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  • VRで切り開く薬学教育の新境地 —薬剤師と歯科医師の連携を深める臨床疑似体験

    東京薬科大学薬学部医薬品安全管理学教室講師の吉田謙介氏、同教室講師の清海杏奈氏、同教室教授の杉浦宗敏氏らの研究グループは、新潟大学医歯学総合病院医療連携口腔管理治療部特任助教の黒川亮氏との共同研究により、Virtual Reality(VR)を活用した薬学生向けの口腔アセスメント教育プログラムを開発した。同プログラムの教育的有用性を評価した研究成果は、2026年7月17日付で国際学術誌『Frontiers in Virtual Reality』に掲載されている。 なぜ薬学生に口腔ケアの視点が必要なのか がん薬物療法などの高度化に伴い、現代の薬剤師には単なる薬の適正使用支援にとどまらず、治療に伴う有害事象を早期に発見し、歯科医師をはじめとする医療専門職へ適切につなぐ役割が期待されている。特に抗がん剤治療に伴う口腔粘膜炎や薬剤関連顎骨壊死といった口腔有害事象は、患者の食事や会話、服薬、治療継続に重大な影響を及ぼすためである。 しかし、従来の薬学教育において口腔アセスメントを学ぶ機会は講義や静止画像が中心であり、患者への適切な声掛け、観察時の姿勢、照明の当て方や観察手順など、視覚的・空間的なアプローチを実践的に習得する場が不足している点が課題となっていた。 360度映像体験がもたらした学習成果と課題 研究グループは、日本有病者歯科医療学会指導医と日本医療薬学会指導薬剤師の共同監修のもと、360度映像を用いた実践型VR教材を構築した。受講者はヘッドマウントディスプレーを着用し、患者が座った状態や横になった状態での観察方法、適切な手法と不適切な手法の違いなどを臨場感ある映像で確認することができる。 同大学の薬学部2年生13人を対象に、歯科医師による導入講義、VR体験、薬剤師による振り返りを組み合わせたプログラムを実施したところ、目覚ましい教育効果が確認された。患者の口腔内を観察する際の適切な対応に関する知識試験の正答率は、受講前の15.4%から受講後には84.6%へと大幅に上昇した。さらに、薬剤師と歯科医師の連携に関する理解や、実際の口腔アセスメントに対する自己評価・自信も有意に向上している。受講者全員がVRを用いた学習に対して肯定的であり、没入感や手順の理解しやすさ、映像の明瞭さが高く評価された一方で、機器の重量軽減や観察部位の拡大機能、機材台数の確保といった点において今後の改善課題も明らかになった。 次世代医療人材の育成と今後の国際展開 今回の取り組みは少人数を対象としたパイロット研究であるため、今後は対象者を拡大し、従来教育との比較や学習効果の長期定着度を検証していく方針である。 将来的には、口腔粘膜炎の重症度評価や病棟での多職種連携を取り入れた双方向型VR教材の開発を進めるほか、フランスの医療従事者と進行中の国際共同研究とも連携し、本教育モデルの海外展開も検討している。薬学教育と歯学教育を横断する「ヘルスアクションプログラム(HAP)※」の理念に基づき、医療DXを活用した新たな人材育成モデルの社会実装を目指していく。 ※「ヘルスアクションプログラム」:薬学教育・歯学教育の連携によって、科学的根拠に基づく健康教育を社会に実装することを目的とした取り組み

  • 熊本地震の被災地に貢献―福岡大学薬学部の江川教授と学生が薬事・情報支援を展開

    福岡大学薬学部教授の江川孝氏および同学部4年生の中邑風貴さん、山内珠愛さんが、2026年7月28日に発生した熊本地震の被災地支援活動に参加した。 薬剤師としての最前線支援 江川氏は福岡県薬剤師会モバイルファーマシー第2班のリーダーとして、8月4日から7日にかけて熊本県八代地域で活動を展開した。 現地では、災害処方箋や被災者からの調剤・服薬相談に対応したほか、医薬品在庫管理体制の整備や避難所における一般用医薬品・環境衛生の状況把握にあたった。さらに、地域の薬局や診療所の再開状況を把握して情報を整理するなど、多角的な薬事支援を実施した。 特に今回の活動では、単なる救護にとどまらず「災害医療から通常の地域医療への円滑な移行」に重点が置かれた。薬局の開局情報をまとめたGoogleマップや被災者向けリーフレットを作成し、地域の医療資源を活用できる体制を構築した。また、現地保健医療福祉調整本部の会議にも出席し、行政や各支援チームと連携して課題解決にあたった。 調整本部での情報・物資支援 DMAS(日本災害医学会学生部会)の一員として参加した中邑さんと山内さんは、熊本県庁の保健医療福祉調整本部において情報整理や調整業務を担った。 福祉施設調整班では、被災した福祉施設の状況を把握し、水不足が確認された施設について物資支援班へ情報をつなぐほか、トイレが不足している施設に対して簡易トイレ(ラップポン)の手配へつなげるなど、支援ニーズの整理と調整を行った。 物資支援班では、水循環システム「WOTA」を必要とする医療機関のリスト作成に従事した。 病院支援班では、広域災害救急医療情報システム(EMIS)をモニタリングし、断水などにより水を必要としている医療機関を抽出してリストを作成するなど、被災地へ支援物資を適切に届けるための情報整理を行った。 教員は現場の最前線で薬事支援を指揮し、学生は司令塔となる調整本部で支援ロジスティクスを支えるなど、それぞれ専門性と立場に応じた貢献を果たした。 福岡大学薬学部は、今回の経験や知見を今後の災害医療・災害薬事に関する教育・研究へ還元し、災害時に寄与できる医療人の育成を推し進めていく方針である。

