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【スタートアップ】独立を目指すなら「苦しそうな道」を選べ。マネジメントの失敗、ITベンチャーの荒波を越えて掴んだ起業の最適解

  • toso132
  • 12月17日
  • 読了時間: 5分

更新日:7 日前

株式会社eNECT 代表取締役社長

村松友憲(むらまつ・とものり)


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フリーランス薬剤師と薬局をマッチングするサービス「スキマ薬剤師」を運営する株式会社eNECT代表取締役社長の村松友憲さん。そのキャリアの出発点は、小学3年生の頃に祖母が脳梗塞で倒れ、医療への貢献を強く意識した原体験に起因する。「あの時から、医療の道に興味が湧いて、薬の力で医療に貢献できる道もあるんだと知った」というのが、この道を選んだきっかけである。この強い思いが、その後のぶれない進路選択の核となった。

大学生活は、塾講師のアルバイトに没頭する日々であった。「バイトの方が楽しいから、ずっとバイト三昧で。結局、3年生の時に留年した」という経験こそが、村松さんにとって最大の転機となる。一夜漬けが通じなくなり、「なんとかならない時もあると思った」という最大の失敗以降、「事前に準備をする、コツコツ勉強する」といった、社会人として極めて重要な姿勢が身についた。また、アルバイト先の塾講師としての経験も大いに役立った。指導を通じてコミュニケーション能力を磨くとともに、「元大手広告会社出身の教室長の方から『会社経営は楽しいよ』という話を聞いて、経営は楽しいのか、という思いが芽生えた」という。これが、大学3年頃に「薬局で独立したい」という漠然とした思いへとつながった。


独立志向を持ちつつ、村松さんは中規模のチェーン薬局に入社した。独立の意向を経営者に伝え、「経営者と近いところで、いろいろ見られる環境」を求めたのである。入社後、薬局長から「部長(薬局事業の統括者)ぐらいの業務ができないと独立は無理だから、まずはそこ目指すべき」と言われたことを受け、調剤報酬や患者コミュニケーションスキルなどを徹底的に学んだ。入社3年目には管理薬剤師となり、初めてのメンバーマネジメントを経験する。当初はマネジメント経験が乏しく、「厳しさこそ統率につながる」とと思い込んでいたため失敗してしまったが、「今思えば、それがあったから、それ以降メンバーマネジメントで苦労したことはほとんどない」と言い、「人としてはリスペクトしつつ、仕事上の事実としてできていない点を指導する」という重要なマネジメントスキルを磨くことができた。その後、元上司の誘いで転職し、新店舗の立ち上げに関わる。この新店舗立ち上げでは、事前に処方箋単価や患者数を計算し、「これでは店舗運営はうまくいかない」と状況を理解していたため、門前以外のクリニックを回るなど、自発的な営業活動で地域全体の処方箋獲得に向けたオーナーシップを発揮した。


その後、エリアマネジャーの経験を積む中で、村松さんはブログを書いていたことがきっかけで、インターネット広告代理店の子会社であるPharmarket(現KAKEHASHIグループ)の取締役にスカウトされた。当時の薬局の収益構造など経営に関する質問に的確に答えられたことで採用が決まり、今後のキャリアを独立か事業会社に勤めるかを悩みつつも、「事業会社で事業の回り方を学ぶことで、自分の将来に広がりが出る」と考え、ITベンチャーに飛び込んだ。Pharmarketでは、医薬品の二次流通事業の立ち上げメンバーとして、卸の管理薬剤師業務から物流、営業、システム開発まで、あらゆる業務を経験した。

このITベンチャーでの経験は、村松さんの根底にあった「薬剤師の地位向上」という強い思いを再燃させる。地位向上への思いが芽生えたのは、25、6歳の頃、クリニックの院長とのやり取りで感じた圧倒的なヒエラルキーや、前職での採用活動で目にした能力不足の薬剤師が簡単に転職できてしまう現状であった。「できない薬剤師を紹介するエージェントもそうだし、できない薬剤師がいるのも薬剤師の地位向上につながらない。だからシンプルに、人材系の事業を起こして、課題解決に取り組みたい」と考えるようになった。


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Pharmarketで自身の成長角度が落ち着いてきたと感じた村松さんは、在籍中に次のステップとして、並行して人材系の事業に着手することを決意。知人の薬剤師とともに株式会社eNECTを設立し、フリーランス薬剤師のマッチングサービス「スキマ薬剤師」を立ち上げた。「雇用契約の成立を仲介する人材紹介業は許認可のハードルが高いため、まずは、業務委託契約を結ぶフリーランスの斡旋事業という、職業安定法上の許認可が不要な枠組みに着目して事業を開始した」と村松さん。「スキマ薬剤師」では、紹介する薬剤師は全員、村松さんが面談し、能力やマインドを見て、紹介できないと判断した場合は紹介しないという徹底ぶりである。これは、「紹介ビジネスは信頼が第一」という信念に基づいている。今後の目標は、人材マッチング事業で得たナレッジを蓄積することである。「2026年1月には人材紹介業の免許を取得して、事業を大きく展開していき、最終的には、薬剤師に対する教育事業をしたい」と話す村松さん。薬剤師の地位向上をするためには、そもそも薬剤師の市場価値を高めないことには成り立たないと考えているからだ。


最後に、村松さんが自らのキャリアを振り返り、独立を志す薬学生に対し、次の三つの言葉を贈る。まず、独立を目指すにあたっては、行動量を増やすことが最も重要であると述べる。座学だけでは意味がなく、ブログ経由で転職した経験からも、「思いがけない方にキャリアが進む」ため、発信と行動によって偶発的な機会をつかむべきである。次に、キャリアの選択に迷った際は、「楽な方を選ぶのではなく、苦しそうな道」、すなわち変化が起きそうな方を選ぶ方が、「絶対的にリターンは大きくなる」ため、挑戦の機会を逃すべきではないと強調する。そして最後に、選んだ道を正解にするという気概を持つことを促す。決断した道に対して後悔するのではなく、その道を選んだ時点ではパーフェクトな選択だと思って選んでいるはずで、「その道をパーフェクトにするために、何が何でも成功させるんだと全力投球すべき」と締めくくった。


▼株式会社eNECT

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