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  • 医療・行政・企業が結集。日本イーライリリー、上尾市、メディパルが描く「ヤングケアラー支援」の新たな形

    本来大人が担うべき家事や家族の介護を日常的に行う子供たち、「ヤングケアラー」。学業や友人関係に支障をきたし、孤立する彼らをどう救い出すかは、現代社会が抱える極めて深刻な課題である。この問題に対し、日本イーライリリー株式会社、埼玉県上尾市、そして株式会社メディパルホールディングスの三者は、官民の垣根を越えた強力なタッグを組み、新たな支援の形を提示した。2025年10月8日、埼玉県の上尾中央総合病院で開催された「ヤングケアラー認知・啓発セミナー」は、医療業界における支援の輪を広げるための、極めて先進的なモデルケースとなった。 今回のセミナーの最大の特徴は、上尾市という自治体が持つ具体的な支援ノウハウと、日本イーライリリーおよびメディパルという企業のネットワークとリソースが、一つの目的のために完全に融合した点にある。医療機関は、ケアを必要とする家族とそれを支える子供たちに最も早く接することができる、支援の入り口として重要な場所である。しかし、これまでは「家族思いの健気な子供」として見過ごされてしまうケースも少なくなかった。そこでセミナーでは、上尾市が全国に先駆けて設置した「ヤングケアラーコーディネーター」の専門知見を共有し、医療従事者が日常の診療の中でいかに小さな異変に気づき、適切な支援機関へとつなげていくかという、実践的な知識の普及を図ったのである。 セミナーに参加した医師や看護師ら40人の反応からは、この取り組みの切実な必要性が如実に表れている。事後アンケートでは、参加者の88%がセミナーの内容を「大変有意義だった」と評価し、85%がヤングケアラーの問題について「ほとんど理解できた」と回答する極めて高い成果が得られた。また、意識の変化は具体的な行動意欲にも現れており、半数以上の参加者が「今後も対象の子供を気にかけたい」と答えたほか、3割を超える医療従事者が「支援先の情報をさりげなく渡したい」と、現場での実践を視野に入れた前向きな姿勢を示している。何よりの収穫は、現場の医療スタッフと上尾市のコーディネーターとの間に顔の見える関係が構築されたことであり、この地域のネットワークこそが孤立する子供たちを救う強固なセーフティネットとなる。 この取り組みは決して突発的なものではなく、長年の積み重ねの上に成り立っている。メディパルと日本イーライリリーは2024年に支援に関するパートナーシップ覚書を締結し、2025年に入ってからも啓発冊子の共同制作や地方自治体との協働セミナーを継続的に実施してきた。今回の上尾市との成功事例は、この「官民協働モデル」が医療現場において極めて有効であることを証明したといえる。メディパルグループは、このセミナーを一つの完成されたモデルケースとして、今後は全国の医療機関や自治体へと活動を拡充させていく構えだ。 共同制作した医療従事者向け冊子 ヤングケアラー問題は、一家庭や一組織の努力だけで解決できるものではない。しかし、今回の日本イーライリリー、上尾市、メディパルによる挑戦は、医療現場という「接点」を起点に、社会全体が子供たちを見守る仕組みへと進化できる可能性を鮮やかに示した。「未来の子供たち」が自らの可能性をあきらめることなく、健やかに成長できる社会の実現に向けて、官民が手を取り合った支援の輪は今、確かな足取りで広がり始めている。

  • 日本初・女性首相誕生で変わる「女性管理職」のリアル。カギは“ヘルスリテラシー”の向上にあり

    2025年10月、日本初となる女性総理大臣が誕生した。ジェンダー平等において国際的な遅れが指摘されてきた日本だが、この歴史的転換を機に、女性の権利拡大やキャリア形成への期待がかつてないほど高まっている。しかし、民間企業の現場に目を向けると、理想と現実の間には依然として深い溝があることが、あすか製薬の実施した最新調査(男女800人対象)によって明らかになった。 依然として低い女性管理職比率、4割の企業で「目標なし」 調査結果によると、女性従業員の比率は平均約38%であるのに対し、女性管理職が「いない」と回答した企業は36.8%にのぼっている。特に、従業員数が多い企業ほど女性管理職比率が低下する傾向にあり、組織が大きくなるほど「昇進の壁」が厚くなる実態が浮き彫りとなった。 さらに深刻なのは、企業の姿勢そのものである。女性管理職の登用目標が「特にない」とする企業は約44%に達しており、具体的な数値目標の欠如が、現場の意識低下とアクションの停滞を招く負のループを生んでいる。 「見えない壁」の正体:スキルへの男女差と無意識の偏見 なぜ、女性は管理職を目指しにくいのだろうか。そこには、言語化されない「期待の差」が存在している。 調査では約半数が管理職に求められるスキルに男女差があると感じており、特に実際に管理職を務める女性ほどその差を強く実感している。男性にはリーダーシップや意思決定といった戦略性が求められる一方で、女性にはコミュニケーションや共感力といったケアの役割が期待されやすい。 また、女性が管理職を目指しにくい理由について「わからない」という回答も多く、問題そのものが組織内で可視化されていない危うさも露呈している。若年層の女性は「ロールモデルの不在」や「自分への自信のなさ」を障壁に挙げ、現職の女性管理職は「昇進後の支援不足」を訴えるなど、立場によって感じるハードルも多様化している。 「ヘルスリテラシー」が職場を変える強力な武器になる 同調査で最も注目すべきは、女性活躍推進を加速させるための解決策である。これまでの「在宅・時短勤務」といった制度改革に加え、今後のカギとして「ヘルスリテラシー(健康リテラシー)の向上」が急浮上している。 男性従業員の理解を深めるために必要な取り組みとして、人事制度の透明化に次いで「男女双方が学ぶ健康リテラシー研修」が挙げられた。妊娠・出産・更年期といった女性特有の健康課題を「個人の問題」から「組織のナレッジ」へと転換することが、男女問わず働きやすい文化を醸成し、離職防止や生産性向上に直結すると期待されている。 【あすか製薬の挑戦】「知らないと、わかりあえないことがある。」 100年以上にわたり女性の健康に寄り添ってきたあすか製薬は、この課題を解決すべく、法人向け研修動画サービス「Mint⁺ Femknowledge(ミントフェムナレッジ)」を展開している。 単なる制度の整備だけでは、女性の挑戦を支える土壌は完成しない。生理、PMS、更年期といった女性特有のライフステージに伴う変化を、職場全体が「共通言語」として正しく理解することが不可欠である。この基礎知識の共有こそが、誰もが安心してキャリアを描ける「令和のスタンダード」を築くための第一歩となるだろう。 あすか製薬株式会社 「Mint⁺ Femknowledge」  URL: https://www.aska-pharma.co.jp/femknowledge/ 参考: https://www.aska-pharma.co.jp/femknowledge/news/439f18e642d546cae55df784284c1236/downloa d