  • 【一日一笑】OTC医薬品の適正使用と薬剤師に求められる役割

    医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 セルフメディケーションの推進とOTC医薬品のリスク 現在、日本では高齢化が急速に進んでいる。全人口に占める65歳以上の割合によって、「高齢化社会」は7%以上、「高齢社会」は14%以上、「超高齢社会」は21%以上と区分される。日本では65歳以上の割合が29%を超えており、世界的に見ても非常に高い水準にある。 高齢化が進むにつれて、医療を必要とする人も増加する。そのため、今後も医療費の増加が予想され、必要以上の医療機関への受診を抑えながら、国民自身が健康管理を行うセルフメディケーションの推進が重要となる。 セルフメディケーションを実践するうえで重要となるのがOTC医薬品である。OTC医薬品には要指導医薬品と一般用医薬品があり、一般用医薬品はリスクに応じて第1類から第3類までに分類される。また、健康維持を目的としたサプリメントなどの活用もセルフメディケーションの一つといえる。 現在、OTC医薬品は薬局やドラッグストアだけでなく、さまざまな場所で購入できるようになっている。利用しやすくなる一方で、自己判断による誤用や過量使用には注意が必要である。インターネット上にも医薬品に関する情報があふれているが、すべてが正しいとは限らない。正しい医薬品の知識を伝え、適切な使用を支援することは薬剤師の重要な役割である。また、OTC医薬品で対応できない場合や重大な疾患が疑われる場合には、医療機関への受診を勧める必要がある。 ここからは、OTC医薬品の誤った使われ方について紹介する。 一つ目は、ナファゾリン、テトラヒドロゾリン、オキシメタゾリンなどの血管収縮薬を含有する点鼻薬である。これらは鼻粘膜の血管を収縮させることで、鼻づまりを速やかに改善する。即効性が高いため、効果が切れて鼻づまりを感じると、定められた使用回数を超えて繰り返し使用してしまうことがある。 血管収縮薬を過度に使用すると、鼻粘膜の血流が低下した状態が続き、薬の効果が切れた際に粘膜がかえって強く腫れるリバウンド現象が起こる。その結果、点鼻薬を使用するほど鼻づまりが悪化するという悪循環に陥り、薬剤性鼻炎につながる可能性がある。そのため、使用回数だけでなく、なぜ回数を守る必要があるのかまで伝えることが重要である。 二つ目はオーバードーズの問題である。現在、濫用のおそれがある医薬品として、エフェドリン、コデイン、ジヒドロコデイン、ジフェンヒドラミン、デキストロメトルファン、プソイドエフェドリン、ブロモバレリル尿素、メチルエフェドリンの8成分が指定濫用防止医薬品の対象となっている。これらを含む医薬品では、18歳未満の方に対して、適正使用数量が定められ、原則として一包装単位かつ5日分、「かぜ薬」「解熱鎮痛薬」「鼻炎用内服薬」は7日分とされている。 適正使用数量を超える購入を希望された場合、単に販売を断るだけではなく、その背景にも目を向ける必要がある。なぜ大量に必要なのか、何か困っていることがあるのか、過剰服用を目的としているのか。相手の状況を確認し、必要に応じて周囲の人や医療機関、相談窓口につなげることも重要である。 背景に寄り添い、人に手を差し伸べる言葉がけ 孤独を感じたり、何もかもうまくいかず苦しくなったりすることは誰にでも起こり得る。 そんなとき、誰かに話を聞いてもらうことで少し冷静になれたり、自分の気持ちを言葉にすることで気持ちが整理されたりすることがある。 あなたが苦しいとき、つらいとき。 家族?先生?先輩?友人?きっと、誰かがあなたに手を差し伸べてくれたはず。 今、手を差し伸べる事ができるのはあなた。 薬剤師の役割は、薬を適正に販売することだけではない。目の前にいる人の言葉や行動から、その背景にある困りごとに目を向けることも重要である。 目の前の人が本当に必要としているものは、薬だけとは限らない。もしかすると、必要なのは一つの薬ではなく、一つの言葉かもしれない。 「過剰に服用したかったのだろうか」 「何かつらいことを抱えているのだろうか」 「誰かに相談できず、一人で抱えているのではないだろうか」 もちろん、全てのケースに同じ対応が当てはまるわけではないから、こんな対応をしてほしいなんて正解はないけれど。 それでも、ほんの一言声をかけることで、その人の状況が少し変わる可能性がある。 その可能性を忘れず、一人ひとりに寄り添った対応をしていくことが、これからの薬剤師に求められる役割である。

