していく考えを示した。さらに、海外の業界団体とも密に連携し、グローバルな視点から製薬産業の課題を議論していく意向を表明した。
日本の創薬力強化と生産体制の整備
日本の創薬力の低下も課題であるとし、世界売上上位医薬品の起源国における日本の位置づけが6位であることを指摘。特に、米国と比較してバイオファーマへの投資規模が著しく低い現状に危機感を示した。
また、国内医薬品供給の7割以上を輸入に依存している現状を挙げ、パンデミックや地政学的リスクに対する脆弱性を指摘。バイオ医薬品や新規モダリティ分野における国内での生産機能の誘致と強化が必要であると訴えた。これは、経済安全保障上のリスク回避だけでなく、医療の高度化に伴う新規モダリティの自国生産による経済成長、そして高品質な医薬品の製造拠点としての国際貢献にも繋がると述べた。
日本の医薬品市場、課題解決の最優先は「市場の魅力度向上」
日本の医薬品市場は、2016年以降、度重なる制度変更によって停滞を続けている。特に、特例拡大再算定や費用対効果評価、中間年改定といった制度は、詳細が直前に決定されることが多く、企業の投資判断を鈍らせてきた。2024年にイノベーション促進制度が導入され、革新的な新薬の価値が一部認められたものの、2025年の中間年改定など、依然として市場の予見性は低い。
この結果、日本の医薬品市場は2015年から10年間で年平均成長率がわずか0.4%と横ばい状態にある。これは、他の先進国が年平均5%から8%で成長している現状と比較すると著しく低く、市場の魅力度向上が喫緊の課題となっている。
宮柱氏は、「日本市場の魅力度を高める」ことを最優先事項に挙げ、その実現には、革新的な医薬品の価値を適切に評価し、特許期間中にその価値を維持する薬価制度の構築が不可欠だと強調した。日本が成長する市場であることを世界に示すことが、投資を呼び込む上で極めて重要だとの認識を示している。
過去8年連続で実施されてきた薬価改定が、社会保障の自然増を医薬品価格の引き下げで賄ってきた歴史がある。これにより、日本の薬価制度は限界に達しており、根本的な原因は高齢化に伴う社会保障費のシーリングが厳しすぎることにあると製薬協は分析。このシーリングのあり方を根本的に見直すよう求めている。
さらに、昨年来議論が続く医療技術評価(HTA)のあり方についても、改めて議論を徹底するよう要望している。特に、現在のHTAモデルが日本に本当に適しているのか、また、国民皆保険制度下で一部の医薬品を保険適用から除外するような議論は、医療保険の本質的な議論を伴うべきだと強調した。
医療DX推進による効率化と質の向上
医療DXの推進が、ヘルスケアエコシステム全体の効率化と質の向上に資すると述べた。製薬企業における創薬・臨床開発・生産のスピードアップ、流通における医薬品の適時供給、医療機関での臨床効果向上と治療アクセス改善といったメリットを挙げ、限られた財源を有効活用するためにも日本の医療DXを加速させる必要性を強調した。
DXによる効率化は、企業による革新的医薬品への再投資、医療機関での負担軽減と人材育成、そして患者・国民にとっての医療体験の向上、どこに住んでいても同じ質の医療を受けられること、有事の際の医薬品の安定供給、個別化医療の実現に繋がるとした。






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