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- マルホ創業110周年企画『昭和万葉俳句集』にみる戦後の記憶
2025年は、終戦から80年、マルホ株式会社にとっては創業110周年を迎える記念すべき年である。この節目の年に、マルホは1985年に発行された『昭和万葉俳句集』および『昭和万葉俳句前書集』をあらためて紹介している。 これらの俳句集は、終戦の日である昭和20年8月15日に対する個々人の想いや記憶を表現したもので、全国から集められた1万句以上の俳句と、それに込められた背景を記した4,000件以上の前書きで構成されている。 戦争の記憶を後世に伝える俳句集 『昭和万葉俳句集』は、生命(いのち)を大切にするというマルホの価値観を象徴するものだ。これらの俳句集は、過去に全国の主要な図書館に寄贈されており、現在でも閲覧できる施設がある。 またマルホは今回、大阪城公園内にある資料館「ピースおおさか」にもこれらの俳句集を寄贈した。「ピースおおさか」は、大阪空襲の犠牲者を追悼し、戦争の悲惨さと平和の尊さを伝えることを目的とした施設である。同館の図書室では、マルホが寄贈した俳句集をはじめ、戦争や平和に関する多くの書籍を閲覧することが可能となっている。 俳句に込められた一人ひとりの記憶 俳句集には、当時の状況を克明に伝える前書きとともに、人々の感情が五・七・五の短い言葉に凝縮されている。以下に、その一部を抜粋して紹介する。 ・夏雲か 北山か視る 片方の眼 広島の原爆後、続々と京都医大病院に青ぶくれの患者が来て、原子爆弾とは知らされず、栄養失調の浮腫とは違う溺死者の如き全身浮腫に、地獄の使者かとばかりいぶかり、手当てをしました。暑く長い八月のむっとする病室内で、不思議なほど人達は沈黙しておりました。 ・少年の笑顔が泪 夏終わる 徴兵検査前の私は、農業に従事中。郷土防衛隊結成の召集を受け、その朝生家を出発、交通途絶、敵機飛来の中を四街道駅より佐倉市に馳せつけたが、正午の玉音放送によって防衛隊は瓦解離散した。私はその渦中にいた。 ・炎天に 還らぬいのち 飛び立てる 昭和20年8月15日の夜、沖縄の空襲警報が発せられ傍受。大分航空基地からあえて飛び立った数基の「彗星」艦爆、最後の特攻隊である。私は、基地内にある防空壕内の通信所で、茫然たる思いでこれを聞いた。失意の中の決別であった。 ・美しきかりき 原爆雲の映え 私は広島県の山合いの傷疲軍人療養所(現、国立療養所広島病院)で終戦を迎えた。病棟をよぎった閃光のあと、しばらくして西の空に上がったきのこ雲が原爆雲であった。その療養所には今も友人が療養を続けている。入院費用は未帰還者...援護法を適用されて。 ・軍規説く 隊長吃る 終戦日 広東省北方警備中、転進下命南昌に向け夜行軍。南昌北方約五里の部落で終戦を知る。作戦中各人には常時自決用として手榴弾1個が渡されていた。終戦時何人かの将校が自決した。自分は一人息子(3歳)の写真だけは肌身離さず持っていた。 これらの俳句と前書きは、戦争という時代を生きた一人ひとりの「いのち」の重みと、平和への願いを現代に伝えている。マルホのウェブサイト( 持続的な成長の基盤 > 社会 > 社会貢献 )では、デジタルブックとして80句を抜粋して紹介しており、当時の人々の記憶に触れることができる。
- 日本家庭薬協会が日本在宅薬学会学術大会に共同出展―家庭薬を在宅医療の新たな選択肢へ
日本家庭薬協会は、2025年7月20日から21日にかけて東京ビッグサイトで開催された第18回日本在宅薬学会学術大会に共同企画として出展した。在宅医療に携わる薬剤師に家庭薬(OTC医薬品)の知識を深めてもらい、患者のセルフメディケーションを支援するのが目的だ。 「模擬薬局」で家庭薬をアピール 会場入り口付近に立てられたのぼり 参加者に手渡された医薬品のサンプル 今回の企画の目玉は、学会会場内に開設された「模擬薬局」だった。会場入り口付近にはのぼりを立てて存在を周知し、来場した薬剤師は家庭薬について深く学んだ。日本家庭薬協会のメーカー各社がブースを構え、製品に関する詳細な情報を提供。メーカー担当者と薬剤師が直接意見交換できる貴重な場となった。また模擬薬局では、来場者に医薬品のサンプルも提供され、家庭薬を身近に感じる機会となった。この取り組みは、日頃から在宅医療の現場で活躍する薬剤師にとって、新たな治療選択肢として家庭薬を検討するきっかけとなったようだ。 今回の企画を担当した株式会社山崎帝国堂の嶋津正治氏は「在宅医療を担う薬剤師の先生方は、患者さんやご家族と密に接する機会が多く、家庭薬の正しい知識があれば、よりきめ細やかなサポートが可能になります。今回の企画が、新たな視点を持つきっかけになれば幸いです」と話す。 在宅医療における家庭薬の重要性 この企画の背景には、在宅医療の現場におけるポリファーマシー(多剤服用)の問題がある。複数の処方薬を服用する患者に対し、便秘などの軽微な症状には、作用が穏やかな家庭薬で対応できるケースも少なくない。各社のブースでは、そうした家庭薬の適切な活用法についても情報提供を行い、薬剤師の視点から患者のQOL向上に貢献できる可能性を示した。 市民公開講座でセルフケアを啓発 21日には、一般市民向けの市民公開講座「知っていますか?病院に行く前にやるべきこと〜がん予防とセルフケアの新常識〜」も開催された。この講座には、在宅医療に携わる薬剤師も多数参加。東京都医師会会長の尾﨑治夫氏や医療法人社団ナグモ会理事長の南雲吉則氏が登壇し、セルフケアの重要性を訴えた。 今回の企画は、在宅医療の専門家である薬剤師と家庭薬メーカー、そして患者をつなぐ重要な一歩となった。来年は大阪での開催も予定されており、今後も継続的な啓発活動を通じて、家庭薬の正しい知識とセルフメディケーションの普及に努めていくとのことだ。 模擬薬局で医薬品のサンプルを提供
- 「健康ハートの日2025」共同声明発表:薬局・ドラッグストアが連携し血圧管理啓発を強化