  • 動物病院の「院内調剤」から「医薬分業」へ——12薬局(わんにゃん薬局)、導入400病院・累計処方11万件を突破

    動物病院専門の調剤薬局を運営する株式会社12薬局は、2026年7月31日時点で、導入動物病院数が400件、累計受注処方件数が11万件を突破したことを発表した。 2025年3月31日時点の導入病院数250件、累計処方5万件と比較すると、導入病院数は約1.6倍、累計受注処方件数は約2.2倍に増加している。 導入が拡大する背景 動物医療の現場では、調剤設備の導入や多種多様な医薬品の在庫管理に伴うコスト負担が大きな課題となっている。また、獣医師や動物看護師の不足によって調剤業務が診療時間を圧迫しているほか、院内調剤におけるミスのリスクや確認に必要な工数の増加も挙げられる。 こうした事情から、院内調剤から外部委託による「医薬分業」へ切り替える動物病院が増加傾向にある。 サービスの特徴と利用理由 同社薬局は、院内在庫を増やすことなく薬剤師品質の調剤と全国配送を一括して請け負うサービスを提供している。 医薬品は1錠単位から必要な分だけ依頼可能であり、高価格帯や使用頻度の低い薬剤を在庫として抱えるリスクを抑えられる。料金は1件25円〜の従量課金制となっている。また、自社開発のオンライン処方システムにより、過去の処方履歴を活用した調剤依頼は1分以内で完了する仕組みを整えている。さらに、20人体制の薬剤師が調剤および監査を行う体制を運用している。 これらの特徴が評価され、導入拡大につながっている。 今後の展望 同社は、処方オーダーから調剤・配送までを一気通貫で管理するオンライン処方システムの機能拡充を進める方針である。あわせて、調剤データの蓄積および分析を通じ、より安全で効率的な獣医療の提供体制づくりに取り組んでいくとしている。

  • 摂南大学の学生が薬用植物園の学習アプリを開発——8月22日の見学会で一般公開へ

    ㊧開発に携わった学生㊥見学会モード画面(スマホ)㊨勉強用モード画面(パソコン) 摂南大学理工学部電気電子情報工学科教授の西恵理氏の研究室に所属する谷水悠真さんと平井敦司さん(いずれも4年)が、同大学薬学部附属薬用植物園での主体的な学びを支援する学習用アプリを開発した。2026年8月22日に開催される一般向け見学会にて、初めて公開される予定だ。 開発の背景とアプリの特徴 同大学の附属薬用植物園は、教育や実習・研究を目的に設置されており、国内外の薬草・薬樹が約300種類植栽されている。同園では年に複数回、一般向けの見学会を実施しているが、運営に携わる薬学部准教授の伊藤優氏の「一方的に説明を聞くだけでなく、デバイス等を活用して主体的に学んでもらえる機会をつくりたい」という思いから、西氏の研究室との共同開発が2年前よりスタートした。 アプリには、一般対象の「見学会モード」と、薬学部生向けの「勉強用モード」の2種類が用意されている。スマートフォン等で利用する「見学会モード」では、マップ上に見学ルートやピンが表示され、位置情報を頼りに植物を探しながら観察できる。植物に関するクイズ機能に加え、科名・生薬名・薬用部位などを確認できる図鑑機能も備わっている。一方、PC等で利用する薬学部生向けの「勉強用モード」には自習用の練習問題ページが搭載されており、植物名や生薬名、ラテン語の学名などを4択形式で解答できる。正答率の表示機能や間違えた問題のみを解き直せる仕組みを取り入れており、反復学習を通じて薬学に必要な知識の定着を図る仕様となっている。 開発を担当した学生2人は「見やすく操作しやすい色遣いや文字の大きさ、デザインにこだわった。楽しみながら植物の知識を深めてほしい」と意気込みを語っている。 2026年度 夏の薬草見学会でアプリを公開 今回の開発アプリが初公開される見学会は、2026年8月22日の8時30分から10時まで(受付は8時から)、大阪府枚方市長尾峠町に位置する摂南大学薬学部附属薬用植物園にて開催される。参加費は無料だが、事前申込制の先着順となっており、当日は小雨決行で実施される予定である。

