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  • マツモトキヨシが成田空港第3ターミナルに出店―全ターミナル網羅で加速するグローバル戦略

    株式会社マツキヨココカラ&カンパニーは、2026年8月28日、成田国際空港第3旅客ターミナル内に「マツモトキヨシ 成田国際空港第3ターミナル店」をオープンした。これにより同社は成田空港の第1・第2・第3の全ターミナルへの出店を完了し、インバウンド需要の取り込みおよびグローバル戦略を一段と強力に推進する体制を整えた。 全ターミナル網羅がもたらす戦略的意義 同社は「未来の常識を創り出し、人々の生活を変えていく」というグループ理念のもと、日本全国47都道府県に3,600超の店舗を構え、海外においてもアジアを中心に105店舗(2026年6月末時点)を展開する巨大ドラッグストアグループである。同社は美と健康の分野でアジアNo.1を目指し、国内外の顧客に対する高品質な商品・サービスの提供とグローバル事業の拡大を核とする事業戦略を掲げている。 同社における成田国際空港への初出店は、2018年7月の「第1ターミナル店(出国手続き後エリア)」にさかのぼる。その後、2019年には第2ターミナル内にフランチャイズ形態を含めた店舗を順次開設し、2023年8月には第2ターミナル店(直営)をオープンさせていた。 今回オープンした「第3ターミナル店」は、同空港における5店舗目の出店となる。主要格安航空会社(LCC)が数多く発着する第3ターミナルの出国手続き後エリアを押さえたことで、成田空港内の主要全ターミナルにおける出店ネットワークが完成した。これにより、同グループが展開する空港関連施設への出店数は合計15店舗に達した。 新店舗「成田国際空港第3ターミナル店」の概要と特徴 新店舗は、成田国際空港第3旅客ターミナルビル本館3階の出国手続き後エリアに位置する。売場面積は約256㎡を確保し、早朝から夜遅くまで運航するLCC便の利用客の利便性を考慮して、営業時間は早朝5時15分から夜22時30分までと幅広く設定されている。 インバウンド回復と「matsukiyo」ブランドの発信力 観光立国としての日本の存在感が高まり、訪日外国人旅行客の更なる増加が見込まれる中、出国直前の購買ニーズに応える「空港内店舗」の重要性は極めて高い。同店ではヘルス&ビューティ商品を中心に、高品質な医薬品や化粧品、免税対応商品のほか、高い評価を得ている自主企画ブランド「matsukiyo」を豊富に取り揃えている。 旅の最後のタッチポイントとなる出国手続き後エリアにおいて、多様化する顧客ニーズに対応した店舗運営を行うことは、訪日外国人の旅の快適性をサポートするだけでなく、自社ブランドの認知度をアジアをはじめとする世界へ向けて高める絶好の機会となる。 今後の展望 同社は、東証プライム市場上場企業として「美と健康の分野でアジアNo.1」の連合体構想を推進している。成田空港における全ターミナル出店の達成は、国内の観光拠点における強固な基盤構築を意味すると同時に、アジアを中心とした海外展開との相乗効果を生み出す重要なステップである。今後も同グループが推進するグローバル店舗網の拡充とブランド戦略の動向に注目したい。

  • シオノギヘルスケアが大賀薬局の体験型イベントに出展―親子で楽しく学ぶ「薬の正しい飲み方」と適正使用への取り組み

    シオノギヘルスケア株式会社が、大賀薬局の主催する夏休みイベント「オーガマンとサマーパーティー」に体験型ブースを出展した。親子で楽しみながら薬の正しい飲み方や知識を深めることを目的とした本取り組みについて紹介する。 親子で健康を学ぶ「オーガマンとサマーパーティー」 2026年7月26日、福岡市の大賀薬局が主催する夏休み特別イベント「オーガマンとサマーパーティー」が開催され、会場には54組・約200人の親子が詰めかけて大盛況となった。 同イベントは、子供たちが薬や健康について楽しく学び、家庭内で健康について話し合うきっかけをつくれるように企画されたものである。当日は、手洗いやうがいをはじめとする薬の正しい使い方を学ぶ体験プログラムや、過剰摂取(オーバードーズ)防止をテーマとした授業、さらには地域企業による健康体験ブースなど、多角的なコンテンツが展開された。 シオノギヘルスケアは、OTC医薬品の適正使用啓発とヘルスリテラシー向上を目指す活動の一環として、このイベントへ参画した。 目の前で変わる実験に驚き!体験型ブースの模様 日常生活に身近な薬であるが、服薬方法を誤ると本来の効果が得られなかったり、安全性に影響が出たりすることがある。そこでシオノギヘルスケアのブースでは、「なぜ薬はコップ1杯程度の水やぬるま湯で飲むのか」や「なぜ特定の飲み物との飲み合わせに注意が必要なのか」という2つの疑問をテーマに、変化を直接確認できる実験が実施された。 参加した子供たちや保護者は、目の前の実験で起こる反応や違いを食い入るように観察し、体験を通じて薬の正しい飲み方や飲み合わせの理由について理解を深めた。 参加者からは「知らなかったことばかりで勉強になった」「今日から家での薬の飲み方に気を付けたい」といった声が聞かれ、単に知識を暗記するだけでなく、普段の服薬習慣を見直して薬を正しく使う意味を考える貴重な機会となった。 子供の頃から「薬について自ら考える力」を育む 薬の服用においては、製品ごとに定められた用法・用量を守り、特別な指示がない限りコップ1杯程度の水またはぬるま湯で飲むことが基本である。特定のジュースやカフェイン飲料などで飲むと、薬の効果が強く出すぎたり弱まったりするリスクが生じるため、飲み合わせには十分な注意が必要となる。 シオノギヘルスケアは、薬を「病気のときだけのもの」ではなく「毎日の健康を支える身近な存在」と位置付けている。幼少期から薬に関する正しい知識に触れ「なぜその飲み方が大切なのか」を理解して自ら考える力を養うことが重要であるという考えのもと、今回の体験型アプローチが採用された。知識を一方的に伝えるのではなく、親子で楽しく実験しながら、日々の生活で薬を正しく使うきっかけとなることを目指している。 シオノギヘルスケアが推進する「市販薬の適正使用活動」 シオノギヘルスケアは「すべての人に、やさしく、正しく、楽しくセルフケアを」というコンセプトのもと、市販薬の適正使用とオーバードーズ対策に向けて多角的な取り組みを展開している。 具体的には、学校や薬剤師会と連携した研修や講演の実施、啓発資材の提供を行う「教育支援」を進めている。また、店頭での空箱設置などによって販売時の確認機会を創出する「適正な医薬品アクセスの確保」にも取り組む。さらに、相談窓口へのスムーズな接続を支援する「ツナグカード」を活用し、「相談導線の整備」を進めている。 シオノギヘルスケアは今後も、学校薬剤師、教育機関、薬局・ドラッグストア、支援団体などとの連携を強化し、市販薬の適正使用の推進と、必要な支援につながる環境づくりに取り組んでいく構えだ。

