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患者と市民も参画する創薬エコシステムを目指して~新湘南ウェルビーイングフェスタ2025

  • ito397
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分
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11月29日、神奈川県藤沢市の創薬開発イノベーション拠点、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて、一般市民向けのイベント「新湘南ウェルビーイングフェスタ2025~ウェルビーイングって何だろう?今と未来のヒントがここにある~」が開催された。

「ウェルビーイング」とは「肉体的にも精神的、社会的にもすべてが満たされた状態」を指す言葉で、これからの医療福祉や社会づくりにおいて重要視されていくキーワードだ。

昨年に続き2回目となるこのイベントでは、施設の屋内外を会場に、ウェルビーイングの実現をテーマにした企業や大学による製品システム、サービスの紹介や、医療、テクノロジーの専門家と市民が共同参加できるワークショップなどが行われた。


研究者と市民が創薬に共同参画する時代へ


イベント内では「お腹の病気をもとに考える、患者さんと市民が一緒に作る未来のクスリ ―患者・市民が製薬企業とできること―」と題したワークショップも開催され、創薬開発に携わる研究者と患者、一般生活者とが共同で創薬に関わることについて各立場からの講演が行われた。

湘南アイパーク内のコミュニティ「WorldCafe」メンバーでマルホ株式会社の研究者である平野尚茂さんは、前世紀からの病気と医薬品開発の歴史的背景を解説し、近代の創薬は感染症や急性死に対応した救命治療するために医師や研究者主体で薬の開発が行われていたが、2000年代前後には生活習慣病薬の開発を背景に診断に基づく標準治療として科学とエビデンスが重視されるようになり、2010年代ごろからは患者の生活や人生への負担を取り除くための心身を含めた最適化を求める医療の時代になったと説明。これからは患者と市民も創薬開発に一緒に参画することが求められると述べた。


患者の視点での薬との向き合い方


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続いて炎症性腸疾患(IBD)の患者側の声として、IBD患者と家族のコミュニティ「Gコミュニティ」の運営や、情報発信を行う株式会社グッテの宮﨑拓郎さんと、コミュニティのメンバーで自身もクローン病患者である小林由佳さんが登壇。小林さんは18歳の時に発症し、大学進学、海外の大学院進学を経て現在東京の企業で勤務しており、社会人10年目を迎えるが、その間のライフステージにおいて手術と治療を繰り返した。持病と向き合いながら学業や仕事を続けてきて感じた問題点を説明しながら、現在は自分に合った生物学的製剤と出会えたお陰で生活が改善されていると語る。

今回伝えしたいこととして、闘病している患者本人の意思を尊重してほしいと話し、「私自身はあまり過度に心配されたくない性格だが、中には気配りを求める患者さんもおり、症状も人それぞれですし、ケアしてほしい度合いも人それぞれであるなか、患者も一概ではなく様々な考えの方がいることを知ってほしい」と訴えた。


地域住民が健康づくりにどう関わるか


また地域住民の立場から、湘南アイパークの立地する藤沢市村岡地区の渡内町内会の会長をつとめる木村宏治さんは新湘南ウェルビーイングフェスタについて「無病息災を祈る祭り」と表現。地域社会における住民と健康の関わり方について、民俗学で提唱されている「ハレとケ」の考え方をあてはめて説明。ケ(日常)が続いてケガレ(気が枯れて元気がなくなる)状態を復活させるためのハレ(非日常の祭り)のサイクルが繰り返されることで人生が成立するとした。人生100年時代においては生涯ずっと健康であり続けることは難しいが、病気で薬を飲んだり、災害に遭ったとしてもハレとケのサイクルの中で町内会と住民は結びつきの中で健康について地域の中で目を配れることができるのではないかと語った。


創薬エコシステムの町での住民、患者の参画のあり方


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登壇者全員によるパネルディスカッションでは、創薬研究者、患者、そして住民の間で、いかにして相互理解を深め、地域に根差した文化を築くか、また創薬エコシステムが根付く地域において、患者と住民がどのように薬づくりに参画し、そのあり方をどのように発展させるべきかについて議論された。

総括として研究者にとっては患者や住民との日常生活的な話し合いこそが、研究における新しい発見につながるとの見解が示され、研究者が抱える課題に対して、患者の生活の視点から新しい解決策やヒントが得られる可能性があり、地域のネットワークを密接にすることで、その機会を日常的に持てるようにすることが、新しい薬の種を生み出す鍵になると締めくくられた。


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