  • 【ウィズレイ】経済産業省「Go-Tech事業」に採択——錠剤粉砕の自動化で薬剤師の負担軽減と安全性向上へ

    株式会社ウィズレイは、経済産業省の「令和8年度成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」において、同社が参画する共同研究開発計画が採択されたことを発表した。本プロジェクトは、調剤現場における「錠剤粉砕」の自動化技術および対応包材の開発を通じて、薬剤師の対物業務の軽減と作業安全性の向上を目指すものである。 ウィズレイは、岡山県岡山市に本社を置く大学発のベンチャー企業である。同社の代表取締役を務める森山 圭氏は薬学博士であり、かつて就実大学薬学部で教鞭を執っていた経歴を持つ。現在は大学を退職し、同社の代表として事業を牽引している。同社は分光分析(光の波長解析)によって非破壊で薬剤の成分を判別するコア技術を有しており、一包化散薬鑑査装置「コナミル」シリーズの開発・販売を通じて、調剤現場における医療事故の防止や鑑査業務の効率化に取り組んできた。 採択された研究開発計画の概要 本事業は「令和8年度成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」の通常枠であり、研究開発計画名は「薬剤師の作業量軽減と安全性確保を両立させるベルト搬送式錠剤粉砕機構とこれに資する分包フィルムの開発」である。株式会社山和エンヂニアリングを主たる研究機関とし、従たる研究機関としてウィズレイおよび高崎健康福祉大学が参画する。また、事業管理機関を公益財団法人群馬県産業支援機構が務め、共同印刷株式会社、株式会社ネストブルー、ならびに複数の病院や薬局などがアドバイザーとして協力・連携する。 なお、令和8年度のGo-Tech事業(通常枠)において、関東経済産業局管内では109件の申請に対し34件が採択された。全国規模では271件の申請に対して117件が採択されている。 研究開発の背景と課題 超高齢社会を迎えた日本において、高齢者や小児など嚥下(えんげ)困難な患者に対する錠剤粉砕投薬の必要性は年々高まっている。しかし、従来の手作業による錠剤粉砕工程には多くの深刻な課題が存在していた。具体的には、調剤作業自体に多くの時間と手間がかかるうえ、粉砕・篩過(しか)・分包の各工程で薬剤の損失が生じやすい。さらに、洗浄不良に伴う他薬剤の混入リスクや粉砕後の薬剤識別が困難であるといった鑑査性の低さも懸念されている。加えて、薬剤粉末の飛散により作業者である薬剤師が粉末を吸入・接触する曝露(ばくろ)リスクも大きな問題となっていた。 錠剤粉砕に関する薬剤師アンケート結果(ウィズレイ実施) 開発技術の特徴と目指す姿 本研究開発では、「ベルト搬送式錠剤粉砕機構」と「高耐久分包フィルム」の一体的な開発を進める。具体的には、錠剤を分包フィルムに封入した状態のままベルト搬送し、内部の錠剤に圧力を加えて連続的に粉砕する機構を構築する。錠剤を密封したまま粉砕することで、粉末飛散による薬剤師の曝露を防ぎ、薬剤ロスや他薬剤の混入リスクを最小限に抑える設計となっている。 開発する錠剤粉砕機のイメージ ウィズレイの狙いと展望 森山氏は、多くの現場で薬剤師が粉砕業務とその曝露リスクに疲弊している現状を指摘し、「『コナミル』で成分識別を行う前に、錠剤粉砕業務そのものを変革する必要があると考えていた。本事業で開発する装置とフィルムを届けることで、薬剤師の作業負担と曝露リスクを解消し、より対人業務に集中できる環境を創出したい」と述べている。 また、本技術の実用化は単なる作業効率化にとどまらず、多角的な効果と市場の広がりが期待されている。服用直前に粉砕することで薬剤の物理化学的変化を最小限に抑える「用時粉砕」の実現や、法制度化された「調剤の一部外部委託」における粉砕業務の安全な外部化の推進に寄与する。さらに、病院や薬局だけでなく、介護施設、訪問介護、動物用医薬品業界、さらには錠剤投薬が主流である海外市場への展開も見込まれている。ウィズレイは本事業を、自社の「コナミル」シリーズに続く第2の成長エンジンと位置づけ、技術の実用化に向けて共同研究機関とともに開発を加速させていく構えである。 次世代の薬剤師を目指す学生たちへ 今回のウィズレイによる研究開発は、将来の薬剤師のあり方に重要な示唆を与えている。現在、薬学教育では臨床知識が重視される一方で、現場の調剤業務においては「対物業務」に多くの時間とリソースが割かれているのが実情だ。今回のプロジェクトは、こうした現場の課題を技術で解消し、薬剤師が本来の価値を発揮できる「対人業務」へシフトするための重要な一歩となる。 これから医療現場へ出る薬学生にとって、自身の専門知識を生かすためには、現場のワークフローや課題を深く理解し、必要に応じて新たなテクノロジーを活用する視点が不可欠である。専門知識と開発技術が融合することで現場の風景が変わる今回の事例は、未来の薬剤師が自身の職能を最大化するために、どのような環境を創造すべきかという問いを投げかけている。広い視野を持ち、技術と医療の接点に立つ意識を持つことが、これからの薬剤師に求められるキャリアの選択肢の一つと言えるだろう。

  • 薬局DX推進コンソーシアム:調剤業務の一部外部委託が業界変革の鍵となる

    2025年10月1日から3日間にわたり、幕張メッセで開催されたメディカルジャパン東京において、一般社団法人 薬局DX推進コンソーシアムがブースにて活動成果を発表した。本発表薬剤師不足や対人業務の強化といった喫緊の課題を抱える薬局業界に対し、調剤業務の一部外部委託が抜本的な解決策となり得ることを示唆するものであった。 外部委託が注目される三つの背景 調剤業務の一部外部委託が今、業界の注目を集めるのには、以下の三つの要因がある。 制度面の変化:2025年5月に薬機法が改正され、外部委託が正式に認められることになった。施行は2027年春頃を予定しており、現在は特区限定の実証が進んでいる。今後の運用に関する議論や制度設計は、この改正に基づいて進められることとなる。 現場・経営環境の変化:現在の調剤報酬制度は、服薬指導や在宅医療といった対人業務を重視している。しかし、薬剤師不足の常態化、対物業務の非効率性、そして薬価改定による経営環境の厳しさから、多くの薬局が限界を迎えている。外部委託は、対物業務を効率化し、対人業務に資源を集中させるための必須の手段である。 連携の拡大:単独の薬局では、経営や患者対応に限界が生じている。これに対応するため、地域連携、個人薬局間、チェーン・ドラッグストア間など、新しい協力モデルが動き出している。2030年には、連携の標準化が進み、薬局業界全体の構造が変化する可能性が高い。ICT化の流れも相まって、外部委託は業界の変革期における核心的なニーズとなっている。 コンソーシアムの役割と今後の展望 このような背景を受け、薬局DX推進コンソーシアムは2023年に大阪市と大阪府の共同提案により発足し、2025年に一般社団法人化された。 同コンソーシアムは、外部委託の安全性、有効性、経済性の検証を進め、その実証事業の成果は2025年の薬機法改正に繋がった。すなわち、現場の声を政策に繋ぐ役割を果たしたのである。さらに、委託・受託間の情報共有に不可欠な標準仕様CSデータを策定するなど、現場の運用に必要なピースを自ら構築してきた。 今後の活動として、大阪特区での実証をさらに深め、受託薬局からの直送方法の検討・実施、有効性や経済性のデータ収集を行う。また、CSデータの拡張や在庫管理の標準化に向けた仕様案の策定も進め、2027年春頃の法律施行に向けて実効性のある提言を行うことを目指している。 現在、大手の薬局から中小薬局、機器メーカー、システムベンダー、異業種企業まで59社が参画し、新しい価値を共創している。参画企業は、外部委託のノウハウ取得、新しいサービス形成への関与、会員ネットワークの活用、そして制度の波に乗り遅れないという大きなメリットを得られる。 DX推進に貢献する主要ソリューション ブースでは、外部委託の実現と薬局DXを加速させるための具体的なソリューションが多数紹介された。 特に注目されたのが、一包化散薬監査支援装置「コナミル」を開発した株式会社ウィズレイである。同社の森山 圭 代表取締役(薬学博士)は、かつて就実大学薬学部で教鞭を執っていたが、現在は大学を退職し、ベンチャー企業の代表として活躍している。コナミルは、近赤外分光法を用いることで、袋を開封せずに散薬の化学組成を識別・監査できる。将来的に散薬の外部委託が認められる時代を見越して、監査結果をクラウド共有できる仕組みを既に備えている点が特筆される。 薬局DX推進コンソーシアムは、これらの先端技術と連携を通じて、薬剤師が本来の専門性を発揮できる社会の実現に貢献していくとしている。 森山氏

