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  • 「薬局の深化〜Beyond the Pharmacy〜」日本調剤グループ学術大会 全国大会を開催

    日本調剤株式会社は、職員の専門性や発信力の向上、および現場での優良事例の共有を目的として「2026年度日本調剤グループ学術大会 全国大会」を2026年9月27日に開催した。今年度は「薬局の深化〜Beyond the Pharmacy〜」をテーマに掲げ、現地開催とWeb配信を組み合わせたハイブリッド形式で実施された。7年ぶりに社外からの聴講受け入れも再開され、会場には多くの社員や社外の関係者が詰めかけた。 個々の判断と行動がひらく「薬局の進化」 小城氏 大会の冒頭、代表取締役社長・社長執行役員の小城和紀氏が登壇し、開会の挨拶を行った。小城氏は、従来の「本部主導型」の運営から脱却し、個々の店舗や薬剤師がそれぞれの役割や能力を発揮して自ら考え行動する体制へのシフトを力強く宣言した。診療報酬改定や病院の機能分化に伴い、患者や医療機関の行動が変容する中、現場主導で信頼とファンを獲得する重要性を強調した。 続いて、教育情報部の弓削吏司氏より、本大会の3つの柱である「専門性の向上」「医療界のリーダーとしての社会への情報発信」「社内での優良事例の共有」について説明がなされた。対人業務へのシフトや医療DXの加速、2040年問題を見据えた在宅医療の推進など、急激に変化する社会構造において、薬剤師・管理栄養士・医療事務・本部が一体となって専門性を発揮していく姿勢が示された。 現場の実践事例:小児薬物療法における薬剤師の伴走と役割 一般演題の口頭発表では、地区選考を勝ち抜いた先進的な取り組みが紹介された。中でも特別講演2では、日本調剤光明池薬局の白鞘裕子氏が「事例から学ぶ小児薬物療法における薬剤師の役割〜『またあの薬剤師さんに相談したい』と言ってもらうために〜」と題して講演を行った。 白鞘氏は、小児領域において「子どもは小さな大人ではない」という原則のもと、年齢や成長段階、各家庭の生活リズムに合わせた細やかな服薬支援を行う重要性を解説した。具体的には、溶連菌感染症に対する10日間の服薬支援において、園や学校の帰宅時間や生活サイクルに応じた投与スケジュールを個別に提案し、確実な服用と定期的な尿検査の必要性について保護者へ十分な声かけを実施している。 また、ネフローゼ症候群などの難治性疾患では、医療機関との「薬薬連携」を活用したサマリーの送受信により入院中の経過を緻密に把握し、ステロイド治療に伴う多毛やムーンフェイスといった外見上の変化に悩む学童期の患者に対して、精神的なケアを含めた寄り添う支援を実施している。さらに、脊髄性筋萎縮症(SMA)の治療薬であるエブリスディ等の高額かつ厳格な管理を要する製剤を取り上げ、修学旅行や宿泊学習といった学校行事の際にも安全に携行・保管できるよう具体的な方法を指導している。チャイルド・レジスタンス・キャップから通常のキャップに変更することで「患児本人が自分で薬を服用する練習」を後押しするなど、患者の成長に合わせた働きかけも行われている。 複雑な多剤併用や経管投与、在宅酸素療法を必要とする高度な医療的ケア児へのアプローチとしては、丁寧な残薬整理やスキンケアの提案を行い、過重なケアに直面する家族の精神的・身体的負担を和らげる取り組みが紹介された。 白鞘氏は、日々の業務の中で目指していることとして、「またあの薬剤師さんに相談したい」と言っていただける存在になることを挙げている。飲み合わせや飲み忘れ、保管方法などについて気軽に頼ってもらい、「何か困ったらこの人に聞けば大丈夫」という信頼関係を築くことを何よりも大切にしているという。 小児領域では、患者本人だけでなく、服薬介助を担う家族や学校の先生など周囲の方々への支援も不可欠である。生活リズムやライフステージの変化に合わせ、柔軟な提案をしながら共に歩む「伴走者」でありたいと考えている。 発表後の質疑応答の場面では、混雑する外来業務において丁寧な聞き取りを行うための時間管理の工夫や、高額医薬品の適切な在庫リスク管理、在宅患者の家族への心理的なアプローチ、経験の浅い若手薬剤師へのノウハウ伝承など、実践的なテーマについて深い知見の共有が行われた。 地域住民のウェルビーイングに貢献する地域薬局のコアバリュー 基調講演では、京都大学大学院医学研究科教授の岡田浩氏が登壇し「地域住民の健康とウェルビーイングに貢献する薬剤師:地域薬局のコアバリューと実装科学研究の可能性」と題した講演を行った。 岡田氏は、自身のセカンドキャリアとして薬剤師となった実体験を引き合いに出し、「間違いなく薬を渡す」という正確な調剤・対物業務の先にある、身近な医療者としての薬剤師の真の価値(コアバリュー)について多角的な視点から論じた。 まず「患者主体のケア」と「ソーシャル・キャピタル」の概念に関し、1990年代後半から2000年代にかけて世界的に議論された「薬剤師の存在意義」の変遷に触れた。国際薬剤師・薬学連合(FIP)が従来の対物中心から「患者ケアへの転換」を掲げた歴史を紐解き、薬剤師が患者一人ひとりの生活背景や価値観に深く寄り添い、行動変容の背中を押すコミュニケーションをとることが重要であると説いた。こうした関わりが地域社会における「人と人とのつながり(ソーシャル・キャピタル)」の構築につながり、結果としてHbA1cや血圧といった患者の臨床数値の改善や健康維持に寄与することを、自身が携わった実証研究(COMPASS研究等)のデータを基に示してみせた。 次いで、グローバルな医療制度の趨勢として、諸外国における薬剤師の役割拡張を紹介した。イギリスやカナダ(アルバータ州など)をはじめとする海外では、慢性疾患管理やプライマリケアの領域において薬剤師に処方権や処方変更権が認められるなど、医療システムの中核的なプレイヤーとして機能している現状を共有し、日本における今後の薬局・薬剤師像への示唆を与えた。 さらに、質の高い医学的エビデンスが実際の現場に定着するまでの課題を挙げ、それを社会にスムーズに組み込む方法論である「実装科学」の重要性が強く強調された。住民の生活と医療の間に位置する薬局は、この実装科学を実践するうえで極めて強力なハブになり得ると説明した。そのうえで岡田氏は、身体や診断といった身体・薬剤の領域は医師が担うことが多い一方で、「社会・家族」や「心理・感情」といった要素には患者に身近な薬剤師こそが深く関わることができると述べた。そして、これら全ての要素を統合して捉える「生物心理社会モデル」の視点を持って地域に関わり、現場の薬剤師が自らの実践を振り返ってその効果を明らかにする「研究者」としての役割も果たしていくことで、地域の患者に伴走し続ける薬局の広大な可能性が示され、講演は締めくくられた。

