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- 【一日一笑】あなたの常識は、私の非常識!!
医薬情報研究所 株式会社 エス・アイ・シー 公園前薬局(東京都八王子市) 堀 正隆 人それぞれ。 薬局薬剤師の業務において、重要な仕事の服薬指導。 服薬指導には、店頭、訪問在宅、オンライン(テレビ電話を用いたもの)で行うものがあり、その中でも訪問在宅で行う服薬指導というのは、実際に患者宅に伺い行うものである。 どのような生活をしている?薬の管理状況は?どんな場所で寝ている?などなど、生活環境を見ることができ、患者さん自身も自宅であるためリラックスしており、普段の店頭での服薬指導と比べ、会話内容が増えることで、得られる情報量も多く、患者さんとの関係性も築きやすくなっていく。 そんな、訪問在宅を行っているとさまざまな場面が訪れることがある。実際に起こったエピソードを2個ほど紹介する。 入り口が玄関じゃない?? 初回訪問の前に電話確認で本人と少しやり取りをしてから訪問するのだが、本人から「家に着いたら裏に回って、窓をノックして?そうしたら鍵を開けるから窓から入ってきてちょうだい」との説明があった。 ん?窓から??一体どういう状況なのだろう。窓ってどんなサイズ?そんなに小柄ではないけど大丈夫?初回の時は少しドキドキするが、今回のドキドキはなんだかいつもと違う気が…。 おうちに到着し確認すると一応、テラスに出られる大きな窓ではあったので一安心。 ノックをして実際におうちに入った。中から見てびっくり。物がとても多く、玄関には積み上げられた物の山。テレビでもたまに取り上げられているようなおうち。正直、少し整理を…なんて思い。恐る恐る、本人に確認してみるとあの時あの人と食べたお菓子の箱だから…。これは初めて〇〇した思い出の物なの…。人によってはただのごみかもしれない。それでも、本人にとっては大切な宝物。外にも出ていない。生ごみがあるわけでもない。外観はとてもきれいに整備されており、近隣に迷惑をかけているわけでもない。かたくなな姿勢に他職種とも話し合ったものの、介入できるすべはなし。全員が窓からの入室在宅の開始。少しでも良好な生活環境保持のため、念のため換気を促し良しとするか。それ以降、目に映る空き箱の思い出話を聞きながら服薬指導を行った。 重度認知症の患者さんのおうち 目の前に薬があると全て飲んでしまう患者さん。ケースを用意し南京錠で鍵をかけて保管。看護師やヘルパーと連携をし、毎日の配薬を行う。少しずつ処方薬にも変化もあり、毎日同じ人が出入りできるわけではないので、配薬においては、薬剤情報提供書いわゆる薬情(写真と効能、服用量が記載された書類)がとても大切。 本人に、「これは大切だから捨てないでね?看護師やヘルパーに見えるようにここに置いておくよ?」そう伝えると、「大切だから捨てちゃ駄目。分かった」復唱してくれたことにも安心感を得て帰宅。 翌日、看護師の方から薬情が見つからず、本人に聞いても分からないと連絡が入り、慌てて再度訪問。本人に確認してもやはり分からない。ピンと来たので「昨日の大切なものどこにしまいました?」本人に確認するとスイスイと仏壇の前へ。そして、仏壇から出てくる薬情…。 「大切と言われたからしまっておいたわよ?家宝にするの」 私の伝え方が悪かったかな?大切ではあったが、そこまでではなかった…。 その場にいる本人も含めた全員で大笑い。その後、薬の保管ケースを変え、薬情と薬を同じ場所に置けるように変えたのは言うまでもない。 以上のことから、私が学んだことは、人それぞれ何を大切にしているのか、どのように言葉を受け取るのか、物事の考え方や価値観。さまざまな違いがあるということ。 それなら常識って何? わざわざ伝えなくても良いか…。 これは当たり前だし言う事でもないか…。 私たちの当たり前は、時に患者さんの当たり前ではないことがある。「坐薬は座って飲むのよね?」「食間は食事中に飲むのよね?」医療従事者からすると、衝撃を受ける回答はまれに起こる。私たちは、大学生活を経て、病院や薬局などで働く。周囲の環境から医療関係者との会話ばかりが増えている。いつの間にか知っていて当たり前とする常識の基準は上がっている。近年、インターネットやメディアから多くのことを知ってくれている患者さんも少しずつ増えてはいるものの、あくまでも少数ではある。ふとしたときに…伝えるほどのことかな?さすがに当たり前だよね?そんな内容の確認も念のために会話の中で伝えてみてね? あなたの常識は、私の非常識!!
- 【薬局四方山話】調剤報酬改定にいつまで付き合うか
地球堂薬局 田代健 読者の皆さんは、調剤報酬が全体の額として増加し続けていることはよくご存じだと思う。しかし薬局薬剤師1人が1年間に受け取る技術料に着目すると、一貫した統計としてさかのぼれる上限の2010年以降、約1100万円でほとんど増減がない(図表)。その一方で「薬剤師が1100万円の技術料を得るために必要な労力」は増加し続けている(注1)。2026年の調剤報酬改定についても読者の皆さんのところにさまざまな情報が入ってくると思うが、筆者は2年ごとの改定に薬局が振り回される慣習はナンセンスだと考えており、議論に深入りしたいとも思わないので、少し違った視点から調剤報酬改定について考えてみたい。 図表 年 薬局薬剤師数(人) 調剤医療費(億円) 技術料(億円) 薬剤師1人当たり技術料(円) 2010 145,603 60,389 15,911 10,927,868 2012 153,012 65,902 17,020 11,123,172 2014 161,198 71,515 17,682 10,969,068 2016 172,142 74,395 18,490 10,741,093 2018 180,415 74,279 19,311 10,703,493 2020 188,982 74,987 18,779 9,936,950 2022 190,735 78,332 21,264 11,148,366 2024 197,437 84,008 23,251 11,776,518 薬剤師数は厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(旧:医師・歯科医師・薬剤師調査)」による 調剤医療費と技術料は厚生労働省「調剤医療費(電算処理分)の動向」による 日本では伝統的に「公-私」といった概念の根拠があいまいで、場合によっては「公」を「権威」と履き違えたりもして、「武士道(平たく言えば公務員の道徳)」を称揚する人も多い(注2)。この精神性は、薬剤師がOTCを軽視する一方で政府が定めた保険調剤にしがみつく傾向にも影響しているのかもしれない。