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体調不良時の「AI相談」が急増、若年層では約半数に――一方で医師の8割以上が自己判断による受診控えを危惧


急速に身近な存在となった生成AIが、今や医療や健康管理の領域にも浸透しつつある。塩野義製薬株式会社が20~60代の男女10,000人と、過去1年以内に風邪症状でAIに相談した1,000人、さらに医師100人を対象に実施した「夏の感染症実態調査」(2026年8月発表)により、生活者が体調不良時にAIを活用する現状と、それに対する現場の医師たちの複雑な胸中が明らかになった。

  

若年層を中心に「熱を測るより前にAIへ相談」

調査によると、回答した生活者10,000人のうち42.7%が「月1回以上」日常的にAIを利用していた。そのうち46.7%が「体調不良時の自身の症状や対応策」をAIに相談した経験を持っており、さらに発熱やのどの痛みといった「風邪の症状を感じたとき」に相談したことがある割合は38.0%にのぼる。特に20代(51.6%が体調不良時に相談、49.0%が風邪症状時に相談)や30代(53.7%が体調不良時に相談、47.5%が風邪症状時に相談)といった若い世代で高い利用率を記録している。  

驚くべきことに、風邪の症状を感じた際に最初にとる行動として、50代・60代では「熱を測る」が最多だったのに対し、20代・30代では「AIに相談する」が最多(20代39.0%、30代41.5%)という結果が出た。体調に異変を感じた際、体温計を手にするよりも前にスマートフォンのAIに問いかける行動パターンが、若年層の間で定着しつつあることが伺える。  



新型コロナの可能性を提示されても受診しない現状

風邪症状についてAIに相談した経験のある1,000人のうち、62.1%が「風邪」、21.5%が「新型コロナウイルス」の可能性を提示されていた。AIから「新型コロナ」と提示された人の多くは「医療機関を受診した方がよい」と感じているものの、実際に医療機関を受診した割合は37.2%にとどまった。つまり、提示を受けた人のうち6割以上にあたる人が、医療機関への受診を見送っていたのである。  

受診しなかった一部からは、その後に症状が2〜3日あるいは4〜7日以上続いたり、悪化・後遺症が残ったりしたという声も上がっており、AIの提示結果による対応が裏目に出るケースも顕在化している。 


 

医療現場のホンネ:「AIは参考程度に、自己判断は危険」

この現状に対し、医師たちの間では危機感が強まっている。調査に応じた医師100人のうち68.0%が「患者の受診行動にAIが影響を及ぼしている」と実感しており、その具体的な弊害として、影響ありと答えた医師の58.8%が「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」点を挙げた。  

さらに、医師の84.0%が「感染症は似ている症状が多く、AIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」と指摘し、58.0%が「医療機関への受診遅れにつながる」と受診控えを危惧している。  

一方で、医師の74.0%は「生活者が体調管理でAIに相談することは有効」と有用性を認めており、受診すべき診療科の目安や生活上の注意点を確認する手段としての活用は歓迎している。ただし、「薬を飲むかどうかの判断」(64.0%が望ましくないと回答)や「疾患の自己判断」(61.0%が望ましくないと回答)に使うべきではないとし、88.0%の医師が「AIの意見をうのみにせず参考程度にしてほしい」と回答している。  

調査を監修した伊藤博道氏(いとう王子神谷内科外科クリニック院長)は「AIは早くて従順なアシスタントであるが、提供される情報には限界があり、責任を負ってはくれない。我々医師は症状だけでなく診察や検査による多くの情報を総合して診断している。AIを上手な参考情報として活用しつつ、気になる症状があれば早めに医療機関へ相談してほしい」と呼びかけている。

 


テクノロジー時代に求められる薬剤師の価値

これからの医療現場を担う薬学生の皆さんには、医療とテクノロジーの融合がもたらすメリットとデメリットの双方を正しく見極める力が求められる。

今回紹介した調査結果の通り、患者は医療機関を受診する前にAIを用いて自己判断を下したり、どの市販薬を飲むべきかをAIに相談したりする時代に突入している。AIは即座に膨大なデータを提示してくれる便利なツールだが、個々の患者の背景や、重症化の兆候といった細かなニュアンスまでを正確にくみ取ることはできない。  

将来、薬剤師として現場に立つとき、皆さんは「AIの情報をうのみにして不安になっている患者」や「AIの判断を信じて適切な医療から遠ざかろうとしている患者」に出会うことになるだろう。そのとき重要になるのが、科学的根拠に基づいた的確な専門知識と、患者の言葉の裏にある真のニーズを読み取る対話力である。

AIがどれほど進化しようとも、目の前の患者の体調や不安に寄り添い、真に適切なトータルケアを提案し、責任ある判断を下せるのは医療従事者だけである。テクノロジーを恐れる必要も、過信する医療に依存する必要もない。AIという強力なツールを患者指導や情報収集の強力なアシスタントとして上手に乗りこなしつつ、自らの専門性と人間性を磨き続け、信頼される医療の担い手へと成長していってほしい。



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