  • 生理諸症状と、やさしく向き合う90分〜我慢しないセルフケアとOTC医薬品の選び方〜

    大木ヘルスケアホールディングスの関連会社であるLAUGHBASE株式会社の主催により、2026年9月25日に大木ヘルスケアホールディングス株式会社の本社会場にて、社員を対象としたリアル参加型セミナー「生理と症状と、やさしく向き合う90分。」が開催された。 LAUGHBASE株式会社はこれまで、女性特有の心身の不調や悩みに向き合い、その解決に取り組む「フェムケア・カテゴリー」に着目して積極的な提案を行い、女性が活躍する社会の実現に貢献することを目指している。さらに、フェムケア・カテゴリーに対する取り組みを一層発展させるとともに、女性のヘルスリテラシーのさらなる向上の一助となるべく、情報発信と市場創造を担うプラットフォームを構築している。 当日は、株式会社トモズの登録販売者であり、生理用品やフェムケア、介護、食品、酒類などを担当する庄司なみ氏が登壇した。進行役はLAUGHBASE株式会社代表取締役の市川恭子氏が務め、男女問わず多くの社員が参加した。 「がんばらないで知る」から始まるフェムケア 庄司氏 本セミナーのキーワードは「がんばらないで知るだけでもう少し軽くなる」である。全てを完璧にこなすのではなく「ちょっと意識する」ことを軸に、生理痛やPMS(月経前症候群)といった身近な不調に対する正しい知識とケアの引き出しが紹介された。 知る:生理痛や不調のメカニズム セミナーの前半では、生理周期の4つのフェーズ(生理期、卵胞期、排卵期、黄体期)の解説が行われた。 庄司氏は「生理の直前になると役目を終えた子宮内膜からプロスタグランジンという物質が分泌されます」と説明し、同物質は子宮を収縮させて経血を排出するのに不可欠な一方、過剰分泌されるとねじれるような強い下腹部痛を引き起こすと解説した。 また、プロスタグランジンは血流を通じて胃腸の筋肉にも影響を与えるため、庄司氏は「腸の動きが活発になりすぎることで、生理中にお腹が痛くなったり、便がゆるくなったり下痢をしたりするということがある」と述べ、腹痛だけでなく下痢や吐き気、お腹の張りが同時に起こりやすいことを指摘した。 生理前3〜10日頃から現れる心身の不調(PMS)と、生理開始直後からピークを迎える月経困難症(生理痛)の特性を整理し、庄司氏は「症状の出方や重さは一人ひとり異なるため、まずはご自身の体調の傾向を把握することが大切なポイントになる」と語り、自身の症状の性質を知る重要性を伝えた。 整える:フード・生活習慣・グッズの3本柱 セルフケアの引き出しとして、以下の3つのアプローチが提案された。 フード(食事): 「引くより足す」をモットーとし、失われやすい鉄分やマグネシウム、ビタミンB6、タンパク質、オメガ3系脂肪酸などを積極的に補うことが推奨された。 生活習慣: 睡眠は量より質(眠りに入る前や起きた後の工夫)を意識し、運動は血流を緩やかに巡らせるストレッチなどの無理のない運動を取り入れ、温活は3つの首(首・手首・足首)とお腹を温めることが大切であると解説された。 グッズ: 温熱アイテム、多様化する生理用品(吸水ショーツや月経カップなど)、骨盤サポート着用の利用など、便利な道具を積極的に取り入れることが紹介された。 選ぶ:OTC医薬品の設計思想を知る ドラッグストアで購入できるOTC医薬品について、庄司氏は「どれが一番いい薬かということではなく、症状や状態、専門家との対話を通じて自分に合うものを選ぶことが基本の枠組みになる」と強調した。早く効くタイプ、胃の負担に配慮した成分入り、幅広い痛みに対応する製品のほか、お腹の張りや下痢を伴う場合には、子宮・腸の過剰な収縮や痙攣を和らげる「鎮痙成分」が配合された生理痛専用のOTC医薬品が有効な選択肢になると説明された。また、運転予定や空腹時など、個人のライフシーンに合わせて店頭の薬剤師や登録販売者に相談することが推奨された。 安心する・つなぐ:受診の目安と相談の地図 庄司氏は「これくらいで病院に行っていいのかな」と思った時点が十分な受診の理由であるとし、具体的なサインとして以下の4点を挙げた。 いつもと痛みが違う(急激な強まりやこれまでにない痛みを感じる場合) 寝込むほどつらい(日常業務への支障をきたす場合) 経血量が多く感じる(夜用ナプキンでも数時間持たないなど) 市販薬が効きにくい(用法通り飲んでも効果を感じられない場合) また、庄司氏は「1人で抱え込まず、頼れる先を3つ持っておくのがいい」と述べ、身近なドラッグストアの薬剤師や登録販売者、婦人科、産業医といった「相談先の地図」を持つことが、安心につながると締めくくった。 今後の展望 市川氏 セミナーの終了後、今後の展望について市川氏が語った。業界外への啓発活動や社会貢献の一環として、今後は銀行などの異業種企業向けにもセミナーを展開していく方針である。今秋以降は、管理職などを対象に「男性目線のケア方法」や職場での女性の健康ケア、コミュニケーション形成に焦点を当てたテーマを深掘りしていく予定であり、フェムケアの輪を社会全体へと広げていくための新たなチャレンジに意欲を見せている。

  • 【スタートアップ番外編】縁がつないだ薬剤師人生――「漢方薬局 太陽堂」武田隆芳さんが仕掛ける『やくフェス』の挑戦

    太陽堂グループ 執行役員 武田隆芳 武田さん 薬学生から薬剤師、そして企業の人事責任者へ。一見すると華やかなキャリアを歩んできたように見える「漢方薬局 太陽堂」の武田隆芳さんの歩みは、実は予期せぬ「人との縁」と、自ら行動を起こしてきた軌跡そのものである。 異色のスタートから現場で培った「人との関わり」 武田さんの原点は意外にも純粋なものであった。高校時代はプロテニスプレイヤーを本気で目指すほどのスポーツ少年だったが、得意科目であった化学と数学を生かす道として薬学部へと進学した。 大学卒業後、恩師の紹介という一つの縁から病院薬剤師としてのキャリアを開始する。4年半にわたる病院勤務では、調剤技術のみならず社会人としての基礎を叩き込まれた。2年目からは後輩の育成を任され、人と関わり、誰かの成長をサポートする面白さに開眼。さらに、部署の垣根を超えて医師や看護師、他部門とのコミュニケーションを積極的に図る経験を積んだ。 その後、家族との約束を果たすため実家に戻り、派遣薬剤師を経て神奈川県内の調剤薬局へ入社。調剤薬局での勤務では、注力していた在宅医療に深く関わり、店舗責任者も務めた。さらに人事・教育研修部門へ抜擢されると、年間10人以上の新卒採用を成功させるなど、現場と本社の双方で確固たる実績を残していった。 「太陽堂」との出会いと、本音で向き合う人事への思い キャリアの大きな転機となったのは、前職での葛藤のさなかに訪れた、大学時代の先輩との再会だった。当時、採用責任者として実績を重ねる一方で、「本当に学生のためになる採用ができているだろうか」と、自らが求める採用スタイルと会社の方向性とのギャップに悩んでいた武田さん。そんな折、「漢方薬局 太陽堂」の経営陣を務める先輩と再会し、自社の魅力や漢方にかける情熱を生き生きと語る姿に触れた。 実際に現場を訪ね、生き生きと働く社員たちや漢方薬局ならではの深い患者対応に触れる中で、武田さんの心は強く引き込まれていく。「漢方薬をもっと身近に感じてほしい」「自分が心から誇りを持てる会社で、学生と本音で向き合いたい」――前職で抱いていたモヤモヤが確信へと変わり、その強い思いに突き動かされるように太陽堂への入社を決意した。 入社後は薬科大学を自ら回り、知識の伝授にとどまらず、漢方薬の素晴らしさと薬剤師という職業の幅広い可能性を学生たちに伝え続けている。 太陽堂の待合室 学生と企業をフラットにつなぐ「やくフェス」の誕生 武田さんのキャリアを象徴するもう一つの取り組みが、責任者を務めるイベント「やくフェス」である。 きっかけは、太陽堂のインターン生たちとの雑談だった。「もっとラフな雰囲気で企業の話を聞ける場があればいいのに」「敷居の低い交流の場を作ろう」というアイデアから、2025年6月、わずか数社の経営者と学生が集まるカジュアルなバーベキューイベントとしてスタートした。 「やくフェス」の最大の特徴は、徹底した「学生目線」と「現場主義」にある。参加者のアンケートをもとに、開催場所をバーベキュー場から涼しいダーツバー、さらには動きやすい立食スタイルへと柔軟に改善。企業と学生が話す「1次会」だけでなく、学生同士が大学の垣根を超えて情報交換できる「2次会」を設定するなど、参加者の声を即座に反映させていった。 さらに、運営自体も学生のインターン生や有志が主体となって行う仕組みを構築。当日の司会や会場の案内、企業の紹介までを学生自身が手がけることで、参加者にとっても「自分たちのためのイベント」という温かい空気感が生まれている。 武田さんがこのイベントに込めるのは、大手優位が続く採用市場に新たな風を吹き込む挑戦だ。「大手企業だけでなく、中小企業にも尖った強みや面白い取り組みをしている会社がたくさんある。学生にはさまざまな選択肢を知ってほしいし、企業同士も横のつながりを作って情報交換ができる場にしたい」 営利目的ではなく、純粋な交流と選択肢の提示を目的とした「やくフェス」は口コミで評判を呼び、回を重ねるごとに規模を拡大。現在では100人規模の開催を目指す大人気イベントへと着実に成長を遂げている。 太陽堂の調剤室 自ら動き、縁をつかむ――未来の薬剤師たちへ 「自分の歩んできた道は、決して王道の薬剤師ルートではなかったかもしれない。しかし、振り返れば全ての場面で“人との縁”が自分を助け、可能性を広げてくれた」と武田さんは語る。 病院時代も、薬局時代も、そして太陽堂との出会いも、全ては自身が何かを感じて行動を起こした先に生まれた縁だった。「待っているだけではチャンスは巡ってこない。自分から一歩踏み出し、思いを口にすることが大切」という実感が、武田さんのエネルギーの源泉となっている。 就職活動という言葉に身構えてしまいがちな学生たちに対し、武田さんは「やくフェス」を通じて問いかけ続ける。1年生からでも気軽に立ち寄れるその場所は、未来の薬剤師たちが自分のキャリアをフラットに捉え、新しい第一歩を踏み出すための架け橋となっている。 現場の知識と人事の熱量、そして人をつなぐ情熱を兼ね備えた武田さんの挑戦は、これからも多くの薬学生と業界の未来を明るく照らしていく。 ・やくフェス https://yakufes.jp/ 取材後記 大学時代から現在の「やくフェス」まで、一貫して感じたのは、周囲を巻き込みながら物事を前に進める武田さんの力です。これからも人との縁を大切に、薬学生に向けた取り組みをさらに広げていってほしいと思います。(NSS寺本)