しかし、筆者にとっては、日本人(私)と政府(公)との関係性は、例えば江戸時代の ・身分に関係なく、給料として支払われ(扶持米)、税金として納められもした(年貢米)米を日本酒にして飲んでしまっていた人たち ・酒の規制に何度も失敗しながら最後まで貨幣経済に移行できなかった幕府 というしたたかな緊張関係が象徴的であるように見える(注3)(法律に違反しろとか規制の隙間をかい潜れというわけではない)。公務員精神を発揮して制度を追いかけることに夢中になる薬剤師がいてもよいが、もっと自由に、ファンキーな道を患者とともに歩む薬局薬剤師のための居場所があってもよいはずだと思う。 頭打ちの保険調剤とは対照的に、セルフメディケーション分野は努力と工夫次第で伸び代がまだ残っている。筆者の薬局でも力を入れて販売しているサプリメントがいくつかあるが、ざっくりとした相場では1カ月分で2万円弱程度の価格(1日当り600円前後)で、粗利益はその4割から5割で6000円〜9000円となる。これは処方箋1枚分の技術料をだいぶ上回る。そして、アウトカムはユーザー(何らかの病気を患った「患者」とは限らない)からの声で確認できる。 問題は、 ・そのような商品を販売するスキルがあるか? ・失敗した場合のフィードバックをどう得るか? の2点で、勉強会やメーカーの話を聞いても「うまくいったケース」についての情報は豊富だが、その背景に「うまくいかなかったケース」がどの程度存在するのかを知ることはまずできない。そしてこの問題は保険調剤についても同様で、「治療薬についてのアウトカム」ではなく「薬剤師の介入についての患者のアウトカム」の検証が弱く、「薬剤師による吸入指導」のようなエビデンスを今後広範囲に蓄積していくシステムを構築することが、保険調剤とOTCに共通した課題になると思う。現状では「どのような記録を残したか?」が薬剤師のアウトプットになっている。なぜ記録を残さなければならないかというと、「そうしなければ薬剤師はサボる」と考えられているからだ。薬剤師は、仕事をきちんとしたかどうかを「提出した記録」に基づいてでなければ評価できない、という認識は、果たして健全といえるのだろうか?「薬剤師が薬学部で習得し、現場で患者のために駆使する技術」を「調剤」であると仮に定義すると、調剤の結果として得られた患者のメリットではなく手続を確認することばかりが重んじられ、それが調剤報酬として評価されることに、薬剤師はあまりにも慣れすぎてしまっている。これから薬剤師になって社会に出るという薬剤師の皆さんには、「自分たちが身につけた技術」をキャリアを通じて磨き上げていくのだ、ということを強く意識してもらいたい。端末にデータを入力して給料をもらうために6年間も勉強してきたわけではないと思うのだ。 注1 円の価値が下落していることを考えれば、大幅な減収ともいえる。単位をどのように設定して時系 列で比較するか?という点については、皆さん自身で検討してみてもらいたい。 注2 武士と公務員の道徳については、畑中章宏 (著)、若林 恵 (著)、 山下正太郎 (著)、 工藤希 (著)、 コクヨ野外学習センター (編集)、 WORKSIGHT[ワークサイト] (編集)『会社と社会の読書会』 (黒鳥社、2025)のp.54前後を参照してもらいたい。 注3 江戸時代の人々と幕府との間の酒を巡るバトルについては、飯野亮一 (著)『居酒屋の誕生: 江戸の 呑みだおれ文化』(ちくま学芸文庫、2014)が面白い。
- 【第26回JAPANドラッグストアショー】「マタニティ&ベビーケアゾーン」が新設!暮らしのインフラとして進化するドラッグストアの最前線
一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会は、2026年7月31日(金)から8月2日(日)までの3日間、東京ビッグサイトにて「第26回JAPANドラッグストアショー」を開催する。 今回のテーマは「セルフメディケーションによるドラッグストアの未来像 〜NEXT25〜」。医療提供施設としてのドラッグストアの役割がますます重要視される今、本展示会は未来の医療を担う薬学生にこそ、ぜひ足を運んでほしいイベントである。大学の講義だけでは見えてこない、セルフメディケーションのリアルな現場と最先端のトレンドを肌で体感できる絶好の機会だ。 入場料は無料。第一線で活躍する企業や薬剤師の熱気に触れ、自身の将来像を具体化させる場として活用してほしい。 展示会で体感すべきポイント 医療連携と地域貢献のヒントがここに「マタニティ&ベビーケア」&「フェムケア」 新設される「マタニティ&ベビーケアゾーン」や特別企画の「フェムケアゾーン」は、これからの薬剤師に求められる「地域住民のライフステージに寄り添うヘルスケア」の具体策が詰まっている。少子化や共働き世帯の増加といった社会背景に対し、身近なインフラであるドラッグストアが最新テクノロジーや商品を用いてどうアプローチしているのか、その最前線を学ぶことができる。 「食と健康」「ビューティ」など、セルフメディケーションの最前線 現在のドラッグストアは、単に調剤やOTC医薬品を扱うだけの場ではない。皮膚科学に基づくスキンケアや、ウェルビーイングに貢献する機能性表示食品などが市場を牽引している。予防医療や未病対策の視点から、生活者にどのような提案ができるかを広い視野で捉えるチャンスである。 主な開催イベント 一般来場者が楽しめる体験型イベントも多数用意されている。 食と健康アワード 第6回Men’s Beautyアワード 健康意識が高くさわやかな男性著名人を表彰する恒例イベント。4つの部門(セルフメディケーション、Beautyスキンケア、Beautyミドル、Beautyライフスタイル)に加え、メーカー賞の表彰と受賞者によるトークショーが行われる。 食と健康アワード2026 ウェルビーイングに貢献する優れた食品やサプリメントを表彰する。機能性表示食品などの最新トレンドをチェックする絶好の機会となる。 こどもやくざいし体験薬局 スポーツパーク 真夏の暑さの中でも屋内で思い切り体を動かせるエリア。「ストラックアウト」や「バスケットフリースロー」「パターゴルフ」など、世代を問わず家族で楽しめる企画が満載だ。 こどもやくざいし体験薬局 子供たちが白衣を着用し、調剤や分包機の操作、薬袋へのお薬詰めを体験できる人気コーナー。参加した子供には白衣と修了証がプレゼントされる。 開催概要 項目 内容 会期 2026年7月31日(金)〜8月2日(日) 10:00〜17:00 ※一般公開日は8月1日(土)・2日(日) 会場 東京ビッグサイト 東展示棟 1・2・3・7・8ホール 入場料 無料(来場方法は6月下旬に公式HPに掲載予定) 主催 一般社団法人日本チェーンドラッグストア協会(JACDS) 公式サイト https://www.drugstoreshow.jp ビジネス・業界研究に直結する併催イベント企業間の商談や最先端のビジネスモデルが交わされる「JAPANドラッグストアショー for ビジネス」は、7月31日(金)・8月1日(土)の2日間開催。業界研究やキャリアの視野を広げたい薬学生は、この期間を狙って来場することをおすすめする。 次の25年の未来に向かうドラッグストアの姿は、そのまま「未来の薬剤師が活躍する舞台」そのものである。自身の可能性を広げるために、この熱気あふれる3日間にぜひ足を運んでほしい。