  • 【スタートアップ】独立を目指すなら「苦しそうな道」を選べ。マネジメントの失敗、ITベンチャーの荒波を越えて掴んだ起業の最適解

    株式会社eNECT 代表取締役社長 村松友憲(むらまつ・とものり) フリーランス薬剤師と薬局をマッチングするサービス「スキマ薬剤師」を運営する株式会社eNECT代表取締役社長の村松友憲さん。そのキャリアの出発点は、小学3年生の頃に祖母が脳梗塞で倒れ、医療への貢献を強く意識した原体験に起因する。「あの時から、医療の道に興味が湧いて、薬の力で医療に貢献できる道もあるんだと知った」というのが、この道を選んだきっかけである。この強い思いが、その後のぶれない進路選択の核となった。 大学生活は、塾講師のアルバイトに没頭する日々であった。「バイトの方が楽しいから、ずっとバイト三昧で。結局、3年生の時に留年した」という経験こそが、村松さんにとって最大の転機となる。一夜漬けが通じなくなり、「なんとかならない時もあると思った」という最大の失敗以降、「事前に準備をする、コツコツ勉強する」といった、社会人として極めて重要な姿勢が身についた。また、アルバイト先の塾講師としての経験も大いに役立った。指導を通じてコミュニケーション能力を磨くとともに、「元大手広告会社出身の教室長の方から『会社経営は楽しいよ』という話を聞いて、経営は楽しいのか、という思いが芽生えた」という。これが、大学3年頃に「薬局で独立したい」という漠然とした思いへとつながった。 独立志向を持ちつつ、村松さんは中規模のチェーン薬局に入社した。独立の意向を経営者に伝え、「経営者と近いところで、いろいろ見られる環境」を求めたのである。入社後、薬局長から「部長(薬局事業の統括者)ぐらいの業務ができないと独立は無理だから、まずはそこ目指すべき」と言われたことを受け、調剤報酬や患者コミュニケーションスキルなどを徹底的に学んだ。入社3年目には管理薬剤師となり、初めてのメンバーマネジメントを経験する。当初はマネジメント経験が乏しく、「厳しさこそ統率につながる」とと思い込んでいたため失敗してしまったが、「今思えば、それがあったから、それ以降メンバーマネジメントで苦労したことはほとんどない」と言い、「人としてはリスペクトしつつ、仕事上の事実としてできていない点を指導する」という重要なマネジメントスキルを磨くことができた。その後、元上司の誘いで転職し、新店舗の立ち上げに関わる。この新店舗立ち上げでは、事前に処方箋単価や患者数を計算し、「これでは店舗運営はうまくいかない」と状況を理解していたため、門前以外のクリニックを回るなど、自発的な営業活動で地域全体の処方箋獲得に向けたオーナーシップを発揮した。 その後、エリアマネジャーの経験を積む中で、村松さんはブログを書いていたことがきっかけで、インターネット広告代理店の子会社であるPharmarket(現KAKEHASHIグループ)の取締役にスカウトされた。当時の薬局の収益構造など経営に関する質問に的確に答えられたことで採用が決まり、今後のキャリアを独立か事業会社に勤めるかを悩みつつも、「事業会社で事業の回り方を学ぶことで、自分の将来に広がりが出る」と考え、ITベンチャーに飛び込んだ。Pharmarketでは、医薬品の二次流通事業の立ち上げメンバーとして、卸の管理薬剤師業務から物流、営業、システム開発まで、あらゆる業務を経験した。 このITベンチャーでの経験は、村松さんの根底にあった「薬剤師の地位向上」という強い思いを再燃させる。地位向上への思いが芽生えたのは、25、6歳の頃、クリニックの院長とのやり取りで感じた圧倒的なヒエラルキーや、前職での採用活動で目にした能力不足の薬剤師が簡単に転職できてしまう現状であった。「できない薬剤師を紹介するエージェントもそうだし、できない薬剤師がいるのも薬剤師の地位向上につながらない。だからシンプルに、人材系の事業を起こして、課題解決に取り組みたい」と考えるようになった。 Pharmarketで自身の成長角度が落ち着いてきたと感じた村松さんは、在籍中に次のステップとして、並行して人材系の事業に着手することを決意。知人の薬剤師とともに株式会社eNECTを設立し、フリーランス薬剤師のマッチングサービス「スキマ薬剤師」を立ち上げた。「雇用契約の成立を仲介する人材紹介業は許認可のハードルが高いため、まずは、業務委託契約を結ぶフリーランスの斡旋事業という、職業安定法上の許認可が不要な枠組みに着目して事業を開始した」と村松さん。「スキマ薬剤師」では、紹介する薬剤師は全員、村松さんが面談し、能力やマインドを見て、紹介できないと判断した場合は紹介しないという徹底ぶりである。これは、「紹介ビジネスは信頼が第一」という信念に基づいている。今後の目標は、人材マッチング事業で得たナレッジを蓄積することである。「2026年1月には人材紹介業の免許を取得して、事業を大きく展開していき、最終的には、薬剤師に対する教育事業をしたい」と話す村松さん。薬剤師の地位向上をするためには、そもそも薬剤師の市場価値を高めないことには成り立たないと考えているからだ。 最後に、村松さんが自らのキャリアを振り返り、独立を志す薬学生に対し、次の三つの言葉を贈る。まず、独立を目指すにあたっては、行動量を増やすことが最も重要であると述べる。座学だけでは意味がなく、ブログ経由で転職した経験からも、「思いがけない方にキャリアが進む」ため、発信と行動によって偶発的な機会をつかむべきである。次に、キャリアの選択に迷った際は、「楽な方を選ぶのではなく、苦しそうな道」、すなわち変化が起きそうな方を選ぶ方が、「絶対的にリターンは大きくなる」ため、挑戦の機会を逃すべきではないと強調する。そして最後に、選んだ道を正解にするという気概を持つことを促す。決断した道に対して後悔するのではなく、その道を選んだ時点ではパーフェクトな選択だと思って選んでいるはずで、「その道をパーフェクトにするために、何が何でも成功させるんだと全力投球すべき」と締めくくった。 ▼株式会社eNECT https://enect.co.jp/

