ツルハ・ウエルシア統合 ドラッグストアの枠を超えた「ライフストア」構想
- toso132
- 5 日前
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株式会社ツルハホールディングス(以下、ツルハHD)とウエルシアホールディングス株式会社(以下、ウエルシアHD)は、2025年12月1日付で株式交換による経営統合を実現し、その詳細なビジョンを公表した。この統合は、同年4月11日付の資本業務提携契約に基づき、ツルハHDを完全親会社、ウエルシアHDを完全子会社とする株式交換の効力発生により実現したものである。両社は、単なる業界内の規模拡大に留まらず、創業以来大切にしてきた理念を進化させ、「人生に寄り添うライフストア」への革新的な変革を目指す。
グローバル進出と国内基盤の確立
この統合により、新生ツルハHDは売上規模で世界のドラッグストア企業における第2グループに入り、世界3位の背中が見える位置に立つこととなった。この第2グループとは、Walgreen CVSなど圧倒的な存在感を持つ第1グループの次のステージであり、ごく限られた企業しか到達できない領域である。日本のドラッグストア企業として初めてこの領域に到達する。
国内においては、全国47都道府県を網羅する約5,600店舗のネットワークを確立し、店舗数、売上高、従業員数で業界において圧倒的1位となる。特に、薬剤師、登録販売者、管理栄養士などの約5万人の専門人材を擁する国内最大の組織となり、さらに両社の顧客データベースを完全に統合することで、約1億人規模の購買・アプリ接点データを構築するとしている。
ライフストアの定義と未来の顧客体験
ツルハHD代表取締役社⻑の鶴⽻順氏は、新生ツルハHDのビジョンとして「ドラッグストアから人生に寄り添うライフストアへ進化する」を掲げた。「ライフストア」とは、国内外の顧客の人生そのものに寄り添う店舗であると定義される。これは、薬を買う場所という従来の役割を超え、誕生から老後まで人生のあらゆる局面に寄り添い続ける存在を目指すもので、日々の買い物、美容、食料品、未病予防、相談機能、データによる健康支援などが全て一つにつながり、顧客の生活動線そのものを支えることが本質であるという。
成長戦略:3年間の基盤構築と重点施策
ビジョン実現に向けた実行は、最初の3年間で基盤を固めるフェーズ1から開始される。このフェーズでは、サプライチェーンを統合し、ナショナルブランド商品の共同調達による原価低減と、生活必需品の適正価格化を推進していく。
また、データ・システムの一元化は特に重要な施策であり、約1億人規模の顧客データ統合と、3年以内の基幹システム統合を通じて、グループを一つの体で動かし、「日本で最も生活者を理解する企業」を目指す。この基盤が整うことで、欲しい商品が欲しい時に手に入る、健康提案が自然につながるなど、ライフストア体験が具体的に提供されるようになるという。
調剤・プライマリーケア機能も強化され、調剤薬局をセルフケアの起点へと進化させるため、相談機能の強化や在宅・オンラインチャネルの拡大、データ活用による相談型AIエージェントの導入などを進める。統合の象徴として、新プライベートブランド「からだとくらしに、+1(プラスワン)」を来春より発売する予定である。フェーズ1で基盤が完成した後、フェーズ2では、その基盤が一気に稼働し、ライフストアの体験がどの地域にも同じ品質で広がる飛躍のフェーズとなる見込みである。
人材戦略と経営体制
ウエルシアHDは株式交換によりツルハHDの完全子会社となったが、ウエルシアが培ってきた強み、特に調剤専門性やセルフケア支援のノウハウは新生ツルハHDの中核資産として最大限に活用される。
新生ツルハHDの人材戦略は、統合後の最大の成長エンジンと位置づけられている。両社が持つ5万人の専門人材の知見を融合させ、ノウハウが循環する「学びの循環」を形成し、ライフストア形成のエンジンと位置づけている。この人材の知性、知識、経験値の統合こそが、グループ最大の成長エンジンであるという。
経営体制では、代表取締役社長は鶴⽻順氏が務める。ウエルシアHD代表取締役の桐澤英明氏は、新生ツルハHDの取締役兼執行役員に就任し、主に営業・商品領域を管掌する役員として、両社の経営統合を主導する。新生ツルハHDは、イオンからの非業務執行役員1名派遣に留め、経営の自主性と独立性を明確に確保し、日々の経営判断は両社のリーダーが主体となって行う方針である。
海外市場への展開と社会貢献
新生ツルハHDは、国内の基盤強化に加えて、海外市場への展開を積極的に進める方針である。ツルハとウエルシアがこれまで培ってきたノウハウに加え、イオングループの基盤と知見を活用し、ASEANを中心とした海外市場へ進出し、日本で磨かれた健康・生活支援の知識を世界に展開することを、新生ツルハHDの使命の一つと位置づけている。
また、桐澤氏が強調したように、国内では介護事業の強化を進め、ドラッグストア・調剤・介護を一体化した地域包括ケアの担い手となることを目指し、社会課題への貢献を使命とする。イオン取締役代表執行役社長の吉田昭夫氏も、イオングループのスケールメリットやインフラを活用し、新生ツルハHDの成長を力強く支え、ヘルス&ウェルネス領域を事業の中核に据える方針を示している。
なお、今回の発表では、株価影響やのれん算出影響を踏まえ、数値目標や業績見通しは含まれていない。数値計画については、2026年4月に改めて開示を予定しているという。







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