「見えない不調」を科学の視点で解き明かす。東京科学大学とツムラが共催した、生理・PMSを“体感”する試み
- toso132
- 2 日前
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株式会社ツムラが2021年に発足させた「#OneMoreChoice プロジェクト」は、「生理のつらさを、我慢しなくていい社会へ。」をステートメントに掲げている。多くの人が抱える「隠れ我慢」という問題を可視化し、不調の際に休む、誰かに相談するといった、我慢以外の選択肢(OneMoreChoice)をとれるきっかけ作りを続けてきた。このプロジェクトの一環として、2025年11月12日、東京科学大学(Science Tokyo)の大岡山キャンパスにて、生理・PMSをテーマとした共催イベント『見えない不調を科学する~生理痛・PMSの実態~』が開催された。
理工系キャンパスに響いた、学生と教職員の想い

同イベントのきっかけは、一人の現役学生の思いであった。環境・社会理工学院 修士課程の柳瀬梨紗子さんが、「Science Tokyoに、生理についてフラットに話せる環境を作るためのイベントをしたい」と発案し、それに他の学生や女性教職員が賛同したことで企画がスタートした。
旧東京工業大学を母体の一つとする同大学は、歴史的に女性比率が低く、生理に代表される女性の身体の困り事に対して当事者が声を上げにくく、周囲も正しい知識を持ちにくい状況があったという。副学長の伊東幸子氏は「男性が多い組織であるからこそ、構成員全員が正しい知識を持ち、配慮ができる環境になるきっかけになってほしい」と、イベントに期待を寄せた。
身体の重さや集中力の低下を、リアルに体感する

会場となった「Taki Plaza」には、ツムラが以前開催した企画展『違いを知ることからはじめよう展』の展示が再現された。生理・PMSに伴う倦怠感を表現した「重だるくて起き上がることが難しいベッド」や「すこし歩くのも疲れるコート」、さらに集中力低下による影響を表現したパソコンなど、目に見えない症状が日常にどう影響するかを可視化した。
加えて、大学の学生たちが自ら準備したパネル展示や、生理痛VR体験装置「ピリオノイド」の体験コーナーも用意された。来場した学生や教職員は、熱心にパネルに見入り、デバイスを通じて生理のつらさを疑似体験することで、これまで想像の域を出なかった「不調」をより身近な課題として捉えていた。
来場者から寄せられた「知ること」への気付き

会場には多くの男子学生も訪れ、自らの知識不足を実感するとともに、真摯に理解しようとする姿が見られた。倦怠感を再現したコートを着用した男子学生からは、「これを感じながら通学したり、授業を受けたりするのは無理だと思った」という驚きの声が上がった。
また、パートナーへの対応に迷っていたという学生は、展示のマンガを通じて「相手がどんな対応を望んでいるのか、今度話してみようと思った」と、身近な対話の必要性を口にしていた。アンケートには「自分が知ろうとしていなかったことを知った」「痛みだけを知るのではなく、日常にどのような影響があるのかを知ることが大事だと思った」といった感想が並び、性別を問わず、相手を思いやり声をかけ合える社会への願いが共有された。
我慢に代わる選択肢を、これからの当たり前に
今回の試みは、単なる知識の伝達に留まらず、学生や教職員が「自分たちの問題」として生理・PMSを捉える貴重な機会となった。柳瀬さんは「生理に限らず体調不良は誰にでも起こること。フラットに話せる環境があれば、我慢を少しでも軽くできる」と語る。
「知らない」という状態から、一歩踏み込んで「知る」。東京科学大学で生まれたこの対話の輪は、ツムラが目指す「誰もが我慢しなくていい社会」の実現に向けた、確かな足跡となった。







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