左から、岩月氏、小室氏、三木田氏、塚本氏 2025年7月29日、日本循環器協会、日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会の4団体が共同で、「健康ハートの日2025」に関する共同声明発表会を開催した。日本薬剤師会、日本保険薬局協会、日本チェーンドラッグストア協会は、心臓病・脳卒中予防キャンペーンの趣旨に賛同し、薬剤師や登録販売者などの専門性を結集。血圧管理啓発を通じた健康増進活動「血圧は測ろうぜ!」において、3団体が協力・連携していくことを発表した。8月10日の「ハートの日」に合わせ、循環器病予防のための啓発活動が強化される。 日本循環器協会が牽引する「健康ハートの日」の歴史と展望 日本循環器協会代表理事の小室一成氏は、まず「健康ハートの日」の概要について説明した。同活動は、「はーと」の語呂合わせから、1985年8月10日に日本心臓財団が開始した心臓病の啓発活動で、今年で40周年を迎える。これまでは医師による健康相談や血圧測定が中心であったが、日本循環器協会が2021年から加わったことで、患者や企業、Jリーグ、薬局、自治体などとの連携を深め、活動の幅を広げてきた。 特に、サッカー選手の心臓病問題に着目し、Jリーグや人気漫画『キャプテン翼』の作者・高橋陽一氏の協力を得て、心臓病を抱えるキャラクター「三杉淳」を啓発アンバサダーに起用し、ポスター制作などを行っていることが紹介された。 小室氏は、日本循環器協会が約60ものプロジェクトを動かしていることに触れ、Jリーグと連携したサッカー試合会場での啓発活動、市民公開講座、小中学生への生活習慣啓発、8月10日の都道府県のランドマークライトアップなどを紹介。特に小中学生への啓発は、子供から親へ健康意識が波及する効果を期待しているという。 また、薬局との連携を強調し、昨年は約1万店舗の薬局が血圧測定キャンペーンに協力したと報告。1店舗あたり100人が測定すれば100万人の血圧測定に繋がり、高血圧患者4300万人のうち治療されているのが3分の1に過ぎない現状において、薬局が果たす役割の大きさを訴えた。 薬剤師会・保険薬局協会が語る薬局の役割 日本薬剤師会会長の岩月進氏は、自身の高血圧家系という個人的な体験を交えながら、自宅での継続的な血圧測定の重要性を強調。患者自身が記録を持つことで、受診勧奨の精度が向上すると述べた。また、薬局の役割として、薬剤師や登録販売者が気軽に相談できる存在となること、そして全国6万軒以上の薬局が「かかりつけ薬局」として血圧測定を含む健康相談に対応できるよう、今後も連携して取り組む意向を示した。 日本保険薬局協会会長の三木田慎也氏は、薬局が日頃から地域の住民に対して予防啓発に取り組む重要性を述べ、今回のキャンペーンに全面的に賛同すると表明。処方箋がなくても、物を買わなくても、いつでも健康相談ができる薬局の存在を国民に広く知ってもらうことが大切だと語った。日本保険薬局協会の会員薬局約2万店全てで、ポスター掲示や血圧計の準備を進め、キャンペーンに対応していく方針を示した。 チェーンドラッグストア協会の取り組みとAED普及 日本チェーンドラッグストア協会会長の塚本厚志氏は、ドラッグストアがこれまで「物を販売する場」という側面が強かったとし、今回のキャンペーンを通じて、血圧に関する相談体制を強化していく考えを述べた。薬剤師や登録販売者だけでなく、資格を持たない従業員も適切なアドバイスができるよう、内部体制を整備する方針だ。 今回のキャンペーンには、ドラッグストア単独で約3000店舗が積極的に参加するとし、将来的には全国2万3000店舗の半分以上で血圧相談ができる体制を目指すと語った。塚本氏は、ドラッグストアが身近な存在として、高血圧に気づいていない生活者への啓発や、家庭に血圧計がない人が気軽に測定できる場所となることを期待した。また、ドラッグストアが7000〜8000カ所でAEDを設置していることにも触れ、地域における予防と緊急対応の拠点としての役割を強調した。 予防啓発の重要性と今後の展望 小室氏は循環器病が日本の死因の上位を占め、特に高齢化社会において患者数が増加している現状を指摘。病院での治療だけでは追いつかないため、予防啓発が極めて重要であると強調した。国が定める「脳卒中・循環器病対策基本法」においても、予防啓発が3つの柱の第一に掲げられていることを挙げ、医師だけでなく、看護師、薬剤師、理学療法士など多様な職種が連携し、病気になる前の段階での予防に取り組む必要性を訴えた。 さらに、多くの国民に正しい知識を伝えるための取り組みとして、eラーニングで循環器疾患について学習し、認定試験に合格した「アドバイザー」制度を紹介。昨年から1万7000人がアドバイザーとなり、その知識を家族や友人に伝えることで、広範な啓発効果を狙っていると述べた。 循環器病はがんとともに二大疾患であり、特に女性の死因トップは循環器疾患であることを強調。生活習慣の改善によって予防や再発防止が可能であるため、一人でも多くの人に病気と予防法を伝える活動を続けていくと締めくくった。 ■3団体共同の取り組み概要 健康ハートの日2025 薬局・ドラッグストア活動企画「血圧を測ろうぜ!」 実施期間:2025年7月1日~8月31日 内容:啓発ポスター掲示、血圧測定コーナー設置、各種イベント開催、リーフレットを活用した健康相談等 活動地域:全国
- 未来のドラッグストアが見える3日間!「第25回ジャパンドラッグストアショー」開催へ