- 【武蔵野大学】6月25日に薬学部卒後教育セミナーを開催 令和8年度改定で注目される「メディケーションレビュー」の未来を飯島裕也氏が解説―他校の学生や現役薬剤師も参加可能
武蔵野大学が2026年6月25日(木)に、薬学部卒後教育プログラムとしてオンラインセミナー「メディケーションレビューの現在地と未来―令和8年度改定を踏まえて―」を開催する。 今回のセミナーは、令和8年度(2026年度)の診療報酬・調剤報酬改定において「メディケーションレビュー」が評価(報酬化)されることを受け、その意義と具体的な実践方法を学ぶ目的で企画された。メディケーションレビューとは、薬剤師が患者の処方薬だけでなく、市販薬(OTC薬)やサプリメントも含めたすべての服用薬を包括的に評価し、適正化をはかる専門業務のことである。特に高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)が社会課題となる中、その重要性が高まっている。 講師には、イイジマ薬局の開設者であり、一般社団法人上田薬剤師会の常務理事を務める飯島裕也氏が登壇する。飯島氏は、実際の高齢者多剤併用症例をもとに、問題の抽出から具体的な介入(処方提案など)に至るまでの思考プロセスを徹底解説する。また、日本の医療提供体制におけるメディケーションレビューの必要性を国際比較の視点から考察するほか、患者情報の共有課題、薬局業務の再設計、サービスの質担保と教育の課題など、今後の薬局・薬剤師が向き合うべき展望を包括的に提示する予定だ。 同プログラムは武蔵野大学の卒業生や在学生に限らず、他大学の薬学生や現役の薬剤師など、学外からの参加も広く受け付けている。 開催概要は以下の通り。 開催概要 項目 内容 日時 2026年6月25日(木) 19:00~20:30 開催形式 Zoomウェビナーによるオンライン配信 対象 薬剤師、薬学生など(学外からの参加も可能) 定員 100名(先着順、定員に達し次第締め切り) 参加費 一般:1,000円 / 学生:無料(武蔵野大学以外の学生も無料対象) 申込締切 2026年6月12日(金)まで 申込方法 以下の専用URLよりお申し込みください。 ・一般の方:申込ページ ・薬学生の方:申込ページ 本件に関する問い合わせは、武蔵野大学 社会響創センター事務課(TEL: 042-468-3222、Mail: lifelong@musashino-u.ac.jp) が受け付けている(受付時間:月~金の9:30~16:30、祝祭日を除く)。
- 【大正製薬】「合宿にリポビタン」キャンペーンを開始!全国の学生にリポビタンDを合計10万本無料配布
大正製薬株式会社は、2026年6月1日(月)より、全国の大学生・大学院生・専門学生の合宿先へ「リポビタンD」を合計10万本無料配布するサンプリング企画「合宿にリポビタン」キャンペーンを開始する。 同キャンペーンは、夏休み期間中に実施される部活動やサークルの合宿へリポビタンDを直接届けることで、現代の若者の挑戦や仲間との活動を応援することを目的としている。また、キャンペーンの開催に合わせて、都内10大学周辺の駅でのポスター掲出も実施される。 キャンペーン概要 特設サイトから応募した部活動・サークルなどの団体の中から、抽選でリポビタンDが合宿先へ無料で届けられる。 名称: 「合宿にリポビタン」キャンペーン 対象団体: 全国の大学・大学院・専門学校の部活動・サークルなど、学生が主体となって活動する団体(※学生、教員、OB・OGからの応募が可能) 応募方法: リポビタンDブランドサイト内の特設フォームより必要事項を入力 特設サイト: https://lipovitan-point.com/?page=c_info_trainingcamp 応募期間と対象となる合宿 応募は6月と7月の2回に分けて受け付けられる。 応募区分 応募期間 お届け対象(合宿開催月) 6月応募分 2026年6月1日(月)〜 6月30日(火) 8月・9月開催の合宿 7月応募分 2026年7月1日(水)〜 7月31日(金) 9月開催の合宿 提供内容(コース一覧) 合宿の参加人数や宿泊日数に応じて、以下の4つのコースから選択が可能である。 Aコース: リポビタンD 50本 Bコース: リポビタンD 100本 Cコース: リポビタンD 200本 Dコース: リポビタンD 400本 製品概要 販売名: リポビタンD 製品区分: 指定医薬部外品 効能・効果: 疲労の回復・予防、集中力の維持・改善 用法・用量: 15才以上 1日1回1本 ブランドサイト: https://brand.taisho.co.jp/lipovitan/lipod/ お問い合わせ先 キャンペーンに関するお問い合わせ リポビタンキャンペーン事務局 電話番号:03-5610-0671 開設期間:2026年6月1日(月)~2026年10月9日(金) 受付時間:9:30~17:30 〈土・日・祝日を除く〉 製品に関するお問い合わせ 大正製薬株式会社 お客様119番室 電話番号:03-3985-1800
- データとマインドの融合が起こす製薬のイノベーション――サノフィ、アッヴィ、患者中心へ挑む二つのトランスフォーメーション
左から、AnswersNews編集長の前田雄樹氏、サノフィ株式会社スペシャルティケアビジネスユニット Alliance Immunology Franchise コマーシャルエフェクティブネスグループリードの金子弘輝氏、アッヴィ合同会社の人事本部長の松山京隆氏 2026年5月に幕張メッセで開催された「インターフェックスWeek 東京」の特別講演にて、「患者中心を実現する外的DX×内的DX〜サノフィとアッヴィが描く二つの変革軸〜」と題したセッションが行われた。 本セッションは、デジタルツールやデータを駆使した社外へのアプローチである「外的DX」と、データに基づく社員の働き方改革からアプローチする組織変革「内的DX」という、異なるベクトルから「患者中心」の実現を目指す両社の取り組みを紹介するものだ。 デジタルとデータで患者の声を起点とするビジネスモデルへ 前半の講演では、まずサノフィ株式会社のスペシャルティケアビジネスユニット Alliance Immunology Franchise コマーシャルエフェクティブネスグループリードである金子弘輝氏が登壇した。 サノフィでは、長年掲げられてきた「Patient Centricity(患者中心)」の理念を一歩進め、2023年に「Integrated Patient Engagement(患者とともに)」という言葉へ定義を刷新した。患者参画が最終段階のみに限られていた状況から一歩進み、事業全体を通して患者とともに意思決定を行っていく姿勢を明確にしている。 