第3回日韓薬局交流会に参加して
- toso132
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更新日:3 時間前
執筆・参加メンバー 串田一樹(昭和薬科大学、薬局イノベーション協議会)、藤田珠理(薬局ホームケアファーマシー田無店)、坂井美知子(株式会社 薬心堂)、木村雅彦・篠崎裕司(あけぼの薬局)、三砂慶太・倉地勇斗(おとどけ薬局)、秋 月鳳(ひまわり薬局)

交流会の歩みと開催背景

「日韓薬局交流会」は、2017年9月にソウルで開催された第77回FIP(国際薬剤師・薬学連合)世界会議を機に産声を上げました。その後、開催はコロナ禍の影響で延期になっていましたが、第2回目の日韓薬局交流会は2023年6月に開催されました。2024年10月にはFAPA2024 in SEOUL(第30回アジア薬剤師連合学術大会)がソウルにあるCOEXで開催されたときには私たちも参加しました。第3回の日韓薬局交流会は2025年9月20日に京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市にある盆唐(プンダン)ソウル大学病院ヘルスケア革新パークで開催されました。当日は、京畿道薬剤師会の会員の他、全国市・道薬剤師会員など60人を超える参加者がありました。日本、韓国共に高齢社会を迎えているので、共通の関心テーマである地域包括ケアシステムについて意見交換をしました。また、韓国の薬剤師さんたちは日本の学会やJAPANドラッグストアショーに参加され、その後、互いの交流が続いています。このように、互いの国では高齢社会が到来している共通点があり、共に学ぶことの意義があります。
急速に進む韓国の高齢化と「ケア統合支援法」
韓国の高齢化スピードは凄まじく、2000年に6.8%だった高齢化率は2024年に20%に達し、2040年には39.4%に及ぶと推計されています。日本、韓国共に急速に高齢社会を迎えている状況は同じで、日本の地域包括ケアシステムと同じように、韓国では2026年3月27日から「医療・療養等地域ケアの統合支援に関する法律(ケア統合支援法)」が施行されます。この法律は「第1条(目的)この法律は、老衰、障害、疾病、事故などにより日常生活の遂行に困難を抱える人が、住み慣れた場所で引き続き健康な生活を営むことができるように、医療・療養などのケア支援を統合・連携して提供するために必要な事項を規定し、国民の健康で人間らしい生活の維持及び増進に寄与することを目的とする」と明記されています。
韓国の薬剤師は「考える専門職」


韓国では日本に先駆けて医薬品のOTC化が進んでいます。さらに印象的だったのは、OTC医薬品だけでなく、ペット用サプリメントや栄養についても、薬剤師が専門的に対応していたことです。これは単なる制度の違いではありません。国として、薬剤師を「考える専門職」として深く信頼している証だと感じました。薬の選択や調整や、そこに関わる生活因子の分析に関しても、責任をもって任せられる存在であると認められているからこそ、こうした制度が成立しているのです。
特に感動したのは、韓国では医師・看護師・薬剤師とともに、薬学生までもがオンラインで減薬の協議に参加しているという点です。学生であっても、現場の医療者と同じテーブルにつき、薬学的視点から意見を述べ、実際に処方が調整されます。その結果、薬剤師への減薬フィーは日本の約8倍、そして薬学生へのフィーでさえ日本の約2.4倍が支払われていました。しかも、減薬を行えるのは、研修を修了し、認定を受けた一部の薬局のみです。これは、「誰でもできる仕事」ではないという、薬剤師の専門性への明確な評価にほかなりません。
薬剤師訪問が先駆けて始まった地域の一つが、韓国の京畿道地区薬剤師会でした。当初、医師や看護師の中には「訪問に薬剤師は来なくてもいいのではないか」という声もあったそうです。
そのとき、一人の女性薬剤師がこう言いました。「たとえ1種類でも薬を飲んでいるなら、それは薬剤師の責任です」と。この言葉をきっかけに薬剤師訪問が始まり、今では医師・看護師と協働して薬物治療を行うことがスタンダードになっています。実際、薬剤師が介入したことで、たとえ1剤のみの服用であっても、副作用に気づけたのは薬剤師だけだった――そうした事例が積み重ねられていました。
韓国では、4〜5種類以上の薬を併用している場合、有害作用が起きている可能性が高いという認識が、医療者の間で共有されています。これは日本の見解よりも厳しく、それだけ薬剤師の薬学的専門性を信頼しているからこそ、より厳しい目を期待されているという、評価でもあるように感じました。
薬局視察を終えて―参加者の声

●今回の韓国薬局視察で最も印象に残ったのは、保険薬局におけるOTC医薬品の取り扱いの幅広さでした。一般的なOTC医薬品に加え、美容や健康維持など、疾病に直接結びつかない分野の商品が豊富に並び、薬局が日常生活に寄り添う存在であることを強く感じました。
韓国でも高齢化が進み在宅への取り組みが始まっていますが、薬剤師が地域医療に関わるには、自ら一歩踏み出す勇気が欠かせません。京畿道薬剤師会の先駆的な活動に共感し、西東京市での在宅多職種連携の実践を共有する中で、言葉を超えて志を分かち合える貴重な機会となりました。
●韓国の薬局およびドラッグストアを視察し、制度と実務の違いを実感しました。医薬品の多くがボトル包装で供給され、調剤時に全て分包する運用が徹底されている点は印象的でした。しかも一包化に対する加算は設けられていません。一方で、在宅医療に特化した薬局はほとんど存在せず、薬剤師の活動は外来調剤が中心です。今後、韓国でも急速な高齢化が進むことを見据えると、在宅分野における薬剤師の役割拡大は重要なテーマとなっていくことが確実です。今回の視察は、日本の在宅専門薬局の意義と可能性を再考する契機となりました。

●韓国での薬局見学を通じ、日本の薬局との構造的・機能的な違いを学ぶことができました。大学病院門前の薬局では、調剤はほぼ一包化で行われ、待合室から調剤室が見えない設計や、医薬品倉庫を別階に設けるなど、日本とは異なる空間構成が採用されていました。日本では制度上難しいものの、これらは業務効率や薬剤師の作業環境に影響する点として印象に残りました。2件目に訪問した薬局は調剤とOTCの売り上げが同程度であり、測定機器を活用した健康評価からサプリメント等の販売につなげる体制が構築されていました。また、OTC売り場に自然に椅子を配置する設計は、待ち時間を「購買・健康体験」へと変えており、日本以上に薬局が「健康支援の場」として機能している姿が印象的でした。
●今回、現地集合・現地解散の2泊3日のツアーでした。日々の忙しい業務の中で、ちょっと海を渡って隣国に行ってみると、同じ気持ちをもった薬剤師の仲間がいたことに「明日からも頑張ろう」という気持ちになりました。



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