2025年8月8日から10日までの3日間、東京ビッグサイトで「第25回ジャパンドラッグストアショー」(日本チェーンドラッグストア協会主催)が開催される。今年のテーマは「地域の皆様に最高の未来をお届けする~ドラッグストアでセルフメディケーションネクスト25~」。実行委員長の米原まき氏は、次世代のドラッグストアの在り方を展望するイベントとなることを強調した。 米原氏 「ネクスト25」で描く、ドラッグストアの未来像 今回のドラッグストアショーでは、「ネクスト25」というキーワードが随所にちりばめられる。これは、今後25年間のドラッグストアの未来像を予測し、その可能性を探ることを目的としている。単なる商品展示に留まらず、業界全体の将来を見据えた議論が展開される予定だ。 新たな試み満載!注目の会場とゾーン 食と健康アワード 会場は東京ビッグサイトの東4ホール、5ホール、6ホール、7ホールを使用。主要な出店ゾーンは、例年通りヘルスケアゾーンとビューティーケアゾーンが中心となる。 特に注目は、特別企画ゾーンのフェムケアゾーンと食と健康ゾーンだ。食と健康ゾーンは、従来のフード&ドリンクゾーンを統合・刷新。市場が拡大している冷凍食品の試食コーナーを初設置するなど、新たな食の提案に力を入れている。これにより、ドラッグストアが提供する「健康」の範囲を広げ、顧客の多様なニーズに対応する姿勢が示される。 業界のキーパーソンが語る未来、体験型コンテンツも充実 東5ホールに設けられる同協会のテーマブースでは、今後のドラッグストアの将来像がパネル展示で紹介される。また、同ホールのイベントステージでは、開会式やパネルディスカッション、表彰式などが開催される。8月8日には同協会会長の塚本厚志氏と次世代の経営者が登壇し、「これからのドラッグストアの話をしよう」をテーマに未来像を議論。タレントのとよた真帆氏を招いたセルフメディケーションに関するトークショーや、SNSインフルエンサーによるトークセッションも予定されている。 9日には恒例のMen’s Beautyアワードが開催され、毎年大きな注目を集めている。10日には芸能人の土屋アンナさんを招いたフェムケアに関するトークや、AED普及活動を行う蝶野正洋さんの登壇が予定されており、「ハートの日」(8月10日)に合わせた取り組みが展開される。 フェムケアゾーン 健康を「体験」する!充実の特別企画 毎年人気の新商品コレクションに加え、フェムケアゾーンでは、エクオール測定ができる体験コーナーを初めて設置。骨密度や糖化測定も可能となり、来場者の健康意識向上に貢献する。 食と健康アワードでは、当日グランプリなどが選出される予定だ。 子供も大人も楽しめる!パワーアップした「チャレンジパーク」 体験型コンテンツのチャレンジパークでは、薬剤師の仕事体験に加え、自衛官、消防士、科学博士といった多様な職業体験コーナーが設けられる。特に消防庁の協力による防災体験コーナーでは、消防車の出張展示も行われ、よりリアルな体験が可能となる。 業界の未来を共に考える3日間 昨年は10万人近い来場者と385社を超えるメーカーの協力を得て大成功を収めたドラッグストアショー。米原氏は、今年の開催に向けて「委員一同、年に1回のこのドラッグストアショーを盛り上げていきたい」と意気込みを語った。来場者には「未来におけるドラッグストアがどうなっていくのか、どんな社会情勢になっていくのか」を共に考え、その内容を発信してほしいと呼びかけた。 第25回ジャパンドラッグストアショーは、ドラッグストア業界の現在と未来を肌で感じられる貴重な機会となるだろう。 ※ドラッグストアショーの写真は昨年のもの
- AI時代における薬剤師の価値とは カケハシ「Pharmacy Leaders Day2025」開催レポート
電子薬歴システム「Musubi」をはじめとする薬局向けソリューションを展開するヘルステックスタートアップの株式会社カケハシは、7月24日に薬局DXをテーマにしたカンファレンス「Pharmacy Leaders Day2025」を東京都内で開催した。 開会にあたり挨拶に立ったカケハシの中尾豊社長は、このイベントを2021年に初めて開催した当初は5年後10年後の薬局経営や業界がどうなっていくのかを情報提供する趣旨だったが、近年AIの普及技術的な変化が激しいため、今年来年の変化を把握してどう生かしていくかが喫緊の課題になっていると述べた。 周知のとおり、近年劇的な勢いでAIが普及してきており、あらゆる産業分野から私たちの身近なライフスタイルに至るまで大きな変革が起こりつつある。そのような状況を背景に薬局・薬剤師の業務や働き方にどのように影響が起こってくるのか。「進化する薬局DX ― AI×データ時代における「患者のための薬局」とは」と掲げられたテーマに沿って、医療DX、AI分野の専門家から薬局のDXに実践する薬剤師による講演やシンポジウムが行われた。 地域医療における薬剤師の活躍への期待 ~患者モニタリングの価値~ 厚生労働省 松下俊介氏 厚生労働省の松下氏は少子高齢化が急速に進むうえで、生産人口が劇的に減少する段階に入っている現状に触れ、コンビニよりも多い薬局店舗数と30万人いる薬剤師人口について「多いからこそできることがある」として、調剤にとらわれず、医薬品周辺に関わる多彩な活躍をすることに期待を込めた。半面、外来調剤は2025年がピークで、外来調剤はこの先シュリンクしていく市場である。第6次医療計画に沿って在宅医療への参画が求められる中、居宅訪問管理指導が増えている統計があるものの、しかし現状では登録だけしかされておらず在宅医療の本質的な役割が果たされていないという見方も示した。 “薬局・薬剤師の存在価値”の再定義 − PHR・EHR時代の薬剤師の介入と地域包括ケアへの参画 − 秋田大学医学部附属病院 岡崎光洋氏 岡崎光洋氏はPHR・HER(※)時代の薬剤師として講演をおこなった。いまから15年後の2040年頃の人口構成を考えた場合、日本国内でも地方によって患者数や医療資源が異なるため課題も異なることを指摘。医療資源の少ない地方での医療DXによるサポートの一例として、医療MaaSという移動式診療カーとオンラインシステムを組み合わせた事例を紹介。またこれから求められるものとして、PHR・EHRを活用して患者ごとのデータを解析するなど、画一化された医療ではなく個別化した医療の実現が必要であると述べた。また地域包括ケアシステムにおける地域のことを「感情共同体」であると定義。薬剤師は地域の多職種連携の中でハブ的な存在になることに期待を込めた。 ※Personal Health Record … 個人の健康や身体の情報を記録した健康・医療・介護関連のデータ。 Electric Health Record …医療機関などで取得される診療情報や検査データ、既往歴やアレルギー情報などを共有する仕組み。 