  • エントリーシート廃止!ロート製薬が挑む新採用「Entry Meet」で真の相互理解へ

    「Entry Meet採用」ホームページ: https://entrymeet.rohto.co.jp/ 従来の選考に一石を投じる!対話起点の採用プロセスを導入 ロート製薬株式会社は、2027年4月入社に向けた新卒採用において、革新的な採用プロセス「Entry Meet(エントリーミート)採用」を導入する。従来のエントリーシート(ES)による書類選考を廃止し、採用プロセスの第一ステップに人事担当者との15分間の対話を据えるというものだ。 これは、採用初期段階で一般化している書類選考やAI面接では、学生一人ひとりの本質的な個性を十分に捉えきれないという課題意識から生まれた。生成AIの普及によりESの内容が均質化する中で、「合格するための対策」に偏りがちな就職活動から脱却し、より確かな相互理解を実現するため、まず直接対話することを重視した採用へと舵を切る。 「Entry Meet」は2026年1月16日から2月8日にかけ、全国8拠点(札幌、仙台、東京、名古屋、金沢、大阪、広島、福岡)でリアル開催される予定である。 生成AI時代に「共に働く未来」を想像できるか 同社は、エントリー数の増加や選考の効率化が進む一方で、学生の企業理解が難しくなり、入社後のミスマッチにつながる構造に警鐘を鳴らす。 同社が採用において最も重要視するのは、求職者と企業が「共に働く未来」を互いに具体的に想像できるかどうかである。 採用担当者は、就職活動が「合格するための対策」に偏り、受験のようになっているのではないかという危機感から、「Entry Meet採用」が生まれたと語る。通過しやすいESの型が存在することで、その内容だけでは本質的な個性を捉えきれず、学生一人ひとりの可能性を正しく判断できているのか疑問を感じていたという。 同社は採用を「未来を共につくる仲間探し」であると位置づけている。そのため、面談できる人数に限りがあることや、事情により参加が難しい人がいることを承知しながらも、限られた時間でも直接会い、対話を通じて価値観を確かめ合うことを採用の出発点にするという決断を下したのだ。 書類やAI面接による企業側からの一方的な評価に偏るのではなく、直接対話を通じて価値観やビジョンを確かめ合うことが、双方にとって最善の採用活動であると判断され、この取り組みを通じて、就活や仕事を通じて自分らしくウェルビーイングに働ける社会の実現につながるよう、学生と真摯に向き合い続けるとしている。 「Entry Meet採用」の概要と選考フロー 「Entry Meet採用」の一次ステップとなる「Entry Meet」は、人事担当者との15分間の対話という面談形式を採用している。面談時の服装は私服が推奨されており、開催地域は全国8拠点(札幌/仙台/東京/名古屋/金沢/大阪/広島/福岡)での対面実施が原則だが、海外大学在籍者など物理的に参加が難しい場合にはオンラインでの参加も検討される。期間は2026年1月16日から2月8日までを予定している。 応募者は採用マイページより必要書類を提出後、「Entry Meet枠」を予約する流れとなる。Entry Meetを通過した後、複数回の面接およびグループワークを経て内定に至るフローが組まれている。 定着率9割超のWell-being経営 同社は、社員一人ひとりの自律と成長を重視し、個人と会社の共成長を目指すWell-being経営を推進しており、そのための制度を整備してきた。 例えば、社員は年に一度、自分のビジョンを経営層へ直接伝える「マイビジョンシート」制度を活用でき、また、社内ダブルジョブ(兼業)、社外チャレンジワーク(複業)、社内起業家支援の「明日ニハ」といった制度が設けられている。さらに、今年度はリスキリング休職制度やビヨンド勤務(週3日/4日勤務)など、新たな働き方も整備されている。 採用においても、学生の個性やビジョンを理解し、同社での成長イメージを互いに描くマッチング重視の取り組みを強化してきた。私服での選考推奨やオフィス内での面接、実践型インターンシップの拡充はその一環である。その結果、新卒の定着率は2021年入社で96%、2022年入社で93%と高水準を維持しており、「Entry Meet採用」はこの取り組みをさらに深めるものとなる。同社は今後も、個人と会社がともに成長するWell-being経営の実現に向け、採用プロセスの進化を推進していく方針だ。 ■「Entry Meet採用」制度概要 ▼ エントリー方法 応募開始:2025年12月15日 応募方法:必要書類を採用マイページより提出の上、Entry Meet枠を予約 ▼ Entry Meet(一次ステップ) 面談形式:人事担当者との15分の対話 服装:私服を推奨 開催地域:全国8拠点(札幌/仙台/東京/名古屋/金沢/大阪/広島/福岡) 期間:2026年1月16日〜2月8日 ※Entry Meetは原則対面での実施を基本としていますが、海外大学在籍など、物理的に参加が難しい場合にはオンラインでの参加も検討しています。 ▼ 選考フロー Entry Meetの後、複数回の面接およびグループワークを経て内定