  • 【薬局・ドラッグストアで活躍する管理栄養士】薬局・ドラッグ管理栄養士の部会設立―栄養支援で暮らしを支える可能性を見据えて

    札幌保健医療大学大学院教授・管理栄養士(医学博士) 栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会(日本ヘルスケア協会) 部会長 川口 美喜子 2026年4月1日。薬局とドラッグストアに勤務する管理栄養士(薬局・ドラッグストア(DS)管理栄養士)と共に「栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会」を設置しました。公益財団法人日本ヘルスケア協会の活動である日本ヘルスケア産業協議会・部会活動の一環に部会を置き、薬局・DS管理栄養士の未来の姿を描いていきます。 本部会の目的は、「薬局・ドラッグストアに勤務する栄養士・管理栄養士が、多職種と連携しながら地域、教育、臨床及び政策の各分野において専門性を発揮し、地域住民の健康増進、疾病予防及び栄養ケアの充実に寄与することを目的とする。」としています。活動は、「目的を達成するため、次の活動を目指す。(1)薬局やドラッグストアの栄養士・管理栄養士のコミュニティ形成を促進し、連携と協働を強化することによって、地域における栄養支援の範囲と質を向上させる。(2)薬局やドラッグストアの栄養士・管理栄養士が、健康管理に積極的に関与できる環境を整え、地域包括ケアシステムへ積極的に参画できる栄養ケア支援体制の構築を目指す。(3)薬局やドラッグストアの栄養士・管理栄養士の人材育成及び教育体制を整備し、専門知識及び技術の標準化を図ることにより、持続可能な地域栄養ケア体制の構築に貢献する。」ことにあります。 医療・介護制度の隙間を埋める「薬局・DS管理栄養士」 — 予防医療の新たな拠点へ  医療や介護の公的制度においては、主に病気を発症した後の治療や要介護状態に対するケアが中心となりやすく、発症前の「未病」や生活習慣改善による予防段階に対する手厚いサポートには限界があります。こうした制度上のすき間を補い、地域住民の日常的な健康維持・増進を支える存在が、薬局・DS管理栄養士です。 専門性発揮を阻む壁構造的課題 課題の項目 現状と弊害 業務の兼務による制約 レジ打ち、品出し、調剤事務サポート等の店舗運営業務との兼務が常態化しており、専門業務(栄養指導・相談)に割く時間が構造的に圧迫されている。 教育・スキルの格差 企業ごとの教育体制に依存しており、統一的な研修体系が不足している。これにより、特に臨床栄養管理におけるリスク管理や支援の質にバラつきが生じている。 精神的孤立 店舗あたりの配置人数が少なく、他企業や多職種とのネットワークが希薄なため、専門職としてのキャリア形成や業務上の悩みを相談できず、孤立しやすい。 これらの構造的課題を向き合い、企業間の垣根を越えて管理栄養士の職能を標準化するために新たな組織を立ち上げたいと模索してきました。本部会のミッションは、企業を超えたネットワークの構築と、教育研修の標準化です。これにより、現場の管理栄養士が質の高い臨床スキルを共有し、どの店舗においても高度な栄養ケアを提供できる環境の整備を目指しています。 将来展望:医療・地域経済と地域住民への社会的貢献 住民にとって「最も身近な医療者」として健康維持と重症化予防に寄与し、日本の医療経済を支える存在としての未来像を描いています。住民にとって「最も身近な医療者」として健康維持、生活習慣病の予防から、退院後の重症化予防、そして看取りを見据えた在宅療養までを、食と栄養の側面から支えることは、地域包括ケアシステムにおいて不可欠なピースです。暮らしの中で、生活の状況や思いは常に変化があり、揺れ動いています。その暮らしに寄り添う最も身近な医療の場として存在し、個々に向き合う関係性を築く可能性をもっています。そして、「再入院率の低減」や「在宅療養の維持」は、高額な入院医療費の適正化を推進することになると考えます。 「紡ぎ部会」による薬局・DS管理栄養士の教育とネットワーク化が進むことで、管理栄養士が「地域住民の生命を守る社会インフラ」へとより発展することを目指します。科学的根拠に基づいた栄養サポートが当たり前となる未来に向け、今、新たな歩みが始まっています。 共に未来を「紡ぐ」ために ご紹介した部会の活動は、個々の企業の薬局・DS管理栄養士の努力だけでは困難と感じています。横断的な連携によって目標を成し遂げられると思います。 「紡ぎ部会」は、専門職の知見と企業の経済力を紡ぎ合わせ、誰もが健康に暮らせる社会の実現に向け、共に未来を創造していきます。 「栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会」正会員・賛助会員のお願いとご案内 日本ヘルスケア協会所定の入会手続:まずは協会本体への入会をお願いいたします。 「紡ぎ部会」所属の申し込み:「栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会」への所属を正式に申請していただきます。 組織委員会の承認:事務局による所定の審査を経て、正式な会員として活動を開始いただけます。 また、未来の地域医療インフラを共に構築する志を持つ企業の皆様の参画をお願いいたします。 賛助会員:本部会の目的達成のための事業を賛助するために入会する個人または団体 私たちは、志を共にするパートナーとして、共に歩みを進めていくことを約束いたします。 公益財団法人日本ヘルスケア協会 「栄養ケア・イノベーション研究会 紡ぎ部会」 https://jahi.jp/sectional_meeting/sec11017/

  • 第8回 薬局団体連絡協議会シンポジウム開催のお知らせ

    薬局団体連絡協議会は、薬局が薬物治療や地域のヘルスケアを担うインフラとして貢献することを目指し、今年もシンポジウムを開催する。今年のメインテーマは「OTC 類似薬は、薬局を変える!」〜国民「負担」「不安」に向き合う〜である。 開催概要 日時: 2026年11月1日(日) 13:00〜17:00 (開場12:30) 会場: 帝京平成大学 中野キャンパス(東京都中野区中野4-21-2) 大会長: 山村 真一氏(一般社団法人保険薬局経営者連合会 会長) 参加費: 会員 4,000円 / 一般 7,000円 / 学生 無料 申込方法: Peatix申込フォームより申し込む(定員になり次第締め切りとなる)。 申込URL: https://2026110lydrk.peatix.com/ プログラムの見どころ 特別講演 「OTC 類似薬の保険給付見直しを、保険者はどう見るか」〜地域の薬局に期待すること〜 講師:幸野庄司氏(健康保険組合連合会 参与) 各団体活動報告 ・「いわゆる OTC 類似薬問題への提言」 (次世代薬局研究会) ・「ドイツの医療制度改革の経緯から、OTC 類似薬を考える」 (日本コミュニティファーマシー協会) ・「OTC 類似薬の見直しから始まる薬局の機能転換」 (保険薬局経営者連合会) 基調講演・問題提起 「OTC 類似薬の改革の肝は、薬局薬剤師の活躍推進」 講師:成瀬道紀氏(日本総合研究所調査部 上席主任研究員) パネルディスカッション 「OTC 類似薬は、薬局を変える! 〜国民の『負担』『不安』に向き合う〜」 登壇者:幸野庄司氏、成瀬道紀氏、田中俊幸氏(日本ジェネリック医薬品・バイオシミラー学会)ほか各団体代表 【お問合せ先】 薬局団体連絡協議会 事務局(一般社団法人保険薬局経営者連合会内) TEL: 044-712-5881 mail: info@yakukeiren.com