AIの進化が変える患者体験 医療・ヘルスケア分野におけるデータ駆動型アプローチの展望 千葉大学大学院医学研究院/数理創造研究センター・生命医科学研究センター 川上英良氏 川上英良氏はもともと人工知能を学びたくて医学部を志したという経歴の持ち主(しかし入学当時の2000年初頭のAI研究は下火で苦節の時期を過ごしたという)。AIの普及によって従来の標準治療から個別化医療の時代に変わっていくと説明。また実はAIは共感的コミュニケーションにも強く、医療相談でも医師よりもChatGPTのほうが患者の評価が高かったという調査結果があることを報告した。このほか医療の世界で起こっているAIによるパラダイムシフトの例として、画像診断の解析精度の向上や、蓄積した患者データからシュミレーションすることで起こりうる症状の予測や早期発見ができるようになったこと、精度の高い薬材投与量の設定ができるようになったことなどを紹介した。AI時代の薬局においては医師が着手できていないような患者のウェアラブル端末などのデータ活用などで期待できると述べた。 ビッグデータの活用で明かす「薬剤師の価値と貢献」 岡山大学学術研究院/九州大学システム情報科学研究院 濱野裕章氏 濱野裕章氏はビッグデータ時代の薬剤師の価値について講演。ビッグデータを使いこなしていくためにも薬学生から教育していく必要があると述べた。薬剤師の価値は、従来は調剤などの技術を競ってスピーディーに作業ができることが評価されていた時代から、AIを駆使して情報を組み合わせて活用することができるかどうかに価値が問われる時代になると説明。薬剤師が医療情報データベースと生命科学データベースを活用することで治療の質の向上や副作用の低減、また地域医療でもセルフメディケーションへの貢献ができる取り組みを紹介した。薬局でカケハシの「Musubi」が活用されることで、医療データベースが作り上げられていることも触れ、薬剤師の介入による医療の質向上を経済効果として可視化することにもつながると述べた。 パネルディスカッション:情報技術は「患者のための薬局」をどう変えるのか 千葉大学大学院医学研究院 川上英良氏 岡山大学学術研究院 濱野裕章氏 株式会社グリーンメディック 多田耕三氏 ファシリテーター:株式会社カケハシ 鳥越大輔氏 パネルディスカッションでは川上氏、濱野氏に加え、大阪府豊中市を中心に開局する株式会社グリーンメディックの多田耕三代表が加わり、カケハシのエンジニアリング事業部でデータ&AI部門長を務める鳥越大輔氏がファシリテーターを務め、改めて今回の主題である「情報技術は薬局をどう変えるのか」についてそれぞれの意見を展開した。 多田氏は“ITオタク”を自称して薬局経営においても開局当時からシステム化に力を注いできた。在宅医療業務の社内情報共有の効率化を目的に、スケジューラーを基軸にMusubiと、画像でマニュアルをAI生成するアプリを組み合わせてスタッフとの分担を情報連携を確立し、採算性を高めている実績を紹介。AIについては「破壊的イノベーション」との認識を示し、業務効率化などに貢献することは認めつつも、しかしさらに地域医療において薬剤師として新しい市場の創造に繋げられなければ(将来性は)難しいことになる、と述べた。 AI時代の人間のやるべき仕事、専門家としての薬剤師の可能性については、三氏がそれぞれ意見を述べた。 ・AIの普及によって大学病院でなくても日常からデータを集めた研究ができるようになり、それを服薬指導などに活用できるようになる。(川上) ・これからはデータ活用が必要と言いながらも、長年調剤を主にやってきた薬剤師が変化することが障壁となる。またデータ活用がマネタイズできるのかも課題が残る。(多田) ・ビッグデータ活用が出そろい活用できる時代になり、一部の人間がつかうのでは無く、薬剤師がみな考えて活用することに期待を寄せ、セルフメディケーション分野に可能性がある。(濱野) KEYNOTE 株式会社カケハシ 代表取締役CEO 中川貴史氏 締めくくりにカケハシの中川貴史CEOがプレゼンテーションを行い、DXの進展で環境変化の著しいなか、医療業界で今起こっていること、これからのカケハシが開発するプロダクトの方向性が示された。 MusubiにもすでにAIエージェントを搭載することで薬剤師の業務支援に貢献している。 この先、クラウドやセンターで事務も効率化でき、ロボットが調剤を行うことも現実化しているが、オンライン化が進む中では患者の傾向も変化していき、自分に合った薬剤や専門性の高い薬剤師への相談を希望する患者も増えるかもしれない。薬剤師の働き方も、薬局の中に閉じない世界観になることを示した。そして、治療薬を扱うのみならず患者の生活を支えることが薬局の価値となり、テクノロジーの力を借りながら薬局がそれをどう実現していくかが重要なテーマになってくると締めくくった。
- 9月6日「妊活」テーマにセミナー開催 薬膳茶とスイーツ付き
大阪府吹田市で3店舗の薬局(千里プラス薬局・虹薬局南千里店・津雲台薬局)を展開しているネオプラスファーマ株式会社が主催する「ネオプラス健康セミナー」。今年は女性の健康をテーマにシリーズで実施しています。 9月6日は「妊活」をテーマに開催します。 妊活にやさしい薬膳茶とスイーツを試食しながらお話ししませんか? 薬学生の方も是非ご参加ください。 第2回ネオプラスセミナー 主催:ネオプラスファーマ株式会社 日時:2025年9月6日(土)15:00~16:00(14:30受付開始) 会場:南千里クリスタルホテル3階 ピア+プラス (大阪府吹田市津雲台1-2-D9 3階) 参加費:無料 お土産付き 先着10名(要申込み) 演題①プレコンセプションケアって知っていますか? 講師:柴田綾子(淀川キリスト教病院 産婦人科医) ・プレコンセプションケアって? ・妊活しやすい体づくりとは? ・妊活のウソ、ホント ・男性にも知っておいてほしいこと! 演題②“授かるチカラ”を高める食事術~薬膳から学ぶ妊活のからだの整え方~ 講師:加藤由季(管理栄養士・国際薬膳講師・国際薬膳調理師) ◆参加申込み neoplus_soumu@yahoo.co.jp こちらのメールアドレスに、 ・氏名 ・所属(大学名・学年) ・連絡先(携帯電話番号) を明記のうえ、「9月6日セミナー参加希望」とお書きください。
