「治療と仕事の両立」を目指して。Johnson & JohnsonがIBD患者を支える「I-BUDDY」ストーリーを始動
- toso132
- 21 時間前
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近年、日本を含むアジア地域で患者数が増加している「炎症性腸疾患(IBD)」。これは免疫の異常によって大腸や小腸の粘膜に慢性的な炎症を引き起こす病気であり、主に大腸に病変が生じる「潰瘍性大腸炎(UC)」と、消化管全体に連続性のない病変が生じる「クローン病(CD)」の総称である(5)。発症の多くが思春期(6)で下痢、血便、腹痛などの症状(7)を引き起こすことから、学業(8)やキャリア(9)、対人関係の形成(10)など、患者の人生の選択に大きな影響を与える指定難病となっている。
Johnson & Johnson(J&J)は、2025年にIBDとともに生きる患者を支援するための取り組み「Dual Control〜治療と仕事の両立〜」を開始した。そして2026年5月19日、同社はこの活動の第2弾として、新たなプロジェクト「I-BUDDY」ストーリーの始動を発表した。背景には、最新の医療データが示す「治療の重要性」と、実際の「患者の認識」の間にある大きなギャップが存在している。
最新データが実証する「内視鏡的寛解」の重要性
2026年5月に開催された国際学会「Digestive Disease Week(DDW)2026」において、IBD治療に関する極めて重要な最新データが発表された。大腸内視鏡検査において、腸の粘膜に活動性の病変(炎症など)が認められない状態を「内視鏡的寛解(または粘膜治癒)」と呼ぶ。この状態を達成することが、将来的なリスクを劇的に下げることが明らかになった(3)。
UC患者の場合、内視鏡的寛解を達成することで症状悪化のリスクが68%低下し、手術が必要となる可能性も4分の1に抑えられる(2)。また、CD患者の場合においても、症状悪化のリスクが41%低下し、手術の必要性が約3分の1に減少するほか、ステロイド薬の使用量低減にもつながることが示された(1)。このように、単に「おなかの痛みが引いた」「便の回数が減った」という目に見える症状の改善にとどまらず、腸の粘膜そのものをしっかり治す「内視鏡的寛解」が、長期的な安定において非常に重要なゴールとなる。
浮き彫りになった「認識のギャップ」
しかし、データがその重要性を証明する一方で、衝撃的な事実も明らかになった。ある調査によると、最も多く大腸内視鏡検査などを受けているにもかかわらず、IBD患者の60%以上が「粘膜治癒(内視鏡的寛解)」という言葉自体を「聞いたことがない」と回答したのである(2)(3)。
医療の現場が進める「一歩進んだ治療ゴール」が、それを必要とする患者にまだ十分に届いていない。この認識のギャップを埋めるためには、医師と患者が治療の目的や意味をしっかりと共有し、一緒に治療方針を決めていく「共有意思決定(Shared Decision-Making: SDM)」が不可欠だ。
新たな取り組み「I-BUDDY」ストーリーとは?
こうした現状を受け、J&Jは前述の「Dual Control〜治療と仕事の両立〜」をさらに一歩進め、今回の「I-BUDDY」ストーリーを開始した。
このプロジェクトでは、主治医や看護師といった医療従事者、そして家族や友人など、患者を近くで支えるさまざまな“バディ(相棒)”との連携にスポットを当てる。実際にバディたちと協力し合いながら、どのように治療と仕事を両立させているのか、リアルなストーリーを患者向け資材として展開していく予定である。互いに寄り添う気持ちがあれば、全ての人はバディになることができる。
ストーリーを通じて、患者がより深いレベルでの疾患コントロール(内視鏡的寛解)を目指すきっかけをつくるとともに、周囲の理解を深めることで、一人ひとりが自分らしい生活や働き方を実現できるよう後押ししていくことを目指している。現在、日本国内には約31万人のUC患者と、約9万人のCD患者がいると推定されている(11)。もし自身や大切な人がIBDと向き合っているなら、次の診察の機会に、ぜひ主治医と「寛解のゴール」について言葉を交わしてみてはいかがだろうか。
5月19日は「IBDを理解する日」という記念日である。この節目にあたり、これから医療の担い手となる薬学生の皆さんにも、IBDという病気や患者が置かれている現状について深く知ってほしいと願っている。将来、薬剤師として服薬指導を行う際には、単に目の前の症状を抑えるだけでなく、患者が「内視鏡的寛解」という真の治療ゴールを目指せるようしっかりと並走することが求められる。そして、患者が学業や仕事と治療を高いレベルで両立していけるよう、医療の現場から支える心強いバディの一人に、薬学生の皆さんがなってくれることを期待している。

関連ウェブサイト:IBDとはたらくプロジェクト
参考文献
1 Truyers, C., Naessens, D., Sanon, M., Wu, E., Kwong, J. and Adsul, S. (2026) 'Long-term clinical outcomes, IBD-related surgery, and corticosteroid use in patients with Crohn's disease in endoscopic remission: a retrospective cohort analysis from the Crohn's & Colitis Foundation database', poster presented at Digestive Disease Week (DDW) 2026, Chicago, IL and online, 2–5 May. Abstract no. Sa1521.
