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【薬局四方山話】調剤報酬改定にいつまで付き合うか

地球堂薬局 田代健



読者の皆さんは、調剤報酬が全体の額として増加し続けていることはよくご存じだと思う。しかし薬局薬剤師1人が1年間に受け取る技術料に着目すると、一貫した統計としてさかのぼれる上限の2010年以降、約1100万円でほとんど増減がない(図表)。その一方で「薬剤師が1100万円の技術料を得るために必要な労力」は増加し続けている(注1)。2026年の調剤報酬改定についても読者の皆さんのところにさまざまな情報が入ってくると思うが、筆者は2年ごとの改定に薬局が振り回される慣習はナンセンスだと考えており、議論に深入りしたいとも思わないので、少し違った視点から調剤報酬改定について考えてみたい。


図表

薬局薬剤師数(人)

調剤医療費(億円)

技術料(億円)

薬剤師1人当たり技術料(円)

2010

145,603

60,389

15,911

10,927,868

2012

153,012

65,902

17,020

11,123,172

2014

161,198

71,515

17,682

10,969,068

2016

172,142

74,395

18,490

10,741,093

2018

180,415

74,279

19,311

10,703,493

2020

188,982

74,987

18,779

9,936,950

2022

190,735

78,332

21,264

11,148,366

2024

197,437

84,008

23,251

11,776,518

薬剤師数は厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査)」による

調剤医療費と技術料は厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」による

 

日本では伝統的に「公-私」といった概念の根拠があいまいで、場合によっては「公」を「権威」と履き違えたりもして、「武士道(平たく言えば公務員の道徳)」を称揚する人も多い(注2)。この精神性は、薬剤師がOTCを軽視する一方で政府が定めた保険調剤にしがみつく傾向にも影響しているのかもしれない。しかし、筆者にとっては、日本人(私)と政府(公)との関係性は、例えば江戸時代の

・身分に関係なく、給料として支払われ(扶持米)、税金として納められもした(年貢米)米を日本酒にして飲んでしまっていた人たち

・酒の規制に何度も失敗しながら最後まで貨幣経済に移行できなかった幕府

というしたたかな緊張関係が象徴的であるように見える(注3)(法律に違反しろとか規制の隙間をかい潜れというわけではない)。公務員精神を発揮して制度を追いかけることに夢中になる薬剤師がいてもよいが、もっと自由に、ファンキーな道を患者とともに歩む薬局薬剤師のための居場所があってもよいはずだと思う。

 

頭打ちの保険調剤とは対照的に、セルフメディケーション分野は努力と工夫次第で伸び代がまだ残っている。筆者の薬局でも力を入れて販売しているサプリメントがいくつかあるが、ざっくりとした相場では1カ月分で2万円弱程度の価格(1日当り600円前後)で、粗利益はその4割から5割で6000円〜9000円となる。これは処方箋1枚分の技術料をだいぶ上回る。そして、アウトカムはユーザー(何らかの病気を患った「患者」とは限らない)からの声で確認できる。

問題は、

・そのような商品を販売するスキルがあるか?

・失敗した場合のフィードバックをどう得るか?

の2点で、勉強会やメーカーの話を聞いても「うまくいったケース」についての情報は豊富だが、その背景に「うまくいかなかったケース」がどの程度存在するのかを知ることはまずできない。そしてこの問題は保険調剤についても同様で、「治療薬についてのアウトカム」ではなく「薬剤師の介入についての患者のアウトカム」の検証が弱く、「薬剤師による吸入指導」のようなエビデンスを今後広範囲に蓄積していくシステムを構築することが、保険調剤とOTCに共通した課題になると思う。現状では「どのような記録を残したか?」が薬剤師のアウトプットになっている。なぜ記録を残さなければならないかというと、「そうしなければ薬剤師はサボる」と考えられているからだ。薬剤師は、仕事をきちんとしたかどうかを「提出した記録」に基づいてでなければ評価できない、という認識は、果たして健全といえるのだろうか?「薬剤師が薬学部で習得し、現場で患者のために駆使する技術」を「調剤」であると仮に定義すると、調剤の結果として得られた患者のメリットではなく手続を確認することばかりが重んじられ、それが調剤報酬として評価されることに、薬剤師はあまりにも慣れすぎてしまっている。これから薬剤師になって社会に出るという薬剤師の皆さんには、「自分たちが身につけた技術」をキャリアを通じて磨き上げていくのだ、ということを強く意識してもらいたい。端末にデータを入力して給料をもらうために6年間も勉強してきたわけではないと思うのだ。

 

注1 円の価値が下落していることを考えれば、大幅な減収ともいえる。単位をどのように設定して時系

  列で比較するか?という点については、皆さん自身で検討してみてもらいたい。

注2 武士と公務員の道徳については、畑中章宏 (著)、若林 恵 (著)、 山下正太郎 (著)、 工藤希 (著)、

  コクヨ野外学習センター (編集)、 WORKSIGHT[ワークサイト] (編集)『会社と社会の読書会』

  (黒鳥社、2025)のp.54前後を参照してもらいたい。

注3 江戸時代の人々と幕府との間の酒を巡るバトルについては、飯野亮一 (著)『居酒屋の誕生: 江戸の

  呑みだおれ文化』(ちくま学芸文庫、2014)が面白い。



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