  • 「DE&Iは風ではない。」誰もが違いを認め合う社会づくりを模索するフォーラム開催 スギ薬局グループの取り組み事例も紹介

    「DE&I」とはダイバーシティDiversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包括性)を指し、多様な人々が公平な機会のもとでそれぞれの能力を最大限に発揮できる環境を指す。 人種、性別、宗教、性的指向、社会経済的背景、および民族性など、さまざまな違いを持った「個」が、互いに違いを認め合う社会を目指して発足した「京都大学コミュニケーションデザインとDE&Iコンソーシアム」は11月27日に立命館東京キャンパスを会場にフォーラムを開催した。 公平な社会づくりに向けて企業が取り組むべきこと コンソーシアムの共同代表を務める、劇団の演出家であり京都大学経営管理委大学院の蓮行特定准教授は、フォーラムの冒頭でSDGsの理念として提唱されている「誰ひとり取り残さない」は「基本的人権の尊重」に言い換えられるとして、このことを建前で終わらせないことを訴え、「DE&Iは風ではなく、人類の数千年の知恵と価値観であり、どんな風が吹いていようが、これをやめない」と宣言した。 基調講演では長野県上田市に本社を置く株式会社バリューブックスの代表取締役であり一般社団法人B Market Builder Japanの共同代表を務める鳥居希氏が登壇。社会や環境に配慮した経営を認証する国際制度「Bコーポレーション(B Corp)」の推進者として、企業におけるDE&Iのあり方について語った。 鳥居氏は、自社でのジェンダーギャップ解消に向けた組織刷新を行った経験と、その過程で感じた問題点について述べ、構造的な不平等を解消するためには、企業が「意図的に」DE&Iを推進する行動を起こさなければ、何も変わらないと強調した。 DE&I推進に向けたスギ薬局グループの思い コンソーシアムの会員法人による事例紹介ではスギホールディングス株式会社の杉浦伸哉副社長も登壇した。来年50周年を迎える同社は、ドラッグストア、調剤、介護など多岐にわたる事業を全国規模で展開しており、多様な人材が働く企業となっている。この多様な職場環境の中でDE&Iを実現することへの課題認識のもと、社内にDE&I推進課を立ち上げて取り組みをスタートしたばかりだが、現状二つの大きな課題を感じている。 一つ目は、管理職におけるジェンダー公平性。会社が成長し続ける一方で、女性管理職の比率が上がってきておらず、経営層の多様化を進めなければならないこと。二つ目として部門間の公平性の確保をあげる。システム開発部門のようにリモートワークが可能で成果主義が適用しやすい職種がある一方で、ドラッグストアの店頭部門のように営業時間など業務の制約があり、働き方の自由度が低い職種も存在する。この部門間の違いがあるため、労働時間や年齢に左右されない公平な評価基準を求める声もあり、全社的にどう適用するかという「全体最適」を図る難しさがあるという。 杉浦副社長は現在、社員の声を積極的に聞き取って課題解決の糸口を探っているとして、部門ごとの専門的な問題を解決するために外部の知恵も借りながら、多様な働き方を包摂できる、変化に強い企業構造を構築していきたいと展望を述べた。 フォーラム会場で行われたポスターセッションでは、スギ薬局グループをはじめ、DE&Iコンソーシアムに参加する法人などの取組みが紹介され、活発な意見交換が行われる機会となっていた。 ■京都大学コミュニケーションデザインとDE&Iコンソーシアム https://art-cd.gsm.kyoto-u.ac.jp/dei/

  • 【MSD】D&I Award 2025で5年連続「ベストワークプレイス」認定!多様性を力に変える先進企業

    MSD株式会社は、株式会社JobRainbowが主催する「D&I Award 2025」において、5年連続で最上位となる「ベストワークプレイス」に認定された。これは、日本国内のみならず世界的にもトップレベルでダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進し、多様性を企業文化の中核に据えていることの証である。 最上位認定が示すMSDの先進性 「ベストワークプレイス」の認定は、D&Iの推進が単なる制度整備に留まらず、企業文化として深く根付き、社員一人ひとりが推進の担い手となっている企業に与えられる。MSDでは、D&Iの理念が事業や組織のあらゆる側面に反映されており、さらに社外にもポジティブな影響を与えている点が評価された。 MSDは2014年の「MSDダイバーシティ&インクルージョン宣言」以来、「あらゆる背景を持つ社員が能力を最大限発揮できる職場づくり」を一貫して目指してきた。社長のプラシャント・ニカム氏は、今回の5年連続認定について、「この度の5年連続のベストワークプレイス認定を大変光栄に思う。これは、社員全員のたゆまぬコミットメントの賜物だ」と述べ、社員の努力を高く評価している。 さらにニカム氏は、D&Iの重要性について言及し、「MSDでは、社員が持つあらゆる違いを強みの源泉ととらえ、多様な背景や価値観を持つ人財が、それぞれの強みを最大限に発揮できるインクルーシブな職場環境を醸成している。これにより、『最先端のサイエンスを駆使して、世界中の人々の生命を救い、生活を改善すること』という当社のパーパスを実現できると確信している」と、D&Iが企業の根幹であると強調した。 D&Iを支える革新的な制度と実績 MSDは、柔軟な働き方を支える制度からマイノリティへの配慮まで、先進的かつ包括的な取り組みを展開し、D&Iを支えている。 まず、柔軟でインクルーシブな働き方として、対面とリモートワークを最適に組み合わせるハイブリッドワーキングモデルを採用することで、個々のパフォーマンスを最大化している。また、就業規則に性的指向・性自認(SOGI)に関するハラスメントの禁止を明記しているほか、従来の生理休暇を「エクイティ休暇」に改称し(月3日まで有給)、取得への抵抗感を軽減し、公平性(エクイティ)を重視する姿勢を明確にした。 次に、ライフイベントを支える両立支援として、社員の同性パートナーや事実婚パートナーを人事規程上の配偶者とみなし、住宅手当や休暇制度などすべての人事制度を適用するパートナー登録制度を導入している。育児支援制度も拡充しており、「保育料補助制度」や「ちょこっと勤務」に加え、男女問わず最長通算3カ月(60営業日)を有給で取得できる育児休業制度を整備しており、男性育休取得率は50〜80%に達し、平均取得日数は60.6日という実績を誇る(2025年時点)。 さらに、D&I推進は社員が主体となっており、ジェンダー、LGBTQ+、障害者支援、育児/介護など、共通テーマを持つ多くの社員ネットワークが主体的に活動することで、インクルーシブな職場環境を醸成している。また、毎年9月には全社員を対象に「D&I月間」を開催し、社員ネットワークが企画・実施する講演会や体験型イベントを通じてD&Iへの理解を深めている。 社外への影響力と連携 MSDのD&Iへのコミットメントは社内に留まらず、社外にも影響を与えている。 LGBTQ+支援として、婚姻の平等(同性婚の法制化)に賛同するキャンペーンへの参加や、「Tokyo Pride」への協賛を継続しており、その結果、「PRIDE指標2025」で7年連続最高評価「ゴールド」を受賞し、さらに、セクターを超えた協働を評価する「レインボー認定」を初獲得した。また、グローバルNPO支援プログラムを通じ、認定NPO法人「ぷれいす東京」によるLGBTQ+の性の健康支援事業「“CONSENT”プロジェクト」への助成も開始している。加えて、第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025のトータルサポートメンバーとして協賛し、障害者スポーツの支援も積極的に行っている。 MSDは、今回の「ベストワークプレイス」認定をさらなる推進力とし、「D&Iを力に、人々に革新的な医薬品とワクチンを提供」するパーパスの実現に努めるとしている。 ・D&I Awardについて 詳細は こちら を参照。 ・SOGIハラスメントについて 性的指向・性自認に関する言動によって、他人に不快な思いをさせることや職場の環境を悪くする行為。

