第18回日本在宅薬学会学術大会が開催―薬局3.0への転換と薬剤師の新たな役割―
- toso132
- 7月22日
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医療DXの加速と地域包括ケアシステムの進展に伴い、薬局の役割は大きく変化している。日本在宅薬学会は、「極めろ!薬局3.0~エビデンスの共有と発信~」をテーマに第18回学術大会を2025年7月20日・21日に開催し、薬局の新たな役割、課題、そして未来像について活発な議論が交わされた。

薬局2.0から3.0へ:転換期の課題と展望
大会冒頭、大会長の鈴木勝宏氏(日本薬科大学教授)は、薬局の現状を1.0(OTC販売中心)、2.0(調剤業務中心)、3.0(地域包括ケアシステムの一翼を担う薬局)とし、現在は薬局2.0が衰退期を迎え、薬局3.0が成長期に入っているとの認識を示した。
特に2025年問題は、薬局の役割を大きく変革させると指摘された。団塊の世代が後期高齢者となり、国民の4人に1人が後期高齢者となるこの年は、社会保障費の増大、労働力不足、経済停滞、医療・介護の逼迫といった喫緊の課題を突きつける。これに対応するため、地域包括ケアシステムや地域医療構想が推進され、すべての薬局が「かかりつけ薬局」へと移行することが求められている。

近年、薬機法改正や調剤報酬改定により、薬局の機能は大きく変化している。健康サポート薬局の届出開始、対人業務への業務割合再編成、オンライン服薬指導の法制化、認定薬局制度の導入などが進められてきた。さらに2025年5月には、調剤業務の一部外部委託や、薬剤師管理下での遠隔一般用医薬品販売などが認められるなど、対物業務から対人業務への構造転換が加速していると強調した。鈴木氏は、サブタイトルを「エビデンスの共有と発信」とした理由について、薬局からのエビデンス発信がまだ少ない現状を鑑み、学術大会を通して全ての薬剤師がエビデンスを共有し、今後発信していけるような場を目指したと説明した。
薬局3.0を「極める」
続いて、大会理事長の狭間研至氏(ファルメディコ株式会社代表取締役社長)が、「極めるべき薬局3.0とは何か」をテーマに講演した。狭間氏は、自身の薬局運営経験から、従来の調剤薬局モデル(薬局2.0)が経済的に依存しやすく、将来的な成長に限界があると感じていたことを明かした。
狭間氏は、薬局が「来てもらう」受動的な姿勢から、「こちらから行く」能動的な姿勢への転換が必要だと強調。単なる医薬品のデリバリーサービスではなく、訪問服薬指導やバイタルサインチェック、さらには医師との連携を通じて、患者のアウトカムに貢献することの重要性を訴えた。
狭間氏は、「極めるべき薬局3.0」とは、単に薬を届けたり、在宅訪問でバイタルサインを測定したりするだけでは不十分であると指摘した。それらは自己満足に陥る可能性があり、医師への報告だけで終わるものではないと述べた。重要なのは、薬剤師の存在によって患者の結果や経過がどう変わったのかを示すエビデンスを出すことであるとし、これまで「薬剤師が存在しなければあり得なかった結果」を重視してきたと話した。
また、在宅だけでなく、外来やセルフメディケーションの分野においても、対物から対人への転換が不可欠であるとした。単に薬を渡すだけでなく、患者の症状の変化や薬の効果を積極的に確認し、必要に応じて適切な助言を行うことが求められると強調した。そして、これらの実務において薬剤師以外の職種との協働が極めて重要であると述べた。
狭間氏は、薬剤師の専門性の基盤である薬物動態や製剤の知識を最大限に活用することの重要性を改めて指摘した。外来診療における薬剤師のフォロー、アセスメント、フィードバックが医師の新しい治療戦略となり、タスクシェアリングを促進するとした。現状では薬剤師がそこまでを自身の業務と考えていない割合が一定数存在するため、医師は薬剤師に任せきれない状況にあると指摘。薬剤師が継続的にコミットし、患者の状態変化を的確に把握することが不可欠であると強調した。

さらに、高齢化の進展と要介護認定率の増加を挙げ、85歳以上の人口の57%以上が要介護認定を受けている現状において、患者は一人で病院に通うことが困難であるため、薬局側からの訪問が不可欠となると述べた。これに伴い、オンライン服薬指導の重要性も増しており、海外では医師と看護師によるオンライン診療が進む一方、日本では医師と薬剤師という形も十分にあり得るとの見方を示した。薬剤師が患者の状態を理解し、処方内容と関連付けて医師に情報提供できる役割は、生産年齢人口が減少する中で、薬物治療をメインとする医療においてますます重要になると強調した。
家庭薬(OTC医薬品)を通じた地域貢献と薬剤師の役割
今回の大会では、家庭薬(OTC医薬品)の重要性についても議論が深まった。薬剤師が健康サポート薬局として、患者のセルフメディケーションを支援するうえで、OTC医薬品の知識と適切な情報提供が不可欠であると強調された。
会場内には日本家庭薬協会が主催する「模擬薬局」が設置され、製薬企業各社が家庭薬のサンプル提供や紹介を行った。参加した薬剤師たちは、OTC医薬品に関する活発な質疑応答を交わし、知識を深める機会となった。また、一般市民向けの公開講座も開催され、セルフメディケーションの啓発活動にも力が入れられた。
特に、在宅医療において、高齢患者のポリファーマシー問題や便秘などの症状に対し、マイルドな作用の家庭薬が有効な選択肢となり得ることも提案した。薬剤師が患者の状態に合わせて、医療用医薬品だけでなく、家庭薬も含めた多様な選択肢を提案できる能力は、今後ますます重要となるだろう。




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