金子氏は、製薬企業が直接取得できる個人の医療データに制限がある中で、市場のインサイトや多様なフィードバック、患者データをAIと連携させ、高速かつ大規模に処理するビジネスエコシステムの構築について言及した。 特に注力しているのが、患者の治療のジャーニーにおける「治療前」と「治療継続期間」という二つのフェーズへの関わりである。まず治療開始前の不安解消に向けては、原因が分からない不調や受診への抵抗感を持つ層に対し、パートナー企業と協働して疾患啓発や受診勧奨を行うアプローチを進めている。さらに治療開始後においても、従来の「MRから医師への正しい情報提供」という一方通行のモデルから、患者一人ひとりの必要とする声を起点とした活動へとデザインを変更した。これに加えてモバイルアプリの継続改善なども行うことで、患者が最適な治療と出会い、それを安心して継続できる仕組みづくりを行っている。結果として、MRは医師が目の前の患者を具体的にイメージできるような、解像度の高い情報提供活動が可能になったという。 変革を推進するうえでのリーダーシップについて、金子氏は「周囲の無関心」が最大の障壁であると指摘した。マインドセットを変えるため、同じメッセージを短い期間で何度も繰り返し発信し続けること、そして小さなプロジェクトで具体的なアウトプットという名のクイックウィンを出し、コンセプトが真に患者のためになっていると周囲に証明することの2点を徹底したと語った。 居住地選択型営業職(エリアパートナー)がもたらす社員エンゲージメントと患者貢献 続いて、アッヴィ合同会社の人事本部長である松山京隆氏が登壇し、「社員体験(EX)を起点に作る患者中心の働き方改革」をテーマに、営業職のMRおよびエリアマネジャーを対象とした居住地が選択できる「エリアパートナー制度」(2026年1月開始)の取り組みを紹介した。 松山氏は、従来、製薬業界では全国転勤が当然とされてきたが、その環境は変化しつつあることについて説明した。転勤には社員の成長や組織の活性化という効果がある一方で、担当MRの頻繁な交代は医療関係者、その先にいる患者への影響につながることなる。また、共働き世帯の増加などの社会環境の変化に加え、社員のライフプランや家族への影響も大きくなっている。さらに、転勤までの期間の長さや頻度に対する不公平感もあり、エンゲージメントを低下させる要因にもなっていたという。 この新制度の導入にあたっては、リーダーたちから、特定の地域(首都圏など)に人材が偏るのではないか、一気に希望が殺到したら配置転換ができなくなる、といった不安や仮説的な懸念が寄せられた。 これに対し、事前に全営業職を対象としたオープンなアンケート調査を実施した。その結果から、懸念されたほど首都圏に偏ることはないというデータを示し、リーダー層の不安を検証し解消していった。さらに、全国転勤型社員(ナショナルパートナー)の手当を拡充するなど、不公平感をなくす設計を施した。 制度開始前年の9月に募集を開始したところ、対象となる営業社員の約2割がエリアパートナーを希望した。そのうちの約7割の希望をすでに実現し、残りの3割の社員についても3年以内に実現する方向性である。 「変革」を阻む壁をどう乗り越えたか 後半のパネルディスカッションでは、AnswersNews編集長の前田雄樹氏がモデレーターを務め、金子氏と松山氏を交えて「いかにして組織の変革を実現したか」という共通のテーマで、より深掘りした議論が交わされた。 前田氏から、変わることや変えることへの課題とそれをどう乗り越えたか、という問いが投げかけられると、両者からは変化への抵抗をどうマネジメントするかという本質的な知見が共有された。 松山氏は、変革を行う際には事前のアンケートといったデータの提示が不可欠であるとした。一方で、データだけに頼る危うさにも言及した。アンケートの回答という文字情報だけではすくい取れない、現場の真の課題やニュアンスを把握するため、自身もほぼ毎月のように全国の営業所に足を運び、現地のMRと同行して直接声を聞くという「肌感覚」も重要視している。 この人事トップによる現場同行の姿勢は、新制度の成果そのものにも直結している。エリアパートナー制度によってMRが特定の地域に根ざして活動を継続できるようになれば、データやAIの分析だけでは決して見えてこない、その地域固有の課題や医師・患者のリアルなニーズを現場で経験値として積み上げることが可能になる。これこそが、医師や患者へこれまで以上のベストなバリューを届けるための「想像力」や「好奇心」を社員の中に育むのだと松山氏は述べた。 この松山氏の意見に対し、デジタルやデータを扱う立場である金子氏も深く共感した。金子氏は、変化を推進する側にとって一番怖いのは、反対意見よりも反応がないという「無関心」であると指摘。アンケートの数字やシステム上のデータだけを見ていると、現場の本当の納得感や温度感、あるいは潜んでいる無関心さを見落としてしまう危険性がある。だからこそ、マクロなデータだけに頼るのではなく、ミクロな現場の声という肌感覚を往復することではじめて、推進リーダー自身が変革への恐怖を乗り越え、確信を持ってプロジェクトを前に進めることができるのだと、自身の経験を交えて応じた。 また松山氏は、この一見して患者中心と直接関係のなさそうな人事制度の改革について、社員の声を聴きながらスピーディに変革を推進することで、「患者さんと社員に最大のインパクトをもたらすために日本のヘルスケアを変革するリーダーになる」というビジョンの達成につながると総括した。
- 医療現場の「困難」を技術で解決する。学生サークル「MeDCraft」の挑戦
将来、薬剤師として現場に立つことを目指す薬学生にとって、現在の医療現場が抱える「人手不足」や「多忙を極める業務」は決して他人事ではない。ここでは、東京大学大学院 新領域創成科学研究科修士課程1年であり、学生サークル「MeDCraft(メドクラフト)」で現場の課題解決を目指すプロダクト開発に挑む秋池小夜子さんに、活動の思いを聞いた。研究室での基礎研究と、スタートアップさながらのアプリ開発。全く異なる二つの分野を全力で駆け抜ける秋池さんの姿勢は、専門性を模索する薬学生の皆さんに大きな刺激を与えてくれるはずだ。 MeDCraft 秋池小夜子さん インタビュー ――現在、どのような研究や活動をされているのでしょうか? 大学ではすい臓がんのマーカー探索などを行う研究室に所属していますが、私個人としてはALS(筋萎縮性側索硬化症)などの神経変性疾患に関連するタンパク質の研究に注力しています。 その一方で、学生サークルMeDCraftのメンバーとして、医療現場の切実な課題をテクノロジーで解決し、実際に現場で使われる「社会実装」を目指してプロダクトの開発に取り組んでいます。 ――MeDCraftを設立した経緯を教えてください。 きっかけは、大学で行われた「看護・医療現場の課題をものづくりで解決する」という体験型の講義でした。