  • トライアル×スギ薬局の戦略的協業が始動!9月1日「須恵店」「飯塚店」に調剤薬局が初オープン

    株式会社トライアルホールディングスとスギホールディングス株式会社は、2026年1月に基本合意した包括的協業の一環として、同年9月1日より「スーパーセンタートライアル須恵店」および「スーパーセンタートライアル飯塚店」の店内へ、スギ薬局の調剤薬局を初オープンする。 本件は、両社が掲げる「スギ薬局の調剤薬局をテナントとしてトライアル店舗に展開する」という戦略的協業を具現化する初の取り組みである。 協業の目的と狙い 本取り組みは、双方の強みを掛け合わせることで地域住民に新たな価値を提供し、事業シナジーを創出することを目的としている。 スギ薬局が培ってきた「専門的な調剤ノウハウ」と、トライアルの強みである「EDLP(エブリデイ・ロー・プライス)を支えるローコスト運営およびリテールテック」を融合させ、日常の買い物と健康サポートをトータルで提供する新しい店舗モデルの構築を目指す。 1. 生活動線上における「ワンストップ・ヘルスケア」の実現 食品・日用品のディスカウント販売で生活を支えるトライアルと、調剤機能を持つスギ薬局が一体化することで、日常の買い物と処方箋受取が1カ所で完結する環境を整備する。気軽に行ける「ヘルスケアインフラ」としての機能を強化し、地域全体の健康向上に貢献する。 2. 集客力を生かした顧客接点の拡大と九州でのスピード出店 スギ薬局は、トライアルの高い集客力と広域からの来店頻度を活用し、従来の単独店舗や医療モールとは異なる顧客層へアプローチする。昨年度に九州エリアへ初進出したスギ薬局にとって、本協業は出店戦略を飛躍的に加速させる重要な足がかりとなる。 3. 店舗の多機能化と来店頻度の向上 トライアルは、定期的な処方箋利用を必要とするシニア・ファミリー層の生活動線に入り込むことで、新たな来店サイクルを創出する。価格訴求に加え「健康・医療」の専門サービスを備えた「生活総合サポート拠点」へと進化し、店舗独自の優位性を確立する。 ■ 概要 オープン日 2026年9月1日(火) 対象店舗 スーパーセンタートライアル須恵店 スーパーセンタートライアル飯塚店 協業内容 トライアル店舗内へのスギ薬局(調剤薬局)テナント出店 目指す姿 買い物と医療アクセスが融合した「ワンストップ・ヘルスケア」の構築

