「BioJapan 2026」で魅せる「埋もれた研究」の可能性:東京薬科大学広報誌『CERT』が開くオープンイノベーション

アジア最大のバイオビジネスパートナリングイベントであり、2026年10月7日から9日までパシフィコ横浜で開催された「BioJapan 2026」(同時開催:再生医療JAPAN / healthTECH JAPAN)には、世界40か国・地域から過去最大規模となる1,700社・団体以上が出展・参加している。会場では、大手製薬企業やバイオものづくり、受託製造(CDMO)などの多彩な企業に加え、先端のバイオ研究シーズを持つ大学や大学発スタートアップなどが集結している。また、全国の自治体が共同パビリオン形式などで出展し、地域のバイオクラスターや地元発ベンチャーの誘致・支援も行われている。
そのような多様な出会いが生まれる会場内のブースにおいて、東京薬科大学は自由なコミュニケーションの場を展開し、潜在的なパートナーや顧客との出会いを実現している。その中で活用されているのが研究活動広報誌『CERT(The Cutting-Edge Research at TOYAKU)』である。
独自ルールによる全研究者の可視化と体系化

事業開発・研究アライアンス・URA事務局サポーターを務める林文彦氏(薬剤師・博士(薬学))は、東京薬科大学イノベーション推進センターの事務局をサポートする立場から、創刊の狙いについて次のように語っている。「学内ではまだ知られていなくても、実は学外へ向けて非常に優れた研究成果を出している研究者がいます。そうした『隠れたタレント』を発掘したいという思いからスタートしました」。
従来、大学の広報活動は分かりやすい成果を上げる一部の著名な研究者に偏りがちであり、基礎研究や若手研究者が持つ優れた潜在シーズが社会に届きにくいという課題が存在していた。こうした状況を打破するため、同大学は2020年度から『CERT』の刊行をスタートさせた。毎号6人の研究者を選定し、原則として掲載は1度のみという独自のルールを設けることで、流行や社会ニーズに左右されない多様な研究を「知のカタログ」として網羅的に体系化し、社会へ発信し続けている。
『CERT』では、難病・がん等のメカニズム解明や分子生物学を基盤とした創薬研究、資源・環境・エネルギー・食料に関するバイオテクノロジー、さらには臨床薬学やニューモダリティ、プラネタリーヘルスといった多彩な特集テーマのもと、各教室・研究室の最先端の研究内容が具体的に紹介されている。例えば、発電する微生物を利用した微生物燃料電池の開発や、ヒト人工染色体による「生命をデザインする未来」、ゲノム解析とデータサイエンスを組み合わせた個別化医療、さらには植物由来の抗がん剤シーズの探索など、基礎から応用まで幅広い研究者の情熱と成果がビジュアル豊かに掲載されている。読んだ人からは社会実装のイメージが湧きやすいと評価されており、こうした冊子やWebでの発信が、のちに共同開発へと至るきっかけを生み出している。
URAとプロフェッショナルの協働による制作体制
この取り組みを持続可能にしているのが、URA(ユニバーシティ・リサーチ・アドミニストレータ)の存在である。URAとは、文部科学省の主導により大学等へ設置が進められてきた専門職種であり、事務職員でも教員でもない「第3の職種」として、ビジネスや事務系とサイエンス系の双方が使う言語を深く理解し、円滑なコミュニケーションで双方をつなぐ役割を担っている。
URAの若い世代をサポートする林氏は、実際の制作プロセスについて次のように説明している。「半年に一度、経営層等とも協議のうえで学内の研究者を選定し、約半年間をかけて取材を行っています。その取材の場には必ずURAが同席することで、研究者自身の人間性や、これまで知られていなかった魅力を深く引き出し、産業界に生かせる有望なシーズを発見することにつなげています」。取材を通じて見いだした面白いシーズをBioJapaなどの展示会・イベントで発信し、企業や官庁などの関係者と人をつなぐ重要なプラットフォームに落とし込んでいる。さらに、2022年度に開設されたWebポータルサイトは月平均1万5,000アクセス以上を記録しており、誌面とデジタル双方で情報発信力を高めている。
多角的な配布戦略が生む高大接続とブランド向上
創刊以来の累計発行部数は3万部を突破し、その配布先は多角的な広がりを見せている。配布先の割合は、中学・高校が50%、企業・行政が34%、大学が16%となっており、新刊が刷り上がると国内の中学校や高校へ送付され、理科担当の先生や生徒たちに届けられている。さらに、学内でも図書館の前などで広く配布されている。これにより、産学連携の促進にとどまらず、探究学習の教材や理系進路を選択する次世代の科学的好奇心を刺激するツールとして、高大接続の面でも大きな成果を上げている。



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