これは学部横断的にものづくりに挑戦する学生を集めるという主旨のもので、実際の看護現場が抱える課題に対し、グループワークでソリューションを考える機会があったのです。私たちのチームはそこで考案したアイデアを単なる演習で終わらせず、具体的なビジネスコンテストに応募しました。結果、賞をいただくことができ、「これは本気で取り組む価値がある」と確信したことが2025年9月のサークル設立へとつながりました。 また、私の友人が「看護師の仕事があまりにハードで、志半ばで辞めてしまった」という話を聞いたことも大きな動機になっています。医療現場には、技術があれば解決できる負担がまだ数多くあります。テクノロジーで現場の苦労を軽減し、誰もが志を持って働き続けられる環境をつくりたい。そんな強い思いを持って、コンテストで出会った仲間と共に活動をスタートさせました。 ――MeDCraftには、どのようなメンバーがいますか? 現在は15人ほどが在籍しており、インカレサークルとして多様なバックグラウンドを持つメンバーが集まっています。生物系や工学系、薬学部や情報系の学生はもちろん、医療現場での経験を持つメンバーもおり、専門も拠点もバラバラなところが強みです。 メンバーの拠点が多様なため、活動は月に2回ほどのオンラインミーティングが軸になっています。そこで各プロジェクトの進捗を共有し、役割ごとに作業を進めています。また、近隣に住むメンバー同士では、最近は週に2回ほど対面で集まり、リアルなものづくりを通じた交流も活発になってきています。 ――具体的なプロダクト開発の内容について教えてください。 看護師の業務を圧迫している大きな要因の一つに「ナースコール」があります。現状はコールが鳴っても現場に行くまで用件が分からず、行ってみたら「お水が欲しい」といった緊急性の低い用件であることも少なくありません。この「ナースコールの空振り」を防ぐため、事前に用件をチャット形式で伝え、内容を構造化して看護師に届ける仕組みを開発しています。 このプロジェクトは、東京都のスタートアップ創出支援プログラムに採択されたほか、川崎市の「プロジェクトCHANGE」が昨年開催した若手からの研究提案ピッチイベントで、最優秀賞をいただくことができました 。現在は、そのプロジェクトから得た研究費(研究費は研究室の先生が管理)を活用し、より本格的に開発を進めています。 もう一つ、他のメンバーが進めているのが「服薬支援デバイス」です。3Dプリンターで自作したストロー型デバイスに小型カメラを搭載し、画像認識によって服薬行動をモニタリングするものです。多様なバックグラウンドを持つメンバーがそろっているからこそ、多角的な視点で実用性の高い開発を目指しています。 ――現場の声を聞く中で、大切にしていることは何ですか? 現場の看護師は、雑務に追われるのではなく「本来の専門業務であるケアに集中したい」という強い思いを持っています。しかし、ベテランの方ほど「自分たちの努力や気合いでカバーできる」と無理をしてしまう面もあるようです。 一方で、新人や一度現場を離職した方からは「こういうツールがあれば続けられたかもしれない」という切実な声をいただきます。専門職がその専門性を最大限に発揮できる環境をつくるためにも、テクノロジーによる「現場の余白づくり」は不可欠だと確信しています。 ――最後に、読者へメッセージをお願いします。 まずは「やりたいこと」を今すぐ追求してほしいです。もっと知識をつけてからと先延ばしにするのではなく、学生の今だからこそ始められることがたくさんあります。サークル活動を通じて、むしろ1年生の方がアグレッシブに活躍できると感じることも多いです。今目の前にあることに全力で取り組んだ経験は、必ず将来の自分を助けてくれる糧になります。 MeDCraftでは、一緒に活動するメンバーを募集しています。医療やものづくりに興味がある方は、SNSのアカウントやホームページから、ぜひお気軽にメッセージをいただけるとうれしいです。 MeDCraft Webサイト https://bionano.t.u-tokyo.ac.jp/medcraft 新入生用LINEグループ https://line.me/ti/g/LXsvU2jGLC
- 「健康ハートの日 2026」合同記者発表会を開催――医療・薬学・学会の7代表が結束、全国3万拠点で「血圧測ろうぜ!」
左から、日本高血圧協会理事長・樂木宏美氏、日本高血圧学会理事長・苅尾七臣氏氏、日本病院薬剤師会専務理事・和泉啓司郎氏、日本保険薬局協会会長の藤井江美氏、日本チェーンドラッグストア協会会長・塚本厚志氏、日本薬剤師会会長・岩月進氏、日本循環器協会代表理事・小室一成氏 2026年5月26日、健康ハートの日実行委員会は、心臓病・脳卒中の予防キャンペーン「健康ハートの日 2026」の一環として実施される、薬局・ドラッグストア・病院企画「血圧測ろうぜ!」の合同記者発表会を開催した。 今年は、従来の薬局・ドラッグストアの枠組みに新たに「病院」が加わった薬剤師関連4団体がパートナーとして一堂に会し、さらに専門家組織である日本高血圧学会および日本高血圧協会が強力にバックアップする新体制が発足。発表会には日本の循環器医療、地域医療、薬学、および血圧研究を牽引する7名の代表者が登壇し、それぞれの立場から本企画にかける強い決意と、生活者の行動変容を促すための展望を語った。 全国3万拠点で挑む「攻めの予防医療」と循環器疾患の課題 会見の冒頭、日本循環器協会代表理事であり健康ハートの日実行委員会委員長を務める小室一成氏は、「高齢化社会を迎えたわが国において、循環器病は高齢者の死因や介護が必要となる原因の上位を占め、特に女性の死因では第1位となっています。しかし、循環器病は予防ができる病気です」と、循環器疾患を取り巻く重要な課題を指摘した。 高血圧の患者は日本国内に約4,300万人いるとされるが、自身が高血圧であると認識していない未病者が44%にものぼり、さらにその4分の3は血圧が高いことすら知らないという実態がある。診断されても治療を受けていない人や、治療中であっても十分に血圧がコントロールされていない人が多いことも大きな課題だ。また、循環器病は弁膜症、心筋梗塞、不整脈など病気の種類が多く、がんなどと比べて一般市民にとってその複雑さや予防の大切さが伝わりにくいという側面もある。 小室氏は、こうした課題を解決するために一昨年からスタートした「循環器病アドバイザー制度」の成果に言及。10のeラーニングと厳格なテストをクリアした約1万7,000人のアドバイザーが誕生しており、草の根の啓発活動が広がっていることを紹介した。さらに同制度には、専門性を高めた上位資格として「循環器病エキスパートアドバイザー」も設けられており、多くの薬剤師がこの資格を取得して、患者一人ひとりの状況に合わせた個別最適な治療アドバイスや生活習慣指導など、より高度な健康サポートに役立てている。 