  • 空き日程から自分に合う薬局を探す!東京薬科大生がAIと挑んだ『ファーマカレンダー』開発ストーリー

    久芳さん 就職活動を迎える薬学生の多くは、「まずは大手企業から」と有名な薬局ばかりに目を向けがちである。しかし、世の中には知名度が高くなくても、優れた特徴や魅力を持つ中小薬局が数多く存在する。 今回インタビューに応じてくれたた東京薬科大学薬学部5年生の久芳志羽和(くば しゅうわ)さんは、プログラミング未経験でありながら生成AIを駆使し、空き日程から薬局の会社説明会を検索・予約できるWEBツールおよびアプリ『ファーマカレンダー』を独自開発した。就職活動における自身の気づきから生まれたこのプロダクトの全貌と開発の舞台裏、そして将来の薬局経営に向けた情熱について詳しく話を聞いた。 就職活動体験で気づいた「中小薬局の魅力」と「情報の壁」 『ファーマカレンダー』のアイデアは、久芳さん自身の就職活動における気づきと課題意識から生み出された。4年生のCBT終了後、友人に誘われる形で早期に就職活動を開始した久芳さんは、当初「まずは大手企業」というイメージを持って企業を巡っていた。しかし、多様な薬局を見るうちに、地域密着型の中小薬局に非常に大きな魅力があることに気づく。 アプリ開発の出発点 「大手就職活動情報サイトは企業名での検索が基本であり、名前を知らない中小薬局を検索・発見するのは非常に困難でした。中小薬局には素晴らしい魅力があるのに、存在すら知られないまま選択肢から外れてしまうのは非常にもったいないと思いました」と久芳さんは語る。 企業名検索に頼らず、知名度にかかわらず優良な薬局と薬学生が出会える場を作りたいという強い思いが、アプリ開発の出発点となったのである。 「この日、予定が空いているから会社説明会をやっている薬局を探したい」という切実な思いが、『ファーマカレンダー』の核心となるアイデアの着想元である。 既存の就職活動情報サイトで特定の日程に絞って会社説明会を探そうとすると、無数の職種から薬剤師を選択し、何段階ものフィルターをかける必要があり不便を感じていた。そこで『ファーマカレンダー』では、カレンダー上の日付をワンタップするだけで、その日に会社説明会を開催している薬局一覧が表示されるシンプルな設計を採用した。 アプリの使い方と1画面完結デザイン 『ファーマカレンダー』は、1都3県をはじめとする首都圏の東京近郊エリアに所在する中小薬局やドラッグストアを主な掲載対象としている。各企業が開催する会社説明会や体験型インターンシップの日程および開催場所が網羅されており、参加希望者が日程を選んで申し込むと、自動生成された予約メールが企業へ直接送信される。その後、薬局側から確認メールが参加者に届くスムーズな連携機能を備えている。 また、同世代の薬学生に使ってもらうため、最も徹底したのがストレスのない入力設計である。従来の就職サイトでは住所や詳細な個人情報の入力を求められ、登録に手間がかかることが多い。『ファーマカレンダー』では新規登録項目を「名前、電話番号、メールアドレス、大学名、卒業予定年度、パスワード」の最低限に絞り込み、これらをすべてスマートフォンの1画面内に収めた。これにより数分で登録が完了し、直感的にすぐ活用できる操作性を実現している。 生成AIとの対話を通じたプログラミング未経験からの挑戦 驚くべきことに、久芳さんはアプリ開発やプログラミングの専門知識をほぼ持たない状態から制作を開始した。開発を可能にしたのは生成AIの活用である。「就職活動中の後輩のためにこのような媒体を作りたいがどうすればいいか」という根本的な相談からスタートし、AIを相談相手やサポーターとして駆使しながら、プログラミング学習と実装を並行して進めた。 久芳さんは「アプリ単体の画面だけでなく、企業側がGoogleフォームやCSV等で定員や日程を登録できる仕組みや、エラー対応など、実際に機能させるための細かな抜け漏れへの対処に予想以上の時間と試行錯誤を要しました」と振り返る。Macのアプリ開発ソフトを駆使し、Apple Storeの厳密な審査も念入りの準備によって一発で通過させた。 完成後に友人に試用してもらったところ、非常にポジティブな反響が得られた。「日付で検索できるのが想像以上に便利」「合同説明会に出ていないような中小薬局と出会える」といった声が寄せられ、空いている日に素早く探せる快適さを実感する結果となっている。 現状は1都3県の首都圏エリアをメインとし、テストマーケティング的に展開しているが、今後は福岡や大阪など他地域への横展開も視野に入れている。 企業の「強み・特徴」を可視化する新機能構想 5年生として実務実習や自らの就職活動を進める中で、久芳さんは『ファーマカレンダー』のさらなる発展形を描いている。現在は日付からの日程予約が主軸であるが、今後は「多摩地域に特化している」「福利厚生や給与体系に強みがある」といった各中小薬局の特徴や強みを2〜3行で確認できる機能の実装を計画している。 各社の個性がひと目で分かれば、薬学生はより自分に合った企業に出会いやすくなる。薬学生と中小薬局のミスマッチをなくすための橋渡しとしての機能を拡充していく意向である。 久芳さん自身の今後のキャリア アプリ開発という大きなチャレンジを成し遂げた久芳さんであるが、自身の将来像としては薬局経営を真っすぐに見据えている。実務実習での学びはもちろん、就職活動においても「独立や開業ノウハウを学べる場があるか」「経営層や社長と直接対話ができるか」という軸で企業選択を行っている。 薬剤師としての臨床スキルと、プロダクト開発で培った視点を掛け合わせ、将来の薬局経営に生かす考えである。 就職活動は意外と楽しい!早めの行動がおすすめ 最後に、薬学生に向け、久芳さんから温かいメッセージが送られた。 「就職活動は堅苦しく大変なものと思われがちですが、実際にはどこも温かく歓迎してくれます。他校の友人ができたり、自分の視野が広がったりと、実はとても楽しいプロセスです。5年生まで後回しにするのではなく、低学年のうちから先輩に声をかけてイベントや交流会に顔を出してみてほしいですね」と語る。続けて「やりたいことがあってモヤモヤしているなら、一度行動してみることで解像度が格段に上がります。迷ったらまずは動いてみることを強くおすすめしたいです」と締めくくった。 ファーマカレンダー:薬学生専用の就活説明会カレンダー。製薬・調剤薬局・ドラッグストアの合同・個別説明会を検索・申し込みできる。