  • 薬剤師100人カイギついに完結 薬剤師の未来に繋がるメッセージが込められた最終回

    8月22日、薬剤師がそれぞれ自身のキャリアを語るトークイベント「薬剤師100人カイギ」が最終回を迎えた。「100人カイギ」とは様々な地域、業種などコミュニティごとに生き方や仕事ぶりを語る場で、演者が100名に達したら解散するというルールとなっている。薬剤師100人カイギも1回につき5人が登壇する形式で2023年の5月にスタートしてからほぼ隔月ペースで開催され、20回目でちょうど100人目に到達。ハイブリッドで開催された今回は、配信会場となった川崎市のUvance Innovation Studioに有終の美を見届けようと参集したオーディエンスが見守る中、薬学生から国会議員まで多彩な5名によるプレゼンテーションが行われた。イベントを当初からスポンサーとして支えてきたファルメディコ株式会社、株式会社スパーテルの代表も駆け付けた。 小林碧悧さん 新しい治療を患者さんに届く形に設計する人/臨床開発支援コーディネーター ~新しい治療を患者さんに届く形に設計する人~ 医薬品開発のプロセスとそこに横たわる課題についても分かりやすく解説してくれた。 立場の違いとジレンマ:フリーランスという働き方の選択 小林碧悧さんは、製薬企業やCRO、再生医療ベンチャーなどでの20年以上にわたる臨床開発の経験を通し、薬の開発について目指すゴールは同じでも、立場や組織によって重要視する点や優先順位にズレが生じることに課題を感じていました。例えば、スピードやコストを重視するアカデミア・ベンチャー側と、法規制の中で慎重かつ確実に業務を進めたいCRO(開発業務受託機関)側との間には温度差やコミュニケーションの壁が存在していました。そうした組織の枠を超えて専門家同士を繋ぎ、優先順位や進め方を調整するコーディネーターの必要性を痛感したことから、組織に縛られずに必要な場面でプロジェクトに参加できるフリーランスという働き方を選びました。 薬が患者さんに届くまで:臨床開発の全体像とプロセス 新薬が医療現場で使われるようになるまでには、基礎研究、非臨床試験、臨床試験、そして承認申請・審査という長いプロセスを経ており、一般的に9年から17年ほどの歳月がかかります。その中で臨床試験は、患者さんの協力のもと、厚生労働省やPMDA、製薬企業、医療機関、治験審査委員会など、多様な組織や専門家が関わって進められます。また、CROやSMO(治験施設支援機関)といった専門組織も運営を支えています。このように、医薬品は多くの人々の専門的な役割やバトンリレーによって初めて患者さんのもとに届けられる仕組みとなっています。 チームを動かすコミュニケーションと今後の展望 複数の組織やプロジェクトに関わる中では、それぞれの専門家が大切にしている思いを最初に丁寧にヒアリングし、プロジェクトの優先順位を共有することが重視されています。また、専門用語をそのまま使わずに分かりやすい言葉に置き換えるといった基本的なコミュニケーションの積み重ねが、チームの雰囲気や協力体制を大きく変えるポイントとなります。小林さんは、開発のド真ん中を単独で進めるのとは異なるアプローチとして、組織の垣根を越えて人と人を繋ぐコーディネーター役を務めることで、新しい治療を患者さんに届けるための新たなバトンパスの形を体現しています。 鈴木憲子さん ユースワーカー×薬学生/任意団体クレヨン 代表/一般社団法人日本薬学生連盟 副会長外務理事 鈴木憲子さんはこれまでの薬剤師100人カイギの運営も務め司会としても活躍した。 薬学部進学の動機と「日本薬学生連盟」での活動 母親が薬剤師だったこともあり、高校生の頃は「特にやりたいこともないから薬学部でいいか」という動機でなんとなく薬学部に進学した、と鈴木憲子さんは語りますが、現在は様々な課外活動に積極的に挑戦しています。その一つが「薬学生に新しい価値を」をモットーとする日本薬学生連盟での活動です。ここでは副会長兼外務理事を務め、アロマを使ったワークショップや献血啓発、海外からの交換留学制度を通じた交流プログラムなどを企画・運営しています。同じ薬学生同士が出会うことで「1人ではできなかったことに友達となら一緒に挑戦できる」という場を知ってもらうことに力を入れています。 「クレヨン」の立ち上げと薬育・居場所づくり 2025年3月には任意団体「クレヨン」を立ち上げ、「きっかけや安心相談により自分らしさを発見できる社会」を目指して2つの取組みを展開しています。1つ目は、茶葉からのカフェイン抽出やクラフトコーラ作りなどを通じて楽しみながら薬学に触れられる「薬育の出張授業」であり、2つ目は中高生が「タコパをしたい」といった声を大人たちが本気で実現する「居場所づくり」です。中高生が自分の興味関心を見つけるきっかけ作りや、自分の声や1票が周囲を動かすことができる政治への関心を持つことなどを広めています。 「薬学×自分のやりたいこと」で可能性を広げる生き方 将来の進路について当初は「病院や薬局のしかない」と思い込んでいた鈴木さんですが、周囲の人から「(薬剤師であっても)なんでもやっちゃえばいい、すごいアイデンティティだよ」と言われたことをきっかけに、卒業後の進路にとらわれず薬学の専門性をどう使うかを主体的に考えるようになりました。中学生の頃に合唱コンクールの指揮者をためらって後悔した経験が行動力の源になっており、「後悔したくない」という思いから課外活動に飛び込んでいます。今後は就職活動を控える中でも、薬学という専門性を武器に、自分や誰かの可能性を広げる挑戦を続けていく強い意志を見せてくれました。 狭間研至さん 薬局3.0を実践する医師/ファルメディコ株式会社 代表取締役社長 「ぼく薬剤師じゃないんですけど良かったのかな」と前置きしてから講演スタート。 「薬局が変わると地域医療が変わる」という信念と挑戦 医師として31年の外科経験を持ち、大阪で薬局を11店舗経営する狭間研至さんは、「薬局が変わると地域医療が変わる」という一貫した信念のもと活動してきました。薬局を単なる「薬の払い出し窓口」の場から変革するため、これまでに数々のタブーに挑戦してきました。2006年頃から薬剤師によるバイタルサインの活用や服薬後のアセスメント・医師へのフィードバックの重要性を提唱し、法改正や制度改革を動かしてきました。また、調剤業務の一部外部委託など効率化を進め、薬剤師が本来やるべき「対人業務」の充実を目指しています。 不満や不具合をチャンスに変える行動力とフォロワーの存在 新しい取り組みを進める中では「薬剤師が人の体に触れてはいけない」「調剤は薬剤師のみが行う」といった既成概念や周囲からの反対、さらには新規店舗の撤退といった数々の失敗や壁にも直面してきました。しかし、日常の不具合や不平不満を言うのではなく、“暗いくらいというよりも進んで明かりをつけましょう”と、ビジネスチャンスや改善への原動力に変えてきました。また、こうした挑戦を続ける中で「いかがわしくあれ」(©孫正義)の精神で、タブーを恐れず標準化していくことが大切であり、自分をリーダーにしてくれたのは、面白がってついてきてくれた多くのフォロワーの存在であったと振り返っています。 医療の原点を思い出し、薬剤師の専門性を活かす 終わりに狭間氏は、仕事や教育の場において「何のために医療の道を志したのか」という原点に立ち返ることの大切さを語りました。「薬剤師だから○○できない」、と決めつけず、目の前の困っている患者を助けたいという思いを胸に、やりたいことややるべきことに積極的に取り組む姿勢が求められると言いました。薬剤師が自身の専門性を最大限に活かし、医療の真ん中に入って社会を変えていくことへの強い期待を込めました。 とかしきなおみさん 「薬剤師こそ医療の中心に!」薬剤師出身の衆議院議員/薬剤師/衆議院議員 とかしきなおみさんはリモートでプレゼン。かりゆしウェアで登場した。 資生堂から政治家への転身と街づくりへの想い 昭和大学を卒業後、資生堂に勤務したとかしきなおみさんは、「より多くの人を効率よく幸せにする仕事は何か」を考え抜いた末に政治家を目指すことを決意しました。東京の杉並区議会議員を経て衆議院議員となり、厚生労働副大臣や政務官などを歴任してきました。杉並区の商店街活性化に取り組んだ経験から、行政の補助を待つのではなく住民自身の「やる気を引き出すこと」が街づくりにおいて最も重要であると学びました。その後、大阪の吹田・摂津市にまたがるエリアで、国立循環器病研究センターや国立健康・栄養研究所を中心とした「健康をテーマにした街づくり=健都」を手掛け、健康産業の集積地づくりを推進しています。 国会議員として取り組む社会保障制度の刷新と国際連携 超高齢社会における医療費高騰や、1回数千万円にのぼる高額な先端医療(再生医療など)の普及に対応するため、現在の社会保障制度の刷新が不可欠であると訴えています。日本が超高齢社会の最先端を走る国として、先進国各国と医療・社会保障制度を連携・共有しながら、経済安全保障上の強固な枠組みを作っていくことの重要性を指摘しています。また、薬が持つ役割は世界的にますます大きくなっており、グローバルな視点で創薬や医療の仕組みを構築していく必要があると語りました。 薬剤師の専門性を活かした「攻めの予防医療」と今後の展望 これからの薬剤師は、薬を渡すだけでなく、患者のライフスタイルや価値観に合わせた健康指導やカウンセリングを行い、健康管理を地域の医療として定着させていく役割が求められています。今年度の骨太方針にも盛り込まれた象徴的な「肥満対策」を切り口として、薬剤師が専門知識を発揮できる環境づくりや新しいツールの開発に取り組んでいます。現場の薬剤師や多様なプレイヤーが連携し、未来は自らの手で勝ち取っていくものだという、強い挑戦の姿勢を持ち続けることの大切さを訴えました。 橋本昌子さん 医療と介護で人・地域・未来を育てる女性経営者/てまりグループ代表 栄えある100人目を飾った橋本昌子さんはスポンサーとしてもイベントを支えてきた。 起業の背景と「薬局×介護」による地域貢献 石川県珠洲市出身の橋本昌子さんは、病院や薬局で20年間薬剤師として勤務したのち、40代で乳がんを経験したことなどを契機に「命には限りがある、やりたいことはやろう」と決意し、2008年に薬局を起業しました。その後、高齢社会における「高齢者が安心して過ごせる場所や看取りの場」の必要性を痛感し、有料老人ホームなどの福祉事業を立ち上げました。薬局と介護事業を掛け合わせることで、認知症ケアや緩和ケア、ターミナルケアに対応し、その人らしさを尊重しながら最期まで自分らしい暮らしを継続できる地域ぐるみの支援を実現しています。 組織急拡大の壁と「ベクトル合わせ」のチームづくり 老人ホームの開設等で社員数が一気に増加した際、マニュアルの徹底不足や伝達系統の不全といった組織の壁に直面しました。これを乗り越えるため、会社の判断基準となる「てまりバリュープロジェクト」を立ち上げ、「誠実さ・思いやり・人への敬意」などの価値観を従業員全員で共有する取り組みを進めました。また、中期経営計画を策定して会社の将来像や数値目標(社員数や売上)を「見える化」し、社員の不安を解消するとともに、同じ方向に向かって進む「ベクトル合わせ」の重要性を実践し続けています。 社長の器の成長と世界を見据えた挑戦 会社は社長の器以上に大きくならないという思いから、自身の人間力を高めるため、あらゆる「頼まれ事は試され事」と捉えて積極的に引き受けてきました。現在では従業員数360名を超える規模に成長し、国内だけでなく台湾の薬局グループとの資本提携やモンゴルでの合弁会社設立、インドでの介護事業プロジェクトなど、グローバルな展開にも挑戦しています。医療・介護の本質は「その人が幸せに生きるために提供するもの」であると語り、ピンチをチャンスに変えて思い描く未来を実現し続ける大切さを訴えました。 橋本昌子さんのプレゼンをもって「薬剤師100人カイギ」は完了し、規定に基づき解散した。 >薬剤師100人カイギ