今回のキャンペーン全体における参加目標数は「3万拠点」に設定され、小室氏は薬剤師関連4団体が協力体制を敷くことへ大きな期待を寄せ、「大変心強く思っています。全体として全国3万拠点の健康拠点を通じて、この一大予防イベントを成功に導きたいと考えています」と、今年の全体の目標を力強く宣言した。 「上の血圧130」をアラートの基準に――専門学会からの提言 この呼びかけに対し、専門学会の立場から日本高血圧学会理事長の苅尾七臣氏が登壇。血圧管理の重要性を、「血圧は、社会生活のストレスや周囲の環境変化を敏感に反映し、心臓や血管へのリスクをダイレクトに伝える最大の指標です」と表現した。 脳卒中や心筋梗塞のリスク因子でありながら、十分にコントロールされている人が4分の1に過ぎない現状を危惧する苅尾氏は、今回のキャンペーンにおいて、上の血圧(収縮期血圧)「130」以上を、注意を促すアラートの基準とすることを明確に示した。「今回の『血圧測ろうぜ!』を通じて、これまで血圧を測ったことのない方を検出し、アラートを出す(気づきを与える)仕組みを社会全体に敷くため、学会としても全力で協力いたします」と述べ、基準値を超えた生活者に対して早期の気づきを与える重要性と、全面的なバックアップを約束した。 また、日本高血圧協会理事長の樂木宏美氏は、高血圧が「痛くもかゆくもない」ために市民への啓発が難しいという課題に触れつつ、日常的な測定で数値が高かった際の次の一手の重要性を強調。「確かな知識を持つ薬剤師の皆様が適切に医師や医療機関へつないでいく、その連携の方向性を共につくっていきたいと考え参画しました」と、医療連携のハブとしての薬局・病院への期待を語った。 身近な生活動線から医療現場までをつなぐ薬剤師関連4団体の決意 これを受け、地域住民を日々の生活のなかで支える各団体の代表からも、それぞれの職能を生かしたアプローチが示された。 日本薬剤師会会長の岩月進氏は、「セルフケアの重要性が叫ばれる中、血圧は体に傷をつけることなく数字として目の前に現れる、極めて健康管理に取り入れやすい指標です」とし、全国の薬局が最も身近な場所として「目に見える形での健康啓発と確実な健康増進を強力に推進してまいります」と意気込みを語った。 さらに、日本チェーンドラッグストア協会会長の塚本厚志氏は、昨年のキャンペーン参画実績(3団体で1万4,000拠点超)に触れつつ、ドラッグストア単体としての高い目標を掲げた。「昨年は3団体での参画でしたが、今年は4団体となりました。チェーンドラッグストア協会としては、協会として単独で1万店の参加を目指して盛り上げていきたいです」と意気込みを表明。「『攻めの予防医療』の旗印のもと、ドラッグストアのネットワークをフルに活用して血圧測定を習慣化させ、行動変容へと結びつけます」と述べ、生活者の普段の生活動線の中に血圧に触れる機会、あるいは自分の心臓をいたわる機会を創出していく重要性を訴えた。 先週、女性初の会長に就任したばかりの日本保険薬局協会会長の藤井江美氏も、「循環器疾患は日々の生活習慣の積み重ねによって予防が可能であり、まさに日常の中での気づきと継続した行動が鍵になります」と指摘。その上で、「私ども保険薬局は、単に薬を渡すだけの場所ではなく、地域の皆様に最も身近な医療機関の1つです。住民の皆様が健康への一歩を踏み出す大切な契機となる本企画に参画し、合同会見の場に臨めることを大変うれしく思います」と、薬局の相談機能をフルに活用していく姿勢を示した。 そして、今年から新たにこの輪に加わった日本病院薬剤師会からは、専務理事の和泉啓司郎氏が登壇し、公務のため欠席となった武田泰生会長の思いを代読する形でコメントした。「わが国の健康寿命延伸を考える上でも、日常的な血圧測定と適切な管理は極めて重要な課題です」とした上で、病院という立場から、血圧測定の啓発を通じて「心不全などの再入院を防止すること」も視野に入れた具体的なアプローチに言及。 「外来での主治医との共同薬物治療管理や化学療法に関わる中での指導に加え、特に入院患者が退院される際、家庭内血圧をきちんと測定・管理していただくためのアプローチや丁寧な説明を通じて、地域医療現場から本企画を支えてまいります」と、退院後の在宅管理へつなぐシームレスな医療貢献への決意を語った。 さらに会見では、「血圧測ろうぜ!」キャンペーンから生まれたスピンオフ企画として、全国で最も優れた血圧啓発活動を実施した薬局・ドラッグストア・病院を表彰するコンテスト「P-1グランプリ(全国薬局・ドラッグストア・病院啓発選手権)」についても触れられた。真夏の心臓病啓発プロジェクト「8月10日は健康ハートの日」の一環として行われるこのコンテストは、日頃の職能を生かした優れた啓発活動のアイデアや実績を称え合う場であり、今年は第91回日本循環器学会学術集会において、その輝かしい取り組みの成果が発表される予定だ。こうした多角的なアプローチで国民の健康増進を後押ししていく姿勢が示された。 ■ 開催概要 健康ハートの日 2026 薬局・ドラッグストア・病院企画「血圧測ろうぜ!」 実施期間:2026年7月1日(火)~8月31日(日)(8月10日は「健康ハートの日」) 主な取り組み内容: 全国の薬局、ドラッグストア、病院における啓発ポスターの掲示 リーフレットを用いた血圧管理啓発および健康相談の実施 特設血圧測定コーナーの設置による、地域住民への積極的な測定呼びかけ 医療現場、薬局、ドラッグストア、そして専門学会・協会がこれまでにない規模でスクラムを組む「健康ハートの日 2026」。全体で「全国3万拠点」の巻き込みを目指すこの夏の一大予防キャンペーンは、国民一人ひとりが自らの血圧と向き合い、健康への一歩を踏み出す大きな転換点となることが期待される。
- JACDS・塚本会長、スイッチOTC推進へ「業界の足元固め」を強調――薬剤師の職能拡大を訴え
塚本氏(中央) 日本チェーンドラッグストア協会(JACDS)は2026年5月26日、記者会見を開催した。会見の中で、会長の塚本厚志氏はスイッチOTC医薬品の推進に向けた課題や、今後の業界の方向性について見解を述べた。 スイッチOTCの推進と直面する「高い壁」 塚本氏は、スイッチOTCの推進を大前提とする協会の基本方針を改めて強調した。生活者がスイッチOTCを求めているのは明白であり、そうでなければ市場がこれほど活況を呈するはずがないと指摘。その推進にあたっては「安全性」と「薬剤師による確実な説明」の担保が絶対条件となるとした。 検討会議における慎重論と抵抗 直近の厚生労働省「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」で話題に上がった品目(ユベラNなど)を巡っては、業界側の「なぜスイッチ化が認められないのか」という感覚に対し、会議では意見が割れるなど慎重論が根強い。医師会など医療側からは、OTC化によって将来的に患者の自己負担が増えるのであれば、治療そのものに影響を及ぼしかねないという懸念が示されており、スイッチ化への抵抗感は非常に強いのが現状であるという。 