- 産学連携で理想の学生空間を創造! 城西国際大学の「協働リニューアルプロジェクト」が結実
学内の共同プロジェクトにより、城西国際大学千葉東金キャンパスのA棟1階「学生ホール」が全面リニューアルされ、新たな学生の交流拠点として生まれ変わった。2025年7月15日には新学生ホールの完成を祝うオープニングセレモニーが盛大に開催され、翌16日には同ホール内にコンビニエンスストア「ローソン」もオープンした。 「JIU文化の発祥の地」をコンセプトに協働リニューアル IKEA Tokyo-Bayにてプレゼンをする学生 今回のリニューアルは、学生と教職員に加え、IKEA Tokyo-Bay、株式会社ローソンが参画する「協働リニューアルプロジェクト」として推進された。2024年11月に始動した同プロジェクトは、従来の学生ホールが抱えていた課題を解決し、学生と施設主管部署の若手職員が協働することで、実践的な学びへと繋げることを目的としていた。 経営情報学部・松田世治准教授のゼミ生と総務部総務課の若手職員が中心となり、計10回に及ぶ会議を経てデザイン案を決定。IKEA Tokyo-Bayと株式会社ローソンからは、マーケティング視点からの専門的な意見が寄せられた。 旧学生ホールの課題と改善点 広さ約300平方メートル、座席数140席を有していた旧学生ホールは、統一感のない雰囲気や設備の老朽化、椅子や机の陳腐化が目立っていた。また、学生による独自調査の結果、以前のコンビニ店舗では昼食時に15分間で平均110人が利用し、深刻な混雑が発生していることも判明していた。 これらの課題を受け、リニューアルでは次の点が重視された。 学生ホール:「やる気がみなぎる空間」を創出 「やる気がみなぎる空間」をテーマに、学生の学習意欲向上と集中力向上を目指した空間づくりが行われた。全体の色調はダークカラーを基調とし、色数を抑えることで落ち着いた印象に統一。テーブル席とカウンター席を組み合わせることで、最大77人が着席可能となった。 さらに、リラックス効果や集中力・生産性・創造性の向上を促す観葉植物を配置。外部からの視線を和らげつつも、草木の配置で外部空間との連続性も確保した。イケアの家具が配された内装は、カフェのようなスタイリッシュな雰囲気を醸し出している。 コンビニエリア:「未来を創る学生のQOL革命」を実現 コンビニエリアのリニューアルテーマは「未来を創る学生のQOL革命」だ。レジの混雑緩和、商品を選びやすい陳列棚の配置、セルフレジの増設など、学生の利便性を高めるための改善策が検討され、最適なレイアウト案が提案された。これにより、7月16日に新たな「ローソン」が学生ホール内にオープンした。 オープニングセレモニー 江口さん 7月15日(火)に開催されたオープニングセレモニーでは、倉林眞砂斗学長をはじめ、プロジェクトに参加した松田世治准教授やゼミ生、株式会社ローソン、髙松テクノサービス株式会社、イケア・ジャパン、株式会社三燿の関係者が出席した。 倉林学長は「学生がお互いに刺激を与え合うような場所として、これからも永く意味を持ち続けることを願っています。学生ホールの価値が高まるように、ご支援いただいた皆様に恩返しをしてきたい」と感謝の意を述べた。 プロジェクト代表学生である経営情報学部総合経営学科の江口蒼央さんは「最初にこのプロジェクトに参加したときは、完成までたどり着けるのか非常に不安でした。しかし、企業の皆さまが温かく迎えてくださり、プロジェクトに対してアドバイスやご意見を頂きました。その結果、このような素敵な場所へと生まれ変わりました。この場所を中心として、大学の良さが広がっていくと嬉しいです」と喜びを語った。 同プロジェクトを通じて、学生は実践的な学びを体験し、職員は学生のニーズを深く理解し大学運営に反映させる貴重な経験を得た。同 大学は、今回のプロジェクトを契機に、学生と職員が協働して新たな価値を生み出すサイクルを大学の強み・特色として未来に繋げていく考えだ。
- 医療・薬に興味のある高校生集まれ!サノフィが夏休み特別授業を開催、多様なキャリアを考える機会に
サノフィ株式会社は、医療や薬に関心を持つ高校生向けの夏休み特別授業を2025年8月1日(金)に開催する。現在、参加する高校生20名を募集している。 文系・理系の枠を超え、知られざる医療の世界を体験 特別授業は、サノフィのサステナビリティ活動(CSR)の一環として実施される。当日は、普段なかなか聞くことのできない、医療現場を支える多様なプロフェッショナルたちが集結する。 例えば、企業で活躍する女性医師、男性看護師の認知向上に努めるNurse-Menグループ代表の秋吉崇博氏、そして、医療をITで支えるコンサルタントや、製薬会社の社員など、多岐にわたるバックグラウンドを持つ専門家が登壇する。 彼らがどのような仕事に従事し、どのような経験をしてきたのか、そのリアルな話を聞くことで、医療に関わる仕事の選択肢の豊富さにきっと驚くことであろう。自身の将来を考える上で、大きなヒントが得られるはずだ。 プログラムの主な特長 「医療=理系」の固定観念を打破 : 医師や看護師だけでなく、ITや文系の知識も生かせる、多様な医療の仕事を知る機会となる。 製薬企業の内部に迫る : 普段知ることのできない製薬会社の仕事内容を、現役社員が文系・理系の枠を超えて紹介する。 キャリアのリアルな声 : 女性医師や男性看護師といった、世の中で「少数派」とされる立場で活躍してきた方々の、ここでしか聞けない率直なキャリアストーリーが披露される。 社会課題への理解 : 現代医療が抱えるジェンダーの偏りや、多様性に関する社会課題についても、データを用いて分かりやすく解説する。 「医療は理系の仕事」「看護師は女性が多い」「医師は男性が多い」といった、無意識のうちに抱いているかもしれない固定観念。サノフィは、そのような固定観念を打ち破り、より自由に自身の進路を考えるきっかけを提供したいとの思いで、本プログラムを企画した。 サノフィは、日本のヘルスケア業界におけるジェンダーの偏りを解消するため、2023年から女子大学生・大学院生向けの奨学金制度「A Million Conversations」を実施している。