  • 【神戸学院大学】薬学生が育てるハーブの魅力と社会貢献の輪——10月3日、御影クラッセでポプリ作り体験とブレンドティー販売を実施

    神戸学院大学薬学部の学生が休耕田を活用して栽培したハーブを用い、ハーブの魅力や有用性を伝えるイベントを2026年10月3日に御影クラッセにて開催する。 同イベントでは、学生が考案したブレンドティーの販売や試飲に加え、自分だけの香りを持ち帰ることができるポプリ作りのワークショップが実施される。 ポプリワークショップ 開催概要 エコノバワークショップ「神戸学院大学薬学部 × Carbon herb farm 薬学生と楽しむ 自家栽培ハーブのポプリ作り」 日時:2026年10月3日(土) 会場:御影クラッセ(兵庫県神戸市東灘区御影中町3-2-1) 主催・協力:神戸学院大学薬学部 × Carbon herb farm プログラム詳細 自家栽培ハーブのオリジナルポプリ作り(事前予約制) 数種類のハーブを自由にブレンドし、自分好みのポプリを作成する体験型ワークショップである。ハーブの有用性や休耕田を活用した農業支援の取り組みについても詳しく紹介される。 時間:全4回(各回約30分) ①10:30~ / ②11:30~ / ③13:00~ / ④14:00~ 参加費:無料 対象:高校生以上 定員:各回6人 申込方法:専用申込フォームより応募(抽選制)。事前予約で枠に空きがある場合のみ、当日に整理券が配布される。 当選発表:9月29日(火)までにメールにて通知 ハーブティーの販売・試飲(予約不要) 薬学部4年生の大西花歩さんが栽培・開発に携わったオリジナルブレンドティー等の販売および試飲を実施する。事前予約不要で誰でも気軽に立ち寄ることが可能である。 過去のイベントの様子 問い合わせ先 担当:神戸学院大学 社会連携グループ(担当:瀧口) 電話番号:078-974-6105(受付時間:平日 9:30~11:30 / 13:00~17:00) メール:renkei_info@j.kobegakuin.ac.jp