業界内のガバナンスとコンプライアンス強化 こうした強い抵抗や懸念をクリアするためには、まずドラッグストア業界側が襟を正す必要があると塚本氏は述べた。現在、ガイドラインの遵守状況について調査が入っている段階だが、協会の加盟企業間にはまだガバナンスやコンプライアンスのレベルに格差がある。外的な批判を跳ね返すためにも、「まずは業界全体の足元を固め、レベルアップを図ることが最優先課題である」とした。 社会保障制度の維持と「薬剤師の職能拡大」 持続可能な社会保障制度を維持するため、塚本氏は医師から薬剤師へのタスクシフトやシェアリングを進め、薬剤師の職能を広げ、深掘りしていくことが不可欠な局面に来ていると主張した。 日本は他のOECD関連国と比較して、臨床医の数が少ない一方で、薬剤師の数は非常に多いというデータが出ている。このデータを踏まえ、限られた医療資源を効率的に活用するためにも、薬剤師が果たすべき役割は大きいとした。 近年の動きとして、緊急避妊薬の薬局での販売をはじめ、スイッチOTC化される医薬品の選択肢は着実に増えつつある。これらは、薬剤師という職能を生活者の中にしっかりと根付かせるための「試金石」であるとした。安全性や作用の観点から議論が一時ストップする可能性はあるが、全体の大きな流れとしては進んでいくという見解を示した。 最後に塚本氏は、「今まさに、薬剤師が生活者や患者と真摯に向き合い、正しい判断ができるかどうかが厳しく問われている段階である」と締めくくった。
- 「受験料で挑戦をあきらめないで」千葉科学大学が2027年度入試から検定料を大幅減額、未来への投資へ
千葉科学大学は、2027年度入試(2026年度実施分)より、入学検定料を大幅に減額することを決定した。 同大学は2026年4月、設置者が学校法人大城学園へと変更になり、「第二の開学」という新たな節目を迎えている。この新体制への移行を機に、受験生の経済的負担を軽減し、より多くの人々が進学への一歩を踏み出せる環境づくりを目指して、今回の入学検定料改定が実施されることとなった。 入試は、未来への「投資」 同大学では、入試を単なる選抜の場ではなく、未来を共につくる学生との出会いの機会と考えている。 大学卒業後の企業の採用活動において受験料(選考料)を徴収しないことが一般的であるように、新しい才能と出会うことは組織にとって未来への投資である。同大学もこの考え方を入試に取り入れ、経済的な理由によって挑戦の機会が狭まることのないよう、より多くの受験生へ門戸を広げていく。 「人を助けたい」という思いを持つ受験生の第一歩を、大学側も全力で応援する構えだ。 改定内容 2027年度入試(2026年度実施分)からの改定内容は以下の通り。 入試区分 改定前 改定後 学校推薦型選抜(指定校推薦入試など) 35,000円 0円 大学入学共通テスト利用入試 20,000円 0円 総合型選抜・一般選抜など(大学院除く) 35,000円 10,000円 一歩踏み出しやすい入試へ 今回の改定により、出願時の経済的負担が軽減され、複数校への挑戦や併願がしやすくなる。これにより、「まずは出願してみる」という前向きな進路選択が可能となる。 入学検定料改定の想いを伝える特設LPも公開 今回の入学検定料改定にあわせて、受験生向けの特設ページも公開された。 特設ページでは、「立ち上がれ、何度でも。」をコンセプトに、入試を“選抜”ではなく“挑戦のきっかけ”として捉える同大学の考え方が紹介されている。改定内容だけでなく、学校推薦型選抜や大学入学共通テスト利用入試、総合型選抜など、それぞれの入試制度の特徴や活用イメージも分かりやすく掲載し、受験生一人ひとりが自分に合った進路選択をしやすい構成となっている。 「受験料が理由で挑戦をあきらめてほしくない」という同大学の強い思いが込められた、新しい受験生応援コンテンツである。 特設ページ: https://lp.cis.ac.jp/gengaku 大学公式サイト: https://www.cis.ac.jp/
- 産学連携の懸け橋「アカデミックフォーラム」で注目を集める次世代DDS技術――エレクトロスピニング法を用いた核酸医薬含有PVAナノファイバーシートの開発
岐阜薬科大学5年の三宅誓さん 大学の研究機関が最先端の技術シーズを発表し、医薬品企業や再生医療企業との産学連携・共同研究の足がかりを築く「アカデミックフォーラム」。幕張メッセで開催された「第28回 インターフェックスWeek 東京/第8回 再生医療EXPO 東京」の同フォーラムにおいて、岐阜薬科大学ナノファイバー創剤学寄附講座教授の田原耕平氏が、核酸医薬の未来を切り拓く革新的なDDS(ドラッグデリバリーシステム)技術を発表した。製剤化が極めて困難とされる核酸医薬に対し、ナノファイバー技術を用いたアプローチは、ブースを訪れた多くの企業担当者の関心を集めていた。 熱をかけないマイルドな固形化プロセスで、核酸の保存安定性を劇的に向上 田原氏らの研究グループがプラットフォーム構築の基盤としたのは、古くから紡績分野などで用いられてきた紡糸技術「エレクトロスピニング(電界紡糸)法」である。この技術の最大のメリットは、熱を使わない極めてマイルドな条件下で、液体原料をダイレクトに固形化(ナノファイバー化)できる点にある。 近年、mRNAやsiRNAといった核酸医薬は次世代のモダリティとして期待されているが、熱や水分に対して非常に不安定であり、分子の分解を防ぐための厳重な冷暗・冷凍管理が社会実装への大きな障壁となっていた。 本研究では、mRNAやsiRNAなどの核酸医薬をあらかじめ脂質成分と複合化させ、リポプレックスやLNP(脂質ナノ粒子)の形態とした。その後、エレクトロスピニング法を用いてPVA(ポリビニルアルコール)を基材とするナノファイバーの繊維内部に、これらの複合体を構造的に安定な状態で組み込むことに成功した。 特筆すべきは、このPVAナノファイバーシートに封入することで、核酸医薬の課題であった保存安定性が劇的に向上した点である。実験では、常温保存時であっても1カ月間にわたり核酸分子の分解が強力に抑制されることが確認されており、革新的な製剤化技術としての可能性を示している。 PVAの物性制御がもたらす「コントロール・リリース」の最適化 本研究のさらなる強みは、PVAの合成技術(架橋度、重合度、けん化度といったパラメータの制御)により、内包された薬剤の放出挙動を自在に制御(コントロール・リリース)できる点にある。 実際に、用いるPVAのグレードによって細胞内導入や遺伝子発現、さらにはノックダウン効果に有意な差が生じることが実証されている。 完全けん化PVA(難水溶性):ファイバーからのリポプレックスの放出(リリース)が低く抑えられ、持続的な局所送達に適した挙動を示す。 部分けん化PVA(易水溶性):水への溶解性が高いため、水分に触れた直後から効率的に薬剤を放出し、高い遺伝子発現へと繋がることが確認された。 