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新薬が日本に届かなくなる?製薬協が語る「イノベーション評価」と「日本の薬価・市場の課題」


宮柱氏
宮柱氏

日本製薬工業協会(製薬協)は2026年7月30日、都内で会長会見を開催し、今般閣議決定された「骨太の方針2026」および「日本成長戦略会議」の決定事項に対する同協会の見解と今後のビジョンを発表した。


骨太の方針2026:新薬のイノベーション評価と薬価制度の課題

7月21日に閣議決定された「骨太の方針2026」について、会長の宮柱明日香氏は「国民の健康と命を守り、日本経済の成長と競争力に貢献するための内容が幅広く反映された」と高く評価した。

特に同方針には、米国における「最恵国待遇(MFN)価格政策(※他国で取引されている最も安い薬価と同等まで自国の薬価を引き下げようとする政策傾向や議論)」をはじめとする諸外国の動きを踏まえ、革新的な医薬品が日本で迅速に発売(上市)される環境整備を進めることが明記された。さらに、初収載時における適切な価値評価や、特許期間中の薬価の在り方(売上が伸びた薬の価格を下げる『市場拡大再算定』や『持続可能性特例価格調整』の見直しなど)、費用対効果評価制度の再検討を通じて、新薬のイノベーションを正当に評価する方向性が示された。

宮柱氏は、今後の薬価改定や制度改革に向けて「革新的な新薬の価値を十分に評価できる制度設計について、さらに議論を深めていきたい」と語った。


日本成長戦略会議:官民投資64.1兆円規模のロードマップ

日本成長戦略会議のワーキンググループに構成員として参加した宮柱氏は「医薬品産業は国民の生命と健康、経済成長、安全保障を支える国家の基盤である」との認識を一貫して訴えてきた。今回の会議で取りまとめられた「官民投資ロードマップ」では、「創薬・先端医療」および「合成生物学・バイオ」の2領域において、2040年までに累計約64.1兆円の官民投資規模が掲げられた。これは全17の戦略領域の中で、AI・半導体に次ぐ2番目の規模となる。

製薬協の試算によると、諸外国の薬価抑制リスクに対して「薬価制度の見直しや成長投資、MFN等の制度変化への適切な対応」を行った場合、何もしなかった場合と比べて2040年時点で年間12.8兆円の経済価値(粗付加価値)が生み出され、106万人の雇用創出が見込まれるという。また、乳がん・認知症・メンタルヘルスの3疾患を対象とした健康増進による生産性向上効果も、2.7兆円に上ると推計されている。

事業戦略本部長の榊原由紀子氏は、この「12.8兆円の経済効果」の内訳について補足説明を行った。制度改革や成長投資を行わず、海外の薬価抑制リスクを放置して新薬の60%が日本に入ってこなくなった場合、日本の製薬市場は「マイナス4.2兆円」の打撃を受ける。一方で、適切な対応を取って日本市場の魅力を高め、順調に市場が拡大した場合は「プラス8.6兆円」となる。両者の差額を計算すると、実に「12.8兆円分」もの大きな成果(価値の底上げ)を生み出すことになるという。



国際的な薬価リスクへの対応と「市場の魅力度」の本質

海外の薬価引き下げ政策に伴うリスクへの対応について、事業戦略本部MFN TFリーダーの赤名正臣氏は「単なる一産業の薬価の問題ではなく、これまで米国が過度に負担していた創薬イノベーションのコストを、各国の経済力に応じて相応に負担し合おうという議論である」と解説した。

背景には、膨大な新薬開発費の多くを薬価の高い米国市場が実質的に支えてきたグローバル構造がある。米国が「他国並みに薬価を下げる(MFN政策)」と主張し始めたことで、日本をはじめとする先進国も自国の経済力に応じた相応の価格(イノベーションのコスト)を負担し、世界全体で創薬を支え合う姿勢が求められている。赤名氏は、海外動向の把握や厚生労働省などの関係省庁との連携を進め、日本の患者に革新的な新薬を迅速に届ける体制の維持を目指すと述べた。

また、製薬企業が投資先を選ぶ指標となる「市場の魅力度」の定義について問われた宮柱氏は「日本の一番の強みは、国民皆保険制度のもとでのアクセス(患者が必要な医療にかかれることや、公的保険の適用によって新薬がすばやく使える環境)」であると強調した。単に薬価の水準(価格の高さ)のみを指すのではなく、優れた新薬が患者に届きやすい医療環境全体が、日本市場の魅力度を形成しているとの見解を示した。


持続可能な社会に向けた今後の取り組み

宮柱氏は最後に「誰もが必要な医療にアクセスできる持続可能な社会の実現を目指し、研究開発投資の継続、国内製造基盤・人材育成・医療DXの強化に取り組む」と強調した。今回示された方向性を具体的な政策・制度へと落とし込み、実行に移すべく、今後も官民一体となった協議を継続していく姿勢を示した。

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