top of page

「善意と医療のかけ橋」へ、日本血液製剤機構が千歳市に新工場建設。総額2,000億円を投じ生産能力を2倍に拡大、急増する国内の医療ニーズに応える

  • toso132
  • 8 時間前
  • 読了時間: 5分


一般社団法人日本血液製剤機構(以下、JB)は、今後の血漿分画製剤の安定供給と国内自給の達成に向けた新たな事業構想発表会を開催した。発表会には、理事長の中西英夫氏をはじめとする経営幹部が出席し、報道関係者に向けて新工場の建設を柱とする大規模な生産基盤強化戦略を明らかにした。


医療ニーズの急増と低下する国内自給率

中西氏
中西氏

JBが製造・供給する「血漿分画製剤」は、現代医療において欠くことのできない医薬品である。近年、感染症や川崎病、神経疾患などの治療に用いられる「免疫グロブリン製剤」の需要が急増している。しかし、国内製造各社の生産能力が限界に達していることから国内製造量は頭打ちとなっており、不足分を海外からの輸入に頼らざるを得ない状況が続いている。これにより、2015年度に95.6%だった国内自給率は、2025年度には59.4%にまで低下しており、健康医療安全保障上の大きなリスクとなっている。さらに、JBが長年フル稼働を続けてきた製造設備の老朽化への対応も急務となっていた。  

このような背景のもと、JBが今回の事業構想の発表に至ったのには主に3つの要因がある。1点目は社内での生産効率化が進み、効率よく製品を抽出する製法改良(収率向上)の開発に一定のめどが立ったことである。2点目は国が日本成長戦略会議等で検討を進める「官民投資ロードマップ案」に「免疫グロブリン製剤の100%国内自給」が明確に盛り込まれ、国の成長戦略として位置づけられたことで、政府からの支援へ大きな期待が高まったことである。そして3点目は、医療関係者や患者からJBの供給拡大を望む強い声が寄せられていることである。 

JBは「血液は商業ベースで取り扱われるべきではない」という基本理念のもと、2012年に非営利の一般社団法人として設立された国内最大手の専業メーカーである。中西氏は「国内の献血によって国内の医療ニーズを賄う『国内自給』はJBの事業基盤の大きな柱である。善意の献血血液から血漿分画製剤を製造・供給することで『善意と医療のかけ橋』となり、人々の健康に貢献していく」と述べ、本構想の実現を通じ、国内自給率の向上と安定供給に向けて大きく貢献していく決意を示した。

  

血漿分画製剤の種類と製造方法

福田氏
福田氏

執行役員経営戦略本部長の福田洋一氏は、血漿分画製剤とその市場環境について説明した。福田氏によると、血漿分画製剤には主に免疫グロブリン製剤、血液凝固第VIII因子製剤、フィブリノゲン製剤などの種類がある。これらは、献血者から提供され分離された血漿を原料としている。その製造方法は、原料となる血漿から各成分を「分離・抽出」し、その後不純物を取り除く「精製」を行い、最終的に医薬品として仕上げる「製剤化」という工程を経る。  

特に重要性が高まっている免疫グロブリン製剤は、川崎病をはじめとする疾患において、早期に適切な治療を行わなければ後遺症を遺すリスクに関わるため、医療現場での安定供給の確保が極めて重要視されている。福田氏は「貴重な原料である献血血液由来の血液製剤は国内自給が原則。輸入依存の拡大は健康医療安全保障上のリスクとなるため、2040年までに需要が約30%増加すると予測される免疫グロブリン製剤を含め、需要の半分以上を供給することで海外依存からの脱却を目指す」とコメントした。

  

総額2,000億円の投資と生産能力2倍への拡大

執行役員生産体制革新本部長の津田昌重氏の説明によると、本構想の中核は北海道千歳市への新工場建設と国内製造拠点の再整備である。総投資額は約2,000億円を見込んでおり、原料血漿の処理能力を現在の2倍(年間130万リットル)へと大幅に拡大する。  

具体的なロードマップとして、まず2032年度の第1段階では新工場の「精製工程」を稼働させる。ここに収率向上の新製法を導入することで、生産能力を現在の1.2倍へと引き上げる計画である。その後、2035年度の第2段階に向けて既存千歳工場の「分離・抽出工程」の拡充や、新工場への「製剤化工程」の新棟建設を完了させ、全体の製造能力を現在の2倍にする。

  

5つのコンセプトと最先端テクノロジーによるDX・自動化

津田氏
津田氏

新工場の建設にあたっては、国際水準のGMPへの対応、災害に強いBCP対応、需要変動への柔軟な対応、生産技術改良による効率化、そしてDX・自動化による働きやすい職場環境の実現という5つのコンセプトが掲げられた。  

特に自動化の面では、これまで技術的に自動化が困難とされ、現場の大きな負担や熟練者の経験に頼っていた工程に対して、最先端のロボットやAI技術を積極的に導入する。  

原料となる凍結血漿バッグは、種類が多く冷凍された形もいびつであるため、これまではロボットでつかむことができず、カッター等を用いた人間の手作業による切り開きと取り出しに頼らざるを得なかった。新工場ではこの極めて冷たく重労働な作業をロボット化し、安全性の向上と労働環境の劇的な改善を図る。  

また、血液製剤は製品の特性上、機械で異物検査等を行おうとすると「泡立ち」が発生しやすく、機械による正確な判定が極めて困難であった。そのため、これまでは高い技能を持つ熟練の検査員による目視検査に頼らざるを得なかったが、ここにAIや最新の検査技術を導入することで、検査工程の自動化と品質管理の高度化を同時に達成する。これらに加え、資材や製剤の移動における運搬作業を無人化し、工場全体のオペレーション効率を徹底的に高める「工場内搬送の無人化」などを進めることで、生産効率化と働きやすい職場環境の両立を目指す。   


西日本偏在リスクへの対策(BCP)

日本の血漿分画製剤の製造工場が現在、九州などの西日本に偏っている地理的リスクを最重要課題と位置づけた。南海トラフ巨大地震などの災害リスクに対応するため、あえて北海道千歳市を新工場の立地に選定している。これにより、既存の千歳工場、新千歳工場、そして京都福知山工場の3拠点による強靭なバックアップ供給体制が整備される。  

中西氏は「他社の工場で万が一トラブルが発生し、国内の供給が滞った際にも、当法人が製造能力に余力(供給能力の過剰分)を持っておくことで助け合うことができる。これこそが日本全体のBCP、健康医療安全保障への貢献につながる」と語り、国内最大手としての社会的責任を果たしていく姿勢を強調した。

コメント


この投稿へのコメントは利用できなくなりました。詳細はサイト所有者にお問い合わせください。
bottom of page