  • 異業種連携で開く産業の未来——ヒューマノイドロボット活用コンソーシアム「J-HRTI」が目指す「フィジカルAI」の実装と現場革命

    テレオペレーターが専用のインターフェースやセンサーを用いてロボットを動かし、作業動作の元データを収集 将来、医療や薬学の現場での活躍を目指す薬学生にとって、医薬品の安定供給や品質管理の裏側を知ることは極めて重要である。現在、日本の製造業や物流、そして医薬品業界は、深刻な生産年齢人口の減少に伴う「人手不足」という大きな課題に直面している。 この課題に対し、従来の生産ラインや作業環境を大きく変えることなく自動化を実現する切り札として、いま「ヒューマノイドロボット(人型ロボット)」が大きな注目を集めている。このヒューマノイドロボットの産業現場への社会実装を加速させるべく設立されたのが、民間企業主導のコンソーシアム「J-HRTI(Japan Humanoid Robot Training & Implementation)」である。 J-HRTI(ジェイハーティ)とは? J-HRTIは、ヒューマノイドロボットの産業現場への社会実装を目的として、2026年3月26日に設立されたコンソーシアムである。民間企業のみで構成されており、事務局を務めるINSOL-HIGHをはじめ、山善、ディーエムエス、芙蓉総合リース、ツムラなど計5社が参画している。 J-HRTIの目的と「フィジカルAI」の学習データ収集 J-HRTI 関東データファクトリーについて説明するINSOL-HIGH株式会社代表取締役の磯部宗克氏 工場や物流現場でロボットを自律的に動かすには、文字や画像を処理する言語・画像モデルとは異なり、「モノをつかみ、動かす」ための「フィジカルAI(身体性をもつAI)」の学習が不可欠である。 しかし、ロボットに複雑な人間の動作を学習させる(模倣学習)には莫大な動作データが必要であり、専用設備やコストの観点から1社単独で進めるには限界があった。そこでJ-HRTIでは、参画企業が共同でデータ収集・整備を行える拠点として「J-HRTI 関東データファクトリー」(千葉県習志野市)を開所し、2026年8月26日より本格稼働を開始した。 関東データファクトリーの仕組み データファクトリー内では本格稼働時点で35台のヒューマノイドロボットが導入されており(最大40台まで拡充予定)、以下のエリアでデータ処理を行う。 ヒューマノイド・トレーニングゾーン:テレオペレーターが専用のインターフェースやセンサーを用いてロボットを動かし、作業動作の元データを収集する。 アノテーションエリア:専門スタッフが動作映像や関節データに説明情報を付与し、AIが学習できる形に変換する。 テストエリア:参画企業の実環境を再現し、検証や調整を行う。 このようにして蓄積・改善された「国産フィジカルAIデータ」を共有資産として活用し、各業界の現場課題の解決につなげる仕組みを構築している。 異業種が集う参画企業とその役割 J-HRTIの最大の強みは、「ものを移動させる」「蓋を開ける」といった基礎的な動作データを異業種間で共有できる点にある。1社単独で開発するよりも大幅なコスト削減と導入速度の向上を実現すべく、各分野の企業がそれぞれの強みを持ち寄って参画している。 INSOL-HIGH株式会社(コンソーシアム事務局):AI・ロボティクス技術を担い、J-HRTI全体の設計や「データファクトリー」の運営、データ基盤の提供を推進する。 株式会社山善:産業機械・工具の大手商社として、物流・製造現場におけるヒューマノイドロボットや関連機器の導入支援および産業現場への展開ノウハウを提供する。 株式会社ディーエムエス:物流・DM発送代行業界から参画し、封入・仕分け・ピッキングといった手作業(非定型作業)の自動化を目指すとともに、ロボットを活用した物流サービス(DMS-RaaS)の外販も視野に入れている。 芙蓉総合リース株式会社:大手総合リース会社として、コスト面が課題となりやすいヒューマノイドロボットの導入において、リースやシェアリングなど導入しやすい財務・運用モデルの構築を支える。 ツムラの取り組み この異業種コンソーシアムに製薬業界から参画しているのが、ツムラである。 多種多様な生薬を原料とし、製造や品質チェックに高度な技術と人の五感・経験を必要とする漢方製剤の現場において、ツムラは医療用漢方製剤の安定供給責務を果たしながら、以下のような課題解決を目指している。 ツムラが直面する課題と期待する効果 現状・課題 ヒューマノイドロボット導入に期待する効果 需要の拡大と人手不足 漢方薬の需要が高まる一方、生産年齢人口の減少により現場の労働力確保が困難。 省人化と労働生産性の向上 これまで自動化が難しかった複雑な人手作業を代替し、生産ラインの安定稼働を図る。 既設工場のレイアウト制約 既存の製造棟は人の作業を前提として設計されており、大型の固定設備を追加導入するのが難しい。 設備改造を伴わない自動化 人を前提とした既存の生産ラインの配置をそのまま生かし、人からロボットへ置き換えることで最短の工期で自動化を実現する。 開発コストと施工期間 専用の産業用ロボットを一から開発・導入する場合、費用が高額になり、ラインを長期間停止させる必要がある。 汎用ロボットとデータの活用 J-HRTIで生成・共有されるデータを活用することで、開発期間短縮と導入コスト抑制を実現する。 漢方薬製造現場における段階的導入計画 ツムラでは、ロボット導入を以下の3つのステップ(Phase)で進める計画を立てている。 Phase 1(単純繰り返し作業):機械的に位置を決めて繰り返し行う作業。 Phase 2(状態を認識して行う作業):視覚情報によって対象物の状態を認識してから行う作業(資材補給、開梱、容器蓋着脱、梱包、パレデパレ、容器運搬作業)。 Phase 3(視覚・感覚・触感情報で判断して行う作業):五感や熟練の知見を要する作業(確認作業、検査作業、組立・分解作業、秤量作業、ピッキング作業)。 ヒューマノイドロボットの可能性に期待を寄せる株式会社ツムラ執行役員生産本部長の熊谷昇一氏 将来的には、GMP(医薬品の製造管理及び品質管理の基準)の厳格なガイドラインに準拠しながら、確認判定や検査、品種切り替え時の段取り変更など、「状況判断を伴う作業」の自動化を目指している。 さらに二次的効果として、作業するロボットに各種センサーを装着することで、ベテラン作業員が経験や勘で行っていた「音、温度、振動の微少な変化(暗黙知)」を可視化・データ化し、品質管理レベルを一段と向上させることが期待されている。 産業全体の持続可能性を支えるロボティクスの未来 ツムラをはじめとする各社が目指す姿は、伝統的なものづくりや専門現場の知見と、最先端のフィジカルAI技術との融合である。 医薬品の安定供給や品質管理の確保は、将来薬剤師として医療現場に立つ人々にとっても不可欠な基盤である。多様な業界が手を取り合うJ-HRTIの取り組みが、今後の製造・物流・医療現場をどのように支えていくのか、今後の動向に大きな期待が寄せられている。