  • 薬剤師の自己注射薬指導を支援する資料の開発と評価:北里大学の江渡恵里奈グレースさんが日本社会薬学会で発表

    江渡さん 近年、バイオ医薬品や自己注射薬の対象となる薬剤が急増している。しかし、薬局における処方箋の取り扱い経験や関連資材の整備状況にはバラつきがあり、薬剤師が基本的な手技指導を行う一方で、患者からは手技・保管・廃棄といった具体的な質問が多く寄せられているのが現状である。こうした背景から、北里大学薬学部地域医療薬学らの研究グループは、日本社会薬学会第44年会において、薬剤師の調剤・処方監査・服薬指導を支援する資料の作成とその有用性についての研究を発表した。この日本社会薬学会第44年会の場において、実際にポスター発表を務めたのは、北里大学薬学部6年の江渡恵里奈グレースさんである。 研究のモデル薬剤として選定された「テリボン®皮下注28.2μgオートインジェクター」は、骨粗鬆症治療などに用いられるテリパラチド製剤の自己注射薬であり、ヒヤリハット事例収集事業において処方本数ミスに関する報告が多い薬剤である。テリパラチドを含む製剤は数種類あり、箱に入っている本数や投与する回数、頻度が製剤によって異なるという特徴があり、誤投与を防ぐための慎重な管理が求められる。現場での適正使用と業務支援を目指し、調剤時の処方監査に活用する資料や、患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料といった3種類の補助資料が開発された。特に患者への服薬指導やモニタリングに活用する資料には、皮膚をつまむ、ボタンを押すといった具体的な手技や、コンプライアンス、飲み忘れ時の対応、保管・廃棄・持ち運び方法、副作用など、患者から質問されやすい内容が反映されている。 アンケート調査では、薬局薬剤師を対象に窓口での対応を想定したシナリオ形式の問題が用いられた。分析にあたっては、インスリン製剤などのように日常的に取り扱われることが多い糖尿病治療薬に対し、薬局での取り扱い経験にバラつきがあるとされる「非DM処方箋(糖尿病治療薬以外の自己注射薬の処方箋)」の受付経験の有無などが着目された。資料の閲覧前後における正答率の変化および回答への自信が統計学的に分析された。 その結果、資料閲覧後にはシナリオ問題の正答率と回答者の自信スコアが有意に上昇した。非DM処方箋の受付経験がある群ではもともとの正答率が高めであったが、経験の有無にかかわらず資料閲覧によって新たな知識の補足や既存知識の整理が進んだ。今後は他の自己注射薬についても同様の資料を拡充していきたいという。 5年生の秋から冬にかけての実習と研究の両立に苦労しつつも、「自分で考えて形にする過程が好き」という理由から今回の学会発表に挑戦した江渡さん。アンケートの作成にあたっては、指導教員と綿密に話し合いながらさまざまな論文を読み込んで学びを深めるなど、これまでに経験のないプロセスに苦労しながらも真摯に向き合った。 卒業後は病院薬剤師として就業予定であり、現場での臨床経験を積んだうえで、「いずれ自分の極めたい分野を見つけたら研究することも選択肢として考えています」と、将来的な研究への挑戦も視野に入れている。学生のうちから臨床現場の課題や患者背景に目を向け、主体的に研究を形にして学会発表を成し遂げた今回の挑戦は、これからの臨床現場に立つ若手薬剤師にとって大きな一歩となりそうだ。

  • 社会薬学研究の「なぜ」と「気になる」を形に:日本社会薬学会第44年会 若手企画「社会を見る目 薬学に活かす〜若手が語る研究のおもしろさ〜」

    日本社会薬学会第44年会において開催された若手企画「社会を見る目 薬学に活かす〜若手が語る研究のおもしろさ〜」は、若手研究者が自らの実践や体験を通じ、社会薬学研究の魅力と可能性、そして「研究するおもしろさ」を語り合う貴重な機会となった。 オープニングでは、熊本大学の近藤悠希氏から説明があった。自身の研究経歴や社会薬学会との出会いを振り返りつつ、本学会は若手の活動に対して非常に好意的であり、自由にチャレンジできる環境が整っていることが強調された。また、歴史ある若手の会の歩みや、懇親会を含めたネットワークづくりの重要性についても触れられた。 各演者の講演では、まず昭和医科大学の熊木良太氏が「理想と現実の間 薬局の『なぜ』を可視化する」と題し、病院薬剤師としての実務経験から生まれた日常のギャップや「なぜ」を起点とした5つの研究を紹介した。減薬提案を躊躇する背景の概念化や、患者・薬剤師間の情報共有に対する認識のズレ、常用薬の災害用備蓄の実態、PAC(個人別態度構造)分析を用いた栄養介入の課題整理、がん患者の栄養相談ニーズなど、質的・量的手法を用いて可視化するプロセスを説いた。現場の身近な疑問を学術的な問いに落とし込み、仲間と手探りで形にしていくプロセスの醍醐味と大切さが語られた。 続いて、昭和医科大学の宮﨑ひとみ氏が「社会の『気になる』を研究する『患者心理から教育へつないだ抗菌薬適正使用研究』」と題し、病院でのAST(抗菌薬適正使用支援チーム)活動から抱いた市中における抗菌薬適正使用への疑問を契機とする一連の研究を発表した。混合研究法を用いて処方に納得できない保護者の心理探索を行い、防衛動機理論に基づき適正使用意志の規定要因を分析。さらに行動経済学のフレーミング効果を応用した啓発動画を作成・実地検証するという、基礎から応用・社会実装へと研究がどんどん発展・展開していく楽しさと意義を力説した。 次に、大阪医科薬科大学の庄司雅紀氏が「誰一人取り残さない薬物療法を目指して:これまでとこれからの私の社会薬学研究」と題して講演を行った。障害の社会モデルの視点に基づき、うつ病患者に対する認知行動療法を応用した服薬支援や、知的障害を有する人への医療情報提供におけるミスコミュニケーションに関するインタビュー調査を紹介した。当事者とのワークショップを通じた共同創造により、相互理解を深める「患者理解のサイクル」を回しながら新たな教育プログラムを開発していく、やりがいと面白さが示された。 兵庫医科大学の矢原恵美氏は「臨床の疑問からエビデンスへ 回復期リハビリテーションにおける量的・質的研究の融合」と題し、オンラインで登壇した。回復期リハビリテーション病棟の患者を対象に、FIM(日常生活動作指標)とMRCI-J(処方複雑性指標)を用いた量的解析を行い、処方の複雑性解消が特定の患者群のADL改善に寄与する可能性を提示。さらに多職種連携意識の概念化を目指すインタビュー調査(質的研究)へとつなげるアプローチを通じて、現場の「声」からエビデンスを紡ぎ出すおもしろさを共有した。 さらに、奈良県立医科大学附属病院の鈴木渉太氏が「多様化社会における薬剤師の役割:患者中心の医療を目指したエビデンス構築」と題して講演を行った。薬局勤務時の困りごと(臨床疑問)を出発点に、ピクトグラムや多言語を活用した服薬指導ツールの検証、やさしい日本語や市販薬に関する啓発動画の作成(外国人患者支援)などの実効的な取り組みが紹介された。加えて、オーストラリアで開発された患者中心性を測る尺度を日本語版に翻訳・検証し、患者経験価値を正しく評価するプロジェクトなど、社会のニーズに合わせて研究の幅を広げ、薬剤師の新たな役割を切り拓く探求の楽しさが語られた。 最後にクロージングリマークスが行われ、若手研究者が自らの疑問やアイデアを持ち寄り、研究を楽しむ輪をさらに広げていくことへの強い期待とともに、フロアとの活発な総合討論へと引き継がれ、盛況のうちに企画は終了した。