  • 令和8年度調剤報酬改定の影響調査:数値データから見る薬局経営の現状と課題

    日本保険薬局協会が2026年8月に公表した「令和8年度調剤報酬改定に係る保険薬局への影響調査 報告書(その1)」によると、全国4,725の薬局の回答から、今回の改定が薬局経営に与えた具体的な事実と数値が明らかになった。これから薬局業界を目指す薬学生に向けて、調査結果の要点をまとめる。 調剤ベースアップ評価料の新設と調剤管理料再編の打撃 昨今の物価高や賃上げに対応するため、新設された「調剤ベースアップ評価料」は97.9%の薬局で算定されている。しかし、全体としては厳しい改定内容となっており、特に「調剤管理料」の点数区分が簡素化・再編されたことで、実に79%の薬局で影響がマイナスに転じた。これにより、処方箋受付1回あたり平均でマイナス5.94点の影響が出たと推計されている。このマイナス影響は、主に「8日分以上27日分以下」の処方が多い内科、耳鼻科、整形外科、小児科や、診療所前の門前薬局において顕著に見られる。 体制加算の一本化とジェネリック医薬品の課題 また、従来の「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」が「地域支援・医薬品供給対応体制加算」へと一本化されたが、この統合に伴う改定前後の点数差は平均でマイナス4.84点(中央値でマイナス3点)となった。なお、実績要件であるジェネリック医薬品の使用割合が85%以上に届かない理由としては、処方医の意向による「変更不可」や、患者自身が先発品を希望することが多くを占めている。 在宅医療要件の厳格化と薬局の二極化 在宅医療への評価についても大きな見直しが行われ、上位区分である「在宅薬学総合体制加算2」を算定できている薬局は、改定前の22.1%から3.3%へと激減した。この背景には要件の大幅な厳格化があり、具体的には「年間240回または480回以上の個人宅への訪問実績」「医療用麻薬の指導管理実績」「無菌調剤室の設置または共同利用体制」「小児在宅医療への対応体制」といった、より高度な地域インフラとしての実績と機能が求められるようになった。その結果、要件を満たせず「加算なし」となった薬局は28.1%から37.7%へと増加しており、薬局ごとの二極化が進んでいる現状がある。 かかりつけ機能の見直しと医療DXの急速な進展 さらに、かかりつけ薬剤師指導料の見直し(76点の廃止や服薬管理指導料45点への改定など)により、処方箋受付1回あたり平均でマイナス1.85点の影響が出たと推計されている。その一方で、医療DXの推進に関しては、マイナ保険証の利用率などに応じた「電子的調剤情報連携体制整備加算」の算定率が97.5%に達しており、インフラ整備が急速に進んでいる事実も示されている。

