熊本大学発ベンチャー C-HAS+、線虫評価技術「C-HAS」で健康寿命の科学的エビデンスを提示
- toso132
- 2 日前
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地域の力を科学で社会実装:熊本大学発 C-HAS+の使命
株式会社 C-HAS プラス(C-HAS+)は、「地域の力を活かし、ウェルネス・エクイティの実現を目指して」という理念のもと、熊本大学・熊本県・文部科学省による産学官連携プロジェクト「UpRod」の想いを受け継ぎ、熊本発の新産業創出を目指して誕生したベンチャーである。
同社は、大学の研究成果を生かした独自技術、具体的には線虫による健康寿命評価技術(C-HAS)、天然物エキスバンク、そして植物情報データベースを基盤とし、自然資源と科学を融合させることで、地域社会の課題解決に取り組んでいる。
独自技術を公開:健食・バイオアカデミックフォーラム2025に出展
このような背景と独自の技術基盤を持つC-HAS+は、その成果を社会に広く発信するため、2025年11月26日〜28日に東京ビッグサイトで開催された「健食・バイオアカデミックフォーラム2025|ウェルネスフードジャパン2025」に出展し、独自の天然資源探索技術と評価システム等を来場者に公開した。
同社は、大学の研究サポートを受けつつ、熊本大学大学院生命科学研究部附属グローバル天然物科学研究センター(GCNRS)との共同研究を推進しており、その成果は企業の健康・美容素材開発における時間とコストの劇的な削減を可能にしている。
C.エレガンス(線虫)健康寿命評価技術「C-HAS」の核心
来場者の関心を集めたのは、C.エレガンス(線虫)健康寿命評価技術「C-HAS」である。
この技術の革新性は、従来の非常に手間のかかる線虫実験とは異なり、線虫をインキュベーター内で30日間連続撮影し、その画像を解析することで、線虫の動きを定量的に解析可能にした点にある。
評価ロジックとして、C-HASは線虫の集団を「活発に動いて寿命も長いグループ」や「動きが緩慢で寿命が短いグループ」など4つに分類する。素材を添加した際に、この「活発な健康長寿グループ」の割合がどれだけ増加するかを指標として評価が行われる。
具体的な成果事例として、鹿児島で伝統的に作られる黒酢を線虫に与えたところ、健康長寿の線虫が45.3%増加したことが確認された。これは、古くから伝わる食品の健康効果を科学的エビデンスとして明確に提示するものである。
伝統と科学を融合した天然物探索データベース
もう一つの主要サービスは、天然資源から機能性素材を効率よく探索するためのデータベースとエキスバンクの活用である。
探索の効率化として、植物の伝統的な薬効知識に加え、論文データベース(PubMed)と連携させることで、企業の開発者が求める病名や分子ターゲットから、効果のある植物を短時間でリストアップできる。これにより、企業がランダムスクリーニングにかける膨大な時間とコストを大幅に削減することが可能となる。
エキスバンクとの一体運用により、データベースで絞り込まれた植物、キノコ、菌類などの抽出エキスは、大学が保有するエキスバンクから提供される。企業は素材の「種」を探すプロセスをC-HAS+に委託し、自社の最終的なスクリーニングへと進めることが可能となる。
企業とアカデミアを繋ぐ窓口機能と製品化への貢献
C-HAS+は、熊本大学で生まれた国のプロジェクト「UpRod」の成果を社会に繋ぐ受け皿として設立された。
同社は、企業からの問い合わせや予算、権利的な調整など、企業対企業でやり取りしたい部分を一手に引き受ける「窓口機能」を担う。そして、高度なスクリーニングやエキスの詳細な分割といった高次な研究については、同社が窓口となりながら、大学の研究室と連携して実施する体制を強化している。
製品化へのアドバイスでは、健康分野だけでなく、酒造メーカーのクラフトジン開発において、特定の植物がもたらす「香り」に関するコンサルテーションを行うなど、健康と美味しさの両面で企業を支援し、すでに商品化されている事例も存在する。
最終的な製品化には年月を要するものの、すでにエキスを絞り込み、商品化に近づいている素材が数種類あること、また、菊の花エキスを用いた花粉症への効果で特許出願の成果を上げていることが展示ブースで報告された。
熊本大学薬学部の独自性
同社の技術を支える熊本大学薬学部は、その教育体制にも特徴がある。
学科横断的研究として、創薬・生命薬科学科(4年制)と薬学科(6年制)の学生が同じ研究室に所属する体制をとっており、基礎研究と臨床的視点の横の交流を促している。
研究マインドの養成も目標の一つであり、薬剤師を志望する学生も基礎研究や製剤部分などさまざまな研究に携わることで、研究の流れ全体を理解し、研究マインドを持った薬剤師として社会に送り出すことを教育目標の一つとしている。
同社は、熊本大学のこのユニークで豊富な知見と地域資源を融合させ、創薬・健康食品・化粧品分野において、今後も革新的な素材の探索と社会実装を推進していくと見られる。






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