  • 【富士薬品】地元・さいたま市と包括連携協定を締結!11項目で市民サービス向上と地域活性化を推進

    左から、株式会社富士薬品 配置事業本部 配置営業統括部 第2営業部 部長 伊庭 圭之助、さいたま市 市長 清水 勇人氏 株式会社富士薬品は、2025年12月11日、さいたま市と包括連携協定を締結した。地元さいたま市を拠点とする富士薬品が、医薬品事業を通じて市民の健康増進、地域活性化、防災など多岐にわたる分野で協働し、市民サービスの向上を目指す。 包括連携協定のポイント 同協定は、富士薬品の主幹事業である配置薬およびドラッグストアの事業活動を基盤とし、市民生活に密着した次の11項目に取り組むものである。特に、市民のセルフメディケーション強化や高齢者等への見守りサービスなどに注力する。 協定締結の背景と展望 富士薬品は、「とどけ、元気。つづけ、元気。」をスローガンに、医薬品の開発から販売までを行う複合型医薬品企業である。さいたま市内では、現在約2万軒の家庭や企業に配置薬サービスを提供しており、地域に根差したサービスを展開している。 一方、さいたま市は、市民の健康寿命の延伸や、だれもが健幸で生きがいを持てるまちづくりを積極的に推進している。 今回の包括協定は、2024年9月の指定暑熱避難施設(クーリングシェルター)に関する協定締結を皮切りに、要支援世帯の把握対策や感染症の普及啓発、災害時の医薬品供給など、すでに締結されていた個別協定の分野も含め、さいたま市のまちづくりへのさらなる貢献を目指して締結された。 富士薬品は、これまで全国36市・町と連携協定を結んでおり、今回のさいたま市との連携を通じて、配置薬・ドラッグストア事業のノウハウを生かし、市民の「元気なくらし」を支え、地域の活性化に貢献していく方針である。

  • アリナミン製薬とキッズドアが連携し受験生を強力サポート!「受験生応援パッケージ」で"明日の元気"を届ける

    社員作成メッセージカード アリナミン製薬株式会社は、受験期を迎える高校3年生の心身の負担を軽減するため、認定NPO法人キッズドアと連携し、「受験生応援パッケージ」を寄贈した。この取り組みでは、社員ボランティアによる心温まる手書きメッセージカードの作成や梱包作業も実施され、企業と地域社会との共創を深く推進している。 「明日の元気」と社会課題の解決への強い思い 同社は「明日の元気を変えていく」というコーポレートメッセージに基づき、CSR活動の一環として社会課題の解決に取り組んでいる。一方、認定NPO法人キッズドアは、子どもの貧困問題の解決を目指し、困窮家庭の小・中・高校生への無料学習支援や居場所の提供、食料・物資支援などを展開している。 「どんな境遇に生まれても、すべての子どもが夢や希望を持てる社会の実現」というキッズドアの目指す先が、アリナミン製薬のコーポレートメッセージと深く重なることから、両者は昨年度より連携を開始した。 受験期は、多くの学生にとって心身の疲労が重なり、大きな負担となる時期である。同社は、この負担を少しでも軽減し、受験生が安心して試験本番に臨めるよう支援することを目的とし、同企画を実施する運びとなった。 活動内容:心と体の両方を支える充実のパッケージ キッズドアオフィスでの梱包作業の様子 今回、認定NPO法人キッズドアを通じて全国の受験生(高校3年生)500人へ配布された「受験生応援パッケージ」には、文房具、お菓子、アリナミンメディカルバランス(指定医薬部外品)、カイロといった、受験勉強に必要な物資や体調をサポートする品々、そして社員ボランティアが心を込めて作成した手書きメッセージカードなど、心身の両方を支える充実した内容が詰め込まれた。 このパッケージの準備にあたり、2025年12月4日にはキッズドアオフィスにて、同社の社員ボランティアがメッセージカードの作成やパッケージの梱包作業に積極的に参加した。企業一丸となって、直接的な支援だけでなく、"元気"や"励まし"といった温かい想いも社会に届けたのである。 今後の展望:継続的な連携で子どもの課題解決に貢献 今回の取り組みに対し、認定NPO法人キッズドアのファミリーサポート事業担当の渥美氏は、「モノのご提供だけでなく、心のこもった手書きのメッセージまで届くことで、“支えてくれている人たちがいる”ということを、受験生たちも感じることができると思います。受け取る子どもたちの心まで行き届く支援にご協力いただき、深く感謝いたします」とコメントしている。 同社は、今回の寄贈を起点とし、両者間の連携をさらに深める方針だ。受験生に限らず、困難な状況に置かれた子どもたちが直面する課題を深く理解し、OTC医薬品メーカーとして果たすべき役割を継続的に模索していく。小さな一歩から着実に歩みを進め、「明日の元気」を必要とする人々に寄り添う活動を、今後も積極的に推進していく構えである。

  • 調剤報酬の不公平な評価にJACDSが警鐘!