  • 【薬師のことのは|ほうかご】【日本薬学生連盟 共同企画】焦らなくて大丈夫。薬剤師の基盤づくりと、私らしいキャリアの育て方

    執筆:しほ(薬剤師) この度、日本薬学生連盟様へ講義をする機会を頂戴し、多くのすてきなご質問をいただきました。これをお読みくださっている方にも、少しでも今後のヒントになるような内容がございましたら幸いです。講義をフルでご覧になりたい方は、YouTubeに公開する予定ですのでご確認ください。今回は、その講義の一部をご紹介いたします。 この講義では、学生時代と薬剤師の基盤、プロとして安全性を意識する重要性、キャリアと母親業との両立、認定資格や就職先の選び方などについてお話しました。 まず専門資格について、私は小児薬物療法認定薬剤師を取得しておりますが、実は、年次を重ねるまで、自分が何に興味があるのか明確ではありませんでした。毎日目の前のことで必死で、何かを極めようという余裕もありませんでした。私の場合、後々興味が出たのがこの分野だったというだけで、薬剤師には専門性を高めるための資格がさまざまとあります。 まず皆さんには、薬剤師としての基礎となる業務を知り、幅広い経験からいろいろなことを吸収してほしいと思います。そこからキャリアを積み重ねるにつれ、もっと学びたい分野に出会えた時に、知見を深めるとよいでしょう。今何かに興味があっても、なくても、誰にでも共通して言えることは、まず薬剤師としての基盤を固めること。専門分野がなくても、薬のプロとして幅広い疾患に対応できることは、私たちの大きな強みなのです。 薬学生の皆さんからは、ワークライフバランスについてのご質問も複数ありました。私の場合、子供がいない頃は、「職場の誰かのために」という気持ちが強く、仕事を重視していました。今は子供がいるので、子供に安心を与えられるように「できるだけ丁寧でも効率よく」を意識して仕事を進めます。 皆さんも今後、できるだけ速く効率よく仕事をしたい!と思う場面がたくさんあるでしょう。しかし、最初は「速さより安全性」をぜひ意識してほしいです。皆さんはこれから、患者さんの命を預かることになります。少しの焦りが、1人の命を左右するわけです。職場の忙しい空気に惑わされ、焦ってチェックをないがしろにしてしまった。それで薬を間違えたら、どうなるでしょう。どんなに忙しくても、心は落ち着けて、安全性に目を向けることが第一です。 前回の記事では、インターンシップのことについて紹介しました。今回の受講者の皆さんの中には、資格や勉強に焦点を当てている方が多い印象でした。就職先選びにおいて教育面を重要視する場合、「教育」と一言で言っても、社内の研修が整っているか、現場で先輩から実践的に教えてもらえる環境があるか、研修認定薬剤師の取得に力を入れているかなど、会社によってさまざまです。自分が求めているのはどの「教育」の手厚さか、具体的に想像すると、選択肢が明確になると思います。 皆さんは現代の社会にあふれる情報の多さに道を迷うことや、偶然関わった仕事から派生して、進みたい道が変わることもあるでしょう。今、「こうなりたい!」という具体的な像がなくても、必然的に進むべき道が見えてきますので心配いりません。私もこれから、資格や経験を基に、自分だからこそできることがあれば挑戦していきたいです。仕事を続ける中で道を見つけ、走りながら選択をしていきます。皆さんにもきっと、ぴったりの道が見つかるはずです。 講義後、「仕事で幸せだと思うことは何ですか」とご質問をいただきました。皆さんが幸せと想像されるのはまず、「患者様に感謝された時」ではないですか?実は、個人的に大切にしているのは同僚との関係性です。どんなに過酷でも、周りの方々と支え合える環境であれば、不思議とつらい気持ちにならないものです。 私は新人の頃からありがたいことに、周りの方々に恵まれてきました。仕事内容や環境は過酷な頃もありましたが、だからこそ「同僚の力になりたい」「このお店の、この部署の、役に立ちたい」と思えるのです。そのような出会いや環境そのものに、幸せを感じます。皆さんも働き始めてから、「幸せ」を自分で見つけ、感じてくださいね。薬剤師は、素晴らしいお仕事ですよ。 最後に、このような講義の場を与えてくださった日本薬学生連盟様に、心より感謝申し上げます。学生時代、多くの不安、悩みがあることと思います。私でよろしければ、全国の薬学生の皆さんのお力になれますと幸いです。何でもお気軽にご相談ください。皆さんの今後の輝かしい未来を心より応援いたします。そしていつか、お仕事でご一緒できますことを楽しみにしております。 プロフィール しほ:薬剤師。一児の母。薬学の専門性に加え、英語学習にも挑戦。AI時代だからこそ、自身の「生の声」で伝えることを大切にし、ポッドキャストやブログを通じて健康・育児・学習の記録を多角的・多層的に発信している。【note】https://note.com/kusushi_kotonoha

