【薬師のことのは|ほうかご】基礎実習って、やる意味あるの?
皆さんは、薬学部に入学して早々、1~3年生の間に基礎実習を経験することと思います。学校によって時期や名称は異なりますが、化学・生物・物理系の基礎実験を一通り経験しますよね。薬学生とお話をし、「基礎実習をやる意味」について疑問に思われている方々がいらっしゃいましたので、今回はその答えを紐解いていこうと思います。毎日1限目から出席し、やっと授業が終わったと思ったら、夕方は基礎実習。実習が終われば外は真っ暗。他学部の同級生を見てうらやましくなるお気持ちもよく分かります。当時、私も「全然大学生っぽいことしてないな」と、毎日の暗い帰り道で思っていました。なぜ、薬学部では基礎実習が行われるのでしょう。
少し堅苦しい話になるかもしれませんが、まず、文部科学省より策定された『薬学教育モデル・コア・カリキュラム』についてお話をします。医療を取り巻く社会構造の変化が著しいことは、皆さんも身近に感じられていることでしょう。多様な時代の変化に柔軟に対応し、社会のニーズに応える医療人の養成が必須となってきています。そのため、医学・歯学・薬学で共通して求められる資質・能力を整理し、3領域の連携を意識した教育内容へとカリキュラムが改訂されました。つまり、「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人」が必要とされているわけです。医療や社会が変化しても、自ら考え、多職種と連携して判断できる薬剤師になりましょうということですね。その判断の土台に、「基礎薬学」が必要になってきます。この土台が、医療薬学・衛生薬学・臨床薬学・薬学研究につながります。コアカリにおいても、基礎薬学をこれらの領域の「科学的根幹」としています。その基礎薬学を、実際に使って確かめる場が、皆さんが行っている「基礎実習」です。講義で覚えた知識を、観察・測定・分析などによって目の前の実物と結び付けていくのです。例えば、吸光度やクロマトグラフィーなど、実際に見たり触ったりして、やっと理解が深まることを実感した方も多いのではないでしょうか。さらに、基礎実習では、単に操作をして終わりではありませんよね。得られたデータの意味を考えたり、結果が正しいのか疑ったり、なぜうまくいかなかったのか分析したりしますよね。それが先述しました、自ら考え、根拠をもって柔軟に対応・判断ができる力を養う準備になるわけです。つまり、基礎実習では、単に実験をするのではなく、①講義で学んだ知識を実際の現象と結びつけること②観察・測定・分析などの基本的な技能を身につけること③得られた結果を解釈し、根拠をもって判断する力を養うこと―を意識していただきたいです。知識があるだけの薬剤師ではなく、その知識を使って考え、判断できる薬剤師。変わりゆく時代に置いてきぼりにならない薬剤師を目指したいですね。

とはいえ、国試には関係ないよね?薬剤師になって、この知識は使わないのでは?と思われる方もいるでしょう。ここではっきりとお伝えしたいのは、実習で実際に見たり触ったりしたことは、何年たっても記憶に残るということです。私自身がそうです。卒後何年も覚えています。国試勉強の際にも、実習で得た具体的なイメージが理解や記憶を助けてくれるのです。もし基礎実習を疎かにし、国試の勉強をする際に、問題文を読むだけで吸光度測定の具体的なイメージがつくでしょうか?基礎実習を終えてしまえば、研究室や仕事で同様の実験をできる環境がない限りは、実験をしたくても身近にできる場所はありません。実際に実習をしている期間にはなかなか気が付かないとは思いますが、基礎実習というものは、非常に貴重な場なのです。
もし、1~3年生の方で、基礎実習の時間が億劫な方がいらっしゃいましたら、今その瞬間がかけがえのない時間であり、必ず今後の土台となり自身の助けとなるのだと信じていただければと思います。そして、一緒に実習を乗り越えた班のメンバーやペアとも、強い絆が生まれ、卒業まで助け合える仲間となるでしょう。また、4年生以降で、無事に基礎実習を終えられた皆さん、お疲れ様でした。無意識のうちに基礎実習でやった経験が皆さんの記憶に定着し、今後の勉強で「あれだ!」と思える瞬間があることを楽しみに、実務実習や試験勉強に取り組まれてくださいね。

プロフィール
しほ:薬剤師。一児の母。薬学の専門性に加え、英語学習にも挑戦。AI時代だからこそ、自身の「生の声」で伝えることを大切にし、ポッドキャストやブログを通じて健康・育児・学習の記録を多角的・多層的に発信している。【note】https://note.com/kusushi_kotonoha



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