  • 社会を捉え、薬学に活かす:日本社会薬学会第44年会が東京理科大学で開催

    佐藤氏 日本社会薬学会第44年会が、2026年9月12日から13日までの2日間にわたり、東京理科大学葛飾キャンパスで開催された。本年会のテーマには「社会を捉え、薬学に活かす」が掲げられ、医薬品の供給不足や若年層による一般用医薬品(OTC医薬品)のオーバードーズ、2040年問題といった現場が直面する現代の社会的事象に、社会科学の方法論を用いてどうアプローチするか議論が交わされた。 社会薬学と社会科学の融合 年会長を務める東京理科大学薬学部教授の佐藤嗣道氏は、大会長講演の中で、社会薬学の発展には社会科学の方法論を取り入れた学際的なアプローチが不可欠であると強調した。薬剤師が日頃向き合う医薬品をめぐる諸問題は、単なる薬理作用の範囲にとどまらず、歴史的経緯や組織、人々の関係性といった社会的な文脈の中で捉える必要がある。社会学の視点を取り入れて社会的事象を多角的に観察することが、将来の薬学や薬剤師業務のあり方を考える大きなヒントになると提起された。 「社会学に学び、薬学に活かす」教育セッション 年会では、医療社会学および医薬品の社会学的視点から薬学の実践を見つめ直す、充実した教育セッションが実施された。 熊本大学大学院人文社会科学研究部の中川輝彦氏による医療社会学のセッションでは、医療のあり方を分かりやすく紐解くため、私たちが日常で直面する「病気」という問題に対して社会全体がどのように向き合ってきたのかが解説された。中川氏は、病気を解剖学的・生化学的な人体の内部に位置づけて捉える「生物医学」と、社会的な要因や集合的な営みに関連づけて捉える「社会学」のアプローチを対比させた。 その中で、中川氏は「医療」を特定の個人だけの体験としてではなく、人々が協力して病気に対処し健康を維持しようとする「集合的な営み」として捉える視点を提示している。集合的な営みが成立する仕組みについて、参加者の多くが自身の役割をわきまえ、そこから大きく外れることなく振る舞うことによって、ある程度安定して成立すると解説された。 さらに、患者が直面する現実と現代の医療制度の間にあるギャップや、病気が人の人生に与える影響について、次のような深い洞察が示された。 患者は自身の身体の苦痛だけでなく、生活や人間関係の困難など、切実で複雑な問題を抱えている。 一方で、医師や薬剤師を中心とした制度的医療が提供できる解決策は技術的・生物医学的なアプローチに偏りがちになるため、両者の間には構造的なズレが生じてしまう。 私たちは通常、自分の人生を一つの物語として認識し納得しながら生きているが、完全な回復が見込めない病気によってこれまで通りに働けなくなると、人生の筋書きが崩れてしまう「物語の破綻」を経験し深い苦悩に直面する。 その破綻した状態から抜け出すためには、過去の自分への期待や執着を手放し、変化した現実の中でも実現可能な新たな期待へと書き換えていく「物語の再構築」が不可欠であると解説された。 関西学院大学の佐藤哲彦氏による「医薬品の社会学」をテーマにしたセッションでは、合法的な医薬品をめぐる「薬害」と、いわゆる違法な「薬物」という一見異なる二つの事例を取り上げ、医薬品が単なる物質ではなく、人々の経験や社会の仕組みと切り離せない「社会的存在」であるという視点を提示した。薬害に関する議論では、医薬品の被害は単なる身体の健康被害にとどまらず、社会的な差別や人間関係の困難といった社会的困難を伴うことが指摘され、被害者にとって健康被害と社会的困難は切り離して別々に経験されるものではなく一体の苦しみとして経験されるものであると説明された。 また、薬物使用の問題についても、国連の公式統計データを引きながら、薬物使用者の85%以上は依存や問題行動を起こすことなく、ただ使用しているにとどまるという実態が示された。それにもかかわらず、社会的な制度や政策によって犯罪者や病気として扱われることで、本来の成分の作用とは別の次元で深刻な社会的困難を経験することになると指摘された。このように、薬害や薬物使用の問題を成分の薬理作用や医学的な性質だけに還元して捉えるのではなく、被害者や使用者が直面している現実の社会的困難や、それを形作る政策・制度との関係性からその意義を深く問い直すことの重要性が強く強調された。 社会理論・動態研究所の松枝亜希子氏のセッションでは、1960年代に日本で市販されていた向精神薬(マイナートランキライザー)の広告や販売動向が事例として検証された。松枝氏は当時について「1960年代のトランキライザーは、2020年代の抗不安薬に該当するといえるだろう」と述べ、「製薬企業によって『精神のビタミン剤』のように宣伝されていた」と当時の広告の傾向を明かした。当時の製薬企業による「精神のビタミン剤」としての宣伝や生活改善への訴求は、現代で欧米を中心に議論されている向精神薬のエンハンスメント利用に該当するものであり、現代の医薬品問題を検討するうえで、歴史的知見を参照する必要性が示された。 今大会では、若手研究者らによるミーティングや企画も新しく開催され、次世代を担う研究者による学際的な取り組みへの期待が寄せられた。また、OTC医薬品等の乱用問題や地域フォーミュラリーに関するシンポジウムなども行われ、参加した学生や薬剤師にとって、臨床や地域医療における実践的な学びと今後の方向性を考える有意義な機会となった。

  • マワレフェス、今年も ~個性あふれる薬局の魅力を感じるイベント開催

    来る10月3日(土)、日本各地で地域に根差した経営展開を行う薬局企業9社が合同で企画するイベント「マワレフェス2026 in福岡」が、福岡市天神のライブハウスを会場に開催される。 主催する9社は「マワレ」という名称の人材研修プログラムで連携しており、参画している企業間で相互に人材を出向させ、他社の薬局の現場で学ぶ取り組みを行っている。 マワレの立ち上げ時は、さど調剤グループ(新潟・佐渡島)、メタルファーマシー(京都・大阪・滋賀)、会喜地域薬局グループ(福島)の3社が運営コアメンバーとして始まり、現在は9社に拡大して活動は全国規模になってきている。 マワレフェスは薬学生・薬剤師を対象にしており、当日のプログラムとしては、マワレに参画する各企業の経営者や社員によるクイズやトークショー、実際にマワレの仕組みで他社出向した体験談などが予定されている。特長的な薬局のリアルな姿が分かる催しになりそうだ。またフェスと謳っているように当日は薬剤師バンドのライブもあり、こちらも見どころだ。 参加費チケット1枚1000円(1ドリンク付)。薬学生は懇親会無料。 開催概要 名称:マワレフェス2026 in 福岡 日時:2026年10月3日(土) 14:30受付開始/15:00開演/21:00懇親会終了予定 会場:ROOMS(福岡・天神) 福岡県福岡市中央区大名2丁目1−50 3階 参加費:1,000円(1ドリンク付き) ※薬学生は懇親会無料 主催:マワレフェス実行委員会 共催:会喜地域薬局グループ 株式会社アイサ 株式会社メタルファーマシー 株式会社メディカルリンク 株式会社ふぁるめど 株式会社なかいまち薬局 株式会社中央薬局 有限会社郡茂薬局 サンカンパニー株式会社 feat.Fix株式会社 主なプログラム ・経営者エピソードクイズ ・出向経験者によるリアル体験談 ・マワレミライ会議 ・薬剤師バンドライブ 詳細・申込フォーム https://forms.gle/4Zx141ySV6xxNKXN9 参考 前回開催の模様 https://note.com/maware/n/nf05f5d07e9a5?magazine_key=m192c9b33782f