  • 言葉と文化の壁を超えた医療へ――サノフィが中高生・大学生と挑む「インクルーシブな未来」

    サノフィ株式会社が、医療や製薬といったヘルスケア分野に関心を持つ学生を対象とした夏休み特別授業を開催した。 400万人超の在留時代に問われる「医療コミュニケーションの課題」 同プログラムは、同社のサステナビリティ活動(CSR)の一環として実施され、今回で5回目の開催となった。当日は、通常業務の傍ら自ら有志で集まった従業員やボランティアスタッフなど約60人が、未来のヘルスケア分野を担う中高生・大学生を迎えた。 今年のメインテーマは、「言語マイノリティが直面する医療現場の障壁」である。 出入国在留管理庁の発表によると、2025年末時点の在留外国人数は前年比9.5%増の412万5,395人に達し、初めて400万人を突破した。外国人の増加に伴い、言語や文化の違いによる「医療の分断」をいかに解消し、誰もが平等に安心な治療を受けられる環境を築くかが、現場の緊急課題となっている。 イベントは2026年8月21日の13時30分から15時45分にかけて、サノフィ株式会社の東京オペラシティタワー本社にて「医療の未来を考える 高校生・大学生サマープログラム ― 外国人患者の言葉と文化の課題。患者を支える仕事を学ぼう ―」と題して開催された。 医療への「トラスト・ギャップ(信頼の差)」をどう埋めるか 導入セッションでは、サノフィがグローバルに推し進める取り組み「A Million Conversations(AMC)」が取り上げられた。 AMCは、これまで十分な医療支援が届きにくかったコミュニティとの間に信頼を再構築し、よりインクルーシブな社会を目指すプロジェクトである。過度の緊張や過去の苦い経験によって生じた「信頼の溝」に光を当て、真の解決には当事者一人ひとりの声に注意深く耳を傾けるプロセスが欠かせないと訴えた。 オノマトペの罠と「当たり前」の無意識な押し付け パネルディスカッションでは、医療・通訳・製薬の最前線に立つパネリストらが登壇し、現場での具体的なズレについて議論を交わした。 1. 「ズキズキ」は伝わらない――言葉の壁と過度な配慮 医療×「やさしい日本語」研究会の武田裕子氏は、受付から診察、会計、服薬指導に至る受診のあらゆる過程で外国人が言葉の壁を感じている実態を指摘した。武田氏は、病院での緊張から普段言えるはずの言葉が出てこなくなる状況や、「ズキズキ」「ピリピリ」といった日本語特有のオノマトペ(擬音語・擬声語・擬態語などの総称)が症状の伝達を難しくしている背景を話し、相手に配慮した「やさしい日本語」を使うことの重要性を説いた。 これに対し、サノフィの外国籍社員も自らの経験を振り返りつつ、日常生活では困らなくても医療の場では言葉の壁を実感すると共感を示した。そのうえで、医療者が良かれと思って行う丁寧すぎる特別な話し方よりも、普段通りの自然な言葉遣いのほうがかえって聞き取りやすく理解しやすい場合があると話し、現場における意識のギャップを明かした。 2. 文化・生活習慣の多様性が生む「誤解」 全国医療通訳者協会NAMIの森田直美氏は、言葉だけでなく文化や習慣の違いが認識の齟齬を引き起こす実例を紹介した。具体例として、1歳6カ月児健診でスプーンを使って食べないことから発達上の問題を疑われかけたものの、詳しく聞き取ると家庭内で手で食べる習慣があった事例を挙げた。森田氏は、医療者側が自分たちの普通や当たり前を全ての患者に当てはめないことが重要であるとし、普段はどのように過ごしているかを一人ひとりに確認する姿勢の大切さを強調した。 3. 多言語対応と「伝わるデザイン」の実践 サノフィで患者向け資材を担当する社員は、主要製品において日本語に加え英語や韓国語、中国語、ポルトガル語などの冊子を用意している取り組みを紹介した。必要とされる全ての言語に対応する難しさにも触れつつも、国籍にかかわらず届けるべき情報は同じであるという考えから、図表を多く取り入れるなど直感的に理解しやすい資材づくりを心がけていると説明した。 「やさしい日本語」の実践と多様なキャリアの提示 後半のプログラムでは、学生たちが主体的に課題解決とキャリア構築について考える時間が設けられた。 相手に寄り添う「やさしい日本語」体験 武田氏とイ・ティンザ・キン氏の指導のもと、実際の診察シーンを想定した「やさしい日本語」への書き換えワークショップが行われた。受講した学生からは、具体的な症状を伝える難しさを感じたという声や、自分が難しいと思う言葉と外国人患者が理解しづらいと感じる言葉には違いがあるという新たな気づきが発表された。 講師陣からは、文章をシンプルにして「です・ます調」で伝えることやジェスチャーを交えるといった工夫に加え、名前を呼びかけたり相手の言語で挨拶したりして緊張を和らげるコミュニケーションの重要性が伝えられた。 病院にとどまらない「医療への貢献」を知る 最後の「ジョブアドベンチャー」では、研究開発、メディカル、マーケティング、営業などの職種で働く社員が各ブースで学生を迎えた。学生たちはブースを順に巡りながら、社員のキャリアの歩みや学生時代の専攻がどのように仕事へ生かされているかについて直接対話を重ねた。 医療現場での勤務という一般的なイメージにとらわれず、製薬企業という立場から社会課題に挑む多様なキャリアパスに触れることで、参加した学生たちにとって未来の選択肢と可能性を広げる機会となった。

  • 京都薬科大学 公開講座開催

    京都薬科大学において、今年度の公開講座が開催される。本講座では、がん治療、地域医療、薬用植物という3つの専門分野から講師を招き、最新の知見や取り組みについての講演が行われる。講演終了後には、参加者が日頃抱いている疑問や気になる点を講師陣に直接質問できる質疑応答の時間も設けられている。 参加には事前申し込みが必要であり、受付は9月15日より開始される。概要およびプログラムの詳細は以下の通りである。 開催概要 開催日時:2026年10月25日(日)13:00~16:00(受付開始 12:30~) 会場:京都薬科大学 本校地 愛学館 A31講義室 駐車場は用意されていないため、公共交通機関を利用して来場する必要がある。 交通アクセスはこちら 参加費:無料 共催:次世代のがんプロフェッショナル養成プラン 申込方法 本講座への参加は事前申込制(先着順等)となっている。 受付期間:9月15日(火)~ 10月21日(水) 申込方法:専用Webフォームより申し込むこと。 京都薬科大学 総務企画課(TEL: 075-595-4600) 講演プログラム 時間 演題・内容 講師 13:05~13:55 光免疫療法:光と免疫による患者にやさしいがん治療 関西医科大学 光免疫医学研究所 教授 花岡 宏史 氏 14:05~14:30 地域で支える医療のしくみ~在宅医療と薬剤師の役割 医療法人平和の森 ピースホームケアクリニック京都 原田 奈津子 氏 14:40~15:05 薬用植物ってどんな植物? 京都薬科大学 薬用植物園 助教 月岡 淳子 氏 15:10~ 講師への質疑応答 16:00 閉会(アンケート回答後に終了)