  • 体調不良時の「AI相談」が急増、若年層では約半数に――一方で医師の8割以上が自己判断による受診控えを危惧

    急速に身近な存在となった生成AIが、今や医療や健康管理の領域にも浸透しつつある。塩野義製薬株式会社が20~60代の男女10,000人と、過去1年以内に風邪症状でAIに相談した1,000人、さらに医師100人を対象に実施した「夏の感染症実態調査」(2026年8月発表)により、生活者が体調不良時にAIを活用する現状と、それに対する現場の医師たちの複雑な胸中が明らかになった。 若年層を中心に「熱を測るより前にAIへ相談」 調査によると、回答した生活者10,000人のうち42.7%が「月1回以上」日常的にAIを利用していた。そのうち46.7%が「体調不良時の自身の症状や対応策」をAIに相談した経験を持っており、さらに発熱やのどの痛みといった「風邪の症状を感じたとき」に相談したことがある割合は38.0%にのぼる。特に20代(51.6%が体調不良時に相談、49.0%が風邪症状時に相談)や30代(53.7%が体調不良時に相談、47.5%が風邪症状時に相談)といった若い世代で高い利用率を記録している。 驚くべきことに、風邪の症状を感じた際に最初にとる行動として、50代・60代では「熱を測る」が最多だったのに対し、20代・30代では「AIに相談する」が最多(20代39.0%、30代41.5%)という結果が出た。体調に異変を感じた際、体温計を手にするよりも前にスマートフォンのAIに問いかける行動パターンが、若年層の間で定着しつつあることが伺える。 新型コロナの可能性を提示されても受診しない現状 風邪症状についてAIに相談した経験のある1,000人のうち、62.1%が「風邪」、21.5%が「新型コロナウイルス」の可能性を提示されていた。AIから「新型コロナ」と提示された人の多くは「医療機関を受診した方がよい」と感じているものの、実際に医療機関を受診した割合は37.2%にとどまった。つまり、提示を受けた人のうち6割以上にあたる人が、医療機関への受診を見送っていたのである。 受診しなかった一部からは、その後に症状が2〜3日あるいは4〜7日以上続いたり、悪化・後遺症が残ったりしたという声も上がっており、AIの提示結果による対応が裏目に出るケースも顕在化している。 医療現場のホンネ:「AIは参考程度に、自己判断は危険」 この現状に対し、医師たちの間では危機感が強まっている。調査に応じた医師100人のうち68.0%が「患者の受診行動にAIが影響を及ぼしている」と実感しており、その具体的な弊害として、影響ありと答えた医師の58.8%が「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」点を挙げた。 さらに、医師の84.0%が「感染症は似ている症状が多く、AIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」と指摘し、58.0%が「医療機関への受診遅れにつながる」と受診控えを危惧している。 一方で、医師の74.0%は「生活者が体調管理でAIに相談することは有効」と有用性を認めており、受診すべき診療科の目安や生活上の注意点を確認する手段としての活用は歓迎している。ただし、「薬を飲むかどうかの判断」(64.0%が望ましくないと回答)や「疾患の自己判断」(61.0%が望ましくないと回答)に使うべきではないとし、88.0%の医師が「AIの意見をうのみにせず参考程度にしてほしい」と回答している。 調査を監修した伊藤博道氏(いとう王子神谷内科外科クリニック院長)は「AIは早くて従順なアシスタントであるが、提供される情報には限界があり、責任を負ってはくれない。我々医師は症状だけでなく診察や検査による多くの情報を総合して診断している。AIを上手な参考情報として活用しつつ、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談してほしい」と呼びかけている。 テクノロジー時代に求められる薬剤師の価値 これからの医療現場を担う薬学生の皆さんには、医療とテクノロジーの融合がもたらすメリットとデメリットの双方を正しく見極める力が求められる。 今回紹介した調査結果の通り、患者は医療機関を受診する前にAIを用いて自己判断を下したり、どの市販薬を飲むべきかをAIに相談したりする時代に突入している。AIは即座に膨大なデータを提示してくれる便利なツールだが、個々の患者の背景や、重症化の兆候といった細かなニュアンスまでを正確にくみ取ることはできない。 将来、薬剤師として現場に立つとき、皆さんは「AIの情報をうのみにして不安になっている患者」や「AIの判断を信じて適切な医療から遠ざかろうとしている患者」に出会うことになるだろう。そのとき重要になるのが、科学的根拠に基づいた的確な専門知識と、患者の言葉の裏にある真のニーズを読み取る対話力である。 AIがどれほど進化しようとも、目の前の患者の体調や不安に寄り添い、真に適切なトータルケアを提案し、責任ある判断を下せるのは医療従事者だけである。テクノロジーを恐れる必要も、過信する医療に依存する必要もない。AIという強力なツールを患者指導や情報収集の強力なアシスタントとして上手に乗りこなしつつ、自らの専門性と人間性を磨き続け、信頼される医療の担い手へと成長していってほしい。

  • 最新機器で健康状態を“見える化”! 神戸学院大学薬学部が「健康フェア カラダまるごとチェックDAY」をイオンモール神戸南で開催

    神戸学院大学薬学部が、地域の住民に向けた総合健康イベント「健康フェア カラダまるごとチェックDAY」を2026年8月27日と28日の2日間にわたり開催する。同イベントは、イオンモール神戸南およびサエラ薬局との合同開催であり、参加費は無料である。最新の健康測定機器を用いて自身の健康状態を正しく知り、生活習慣を見直すきっかけを提供することを目的としている。 イベントの主なプログラムは以下の通りである。 からだまるごとチェック(健康測定コーナー) 1階のみなとコートでは、最新の機器を用いて普段はなかなか測定できない体の状態を数値化するコーナーが設置される。指を置くだけ、あるいは手のひらを当てるだけで簡単に測定できるのが特徴である。 手首に超音波を伝播させて測定する「骨健康度」や、指を置くだけで血管の柔軟性を測定する「血管年齢」の計測が可能である。また、指を軽く挟むだけで体の老化したサビの原因物質を測定する「体内糖化度(AGEs)」、手のひらを測定器に押し当てるだけで推定摂取量を1〜12レベルで数値化する「野菜摂取量」のほか、採血なしで末梢血中の推定値を測定する「ヘモグロビン推定値」などの項目が用意されている。さらに、歩行速度や立ち上がりテスト、握力といった今の健康状態を知ることができるテストもあわせて実施される。 神戸学院大学「こどもサイエンス」大学 1階のうまいちコートでは、小・中学生を対象とした実験教室「ジュースの中のビタミンを調べてみよう!」が同時開催される。身近なジュースに含まれるビタミンの量を調べる実験を体験し、楽しみながら科学や栄養への興味を育むことができる。なお、同プログラムは当日受付の先着順となっており、小学生の参加には保護者の同伴が必要である。 神戸学院大学案内・相談コーナー 1階のみなとコートには相談コーナーも設けられる。薬学部の学生スタッフが常駐し、大学での学びや薬剤師の仕事、日々の健康管理に関する疑問や相談に幅広く応じる体制が整えられている。 健康測定に参加した人には、協賛であるハウスウェルネスフーズから「1日分のビタミンゼリー」がプレゼントされる。 【開催概要】 日時 2026年8月27日(木)・28日(金) 12:00〜17:00 会場 イオンモール神戸南 1F みなとコート/うまいちコート アクセス 神戸市営地下鉄海岸線「中央市場前駅」直結(所在地:兵庫県神戸市兵庫区中之島2丁目1-1) 対象 どなたでも(参加費無料 / 当日受付) ※一部の機器は18歳未満の方の計測ができない場合がある。 主催 神戸学院大学、イオンモール神戸南、サエラ薬局 協賛 ハウスウェルネスフーズ 【問い合わせ先】神戸学院大学 社会連携グループ TEL:078-974-1348 MAIL:renkei_info@j.kobegakuin.ac.jp ※8/8(土)~8/19(水)まで夏季休暇をいただきます。 期間中は電話やメールの確認ができませんので、いただいたご連絡への返信は8/20(木)以降となります。