    薬局の「機能無視」を批判、令和8年度調剤報酬改定で公平な評価を要求 関口氏 山口氏 一般社団法人 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は2025年12月5日、令和8年度(2026年度)調剤報酬改定に向けた要望事項を公表し、特定の薬局グループの規模や形態のみに基づく不当な報酬区分の撤廃を強く求めた。特に、300店舗以上のグループ薬局に対する調剤基本料の「足切り」的な減算措置と、敷地内薬局を有するグループ全体への「連座制」導入の動きに対し、「企業努力を否定し、健全な業界発展を阻害する」と危機感を表明した。 会見には、JACDS調剤推進委員会委員長の関口周吉氏(龍生堂本店 社長)、副委員長の山口義之氏(トモズ 薬剤部シニアマネージャー)、そして委員である秋山洋一氏(ウエルシア薬局調剤運営本部 調剤企画部長)が出席した。 規模による基本料減算に「公平性を欠く」 JACDSが最も問題視するのは、令和4年度改定で導入された300店舗以上のグループ薬局に対する調剤基本料の区分である。同一の機能・サービスを提供していても、規模が大きいという理由だけで著しく低い点数が適用されており、「明確に公平性を欠く」と批判している。 秋山氏 山口氏は「企業努力をした結果として収益率が良くなったとしても、それは努力が実った結果であります。そうした企業努力を否定するような報酬の仕組みは、ぜひ避けていただきたい」と述べ、技術やサービスに対する対価として公平に評価すべきであると強調した。 この区分の影響は、データにも深刻に現れており、中央社会保険医療協議会の医療経済実態調査でも300店舗以上グループの損益率は低下していることが指摘されている。JACDS加盟企業の独自集計では、その損益率が直近で1.5%まで落ち込んでいるという。 業態特性を生かした医療貢献の深化 関口氏は、委員会の役割と今後の方向性について、以下のように決意を表明した。 「当委員会では、ドラッグストア事業体ならではの医療貢献のあり方を追求しています。具体的には、医療計画に則した事業運営を前提としつつ、ドラッグストアとしてその役割をどこまで拡大し、地域医療へ貢献できるかを重点的に検討しています」とし、業態のポテンシャルを最大限に引き出し、新たな医療貢献の領域を確立することが課題であるとした。 敷地内薬局の「連座制」導入に強い反対 改定議論で再度焦点となっているのが、大規模病院の敷地内薬局をグループ内に持つ薬局全てに対し、調剤基本料を一律に引き下げる「連座制」の適用検討である。 JACDSはこれに対し、「行政の裁量の逸脱」であると強く反対した。敷地内薬局はすでに特別調剤基本料が適用され、著しく低い点数に設定されている。同協会の調査では、敷地内薬局の損益率はマイナス10.8%に達しており、すでに赤字経営の状態である。 このような状況下で連座制を導入することは、グループ全体に多大な経済的負担を強いる「懲罰的な報酬」であり、薬局の運営撤退を迫ることに他ならないと主張。その結果、高齢者や車椅子利用者など、敷地内薬局の利便性に頼る患者の利益を損なうことになると警鐘を鳴らした。 地域加算と「かかりつけ」要件の課題 その他の要望事項として、以下の点が挙げられた。 地域支援体制加算の見直し:グループの規模や都市部・地方といった立地条件によって報酬に差をつけるべきではないとし、薬局が提供する技術やサービスの実績に応じて公平に評価するよう要望した。 かかりつけ薬剤師指導料:業務遂行に必要な「1年以上在籍」要件について、学術的根拠が示されていないこと、また医療DXの進展を踏まえても必要性が認められないとして、在籍年数要件の延長に反対している。 JACDSは、薬局の規模や形態にかかわらず、全ての薬局が国民の健康を支える力を最大限に発揮できるような、健全で持続可能な制度設計の実現に向け、今後も政府や関係団体に対し強く働きかけていく構えである。