今回の高校生向けプログラムは、さらに若い世代に向けた取り組みとして、固定観念にとらわれずに自身の進路を自由に考える機会を提供することを目指している。 開催概要および応募方法 医療の未来をつくる高校生プログラム~製薬からITまで、誰もがかかわれる医療業界の多様な選択肢~ 日時: 2025年8月1日(金) 13:00~15:00ごろ 場所: サノフィ株式会社 東京オペラシティタワー 募集人数: 20名(参加無料) 応募資格: 高校生に準ずる年齢の者(15歳~18歳) 応募方法: 以下の応募フォームより入力する。 http://surl.sanofi.com/n4t 応募期間: 2025年6月26日(木)10:00 ~ 7月21日(月)23:59まで 当選連絡: 7月23日(水)ごろまでに、当選者のみにメールで連絡する(応募多数の場合は抽選となる)。 問い合わせ先: サノフィ株式会社 サマースクール事務局 WeVolunteerJapan@sanofi.com
- 激動の時代を生き抜く未来の薬剤師像とは? BRPhCが語る「未来の薬剤師を語る会」開催
厚生労働省の2021年薬剤師需給推計によると、日本の高齢者人口がピークを迎える2040年には、最大で約10万人強の薬剤師が供給過剰となると予測されている。この年は、薬剤師業界にとって大きな転換点となるであろう。 このような激動の時代において、薬剤師が生き残り、社会に貢献するために何を考え、どう行動すべきか。現場の課題解決と、薬剤師が社会で役立つ新たな職域開拓を目指す有志の集まりである「Be Reborn Pharmacist Council(BRPhC)」が、未来の薬剤師を議論するイベント「未来の薬剤師を語る会」をオンラインで開催する。 このイベントでは、BRPhCメンバーと薬学生が、薬剤師の未来について「ぶっちゃけトーク」で本音を語り合う。 未来の薬剤師を語る会:開催内容 第1回「薬学生と語ろう1」(2025年7月15日) 登壇者: 学生:荻原玲氏(明治薬科大学6年)、寺田恒一氏(明治薬科大学6年) その道のプロ:大道一馬氏(株式会社バシラックス) テーマ: 荻原氏は「生き残れる薬剤師はどんな薬剤師か」、寺田氏は「起業するにはどうすればよいのか」という疑問を提示し、大道氏が専門的な視点から回答する。 第2回「薬学生と語ろう2」(2025年8月15日) 登壇者: 学生:林南々子氏(金城学院大学6年) その道のプロ:前田幹広氏(聖マリマンナ医科大学病院) テーマ: 林氏の「DMATの一員になって災害医療に携わりたい」という目標に対し、病院薬剤師のプロが具体的なキャリア形成について語る。 第3回「薬学生と語ろう3」(2025年9月15日) 登壇者: 学生:柴田稜氏(東京薬科大学6年) その道のプロ:飯島伴典氏(上田市議会議員、イイジマ薬局) テーマ: 柴田氏の「秋田から日本へ―未来の薬剤師の発信」という目標を基に、地域活動や政治といった多様な視点から薬剤師の可能性が議論される。 ・BRPhC チャンネル https://www.youtube.com/watch?v=-s_qq3QExdA BRPhCチャンネルと薬学生の参加募集について BRPhCは、これらの活動内容を「BRPhCチャンネル」で随時発信していく。薬学生が抱く素朴な疑問にも、率直な意見で答えていく。 またBRPhCでは、未来の薬剤師像を描き、共に活動する薬学生を募集している。日頃感じている不満や、薬剤師になるために何をすべきかといった疑問など、どのようなことでも構わない。興味のある薬学生は、 BRPhCのウェブサイト の お問い合わせフォーム から連絡が可能である。激動の時代を共に乗り越える仲間を求めている。
- 【イベント告知】第2回薬局で働いてみてどうですか?~『薬剤師免許を取った!』の先を考える
株式会社カケハシは薬学生対象のイベント「第2回 薬局で働いてみてどうですか?~『薬剤師免許を取った!』の先を考える」を8月7日に東京都内で開催する。 昨年も開催され好評だったイベントで、薬局企業で勤務する現役の薬剤師がそれぞれのキャリアと仕事内容の説明を行い、学生は直接交流することができる。 在宅や認定・専門などの強みを持つ薬剤師の話が聞けること、これからの時代に必須な薬局のデジタル活用についての情報が得られること、ランチやデザートを楽しみながら交流できることが特徴で、昨年開催された第1回も好評だった。 主催:株式会社カケハシ 日時:2025年8月7日(木) 10:30~14:00(ランチ付き) or 15:00~17:30(デザート付き) ※開催時間は前後する可能性あり 会場:新宿国際ビルディング地下1階 グレイドパーク新宿(東京都新宿区西新宿6丁目6−2) 参加無料、事前申し込み制 申込みはイベントの特設サイトから URL https://musubi.kakehashi.life/special/event-20250807
- 第18回日本在宅薬学会学術大会が開催―薬局3.0への転換と薬剤師の新たな役割―
医療DXの加速と地域包括ケアシステムの進展に伴い、薬局の役割は大きく変化している。日本在宅薬学会は、「極めろ!薬局3.0~エビデンスの共有と発信~」をテーマに第18回学術大会を2025年7月20日・21日に開催し、薬局の新たな役割、課題、そして未来像について活発な議論が交わされた。 薬局2.0から3.0へ:転換期の課題と展望 大会冒頭、大会長の鈴木勝宏氏(日本薬科大学教授)は、薬局の現状を1.0(OTC販売中心)、2.0(調剤業務中心)、3.0(地域包括ケアシステムの一翼を担う薬局)とし、現在は薬局2.0が衰退期を迎え、薬局3.0が成長期に入っているとの認識を示した。 特に2025年問題は、薬局の役割を大きく変革させると指摘された。団塊の世代が後期高齢者となり、国民の4人に1人が後期高齢者となるこの年は、社会保障費の増大、労働力不足、経済停滞、医療・介護の逼迫といった喫緊の課題を突きつける。これに対応するため、地域包括ケアシステムや地域医療構想が推進され、すべての薬局が「かかりつけ薬局」へと移行することが求められている。 