  • 大手スーパー3社が日本ドラッグチェーン会に新規加盟 ゆるやかな連帯で資本の寡占化に対抗へ

    左から、日本ドラッグチェーン会会長の角谷真司氏、株式会社ニッド代表取締役社長の森信氏、日本ドラッグチェーン会副会長の田中元伸氏 国内大手小売チェーンである株式会社ライフコーポレーション、株式会社ベイシア、株式会社平和堂の3社が、日本ドラッグチェーン会に新たに加盟した。これにより同会全体の事業規模は、総加盟社数60社、総店舗数5,037店舗、総年商5.63兆円へと大幅に拡大する。近年流通業界で進行するM&Aによる画一的な巨大化とは一線を画し、各社の経営の独立性や地域の特色を維持したままスケールメリットを最大化させる「流通プラットフォーム」としての機能強化を目指す方針だ。 薬学生や将来の医療業界を担う若手にとっても、ドラッグストアとスーパーマーケットの垣根を越えたこの「異業種融合」の動きは、医薬品流通や地域医療のインフラを理解するうえで重要な転換点となる。 株式会社ニッドと日本ドラッグチェーン会とは 薬学生にとってなじみ深い「ドラッグストア」の裏側には、個々の独立した企業が協力し合う仕組みが存在する。今回の発表の主軸となる2つの組織の関係性は以下の通りである。 日本ドラッグチェーン会:1970年に設立されたボランタリーチェーン(任意の連帯組織)である。資本統合を伴わずに各社の独立経営を守りながら、共同でバイイングパワー(購買力)を高めることを目的としている。既存の加盟社には、都市型ドラッグストアを展開する株式会社トモズや、九州を中心に強固なドミナントを築く株式会社ドラッグストアモリなどが名を連ねており、地域の有力な独立系企業が連携している。 株式会社ニッド:日本ドラッグチェーン会の加盟社に向けて、商品の企画・開発・供給および各種サービスを提供する事業会社である。数千店舗規模のスケールメリットを生かし、医薬品やヘルス&ビューティケア(HBC)を中心とした高品質な「NID PB(プライベートブランド)」を数多く手がけている。 圧倒的な「商品力」と大手のOEM背景 多くのスーパーマーケットは自社単独では医薬品のPB商品を製造することが難しい現状がある。一方でニッドが開発する医薬品PBは、大手OTC医薬品メーカーと同等の製造委託先(OEM)へ直接依頼して作られている。 例えば、シオノギヘルスケアのビタミン剤やゼリア新薬工業の胃腸薬といった、大手メーカーの品質が担保された信頼性の高い商品をラインナップしており、成分を追加した高付加価値な製品も存在する。この圧倒的な商品数と品質の高さが、今回の大手スーパー3社を引きつける最大の魅力となった。 異業種融合とアライアンス強化に向けた各社トップの声明 今回のメガ再編にあたり、日本ドラッグチェーン会および株式会社ニッドのトップ、そして新規加盟3社はそれぞれの展望を明かしている。 日本ドラッグチェーン会会長の角谷真司氏(株式会社トモズ 代表取締役社長)は「私たちが目指すのは、資本で縛り付ける巨大なモノカルチャーではありません。それぞれの地域で愛され、暮らしを支える小売業の皆様が、その個性を生かしたまま、巨大資本に負けない最強の商品力とインフラを持てる世界です」とボランタリーチェーンとしての誇りを語る。さらに、今回の3社が持つ大型小売チェーンとしての膨大な生活者視点を取り入れることで、医薬品や日用品、健康食品のクオリティーを引き上げ、全ての加盟社やメーカーへメリットを還元していくとし、「時代を変えるのは資本の力だけではありません。私たちは独立系小売の連帯の力で、流通業界の新たな未来を証明してみせます」と力強く宣言した。 また、商品の供給と企画開発を担う株式会社ニッド代表取締役社長の森信氏(株式会社ドラッグストアモリ 代表取締役会長)は「各社様が抱える商品ラインナップの課題やニーズに対し、ニッドの豊富な開発資産を検証しながら、最善のアプローチで段階的な導入を推進しています。今後は医薬品や日用品に留まらず、化粧品をはじめとする幅広いカテゴリーでの活用に向けて、具体的な検討を進めてまいります」とし、さらなる連携強化へ期待を寄せた。 これに対し、新規加盟したスーパー側からも期待の声が寄せられている。株式会社ベイシアは「当社の医薬品部門は、これまで地域に根ざしたサービスを強みとしてまいりましたが、今後さらに魅力的な商品の供給体制を充実させるため、より高度な商品開発ノウハウやスケールメリットの活用を模索しておりました。この課題を解決し、お客様へより魅力的な商品を安定して届けるため、優れた商品と商品開発力を有している日本ドラッグチェーン会様へ参画させていただくこととなりました」と、ニッドの商品開発力への信頼を語る。 同様に株式会社ライフコーポレーションも「ナショナルブランド(NB)品と同一成分による品質が担保されたニッド商品の導入による商品力の強化、および売り場の活性化による競争力の強化を図ってまいります。競争力のある魅力的なPB商品の開発・供給を推進するとともに、市場での認知度向上と支持拡大に期待しております」とコメントし、品質が担保された医薬品PBによる売り場の活性化に期待を込める。 近畿・東海圏を中心に展開する株式会社平和堂は「この度、日本ドラッグチェーン会への加盟を通じて、全国のドラッグチェーン会各社様と知見を共有し、連携を深められることを大変心強く感謝しております。今回の加盟を機に、商品力の強化やサービスの向上をより一層強め、お客様と地域社会に貢献し続けてまいります」と述べ、全国の加盟社との知見共有による地域社会への貢献を誓った。 導入のスケジュール感 新規加盟した3社では、現在合計266店舗で医薬品が取り扱われており、今後もその店舗数は増加傾向にある。しかし、既存の限られた売り場への棚割りや、商流の再構築には一定の時間必要となるため、本格的な展開には「半年ほどかかる」見通しだ。 具体的な商品の導入順としては、まず最優先として「医薬品」から棚入れが進められている。その次に優先順位が高い分野として、各社でPBの不足が見られる「日用品」が順次導入される予定である。さらに今後、化粧品やその他のカテゴリーへ広げられるかが検討されていく方針だ。 物流センターを「持たない」という独自の物流ルール 日本ドラッグチェーン会は、組織内に独自の流通網や物流センターを「持たない」というルールを一貫して守っている。今回の3社加盟においても、各加盟社の都合や既存の卸業者(ベンダー)と協力しながら個別に対応している。 この仕組みでは、メーカーから卸業者へ納品されたものを年間の取引量に応じて価格計算するルールが構築されている。店舗数が少ない加盟社であっても、エリア内の卸業者を通じてNB品と同様に仕入れを行えるため、配送ロット(消化量)の課題をクリアし、多くの加盟社が魅力的な商品を取り扱えるメリットを生み出している。 地域密着型の独立経営を守りながら、巨大資本に負けない調達力とインフラを共有するこの新たな試みは、今後の医療・生活必需品領域におけるサプライチェーンの在り方に一石を投じることになる。