  • 失敗を恐れず、自ら道を拓く一薬剤師の挑戦

    株式会社メタルファーマシー代表取締役・薬剤師 川野義光 京都府を中心に薬局を展開する川野義光氏。薬局を独立した転機は先行きが不透明な店舗の再建だった。その後、黒字化のタイミングで独立し、現在は7店舗の薬局を運営するほか、在宅で過ごす患者さんの食の課題を解消するため、弁当製造事業を立ち上げている。また、地域の薬局と業務提携を結び、中小薬局でも一定の研修が受けられる体制を整備したり、自身が出資しYouTubeチャンネルを立ち上げ、薬剤師が活躍する姿を発信したりするなど、薬局業界に新風を吹き込んでいる。ここでは川野氏に地域医療や薬剤師に対する思いを聞いた。 ――大学ではどんな生活を送っていましたか。 大学では2つのことに取り組みました。1つがバンド活勃、もう1つがパチンコ。パチスロです。特にパチンコ・パチスロは、私の人生を大きく左右するものとなりました。パチンコ・パチスロは9割くらいのユーザーが負けるといわれています。残りの1割の人は、コンビニや書店で売っているパチンコ情報誌をもとに機種の研究・分析をして勝ち抜いています。ほとんどのユーザーは、情報誌が唯―の情報源であることを知っているにもかかわらず、それを活用しない、だから負けるのです。逆に言えば研究すればするほど、勝つ可能性が高まるのです。パチンコ・パチスロに限らず、やるべきことをしっかりやれば成功できるんだということを学びました。 ――成長する人って行動力がありますよね。逆に成長しない人はできない理由を探すみたいな。 そんな考えを持っていたので、就職先も企業で選ぶのではなく、そこで自分が何をしたいのかということを考えていました。 就職した薬局は、当時(2010年)から在宅医療に積極的に取り組んでいたこともあり、主に介護施設の薬剤管理を担当していました。施設の看護師とコミュニケーションを取るのは面白かったですね。看護師ってクセの強い人が多いんです。例えば処方箋を送ってくるタイミングは、薬局の閉店時間間際に送ってくるとか…、そういう人たちをいかに懐柔するかということを個人的な課題としてもっていました。課題を克服するために、看護師とたくさんコミュニケーションをとって自分の存在を知ってもらい、いい関係を築いていくことに力を注ぎましたね。その結果、働く環境もよくなっていきました。 その後、妻の出産などで何社か転職しましたが、最初に勤務していた会社の方から声がかかり、独立するという条件で、元にいた会社に戻りました。しばらく管理薬剤師として働き、その間、京都の西京極薬剤師会会長を1年間務めました。薬剤師会の会長として地域ケア会議などに参加した時、自分の考えが変わる出来事がありました。どの会議でも一人暮らしの高齢者のコミュニティーづくりが話題になっていたのですが、自宅で困っている高齢者がたくさんいることを知らせられたのです。それをきっかけに、個人の在宅に注力したいと思うようになり、社長にそのことを伝えたのですが、会社としては効率を考えたら、施設を優先させたいという回答でした。企業としては正解だし、それを否定する気はありませんが、私としては自分が思った課題に対して取り組みたいと思っていました。 ――独立の思いが強くなったのですね。 そんな話をしているうちに、たまたまM&Aした店舗を任されることになりました。会社からは1年半で黒字化したら譲渡するという条件を提示されましたが、応需先の病院が移転を機に売り出された薬局だったため、先行きが不透明な状況でした。最初の月は赤字でしたが、たまたま近隣にある眼科に行ったら院外処方にするという話をいただいたり、個人の在宅を積極的に受けたりして1年で黒字にすることができました。 ――独立したのはいつなのですか。 2017年です。黒字化が見えた時に、卸から薬局のM&A案件を紹介されたのですが、完全に独立するよで、その店舗は友人の薬剤師に任せ、独立してからその店舗をM&Aしたので最初は2店舗からのスタートでした。 ――薬局では珍しく弁当製造事業をはじめていますが、なにかきっかけがあったのですか。 週に4回くらい呼ばれる手のかかる患者さんとの出会いがきっかけでした。ごみが散乱した部屋を見渡すと、毎回同じ菓子パンの袋があり、よく見たら患者さんの口の周りにチョコレートが。患者さんは足も悪く、筋力も低下。食生活が悪いからこんな状態になったのだと思いました。初めのうちは、タンパク質をとっていただくため、コンビニ弁当を買っていましたが、できることなら、人が作ったものを食べさせてあげたいという思いが募ったのです。でも私は料理ができなかったので、いろいろ思いを巡らせていました。そうこうしているうちに患者さんの容態が悪くなり、施設に入ることになりました。 その患者さんとの関係はいったん終わったのですが、栄養状態の悪い患者さんはまだまだ地域の中にいるはず。そういった方たちを見つけて、サポートするにはどうしたらいいのか。その答えが弁当屋だったのです。 ――未知の分野に飛び込むのにためらいはありませんでしたか。 ゼロからのスタートでしたが、高齢者の栄養状態をよくしたいという思いが強かったですね。まずは管理栄養士を雇いました。そして私の弟が滋賀県で和食居酒屋を経営していたので、店長候補に研修に行ってもらいました。これでいけると思ったのですが、現実は厳しかったです。管理栄養士のンシピをもとに弁当を作るのですが、1度に50人分の料理を作ると、味が全然安定しないのです。でも試行錯誤をして何とか形にすることができました。これでオープンできるなと思っていたところ、料理人が腰のヘルニアでリタイアしたのです。オープンまであと2週間の時のことでした。 ここで大きな決断を迫られました。私は大きい決断をする際は、進むか、とどまるか、戻るかの三択をします。やめることは考えていませんでしたし、料理人が復帰する可能性もありませんでしたので、自分でやろうと決めました。まずは、営業日を年中無休から週5日とし、メニューも日替わりではなく、例えば月曜日はカレー というように5種類に絞りました。そこから弁当屋に泊まり込んでYouhibeの料理チャンネルを見ながら料理の技術を磨き、何とかオープンにこぎつけることができました。オープンしたのは2021年3月です。 ――心が折れることはありませんでしたか。 新しいことをしたら大なり小なり失敗します。弁当屋は失敗続きだったのですが、目的が明確化されていたので、閉店することは頭の中にはまったくありませんでした。黒字化するのに1年半かかりました。 弁当屋をはじめて、あらためて薬局のビジネスモデルは強いなと痛感しました。弁当屋は薬局と違い、お客さんに選んでもらわないといけません。そして味を気に入ってもらってリーピートしてもらう。広告にもお金をかけましたし、味の改良、接客にも力を入れました。オープン前は独居の高齢者か、そのご家族をターゲットにしていましたが、地域の中には私たちを必要としている層があることが分かりました。それが小学生くらいのお子さんがいるお母さんです。地域のお母さんたちが集まるイベントに呼ばれた際に、「働きながら子供に食事をつくるのは難しい。でも子供には健康なもの食べさせてあげたい」という声を多く聞きました。 最初の半年は、私自身が弁当屋の環境を整備し、その後はスタッフに任せています。2023年10月に2店舗目をオープンする予定です。 ――地域の薬局と業務連携し研修体制(在籍型出向研修「マワレ」)を構築しているそうですが、その内容をお教えください。 さど調剤グループ(新潟県佐渡市)の薬剤師。光谷良太さんと、けやき薬局(福島県会津若松市)の馬場祐樹さんと連携して、それぞれの社員を出向させて、研修するというものです。出向期間は1~ 3週間、対象は薬剤師と医療事務です。相互で研修することでスタッフの視野が広がりますし、互いの企業のノウハウをシェアすることもできます。2023年2月からトライアルを開始し、2024年4月に本格運用します。 このアイデアはいろいろな企業が考えていたと思うのですが、実現しているところはありません。ネックになるのがスタッフの引き抜きなんですね。だから連携できる企業は互いが尊敬していることが条件になります。そういう思いがあれば、仮に出向先にとどまりたいという申し出があっても、「頑張って行って来い」と送り出すことができるのです。 ――YouTubeチャンネルを立ち上げたそうですが、どんな番組ですか? 「あしたの薬局」という名前で2023年に立ち上げました。「マネーの虎」と「情熱大陸」を掛け合わせたような番組です。番組の出資は私がやっています。番組のスタイルとしては、薬局の社長たちの前で、若い薬剤師が自分の夢ややりたいことをプレゼンします。社長たちは出資をしないのですが、プレゼンを聞いて応援するかどうかをジャッジします。マッチングが成立したら、応援する社長が薬剤師に対して、夢をかなえるためのミッションを与えます。そして、そのミッションを乗り越える薬剤師の姿を1カ月間カメラで追い続けます。 このチャンネルを通じて、薬剤師の価値の向上、挑戦することをためらっている薬剤師への後押し、みんなからあこがれられる薬剤師の輩出― に寄与したいと思っています。我こそはと思う方は公式ライン(https:/lin.ee/i0O78js)に応募してください。 ――今後の展望について教えてください。 海外事業をやっていきたいですね。JICA(国際協力機構)のプロジェクトでキルギスに行っていた薬剤師に「キルギスに来ないか」と誘われたのがきっかけで、現地を訪問したときのこと。キルギスの保健省の人や業界最大手の薬局の副社長、国立大学の薬学部長と話をして、キルギスの薬局の現状を聞いたところ、服薬指導やフォローアップという概念がなく、ただ付箋に書いてある処方薬についてジェネリックにするかどうかを聞いて渡すだけというものでした。私が日本の薬局や薬剤師の役割について話すと、ぜひキルギスに持ち込んでほしいと依頼されました。現在JICAに申請中ですが、採択されれば、2024年から現地の薬局とコラボして日本式の薬局をつくり、試験運用する予定です。 ――最後に薬学生に対してメッセージをお願いします。 世の中には学ぶことはたくさんあります。意味がないと思えるような授業、ただこなすだけのバイト、見方を変えれば学びはたくさん転がっています。「○○ガチャ」という言葉をよく聞きますが、与えられた環境に不満を漏らすのではなく、学ぶ姿勢は失わないでください。きっと人生が豊かになるはずです。 川野義光(かわの・よしみつ) 大阪薬科大学卒業後、チェーン薬局等で薬局薬剤師として勤務。2017年に株式会社メタルファーマシーを設立し、現在は京都を中心に薬局7店舗、弁当製造販売店1店舗を経営している。また、地域の薬局と業務提携を結び、在籍型出向研修「マワレ」を立ち上げ、新たに研修体制を整備したり、夢に向かって挑戦する薬剤師の姿を紹介するドキュメンタリー番組「あしたの薬局」をYouTubeチャンネルで立ち上げたりしている。京都府薬剤師会理事。趣味はデスメタル、パチンコ・パチスロ。

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