VRで切り開く薬学教育の新境地 —薬剤師と歯科医師の連携を深める臨床疑似体験
- toso132
- 1 日前
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東京薬科大学薬学部医薬品安全管理学教室講師の吉田謙介氏、同教室講師の清海杏奈氏、同教室教授の杉浦宗敏氏らの研究グループは、新潟大学医歯学総合病院医療連携口腔管理治療部特任助教の黒川亮氏との共同研究により、Virtual Reality(VR)を活用した薬学生向けの口腔アセスメント教育プログラムを開発した。同プログラムの教育的有用性を評価した研究成果は、2026年7月17日付で国際学術誌『Frontiers in Virtual Reality』に掲載されている。
なぜ薬学生に口腔ケアの視点が必要なのか
がん薬物療法などの高度化に伴い、現代の薬剤師には単なる薬の適正使用支援にとどまらず、治療に伴う有害事象を早期に発見し、歯科医師をはじめとする医療専門職へ適切につなぐ役割が期待されている。特に抗がん剤治療に伴う口腔粘膜炎や薬剤関連顎骨壊死といった口腔有害事象は、患者の食事や会話、服薬、治療継続に重大な影響を及ぼすためである。
しかし、従来の薬学教育において口腔アセスメントを学ぶ機会は講義や静止画像が中心であり、患者への適切な声掛け、観察時の姿勢、照明の当て方や観察手順など、視覚的・空間的なアプローチを実践的に習得する場が不足している点が課題となっていた。
360度映像体験がもたらした学習成果と課題

研究グループは、日本有病者歯科医療学会指導医と日本医療薬学会指導薬剤師の共同監修のもと、360度映像を用いた実践型VR教材を構築した。受講者はヘッドマウントディスプレーを着用し、患者が座った状態や横になった状態での観察方法、適切な手法と不適切な手法の違いなどを臨場感ある映像で確認することができる。
同大学の薬学部2年生13人を対象に、歯科医師による導入講義、VR体験、薬剤師による振り返りを組み合わせたプログラムを実施したところ、目覚ましい教育効果が確認された。患者の口腔内を観察する際の適切な対応に関する知識試験の正答率は、受講前の15.4%から受講後には84.6%へと大幅に上昇した。さらに、薬剤師と歯科医師の連携に関する理解や、実際の口腔アセスメントに対する自己評価・自信も有意に向上している。受講者全員がVRを用いた学習に対して肯定的であり、没入感や手順の理解しやすさ、映像の明瞭さが高く評価された一方で、機器の重量軽減や観察部位の拡大機能、機材台数の確保といった点において今後の改善課題も明らかになった。
次世代医療人材の育成と今後の国際展開
今回の取り組みは少人数を対象としたパイロット研究であるため、今後は対象者を拡大し、従来教育との比較や学習効果の長期定着度を検証していく方針である。
将来的には、口腔粘膜炎の重症度評価や病棟での多職種連携を取り入れた双方向型VR教材の開発を進めるほか、フランスの医療従事者と進行中の国際共同研究とも連携し、本教育モデルの海外展開も検討している。薬学教育と歯学教育を横断する「ヘルスアクションプログラム(HAP)※」の理念に基づき、医療DXを活用した新たな人材育成モデルの社会実装を目指していく。
※「ヘルスアクションプログラム」:薬学教育・歯学教育の連携によって、科学的根拠に基づく健康教育を社会に実装することを目的とした取り組み



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