  • 薬学生の92.6%が医療DX・AIに期待〜日本薬学生連盟・カケハシ共同調査より

    一般社団法人日本薬学生連盟と株式会社カケハシは、薬学生向けキャリア支援イベント「教科書には載っていない薬局のリアル」を開催した。これに併せて、参加者などを対象とした共同企画「薬学生のキャリア意識・医療DXに関する実態調査」を実施した。 実態調査から見えた薬学生の本音 医療現場・薬局業界でのDX・AI活用に対する意識 就職活動とは別に、医療現場や薬局業界におけるDX・AI活用の進展に対し、薬学生の92.6%(「とても期待している」「やや期待している」の合計)が期待を寄せていることが判明した。 DX・AI活用に「期待すること」(複数回答可) ・業務負担の軽減(60.3%) ・人的ミスの減少・防止(54.0%) ・患者さんとのコミュニケーション量の増加(50.8%) ・医療の質向上(27.0%) ・単純作業の削減(23.8%) 回答の多くは業務負担の軽減や安全性の確保、対人業務の充実に集中しており、単なる効率化以上の価値を期待している様子が見て取れる。 求人票だけでは届かない現場の雰囲気と「IT・DX環境」の重要性 求人票や企業説明会だけでは「判断が難しい・情報が足りない」と感じる項目として、「職場の雰囲気(44人)」や「現場で働く薬剤師のリアルな声(36人)」が上位に挙げられた。さらに、就職先を検討・選択する際の基準として、就職活動を本格的に見据える高学年(5・6年生)の70.0%(「とても重視する」「やや重視する」の合計)が「職場のIT・DX環境の導入状況」を重視しているという実態も明らかになった。 【調査実施概要】 調査対象:イベント参加者および日本薬学生連盟のメーリングリストを通じて回答した薬学生69人 調査期間:2026年6月15日〜18日 企画・実施:一般社団法人日本薬学生連盟 × 株式会社カケハシ 熱気に包まれたキャリア支援イベントの現場 東京および大阪の2会場で開催された本イベントには、学生69人、18社の法人が参加した。 当日は、さまざまなキャリアを持つ薬剤師とのカジュアルなランチ交流やフリータイムが設けられた。参加した5年女子学生からは「合同説明会よりカジュアルに多くの企業の先輩から本音が聴けるのを魅力に感じて参加した。過去の病棟勤務の経験が現在の薬局での在宅医療に生かせているという話が、キャリアのつながりとして印象的だった」との声が聞かれた。また、5年男子学生からは「大手やドラッグストアも含めて新システムを導入し業務効率化を進めている点に驚き、対人業務に関する学びを深めていくモチベーションが高まった」といった意見が寄せられた。 今回のイベントおよび調査を通じ、これからの時代を担う薬学生が、医療DXの推進による業務環境の向上と、対人業務をはじめとする薬剤師本来の価値発揮に対して強い関心を抱いていることが示された。

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