2 ruyers, C., Naessens, D., Sanon, M., Wu, E., Kwong, J. and Adsul, S. (2026) 'Impact of endoscopic remission on long-term outcomes and IBD-related surgery in patients with ulcerative colitis: a retrospective cohort analysis from the Crohn's & Colitis Foundation database', poster presented at Digestive Disease Week (DDW) 2026, Chicago, IL and online, 2–5 May. Abstract no. Sa1521.
3 Rubin, D.T., Sninsky, C., Siegmund, B., Sans, M., Hart, A., Bressler, B., Bouhnik, Y., Armuzzi, A. and Afzali, A. (2021) 'International perspectives on management of inflammatory bowel disease: opinion differences and similarities between patients and physicians from the IBD GAPPS survey', Inflammatory Bowel Diseases, 27(12), pp. 1942–1953. doi: 10.1093/ibd/izab006.
4 Wood, D.W., Treiman, K., Rivell, A., van Deen, W.K., Heyison, H., Mattar, M.C., Power, S., Strauss, A., Syal, G., Zullow, S. and Ehrlich, O.G. (2025) 'Communicating information regarding IBD remission to patients: evidence from a survey of adult patients in the United States', Inflammatory Bowel Diseases, 31(6), pp. 1605–1615. doi: 10.1093/ibd/izae201.
5 Crohn's & Colitis Foundation (n.d.) 'What is IBD?'. Available at: https://www.crohnscolitisfoundation.org/patientsandcaregivers/what-is-ibd (Accessed: 4 September 2025).
6 Rosen, M.J., Dhawan, A. and Saeed, S.A. (2015) 'Inflammatory bowel disease in children and adolescents', JAMA Pediatrics, 169(11), pp. 1053–1060. doi: 10.1001/jamapediatrics.2015.1982.
7 SingHealth. (n.d.). Inflammatory bowel disease – Conditions & treatments. Available at: https://www.singhealth.com.sg/symptoms-treatments/inflammatory-bowel-disease (Accessed: September 4, 2025)
8 Giga A, Pappa D, Manthou P, et al. Psychological Impact of Inflammatory Bowel Disease on University Students: A Systematic Review. Cureus. 2024;16(4):e59176. Published 2024 Apr 27. doi:10.7759/cureus.59176
9 Marri, S.R. and Buchman, A.L. (2005) 'The education and employment status of patients with inflammatory bowel diseases', Inflammatory Bowel Diseases, 11(2), pp. 171–177. doi: 10.1097/00054725-200502000-00011.
10 Marri, S.R. and Buchman, A.L. (2005) 'The education and employment status of patients with inflammatory bowel diseases', Inflammatory Bowel Diseases, 11(2), pp. 171–177. doi: 10.1097/00054725-200502000-00011.
11 Tsutsui, A., Murakami, Y., Nishiwaki, Y. et al. Nationwide estimates of patient numbers and prevalence rates of ulcerative colitis and Crohn’s disease in Japan in 2023. J Gastroenterol 60, 1513–1522 (2025). https://doi.org/10.1007/s00535-025-02295-z, Accessed on 6 January 2026.



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