  • VRで切り開く薬学教育の新境地 —薬剤師と歯科医師の連携を深める臨床疑似体験

    東京薬科大学薬学部医薬品安全管理学教室講師の吉田謙介氏、同教室講師の清海杏奈氏、同教室教授の杉浦宗敏氏らの研究グループは、新潟大学医歯学総合病院医療連携口腔管理治療部特任助教の黒川亮氏との共同研究により、Virtual Reality(VR)を活用した薬学生向けの口腔アセスメント教育プログラムを開発した。同プログラムの教育的有用性を評価した研究成果は、2026年7月17日付で国際学術誌『Frontiers in Virtual Reality』に掲載されている。 なぜ薬学生に口腔ケアの視点が必要なのか がん薬物療法などの高度化に伴い、現代の薬剤師には単なる薬の適正使用支援にとどまらず、治療に伴う有害事象を早期に発見し、歯科医師をはじめとする医療専門職へ適切につなぐ役割が期待されている。特に抗がん剤治療に伴う口腔粘膜炎や薬剤関連顎骨壊死といった口腔有害事象は、患者の食事や会話、服薬、治療継続に重大な影響を及ぼすためである。 しかし、従来の薬学教育において口腔アセスメントを学ぶ機会は講義や静止画像が中心であり、患者への適切な声掛け、観察時の姿勢、照明の当て方や観察手順など、視覚的・空間的なアプローチを実践的に習得する場が不足している点が課題となっていた。 360度映像体験がもたらした学習成果と課題 研究グループは、日本有病者歯科医療学会指導医と日本医療薬学会指導薬剤師の共同監修のもと、360度映像を用いた実践型VR教材を構築した。受講者はヘッドマウントディスプレーを着用し、患者が座った状態や横になった状態での観察方法、適切な手法と不適切な手法の違いなどを臨場感ある映像で確認することができる。 同大学の薬学部2年生13人を対象に、歯科医師による導入講義、VR体験、薬剤師による振り返りを組み合わせたプログラムを実施したところ、目覚ましい教育効果が確認された。患者の口腔内を観察する際の適切な対応に関する知識試験の正答率は、受講前の15.4%から受講後には84.6%へと大幅に上昇した。さらに、薬剤師と歯科医師の連携に関する理解や、実際の口腔アセスメントに対する自己評価・自信も有意に向上している。受講者全員がVRを用いた学習に対して肯定的であり、没入感や手順の理解しやすさ、映像の明瞭さが高く評価された一方で、機器の重量軽減や観察部位の拡大機能、機材台数の確保といった点において今後の改善課題も明らかになった。 次世代医療人材の育成と今後の国際展開 今回の取り組みは少人数を対象としたパイロット研究であるため、今後は対象者を拡大し、従来教育との比較や学習効果の長期定着度を検証していく方針である。 将来的には、口腔粘膜炎の重症度評価や病棟での多職種連携を取り入れた双方向型VR教材の開発を進めるほか、フランスの医療従事者と進行中の国際共同研究とも連携し、本教育モデルの海外展開も検討している。薬学教育と歯学教育を横断する「ヘルスアクションプログラム(HAP)※」の理念に基づき、医療DXを活用した新たな人材育成モデルの社会実装を目指していく。 ※「ヘルスアクションプログラム」:薬学教育・歯学教育の連携によって、科学的根拠に基づく健康教育を社会に実装することを目的とした取り組み

  • 熊本地震の被災地に貢献―福岡大学薬学部の江川教授と学生が薬事・情報支援を展開

    福岡大学薬学部教授の江川孝氏および同学部4年生の中邑風貴さん、山内珠愛さんが、2026年7月28日に発生した熊本地震の被災地支援活動に参加した。 薬剤師としての最前線支援 江川氏は福岡県薬剤師会モバイルファーマシー第2班のリーダーとして、8月4日から7日にかけて熊本県八代地域で活動を展開した。 現地では、災害処方箋や被災者からの調剤・服薬相談に対応したほか、医薬品在庫管理体制の整備や避難所における一般用医薬品・環境衛生の状況把握にあたった。さらに、地域の薬局や診療所の再開状況を把握して情報を整理するなど、多角的な薬事支援を実施した。 特に今回の活動では、単なる救護にとどまらず「災害医療から通常の地域医療への円滑な移行」に重点が置かれた。薬局の開局情報をまとめたGoogleマップや被災者向けリーフレットを作成し、地域の医療資源を活用できる体制を構築した。また、現地保健医療福祉調整本部の会議にも出席し、行政や各支援チームと連携して課題解決にあたった。 調整本部での情報・物資支援 DMAS(日本災害医学会学生部会)の一員として参加した中邑さんと山内さんは、熊本県庁の保健医療福祉調整本部において情報整理や調整業務を担った。 福祉施設調整班では、被災した福祉施設の状況を把握し、水不足が確認された施設について物資支援班へ情報をつなぐほか、トイレが不足している施設に対して簡易トイレ(ラップポン)の手配へつなげるなど、支援ニーズの整理と調整を行った。 物資支援班では、水循環システム「WOTA」を必要とする医療機関のリスト作成に従事した。 病院支援班では、広域災害救急医療情報システム(EMIS)をモニタリングし、断水などにより水を必要としている医療機関を抽出してリストを作成するなど、被災地へ支援物資を適切に届けるための情報整理を行った。 教員は現場の最前線で薬事支援を指揮し、学生は司令塔となる調整本部で支援ロジスティクスを支えるなど、それぞれ専門性と立場に応じた貢献を果たした。 福岡大学薬学部は、今回の経験や知見を今後の災害医療・災害薬事に関する教育・研究へ還元し、災害時に寄与できる医療人の育成を推し進めていく方針である。

