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【スタートアップ】フリーランス薬剤師としての軌跡と未来

更新日:9月30日

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フリーランス薬剤師 木村 応(きむら・あたる)



フリーランス薬剤師の木村応さんが薬剤師を目指すきっかけとなったのは、小学校5年生の時の経験だった。重度の喘息発作でICUに入院した彼は、当時11歳でありながら、毎日8種類もの薬を服用していた。「どうしてあの粉を飲めば体が楽になるのか、煙を吸うだけで呼吸が楽になるのか」と、幼いながらも薬の不思議さに興味を抱いたことが、薬剤師という職業に惹かれた原点となった。


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高校では得意だった理科を生かせる進路として薬学部を選択。薬剤師になるという目標は、高校3年生になって本格的に進路を考える中で固まっていったという。

大学生活はサークルには入っていなかったが、仲の良い友人たちとよく遊び、旅行や釣りを満喫した。また、もつ鍋屋でのアルバイトに熱中した経験が、現在の薬剤師としての働き方に大きく影響していると振り返る。「処方箋が同時に何枚も来ることがありますが、その場で優先順位を考えて、一番効率よく仕事できるようにする。その瞬時の判断は、やはりバイト時代の経験が今に生きています」と語る。

木村さんの就職は、一般的な就職活動とは少し違っていた。私立大学に通っていた木村さんは、国からの奨学金に加えて、地元の薬局が提供する薬剤師育成奨学金制度を利用した。これは「薬局で薬剤師として一定期間働くことで、返済を免除する」という制度で、木村さんは大学2年生の終わりにはすでに、地元島根県の薬局で働くことが決まっていた。


卒業後、島根の薬局で4年ほど勤務した。地域で唯一の無菌調剤室がある薬局で、木村さんは積極的に在宅医療に関わった。特に、麻薬の調製といった終末期医療に携わった経験は貴重なものだった。

当時、薬局では退院時カンファレンスへの参加は一般的ではなかったが、木村さんは自ら病院に出向き、薬局の強みをアピール。「待っていても何も始まらない」という信念のもと、自ら動くことで、医療関係者からの信頼を得て、自然と在宅の依頼が来るようになった。

しかし、充実した経験を積む一方で、木村さんは組織に対する不満を感じていた。自ら積極的に動いているにもかかわらず、それが正当に評価されないこと、そして「動きづらくなった」ことが独立を考えるきっかけとなった。「自分ならもっとこうできるのに」という思いが募り、奨学金の返済義務がなくなる4年目を迎えたタイミングで、フリーランスへの転身を決意した。


フリーランスとして働く場所を東京に決めたのは、「働く場所が一番多い」ことが最大の理由だった。転職や独立という選択肢の中で、木村さんはあえてフリーランスという働き方を選んだ。その理由は二つある。

一つは、「とことん働く」ためだ。前職は残業がほとんどなく、時間に余裕があった。人生で一番元気な今こそ、徹底的に働くべきだと考えたという。フリーランスであれば、組織に縛られずに、働きたいだけ働くことができるからだ。二つ目は、「いろいろな薬局を見ることができる」というメリットだ。さまざまな薬局で働くことで、将来独立して薬局を作る際に、より良いものを作るための知識や経験を積むことができると考えた。

木村さんは東京に引っ越してきてから、わずか3日目で薬局で仕事を始めた。「引っ越しの片付けとか全部終わっていなかったですからね」と笑うが、その行動力は周りを驚かせたという。


玉川上水
玉川上水

現在の目標は、数年以内の薬局開業だ。「遅くても5年以内、早ければ2、3年以内」と具体的なビジョンを持っている。

木村さんの思い描く薬局は、単なる調剤を行う場所ではない。「処方箋に縛られない薬局」であり、OTC医薬品の販売だけでなく、地域の患者の健康をサポートできるような体制を整えたいという。そして、最も重要なコンセプトは「この薬剤師だからここに行こう」と思ってもらえる薬局にすることだ。「病院を選ぶときにドクターを見ることは多いですよね。でも、薬局を選ぶときに薬剤師を見ることってあまりないと思うのですが、それができれば良いかなと思います」と語る。

最後に、これから社会に出る学生へ向け、「待っていても何も始まらない。とにかくやってみることが大切だ」とエールを送る。そして「考えすぎは良くない」とし、リスクを恐れず、実際に行動を起こすことの重要性を強調した。木村さんの行動は、口先だけでなく、自らが有言実行することで示している。木村さんの言葉と行動からは、薬剤師として、そして経営者として、未来を切り開く強い意志が感じられる。


取材後記

木村さんの行動力には日々驚かされます。目標に向かって前進するというのは言葉では簡単に見えますが、行動に移すことは難しいです。これからの木村さんを応援していますし、独立開業に向けたサポートもさせていただく予定です。(薬学ステップ 寺本)

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