  • 【薬局四方山話】医療用医薬品の保険給付に関する議論

    薬事政策研究所 田代健 自民党と日本維新の会(以下「維新」)による新政権が発足した。維新は閣外協力の条件の一つに社会保障改革を掲げており、薬局業界ではそのうち「OTC類似薬の保険給付からの除外」が注目されている。ここではこの政策の土台の部分を簡単に整理し、今後の状況をつかむための一助としたい。 1. 医療費の問題 維新は、現役世代の手取りが増えない原因として、給料から天引きされる社会保険料の増加を挙げており、国民医療費を年間4兆円節約すれば天引き額を一人あたり年間6万円減らせると主張している (BOX) 。 その節約のための主な政策の中に「医療用医薬品の保険給付の見直し(OTC類似薬の保険給付の除外により3500億円削減)」というものがある(*1)。 2. 保険給付の範囲と処方権との関係 猪瀬直樹氏が公開した具体的な品目のリストを見ると(*2)、例えば抗アレルギー薬のロラタジンが含まれている(2025年10月現在で後発品の薬価は10mgで14.8円)。一方、その活性代謝産物であるデスロラタジン(デザレックス®)は処方箋医薬品で、リストに含まれていない(こちらの薬価は5mg錠で38.7円)。今までロラタジンを処方していた医師は、保険を使った処方ができなくなるのであればデスロラタジンに切り替えるのではないだろうか。医師が保険給付とセットの処方権を守ろうとすれば、処方箋医薬品を処方するインセンティブが作用し、薬剤費はむしろ増加するだろう。それを回避するには、抗アレルギー薬全体で処方権と保険給付を揃え、医師の裁量の余地をなくすような制度設計が必要だ。 3. OTCへの処方権の拡大 「保険給付から外す」のとよく似た方法として「保険給付率を0%に引き下げる」という仕組みが考えられる。この場合、医師は従来通り処方することができるし、公費と併用することもできる。しかし2002年の医療保険法改正の際に「将来に亘って保険給付率は7割を維持すること」という条件(*3)が付言され、自己負担率は3割を超えられなくなっている。新政権がこの見直しに踏み込むことができるかどうかは注目ポイントだと筆者は考える。 他に、選定療養制度を使う方法も考えられる。この場合はあくまでも「患者の意思による選択」が前提となるため、「OTC類似薬を処方すること」について患者のなんらかの意思決定を条件とすることで保険給付から外すという方法を捻り出すかもしれない。 国内には「医療機関は存在するが薬局は存在しない」という地域がある。この場合、上記の「保険給付0%」あるいは「選定療養」であれば従来通り院内処方で対応できるが、保険給付から外すのであれば、医療機関がOTCを販売できるような例外規定を設けざるを得ないだろう。このような規定を一度導入すれば、際限なく拡大解釈され、医療機関が「医師推奨のOTC」を自由に販売するようになるのではないかと筆者は危惧する。 4. 「医療費」を抑えればよいのか? 維新は社会保険料について「現役世代から高齢者への仕送り」と表現するが、健康な後期高齢者や病気と闘っている現役世代を考慮に入れれば、「薬を使っている人」から「薬を使っていない人(及び法人や政府)」への「仕送り」に他ならない(高齢者の自己負担率の引き上げも同様)。これは社会的な弱者の生存権に直結する問題であり、ポピュリズム的な空気感で判断するのではなく ・「限られた予算をどのように配分したいか?」という目標の妥当性 ・「実際にどのように配分されたか」という評価 の2点を厳密に確認する必要があると筆者は考える。 5. 最後に 現状では、「薬剤師の専門性」は製薬会社のマーケティングよりも優先順位が低い。OTCとして販売できる製品を実際に薬剤師が販売できるかできないかは、「製薬会社がどこの棚で売りたいか」という判断によって決まる。保険給付は財政的には重要な問題だが、薬学の観点からは、OTC類似薬の議論は「医薬品の分類と薬剤師の現在の仕事ぶりとの見直しの必要性」を示唆しているのではないかと筆者は考える。 *1 社会保険料を下げる改革提言 https://o-ishin.jp/policy/2025_lower_social_insurance_premiums/ *2 4月17日の社会保障下げる(医療費削減)のための自公維3党協議に提出した資料を解説付きで公開します。 https://note.com/inosenaoki/n/ncde0c2747fd3 *3 厚生労働省「健康保険法等の一部を改正する法律案の概要」 https://www.mhlw.go.jp/houdou/2002/03/h0306-2.html BOX 〜データを吟味しよう〜 薬学生の皆さんには、公表された数字を鵜呑みにせず、自分自身で確認してみる習慣を身につけてもらいたい。特に臨床的なデータについて、その習慣が目の前の患者を守ることにつながるかもしれないからだ。健康食品のデータなども批判的に吟味してみる練習を積むことをお勧めしたい。 例えば、筆者は維新の「4兆円節約して年間6万円」という試算は過大だと考える。 国民医療費の財源の内訳は 公費(税金から補填) 37.5% 事業主が負担する保険料(サラリーマンを雇っている会社が負担する保険料) 22.0% 被保険者の負担分(給与明細書で天引きされている部分) 28.2% 患者負担(患者が窓口で支払う分) 11.8% となっている(*)。 維新は被保険者として現役世代だけの6400万人という数字を使い、国民医療費の支出全額について 節約額4兆円÷現役世代(被保険者)6400万人≒6万円 と計算しているが、支出を4兆円節約した場合にサラリーマンの天引き分の減少額は 4兆円×被保険者の負担分0.282≒1.2兆円 にとどまる。また、 後期高齢者1800万人も社会保険料を負担しているので8200万人(社会保険料を負担している全ての人(現役世代6400万人+後期高齢者1800万人))で均等に割ると、 1.2兆円÷8200万人≒1.5万円 となる。つまり、一人当たりの手取りの増加は年間1.5万円程度となる(残りの4万5000円分は、政府や企業の増収となる)。もちろん、この筆者の計算も鵜呑みにせず、自分自身で考えよう。 なお、維新が「現役世代からの仕送り」を減らすと主張したいのであれば、具体的には後期高齢者医療保険における「後期高齢者支援金」がまさにそれで、目立たないながらも以前から見直しはされている。   * 国民医療費の概況 https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/23/dl/R05data.pdf