このように、適応部位や目的に応じてポリマーの物性を緻密にチューニングできる点は、創剤開発において大きなアドバンテージとなる。 幅広い新剤形への応用と、産学連携による社会実装へのロードマップ 高分子ナノファイバーは、あらゆる医薬品の可能性を広げる「次世代の製剤化プラットフォーム」になり得るポテンシャルを秘めている。 本寄附講座では、同大学製剤学研究室と強固な連携体制を敷き、この「メディカルナノファイバー」を新たな剤形として確立(創剤)し、社会実装することを目標に掲げている。適用可能な剤形は、皮膚や眼、粘膜表面をターゲットとした局所送達型的外用剤(貼付剤)に留まらない。錠剤やフィルム製剤といった「経口製剤」、口腔内での吸収を狙う「舌下フィルム製剤」、さらには「吸入剤」にいたるまで、極めて幅広い展開が模索されている。 また、熱処理を行わないマイルドなプロセスであるため、医薬品分野のみならず、熱に弱く不安定な化合物を扱うケースが多い「化粧品(美容パックなど)」や「機能性食品」の分野への応用展開も視野に入れている。 この優れた研究成果の社会実装を加速させるべく、2025年6月17日には同寄附講座発の大学発ベンチャーとして「株式会社ジェノフィブリクス」が設立された。同社はナノファイバー創剤技術をコアに据え、医薬品・化粧品・食品の3分野において新規製剤および高付加価値素材の開発を急ピッチで進めている。 未来の医療の担い手 今回の展示ブースで、企業の専門家を相手に堂々と説明にあたってくれたのは、製剤学研究室の学部5年生である三宅誓さんだ。三宅さんはこの壮大なプロジェクトの一翼を担い、日々mRNA含有PVAナノファイバーの調製や評価といった研究に実務レベルで深く打ち込んでいる。 病院・薬局実務実習や、目前に迫る国家試験の準備に追われる日々を過ごしながらも、「大変ですけれど、研究は本当に楽しいです」と笑顔で語る姿が非常に印象的であった。将来は大学院への進学を予定しており、さらに自身の研究を深めていく意向だという。 こうした薬学生たちが生み出す情熱と飽くなき探究心。これこそが、高度化する未来の医療社会全体、そして次世代のヘルスケア産業の発展を力強く牽引していく確固たる原動力になるに違いない。
- 【薬師のことのは|ほうかご】インターンシップって、行く意味あるの?
執筆:しほ(薬剤師) 薬学生の皆さん、こんにちは。しほです。こちらの連載では、薬剤師になってから、私が気付いた『学生時代に”あれ”をやる意味』をお話しています。今日のテーマは、『インターン(インターンシップ)』です。私は皆さんと同じ6年制卒で、インターンにも複数参加しました。「インターンって行く意味あるの?」と、思われている方もいるかもしれません。貴重なお休み期間、存分に楽しみたいですよね。たった数日でいいです。この“インターン”に時間を使ってみませんか? きっと、自信を持った将来の決断につながるはずですよ。 インターンとは、在学中に企業で実務を体験するなどして、会社のことをよく知る場のことです。1day・短期インターン(1日〜2週間)もあれば、長期インターン(数カ月〜)もあります。大学のキャリアセンター、就活サイト、企業の公式サイトなどで募集があり、企業によって開催時期が異なります。 私は、4年生の夏休みに初めてインターンに参加しました。4年時は製薬会社を選びました。今は皆さん、インターンの参加時期が早期化しているそうですが、当時、4年生でその企業に参加していたのは自分も含めて2人しかいませんでした。その他は全員5年生の先輩方で、全国から多数集まっていました。日程は1週間。その企業や製品を学び、MRさんへの同行、プレゼン…さまざまなプログラムが用意されていました。企業のこと、MRのこと、ここを目指すインターン生のことなど、対面でないと分からないことが、そこにはありました。 ある日の朝、私は集合時間の5分前に会場の席に到着しました。すると、「おぉ!4年生!やっと来たか!」と、先輩に言われました。周りを見渡すと、私以外のインターン生は席にそろっていました。自分は時間に間に合っている気でいましたが、社会人としてはこの姿勢は不適切だったのです。大学では授業開始までに席に着ければいい。それと同様な学生気分ではいけなかったのです。私はその日注目を浴びて、自分の至らなさを痛感しました。私のような恥ずかしい経験をしないように、皆さんもお気をつけくださいね。 社会人になり、インターンにて就職前に社会を少し経験できたことは非常によかったと思っています。プログラム終了後には、懇親会がありました。そこで、先輩にこっそりと言われた言葉を今でも覚えています。「ねぇ、○○さん。懇親会でも、会社の雰囲気をちゃんと見るんだよ」と、耳打ちをされました。ただ楽しむだけではいけないのです。プログラムと違う場所で話すことは、より深い内容になることもあります。実際にその企業に就職したら、目の前の方々と一緒に仕事をすることになります。その懇親会での空気感について自分がどう感じるのか、会社のどのような部分に魅力を感じて、入社を希望するのか。インターンの段階では、選ばれる一面がある一方で、自分たちも会社を選びに来ているということを忘れてはならないのです。 5年生になり、私は薬局のインターンに複数参加しました。“薬局”と一括りに言っても、会社によって全く異なります。皆さんは、就職後にどのようなことを重視しますか? やりたいことをできるか、福利厚生、教育面の充実など、それぞれでしょう。 私が学生時代に想定できていなかったのは、“時代の変化に対応している会社か”ということです。医療、そして薬剤師に求められる役割や取り巻く環境は、年々変化しています。ここ数年においては、オンライン診療、マイナ保険証、緊急避妊薬の薬局販売などは、皆さんも想像しやすい変化ではないでしょうか。 きっと、皆さんが働き始める頃には更に時代は変化しています。2年に1度、調剤報酬改定というものがあり、調剤に関わる点数(値段)や、仕組みの改定が行われます。それを経ても尚、成長し続けている会社か否かは、就職後の安心のためにも大切なポイントではないでしょうか。そのような話も、インターンできっと聞くことができます。 今回はインターンの話をしましたが、企業説明会においても、個人的には手軽なオンラインより対面がおすすめです。会社の空気感を肌で感じ、より深く知りながら自分の価値観に合う企業を探せるため、就職後、「思っていたのと違った」というギャップを防ぐことができるでしょう。 6年間の血のにじむような努力の後、自分にぴったりの就職先で大きく羽ばたくために、インターンをぜひ、活用してみてください。 プロフィール しほ:薬剤師。一児の母。薬学の専門性に加え、英語学習にも挑戦。AI時代だからこそ、自身の「生の声」で伝えることを大切にし、ポッドキャストやブログを通じて健康・育児・学習の記録を多角的・多層的に発信している。【note】https://note.com/kusushi_kotonoha











