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地域医療と薬剤師の未来像を探る:城西大学コミュニティーファーマシーインターンシップ

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城西大学薬学部では、毎年夏期休暇中に選択科目として「コミュニティーファーマシーインターンシップ」を実施している。これは、日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)の協力を得て、4年生がドラッグストアでの体験研修を通じて、地域医療における薬剤師の役割と働き方を深く学ぶことを目的としている。期間は7月下旬から9月上旬までのうち4日間であり、学生は実務実習では体験できないドラッグストアの業務に触れた。


事前講義でテーマを設定してから研修に臨む

左から、中嶋さん、上田氏、村田氏
左から、中嶋さん、上田氏、村田氏

インターンシップは、学生が高い目的意識を持って臨む体系的なプログラムである。研修に先立つ6月の事前講義では、JACDS副会長である関口周吉氏(株式会社龍生堂本店代表取締役社長)が講師を務め、ドラッグストア業界の現状や社会における役割について解説した。学生たちは、この講義を通じてドラッグストアの機能を認識し、「登録販売者との役割分担」「在宅医療」「地域との繋がり」といったテーマを設定してから現場に向かった。

研修期間中の2025年9月11日には、関口氏に加え、城西大学薬学部教授の上田秀雄氏と同薬学部助教の村田勇氏が、研修先の一つである龍生堂薬局ふじみ野店を訪問し、インターンシップの進捗状況を確認した。

上田氏は、このプログラムの意義について、「意識の高い学生が参加している。実務実習では病院と薬局について知ることはできるが、ドラッグストアでのOTC医薬品販売を含めた店舗販売の全体像を経験できる機会はない。この機会にドラッグストアの役割について理解し、進路の一助にしたいという考えを持った学生も少なくないようだ」と述べ、本プログラムの教育的価値を強調した。



学生が得た現場のリアル

研修の様子
研修の様子

インターンシップに参加した学生の一人、中嶋美涼(みすず)さんは、龍生堂本店での研修を通じて地域医療への深い洞察を得た。幼い頃の薬嫌いの経験から薬剤師を志した中嶋さんは、特に栄養学の知識を生かした薬剤師を目指している。

中嶋さんは、龍生堂本店が「地域密着型」として、顧客の属性やニーズを深く分析し、店舗運営に反映させていることに気づきを得た。「お店は『この地域はこういうお客さんが多いから、こっちの商品を多めに取り揃えておこう』という考えのもとに成り立っている」と語り、ドラッグストアの多岐にわたる機能と、地域の生活に不可欠な存在であることを強く感じたという。また、OTC医薬品販売の現場でのコミュニケーション能力を身につけること、本部研修で見た在宅医療の動画から患者の背景に合わせた臨機応変な対応の必要性を学ぶことが、自身の将来の選択肢を広げると述べた。


薬剤師の未来と機能強化への提言

振り返り講義の様子
振り返り講義の様子
振り返り講義で学生と話す関口氏
振り返り講義で学生と話す関口氏

2025年9月17日に行われた振り返り講義では、学生たちが設定したテーマに基づき、活発なディスカッションが行われ、その様子はオンラインで協力企業にも配信された。

学生からは、高齢者が多い地域での介護用品や食品の充実、子供連れが多い地域での通路確保や小児用医薬品の相談対応、外国人利用者が多い地域での多言語表示など、地域特性に応じた薬局の機能についての詳細な報告があった。さらに、薬剤師には、OTC医薬品販売時における「症状、状態を知る」ための「聞き上手」なコミュニケーション力と、併用注意や受診勧奨を行うための幅広い知識が必要であるという共通認識が示された。

関口氏は、学生たちの鋭い質問や目的意識が、受け入れ企業である現場の職員に刺激を与えていると評価しつつ、薬剤師の未来像についても言及した。

薬剤師が担うべき対人業務の強化とセルフメディケーション推進について、関口氏は「国は、薬剤師がヘルスケア領域、すなわちOTC医薬品についてもっともっとやってくれと言っている」と指摘した。これはすなわち、対人業務の強化であり、セルフメディケーションの推進に繋がるものであり、ドラッグストア薬剤師の役割が国の政策と直結していることを示した。

さらに、薬局業界全体が構造的な変化を迎えている現状に触れ、全国で薬局が淘汰され、機能を持つ薬局が求められる時代が来ていると警鐘を鳴らした。関口氏は「生き残る薬局ってどういうとこなんだろうね、生き残る薬剤師ってどういう薬剤師なんだろうね」という問いを学生たちに投げかけ、薬局の機能強化の必要性と、学生自身が薬剤師として生き残るための意識を持つよう訴えた。

一方、上田教授は「大切なのは知識を得てくることではなくて、経験を積んでくること」であり、現場の経験から自分に必要な知識を優先度をつけて習得していく姿勢の重要性を強調した。



受け入れ企業一覧

・ウエルシア薬局(株)

・(株)ウエルパーク

・(株)カワチ薬品

・(株)スギ薬品

・(株)セキ薬品

・(株)マツモトキヨシ

・(株)龍生堂本店

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