  • 患者と市民も参画する創薬エコシステムを目指して~新湘南ウェルビーイングフェスタ2025

    11月29日、神奈川県藤沢市の創薬開発イノベーション拠点、湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)にて、一般市民向けのイベント「新湘南ウェルビーイングフェスタ2025~ウェルビーイングって何だろう?今と未来のヒントがここにある~」が開催された。 「ウェルビーイング」とは「肉体的にも精神的、社会的にもすべてが満たされた状態」を指す言葉で、これからの医療福祉や社会づくりにおいて重要視されていくキーワードだ。 昨年に続き2回目となるこのイベントでは、施設の屋内外を会場に、ウェルビーイングの実現をテーマにした企業や大学による製品システム、サービスの紹介や、医療、テクノロジーの専門家と市民が共同参加できるワークショップなどが行われた。 研究者と市民が創薬に共同参画する時代へ イベント内では「お腹の病気をもとに考える、患者さんと市民が一緒に作る未来のクスリ ―患者・市民が製薬企業とできること―」と題したワークショップも開催され、創薬開発に携わる研究者と患者、一般生活者とが共同で創薬に関わることについて各立場からの講演が行われた。 湘南アイパーク内のコミュニティ「WorldCafe」メンバーでマルホ株式会社の研究者である平野尚茂さんは、前世紀からの病気と医薬品開発の歴史的背景を解説し、近代の創薬は感染症や急性死に対応した救命治療するために医師や研究者主体で薬の開発が行われていたが、2000年代前後には生活習慣病薬の開発を背景に診断に基づく標準治療として科学とエビデンスが重視されるようになり、2010年代ごろからは患者の生活や人生への負担を取り除くための心身を含めた最適化を求める医療の時代になったと説明。これからは患者と市民も創薬開発に一緒に参画することが求められると述べた。 患者の視点での薬との向き合い方 続いて炎症性腸疾患(IBD)の患者側の声として、IBD患者と家族のコミュニティ「Gコミュニティ」の運営や、情報発信を行う株式会社グッテの宮﨑拓郎さんと、コミュニティのメンバーで自身もクローン病患者である小林由佳さんが登壇。小林さんは18歳の時に発症し、大学進学、海外の大学院進学を経て現在東京の企業で勤務しており、社会人10年目を迎えるが、その間のライフステージにおいて手術と治療を繰り返した。持病と向き合いながら学業や仕事を続けてきて感じた問題点を説明しながら、現在は自分に合った生物学的製剤と出会えたお陰で生活が改善されていると語る。 今回伝えしたいこととして、闘病している患者本人の意思を尊重してほしいと話し、「私自身はあまり過度に心配されたくない性格だが、中には気配りを求める患者さんもおり、症状も人それぞれですし、ケアしてほしい度合いも人それぞれであるなか、患者も一概ではなく様々な考えの方がいることを知ってほしい」と訴えた。 地域住民が健康づくりにどう関わるか また地域住民の立場から、湘南アイパークの立地する藤沢市村岡地区の渡内町内会の会長をつとめる木村宏治さんは新湘南ウェルビーイングフェスタについて「無病息災を祈る祭り」と表現。地域社会における住民と健康の関わり方について、民俗学で提唱されている「ハレとケ」の考え方をあてはめて説明。ケ(日常)が続いてケガレ(気が枯れて元気がなくなる)状態を復活させるためのハレ(非日常の祭り)のサイクルが繰り返されることで人生が成立するとした。人生100年時代においては生涯ずっと健康であり続けることは難しいが、病気で薬を飲んだり、災害に遭ったとしてもハレとケのサイクルの中で町内会と住民は結びつきの中で健康について地域の中で目を配れることができるのではないかと語った。 創薬エコシステムの町での住民、患者の参画のあり方 登壇者全員によるパネルディスカッションでは、創薬研究者、患者、そして住民の間で、いかにして相互理解を深め、地域に根差した文化を築くか、また創薬エコシステムが根付く地域において、患者と住民がどのように薬づくりに参画し、そのあり方をどのように発展させるべきかについて議論された。 総括として研究者にとっては患者や住民との日常生活的な話し合いこそが、研究における新しい発見につながるとの見解が示され、研究者が抱える課題に対して、患者の生活の視点から新しい解決策やヒントが得られる可能性があり、地域のネットワークを密接にすることで、その機会を日常的に持てるようにすることが、新しい薬の種を生み出す鍵になると締めくくられた。 >新湘南ウェルビーイングフェスタ 2025

  • 【城西大学薬学部】ウェルネスフードジャパン2025への初出展で、企業への科学的エビデンス提供を強化

    城西大学薬学部薬科学科助教の矢島克彦氏 城西大学薬学部は、2025年11月26日(水)から28日(金)まで東京ビッグサイトで開催された日本最大級の健康関連展示会「ウェルネスフードジャパン2025」に出展した。この出展は、大学が保有する高度な研究知見と分析機器を社会に開放し、企業との共同研究や製品開発を促進するという、新たな産学連携強化の取り組みである。 薬学の「科学的エビデンス」で機能性食品開発を支援 会場では、薬学部の3学科(薬学科・薬科学科・医療栄養学科)が連携し、創薬支援から機能性食品の研究、品質評価に至るまで、大学の強みである「科学的エビデンス」に基づく研究事例が紹介された。 今回インタビューを実施したのは、肥満予防や生活習慣病対策に焦点を当てた機能性食品開発の研究である。薬学部薬科学科助教の矢島克彦氏(栄養生理学研究室)は、自身の研究テーマについて、「生活習慣病の起点とされる肥満を防ぐため、睡眠中の脂質代謝を高め、寝ている間に脂肪燃焼量を増やす機能性食品や栄養素の探索研究をメーンに進めている」と説明した。 「寝ている間に健康に」現代のニーズに応える研究 矢島氏の研究チームでは、含まれる脂質の脂肪酸比率を調整することで、食後の脂肪燃焼量が増大する効果を有する「太りにくいマフィン」などの菓子類を開発し、食べた後の脂肪燃焼量が高まる効果を実証している。これは、日常生活から離れたサプリメントではなく、マフィンやパン、アイスといった普段の食生活に溶け込む形態での食品介入を重視しており、商品化に直結しやすいアプローチである。 「現代の消費者は、忙しさから『寝ている間を有効活用したい』という意識が高く、寝ている間の脂肪燃焼を増やすといったコンセプトが市場で求められている」とのことであり、こうした企業のニーズに応えるため、食品大手企業との共同研究も積極的に展開しているという。 学生が研究の最前線で学ぶ「社会とつながる学び」 同展示会は、研究成果を社会に発信するだけでなく、学生にとっての「社会とつながる学び」の場としても機能した。白衣を着た学生らが来場者に対し、自身の研究内容を直接説明する姿が見られ、鈴木龍一郎氏(城西大学薬学部薬科学科主任教授)はこれを「アクティブラーニング」の実践であると語った。研究成果を外部に伝えることで、学生自身の理解度と社会性を深める教育的な狙いがある。 産学連携の強化が大学資源の有効活用に 城西大学薬学部がこのような産業展示会に出展するのは今回が初めてだが、今後は恒例化していく意向である。出展の目的は、機能性評価のフィールドや動物実験のノウハウを持たない企業に対し、大学の充実した分析機器や専門知識といった研究資源を開放し、共同研究や受託研究の窓口となることである。 この出展は、大学が持つリソースを社会貢献へと結びつけ、健康食品産業のさらなる発展に寄与する姿勢を示すものであった。企業側からも、機能性評価の依頼や素材提供に関する問い合わせが複数寄せられるなど、早くも産学マッチングの手応えを感じているという。

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