大手スーパー3社が日本ドラッグチェーン会に新規加盟 ゆるやかな連帯で資本の寡占化に対抗へ

国内大手小売チェーンである株式会社ライフコーポレーション、株式会社ベイシア、株式会社平和堂の3社が、日本ドラッグチェーン会に新たに加盟した。これにより同会全体の事業規模は、総加盟社数60社、総店舗数5,037店舗、総年商5.63兆円へと大幅に拡大する。近年流通業界で進行するM&Aによる画一的な巨大化とは一線を画し、各社の経営の独立性や地域の特色を維持したままスケールメリットを最大化させる「流通プラットフォーム」としての機能強化を目指す方針だ。
薬学生や将来の医療業界を担う若手にとっても、ドラッグストアとスーパーマーケットの垣根を越えたこの「異業種融合」の動きは、医薬品流通や地域医療のインフラを理解するうえで重要な転換点となる。
株式会社ニッドと日本ドラッグチェーン会とは
薬学生にとってなじみ深い「ドラッグストア」の裏側には、個々の独立した企業が協力し合う仕組みが存在する。今回の発表の主軸となる2つの組織の関係性は以下の通りである。
日本ドラッグチェーン会:1970年に設立されたボランタリーチェーン(任意の連帯組織)である。資本統合を伴わずに各社の独立経営を守りながら、共同でバイイングパワー(購買力)を高めることを目的としている。既存の加盟社には、都市型ドラッグストアを展開する株式会社トモズや、九州を中心に強固なドミナントを築く株式会社ドラッグストアモリなどが名を連ねており、地域の有力な独立系企業が連携している。
株式会社ニッド:日本ドラッグチェーン会の加盟社に向けて、商品の企画・開発・供給および各種サービスを提供する事業会社である。数千店舗規模のスケールメリットを生かし、医薬品やヘルス&ビューティケア(HBC)を中心とした高品質な「NID PB(プライベートブランド)」を数多く手がけている。
圧倒的な「商品力」と大手のOEM背景
多くのスーパーマーケットは自社単独では医薬品のPB商品を製造することが難しい現状がある。一方でニッドが開発する医薬品PBは、大手OTC医薬品メーカーと同等の製造委託先(OEM)へ直接依頼して作られている。
例えば、シオノギヘルスケアのビタミン剤やゼリア新薬工業の胃腸薬といった、大手メーカーの品質が担保された信頼性の高い商品をラインナップしており、成分を追加した高付加価値な製品も存在する。この圧倒的な商品数と品質の高さが、今回の大手スーパー3社を引きつける最大の魅力となった。
異業種融合とアライアンス強化に向けた各社トップの声明
今回のメガ再編にあたり、日本ドラッグチェーン会および株式会社ニッドのトップ、そして新規加盟3社はそれぞれの展望を明かしている。
日本ドラッグチェーン会会長の角谷真司氏(株式会社トモズ 代表取締役社長)は「私たちが目指すのは、資本で縛り付ける巨大なモノカルチャーではありません。それぞれの地域で愛され、暮らしを支える小売業の皆様が、その個性を生かしたまま、巨大資本に負けない最強の商品力とインフラを持てる世界です」とボランタリーチェーンとしての誇りを語る。さらに、今回の3社が持つ大型小売チェーンとしての膨大な生活者視点を取り入れることで、医薬品や日用品、健康食品のクオリティーを引き上げ、全ての加盟社やメーカーへメリットを還元していくとし、「時代を変えるのは資本の力だけではありません。私たちは独立系小売の連帯の力で、流通業界の新たな未来を証明してみせます」と力強く宣言した。
また、商品の供給と企画開発を担う株式会社ニッド代表取締役社長の森信氏(株式会社ドラッグストアモリ 代表取締役会長)は「各社様が抱える商品ラインナップの課題やニーズに対し、ニッドの豊富な開発資産を検証しながら、最善のアプローチで段階的な導入を推進しています。今後は医薬品や日用品に留まらず、化粧品をはじめとする幅広いカテゴリーでの活用に向けて、具体的な検討を進めてまいります」とし、さらなる連携強化へ期待を寄せた。
これに対し、新規加盟したスーパー側からも期待の声が寄せられている。株式会社ベイシアは「当社の医薬品部門は、これまで地域に根ざしたサービスを強みとしてまいりましたが、今後さらに魅力的な商品の供給体制を充実させるため、より高度な商品開発ノウハウやスケールメリットの活用を模索しておりました。この課題を解決し、お客様へより魅力的な商品を安定して届けるため、優れた商品と商品開発力を有している日本ドラッグチェーン会様へ参画させていただくこととなりました」と、ニッドの商品開発力への信頼を語る。
同様に株式会社ライフコーポレーションも「ナショナルブランド(NB)品と同一成分による品質が担保されたニッド商品の導入による商品力の強化、および売り場の活性化による競争力の強化を図ってまいります。競争力のある魅力的なPB商品の開発・供給を推進するとともに、市場での認知度向上と支持拡大に期待しております」とコメントし、品質が担保された医薬品PBによる売り場の活性化に期待を込める。
近畿・東海圏を中心に展開する株式会社平和堂は「この度、日本ドラッグチェーン会への加盟を通じて、全国のドラッグチェーン会各社様と知見を共有し、連携を深められることを大変心強く感謝しております。今回の加盟を機に、商品力の強化やサービスの向上をより一層強め、お客様と地域社会に貢献し続けてまいります」と述べ、全国の加盟社との知見共有による地域社会への貢献を誓った。
導入のスケジュール感
新規加盟した3社では、現在合計266店舗で医薬品が取り扱われており、今後もその店舗数は増加傾向にある。しかし、既存の限られた売り場への棚割りや、商流の再構築には一定の時間必要となるため、本格的な展開には「半年ほどかかる」見通しだ。
具体的な商品の導入順としては、まず最優先として「医薬品」から棚入れが進められている。その次に優先順位が高い分野として、各社でPBの不足が見られる「日用品」が順次導入される予定である。さらに今後、化粧品やその他のカテゴリーへ広げられるかが検討されていく方針だ。
物流センターを「持たない」という独自の物流ルール
日本ドラッグチェーン会は、組織内に独自の流通網や物流センターを「持たない」というルールを一貫して守っている。今回の3社加盟においても、各加盟社の都合や既存の卸業者(ベンダー)と協力しながら個別に対応している。
この仕組みでは、メーカーから卸業者へ納品されたものを年間の取引量に応じて価格計算するルールが構築されている。店舗数が少ない加盟社であっても、エリア内の卸業者を通じてNB品と同様に仕入れを行えるため、配送ロット(消化量)の課題をクリアし、多くの加盟社が魅力的な商品を取り扱えるメリットを生み出している。
地域密着型の独立経営を守りながら、巨大資本に負けない調達力とインフラを共有するこの新たな試みは、今後の医療・生活必需品領域におけるサプライチェーンの在り方に一石を投じることになる。



コメント