  • 【一日一笑】OTC医薬品の適正使用と薬剤師に求められる役割

    医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 セルフメディケーションの推進とOTC医薬品のリスク 現在、日本では高齢化が急速に進んでいる。全人口に占める65歳以上の割合によって、「高齢化社会」は7%以上、「高齢社会」は14%以上、「超高齢社会」は21%以上と区分される。日本では65歳以上の割合が29%を超えており、世界的に見ても非常に高い水準にある。 高齢化が進むにつれて、医療を必要とする人も増加する。そのため、今後も医療費の増加が予想され、必要以上の医療機関への受診を抑えながら、国民自身が健康管理を行うセルフメディケーションの推進が重要となる。 セルフメディケーションを実践するうえで重要となるのがOTC医薬品である。OTC医薬品には要指導医薬品と一般用医薬品があり、一般用医薬品はリスクに応じて第1類から第3類までに分類される。また、健康維持を目的としたサプリメントなどの活用もセルフメディケーションの一つといえる。 現在、OTC医薬品は薬局やドラッグストアだけでなく、さまざまな場所で購入できるようになっている。利用しやすくなる一方で、自己判断による誤用や過量使用には注意が必要である。インターネット上にも医薬品に関する情報があふれているが、すべてが正しいとは限らない。正しい医薬品の知識を伝え、適切な使用を支援することは薬剤師の重要な役割である。また、OTC医薬品で対応できない場合や重大な疾患が疑われる場合には、医療機関への受診を勧める必要がある。 ここからは、OTC医薬品の誤った使われ方について紹介する。 一つ目は、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリンなどの血管収縮薬を含有する点鼻薬である。これらは鼻粘膜の血管を収縮させることで、鼻づまりを速やかに改善する。即効性が高いため、効果が切れて鼻づまりを感じると、定められた使用回数を超えて繰り返し使用してしまうことがある。 血管収縮薬を過度に使用すると、鼻粘膜の血流が低下した状態が続き、薬の効果が切れた際に粘膜がかえって強く腫れるリバウンド現象が起こる。その結果、点鼻薬を使用するほど鼻づまりが悪化するという悪循環に陥り、薬剤性鼻炎につながる可能性がある。そのため、使用回数だけでなく、なぜ回数を守る必要があるのかまで伝えることが重要である。 二つ目はオーバードーズの問題である。現在、濫用のおそれがある医薬品として、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリンの8成分が指定濫用防止医薬品の対象となっている。これらを含む医薬品では、18歳未満の方に対して、適正使用数量が定められ、原則として一包装単位かつ5日分、「かぜ薬」「解熱鎮痛薬」「鼻炎用内服薬」は7日分とされている。 適正使用数量を超える購入を希望された場合、単に販売を断るだけではなく、その背景にも目を向ける必要がある。なぜ大量に必要なのか、何か困っていることがあるのか、過剰服用を目的としているのか。相手の状況を確認し、必要に応じて周囲の人や医療機関、相談窓口につなげることも重要である。 背景に寄り添い、人に手を差し伸べる言葉がけ 孤独を感じたり、何もかもうまくいかず苦しくなったりすることは誰にでも起こり得る。 そんなとき、誰かに話を聞いてもらうことで少し冷静になれたり、自分の気持ちを言葉にすることで気持ちが整理されたりすることがある。 あなたが苦しいとき、つらいとき。 家族?先生?先輩?友人?きっと、誰かがあなたに手を差し伸べてくれたはず。 今、手を差し伸べる事ができるのはあなた。 薬剤師の役割は、薬を適正に販売することだけではない。目の前にいる人の言葉や行動から、その背景にある困りごとに目を向けることも重要である。 目の前の人が本当に必要としているものは、薬だけとは限らない。もしかすると、必要なのは一つの薬ではなく、一つの言葉かもしれない。 「過剰に服用したかったのだろうか」 「何かつらいことを抱えているのだろうか」 「誰かに相談できず、一人で抱えているのではないだろうか」 もちろん、全てのケースに同じ対応が当てはまるわけではないから、こんな対応をしてほしいなんて正解はないけれど。 それでも、ほんの一言声をかけることで、その人の状況が少し変わる可能性がある。 その可能性を忘れず、一人ひとりに寄り添った対応をしていくことが、これからの薬剤師に求められる役割である。

  • 動物病院の「院内調剤」から「医薬分業」へ——12薬局(わんにゃん薬局)、導入400病院・累計処方11万件を突破

    動物病院専門の調剤薬局を運営する株式会社12薬局は、2026年7月31日時点で、導入動物病院数が400件、累計受注処方件数が11万件を突破したことを発表した。 2025年3月31日時点の導入病院数250件、累計処方5万件と比較すると、導入病院数は約1.6倍、累計受注処方件数は約2.2倍に増加している。 導入が拡大する背景 動物医療の現場では、調剤設備の導入や多種多様な医薬品の在庫管理に伴うコスト負担が大きな課題となっている。また、獣医師や動物看護師の不足によって調剤業務が診療時間を圧迫しているほか、院内調剤におけるミスのリスクや確認に必要な工数の増加も挙げられる。 こうした事情から、院内調剤から外部委託による「医薬分業」へ切り替える動物病院が増加傾向にある。 サービスの特徴と利用理由 同社薬局は、院内在庫を増やすことなく薬剤師品質の調剤と全国配送を一括して請け負うサービスを提供している。 医薬品は1錠単位から必要な分だけ依頼可能であり、高価格帯や使用頻度の低い薬剤を在庫として抱えるリスクを抑えられる。料金は1件25円〜の従量課金制となっている。また、自社開発のオンライン処方システムにより、過去の処方履歴を活用した調剤依頼は1分以内で完了する仕組みを整えている。さらに、20人体制の薬剤師が調剤および監査を行う体制を運用している。 これらの特徴が評価され、導入拡大につながっている。 今後の展望 同社は、処方オーダーから調剤・配送までを一気通貫で管理するオンライン処方システムの機能拡充を進める方針である。あわせて、調剤データの蓄積および分析を通じ、より安全で効率的な獣医療の提供体制づくりに取り組んでいくとしている。

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