鈴木氏 近年、薬機法改正や調剤報酬改定により、薬局の機能は大きく変化している。健康サポート薬局の届出開始、対人業務への業務割合再編成、オンライン服薬指導の法制化、認定薬局制度の導入などが進められてきた。さらに2025年5月には、調剤業務の一部外部委託や、薬剤師管理下での遠隔一般用医薬品販売などが認められるなど、対物業務から対人業務への構造転換が加速していると強調した。鈴木氏は、サブタイトルを「エビデンスの共有と発信」とした理由について、薬局からのエビデンス発信がまだ少ない現状を鑑み、学術大会を通して全ての薬剤師がエビデンスを共有し、今後発信していけるような場を目指したと説明した。 薬局3.0を「極める」 続いて、大会理事長の狭間研至氏(ファルメディコ株式会社代表取締役社長)が、「極めるべき薬局3.0とは何か」をテーマに講演した。狭間氏は、自身の薬局運営経験から、従来の調剤薬局モデル(薬局2.0)が経済的に依存しやすく、将来的な成長に限界があると感じていたことを明かした。 狭間氏は、薬局が「来てもらう」受動的な姿勢から、「こちらから行く」能動的な姿勢への転換が必要だと強調。単なる医薬品のデリバリーサービスではなく、訪問服薬指導やバイタルサインチェック、さらには医師との連携を通じて、患者のアウトカムに貢献することの重要性を訴えた。 狭間氏は、「極めるべき薬局3.0」とは、単に薬を届けたり、在宅訪問でバイタルサインを測定したりするだけでは不十分であると指摘した。それらは自己満足に陥る可能性があり、医師への報告だけで終わるものではないと述べた。重要なのは、薬剤師の存在によって患者の結果や経過がどう変わったのかを示すエビデンスを出すことであるとし、これまで「薬剤師が存在しなければあり得なかった結果」を重視してきたと話した。 また、在宅だけでなく、外来やセルフメディケーションの分野においても、対物から対人への転換が不可欠であるとした。単に薬を渡すだけでなく、患者の症状の変化や薬の効果を積極的に確認し、必要に応じて適切な助言を行うことが求められると強調した。そして、これらの実務において薬剤師以外の職種との協働が極めて重要であると述べた。 狭間氏は、薬剤師の専門性の基盤である薬物動態や製剤の知識を最大限に活用することの重要性を改めて指摘した。外来診療における薬剤師のフォロー、アセスメント、フィードバックが医師の新しい治療戦略となり、タスクシェアリングを促進するとした。現状では薬剤師がそこまでを自身の業務と考えていない割合が一定数存在するため、医師は薬剤師に任せきれない状況にあると指摘。薬剤師が継続的にコミットし、患者の状態変化を的確に把握することが不可欠であると強調した。 狭間氏 さらに、高齢化の進展と要介護認定率の増加を挙げ、85歳以上の人口の57%以上が要介護認定を受けている現状において、患者は一人で病院に通うことが困難であるため、薬局側からの訪問が不可欠となると述べた。これに伴い、オンライン服薬指導の重要性も増しており、海外では医師と看護師によるオンライン診療が進む一方、日本では医師と薬剤師という形も十分にあり得るとの見方を示した。薬剤師が患者の状態を理解し、処方内容と関連付けて医師に情報提供できる役割は、生産年齢人口が減少する中で、薬物治療をメインとする医療においてますます重要になると強調した。 家庭薬(OTC医薬品)を通じた地域貢献と薬剤師の役割 今回の大会では、家庭薬(OTC医薬品)の重要性についても議論が深まった。薬剤師が健康サポート薬局として、患者のセルフメディケーションを支援するうえで、OTC医薬品の知識と適切な情報提供が不可欠であると強調された。 会場内には日本家庭薬協会が主催する「模擬薬局」が設置され、製薬企業各社が家庭薬のサンプル提供や紹介を行った。参加した薬剤師たちは、OTC医薬品に関する活発な質疑応答を交わし、知識を深める機会となった。また、一般市民向けの公開講座も開催され、セルフメディケーションの啓発活動にも力が入れられた。 特に、在宅医療において、高齢患者のポリファーマシー問題や便秘などの症状に対し、マイルドな作用の家庭薬が有効な選択肢となり得ることも提案した。薬剤師が患者の状態に合わせて、医療用医薬品だけでなく、家庭薬も含めた多様な選択肢を提案できる能力は、今後ますます重要となるだろう。 模擬薬局の様子 商品の特徴を参加者に説明 入り口に掲げられたのぼり シンポジウムでは薬学生が登壇(左3人が薬学生、右2人が薬剤師)
- 薬学の学びを社会へ還元する「おくすり教室」
おくすり教室 代表 大神徳己 薬学の魅力を社会に広く伝える学生団体「おくすり教室」を立ち上げた大神徳己さん。児童館や地域のお祭りなどでの軟膏調剤体験や薬のメカニズム解説を通じて、薬剤師の役割や社会的な意義を分かりやすく伝えている。活動の経緯や今後の展望などを聞いた。 ―― 「おくすり教室」設立の経緯と、活動に至った背景をお聞かせください。 「おくすり教室」の原点は、幼少期に「学ぶ楽しさ」や「科学のワクワク感」に触れた体験にあります。この感動を自身の専門分野である薬学で届けたいという思いから、東京薬科大学の学生団体「キッズ・ラボ」で活動を始めました。しかし、新型コロナウイルスの影響で対面イベントが制限され、活動は応募者限定配信の動画制作が中心となっていました。参加者の反応を直接得られないことに強いもどかしさを感じ、「もっと多くの子どもたちに直接楽しい体験を届けたい」という思いから、2022年4月に独立団体「Light Bulb」を立ち上げたのです。 当初はSNSを通じての実験動画の公開が中心でしたが、大学の後輩からの誘いを受け、児童館での対面イベント開催に初めて踏み出しました。この経験を通して、直接子どもたちと触れ合う喜びと感動を強く実感しました。そして、「科学の楽しさを届ける」だけでなく、「自分たちの専門性である薬学を生かして、もっとユニークで深みのある体験を提供できないか」と考えるようになり、活動の軸を「科学」から「薬学」へと移しました。こうした経緯を経て、団体名も「Light Bulb」から「おくすり教室」へと改め、薬学に特化した活動であることを明確にしたのです。 ―― 現在の活動内容と、特に力を入れているプログラムについて教えてください。 子どもから高齢者まで幅広い世代を対象とした薬学体験イベントを実施しています。主なプログラムは、白色ワセリンなどを用いてクリームを作成し、薬剤師の業務を体験できる「軟膏調剤体験(ハンドクリームづくり)」です。もう一つは、薬の作用メカニズム解説や残薬・ジェネリック医薬品について、日常生活に役立つ情報を提供する「お薬講座」です。特に高齢者向けには、かかりつけ薬局の重要性やOTC医薬品との飲み合わせといった実生活に直結するテーマが好評を得ています。 現在は児童館からの依頼による出張イベントが多く、地域に根差した活動に広がっており、今後は学校や薬局などでの開催も目指しています。 薬剤師の業務を体験できる「軟膏調剤体験」 高齢者向けの「お薬講座」 ―― 薬学生が薬剤師の役割を社会に広める意義について、どのようなお考えですか? 薬学生が自ら伝え手となることで、「薬剤師=調剤する人」という一般的なイメージを超えた、より本質的な役割を社会に届けることができると考えています。薬の仕組みや副作用、飲み合わせといった生活に直結する知識は、本来薬剤師が積極的に伝えるべきものです。 イベントを通じて、特に印象的だったのが、埼玉県所沢市で開催されている「ところティーンズフェスティバル」での体験です。子どもから保護者、地域の方々まで100人以上が来場し、調剤体験や薬剤師の仕事を身近に感じていただける機会となりました。参加者からは「薬を混ぜるのが楽しかった!」「薬剤師ってこんなことをするんだ!」といった声のほか、社会人の方から「薬局で待ち時間が長い理由が分かった」との感想も寄せられました。 また、児童館での出張イベントでは、薬袋作成や調剤体験などを通して本物に近い形で薬局の仕事を体験できる内容が高く評価され、「子どもたちの体験不足が課題とされる昨今、非常に意義のある事業」とのお声をいただきました。 さらに、高齢者向けイベントでは、かかりつけ薬局の重要性やマイナンバーカードの活用、OTC医薬品・サプリメントとの飲み合わせなど、実生活に直結するテーマが関心を集め、「とても実践的でためになった」と好評をいただいています。私たち薬学生自身にとっても、こうした「伝える経験」は自身の学びを深め、臨床や地域連携への意識を高める貴重な機会となっています。 ―― 活動資金はどのように調達されていますか? 当初は自己資金で活動していましたが、2024年度に八王子市の学生事業補助金に採択されました。獲得した約10万円の補助金で、イベントを成功させることができました。 現在、法人化を目指してクラウドファンディングを実施しています(2025年8月末で終了。 https://camp-fire.jp/projects/848000/view )。また資金調達だけでなく、東京薬科大学の薬学部の研究室と連携したマグカップなどのコラボ商品を通して、薬学の魅力を広げることにも挑戦しています。 ―― 今後の展望と、薬学を通じて目指す未来について教えてください。 薬学の魅力をより深く伝えていくための展開を計画しています。主な取り組みとして、年齢やニーズに応じた教育プログラムの体系化を進め、持続可能な教育資源を構築していきます。また、現場の薬剤師と協力した地域薬学サロンを開催し、住民が気軽に薬の悩みを相談できる場を設けることで、「予防・服薬・生活支援」を含む幅広い薬学的支援を提供します。さらに、オンラインと対面のハイブリッドイベントを構築し、多様な層への情報発信と交流を目指します。 将来的には、軟膏調剤体験を応用したハンドクリームや化粧品づくりといった体験型プログラムを展開する予定です。「薬学=病気に関するもの」という従来のイメージを超え、「健康や美容を支える学問」としての薬学の側面も伝えていきたいと考えています。地域のサイエンスイベントは「楽しさ」に重点を置くことが多いですが、私たちは「人や社会を助ける」という点に焦点を当てたサイエンスを伝えたいと考えています。 おくすり教室のメンバーとの動画作成の様子 ―― 薬学生へのメッセージをお願いします。 地域の方々が関心を持つのは、薬学の専門知識そのものよりも、「薬学生として何を学んでいるのか」「どうして薬学を選んだのか」といった、私たちの日常的な思いや関心だったりします。 もし、将来薬剤師として自分らしいオリジナリティを持って働きたいと考えているなら、地域の方々と実際に触れ合い、社会が何を求めているのかを感じ取れる場所に身を置いてみてください。臨床だけでなく、大学で学ぶ薬学の知識が、実際の生活や社会の中でどう役立つのかを肌で知ることができ、そこから新しい気づきや行動のきっかけが生まれるはずです。 私自身、決して自信のあるタイプではなく、たくさんの失敗を経験してきました。時には自分の至らなさから大切な仲間を失ってしまったこともあります。しかし、どれだけ人の話を聞いたり本を読んだりしても、結局は「自分が経験してみないと分からないこと」の方がずっと多いと今になって思います。 薬学生という時間は、「試して、学んで、間違えて、また立ち上がる」ことが許される貴重な時期です。だからこそ、自分の中にある「これ、やってみたいな」と思った気持ちを大切にして、ぜひ一歩踏み出してみてください。 大神徳己(おおがみ・あつき) 2002年生まれ、北海道札幌市出身。東京薬科大学薬学部医療衛生薬学科6年。高校時代は科学部の部長として活動し、日鉄エンジニアリング社とリバネス社が共同開催したエコロジープラントプロジェクト「Mission-E」にて総合優勝と技術賞を受賞。大学進学後、薬学の面白さを伝える学生団体「おくすり教室」を設立し、代表を務めている。「薬学って面白い!」「サイエンスって人の役に立つんだ」という気づきを届けることをスローガンに掲げ、全国でイベントを開催中。趣味は天体観測と動画編集。モットーは「やれるだけのことはやってみよう。止まらなければ、結構進む。」 おくすり教室X: https://x.com/lightbulbmirai おくすり教室Instagram: https://www.instagram.com/lightbulbmirai/














